とあるぼっちの無限支配   作:黒河桔梗

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恋愛的描写も入れていけたら、なんて。
超電磁砲しかまともに見たことがないのでキャラが偏るかもしれません。



お嬢様

 

突然だが俺は無実だ。

 

切実に一藤善鷹は思った。

始めに言っておくと善鷹は何もしていない。何もしていないが故に今の状況に陥ってしまったのだ。特に男子高校生らしい色恋に現を抜かす、なんて不似合いなラブコメに挑戦という無謀に手を染めたわけでもない。

謂わばアレだ、良い意味でも悪い意味でもフラグをたててしまう厄介な体質。本来善鷹にそんなもの必要ないしこっちから願い下げだが何故か一人になりたいと願う意思をことごとく壊してくれている。

 

 

 

「お姉様から離れてくださいます?」

 

「黒子アンタの勘違いだって言ってんでしょーが!」

 

(俺はなんでお嬢様方に囲まれているんだ…)

 

 

これ見よがしにいちゃもんをつけてくる常盤台中学の制服を着た少女。

その隣には以前顔を合わせた学園都市LEVEL5第三位である御坂美琴もいた。話を聞け!と言ってるあたりから推測するに美琴が望んでやっているわけではないようだ。これでややこしいお嬢さん方の相手をしなければならないとすると流石に気が滅入る。

 

見た目は至って普通、いや可愛らしい部類に入るのかもしれないが詰め寄られるとなるとそんなプラス面も一気に半減してしまう。

善鷹は深入りはしないが人並みに人間らしさは備わっていたようだ。

 

 

興味はなくとも最低限のマナーは持ち合わせていたということか。

表に有り有りと君達は可愛らしいねと言ってみろそれこそドン引きされてしまいそうである。内心見れなくもないだろうと思ってるあたり一藤善鷹は男子高校生としての少年らしさは失ってはいなかった。

言葉にせず伝える念話能力(テレパス)があれば彼の内面を知ることが可能かもしれないが残念なことに本人に伝える意思がないなら意味がない。なら読心能力(サイコメトリー)ならどうであろう?まぁこの場合能力を使用する能力者の思惑次第なので何とも言えないところか。

 

結局知ろうとする人間が善鷹に興味なりなんなり抱かない限りは知ることさえ許さない。最も最悪の場合善鷹が墓穴を掘るという失態がない限り少女等が知り得ることではないということだ。

 

 

 

 

「帰っていいか俺」

 

「それは出来ませんの。お姉様とのご関係その他諸々について教えて頂かない限りお帰しするつもりはありません」

 

「お前真顔で言うことかそれ」

 

「黒子はいつだってお姉様のことなら何であれ全力を惜しみませんの」

 

 

涼しい顔して実は変態か?と思ってしまった善鷹は悪くないはずだ。引き攣った表情で美琴と変態、もしくはストーカー(仮)容疑が定着しつつある白井黒子を交互に見ながら視線を彷徨わせていると美琴は理解したのか黒子に突っかかる。

肩をガクガクと揺らし誤解が晴れるよう説得しているようだがあれじゃあ逆に勘違いされてしまう。

 

それはこちらとしても問題なので渋々善鷹は間に入る。

 

 

 

「あー…お前のお姉様とは何でもないただの他人だ、お互い通行人程度の認識のな、」

 

 

だから間違っても変な勘違いしないように。

 

そう釘を刺したはずなのに何を思ったかこのですの少女と電撃姫は露骨に反応してきた。

 

 

「お姉様をそんな風に言うなんてとんだ類人猿ですわね」

 

「他人ですって…?人を散々馬鹿にしておいて他人扱いとかなめてんのかアンタは!!」

 

 

 

なめてないし馬鹿にしたつもりもない。

ただ非常に気に食わなかったのはですの少女、白井黒子の善鷹を指した類人猿という言葉。

馬鹿にされることは何度かあったが流石にサル扱いを受けたのは生まれて始めてだ。

腹が立つよりかは呆れるというのが素直な感想だった。

 

 

 

(いつの間にか矛先が俺に変わっている気がするんだが)

 

 

美琴に関しては完全に標的を善鷹に変えたようで今にも襲いかかってきそうで例えるならあれだ、猛獣、珍獣でも構わないが。

電撃を纏う珍獣、実にぴったりだ。

と、そんな悠長ななことを言ってられなくなってきたみたいだほら現に少女達が獲物を見つけた野獣のような目でじっと見ているじゃないか。

 

さて、生憎と逃げ場はないときた。

なら全力でこの厄介なお嬢さん方のお相手をしろと?断言してやろう嫌だ、めんどくさいし中学生に割いてやるだけの時間が善鷹にはない。

もっと有意義に自分のための時間を最大限にして使いたい、善鷹の中じゃあこれは決定事項。

 

だがどうだ。

見た目可愛らしいお嬢さんが男子高校生の相手をしてくれるというのだから大変嬉しいイベントなのだろうがこれは当人じゃないから羨ましいと言えるわけであって。

 

 

「さぁ付き合ってもらうわよ!」

 

「何にだ」

 

「そんなの前の続きよ」

 

「お前って馬鹿なのか?誤解招くようなことサラッと言いやがって」

 

 

羞恥心って知ってる?と哀れなものを見る目で美琴を見つめる善鷹に理解したのかハッとして瞬間顔を真っ赤に染める。どうやらお嬢様もお年頃らしくこういった話題には敏感らしい、新鮮な反応に善鷹もニヤリと笑う。

あくまでニヤリ、と。人好きされる笑い方ではない、むしろ逆の相手を小馬鹿にしたような、であって楽しむような実に悪党臭い顔をしていた。

 

 

「アンタはッ」

 

やっと作動した羞恥心が美琴の意思と反して放電する。

馬鹿にされたという現実とこんな相手構わず敵を作ろうとしている奴に羞恥心がなんたるかを身を以て教えられるなんてこれ程に屈辱的なことはなかった。

 

 

「事実だろーがよ」

 

微笑む姿は決して悪いものじゃないはずなのに、悪意に塗れていた、ごく微量の嫌がらせという悪意に。

オレンジ頭の姿を目に入れるのがこんなに腹立たしいと思えたことはなかっただろう。初めて会った時もそうだったがこの少年は人を小馬鹿にして何が楽しいんだ、いつだって理屈や現実を盾に正当化して追い込む。

彼を表現するなら詐欺師、というのがしっくりくる。

 

 

「黒子のことは無視ですのね」

 

善鷹と美琴がヒートアップする中、黒子は文字通り蚊帳の外であった。

ある意味屈辱を感じた瞬間だったがこの一触即発の雰囲気の漂う空気をぶち壊すだけの勇気を持ち合わせてはいなかった。

 

「私を馬鹿にするのがそんなにも楽しいか」

 

ほとばしる電流さえ物ともせず相対する姿は実に戦うという姿からはかけ離れていた。普通のどこにでもいるようなほんの少しくらい容姿が整った程度の男子高校生が目の前の学園都市第三位の超電磁砲(レールガン)に敵うとは思えない。

 

「別に。ただ事実を示しただけだろムキになる方がどうかしてる」

 

 

でもまぁ、と少年は告げる。

本来彼から聞くことは出来ないと思い込んでいた言葉。

 

「気に障ったなら謝る」

 

「はっ?」

 

ぽかんとしてしまった。

そうなっても仕方ない散々理屈を突き付けられては追い返されてまともに取り合ってくれたことさえなかったこの少年が素直に謝罪の言葉を述べた。

少女の残り少ない情報からすれば得体の知れないオレンジ頭の少年は他人を寄せ付けない人を虚仮(こけ)にすることを生きがいにしているはず。でも目の前にいた一藤善鷹という少年は頭は下げてないにしろはっきりと口にしていた謝罪というらしくない善行を。

 

 

「?なんだ人の顔ジロジロ見て」

 

気付いた時には美琴の放電も収まっていた。

その呆気ない場の鎮静化に黒子も目を瞬かせる。

頭が追いつかないとはこういうことを言うのかもしれない、美琴もどんな表情を浮かべればいいのか分からないまま。

生来の嫌われ者もといぼっち少年の改変。

変化という自体は悪いことではないのかもしれないがあまりの衝撃に周りが困惑するのは無理もない。

 

 

「謝った?」

 

「しょうがねぇだろ。認めないとお前すぐ放電してきそうだし」

 

「それでも、」

 

「臨機応変にやったってだけだ特別変わったことをした覚えはないぜ?」

 

 

 

それだけのこと、確かにそうかもしれない。

謝るだけ、たったそれだけのことに美琴は動揺を隠せない。他人の理解を拒む印象しかなかったのだから当然だがまるで小馬鹿にした態度が百八十度変わってしまったら別人かと疑ってしまう。

だから少女の無意識の行動も仕方のないこと。

 

 

「アンタ熱とかあるんじゃないの?」

 

ぺたっ、と自分の掌を善鷹の額にくっつけて体温を確認する。

すると空いていた距離も自然と縮まることを意味しているわけで、善鷹も流石に触れられるとまでは予想してなかったのか目を白黒させた。

 

 

「お前さ、」

 

「なによ」

 

「無防備すぎね?」

 

「な、っなにを当然…」

 

 

無防備なんて言葉善鷹から出ると思わなかったのかびくり、と美琴の肩は震えた。

加えて一藤善鷹はらしからぬことをぺらぺらと口に出し始めたのだ。

 

「お前も女の子なんだから気軽に男に触らない方がいいだろ。勘違いしない奴がいないとも限らないしな」

 

 

本当に今日の善鷹はらしくない。

素直に謝罪したり、女の子扱いしたり、本当に彼は御坂美琴の知る一藤善鷹なのだろうかと。

しかも最後にトドメの一言、本当に今日の善鷹はおかしい。

 

「へ?」

 

「どうしたお前」

 

 

顔赤いけど、と笑う。

熱があると聞いたがそれは美琴の方だ。何故なら明らかにその顔は茹だっていた目に見える程に。

 

 

「な、っ、ほえ!?」

 

「本当に大丈夫か」

 

善鷹が気遣いの言葉をかけただけなのに露骨に反応する。

それを見兼ねた黒子は動きを見せた。

いいや、正確には見せたかったのだが出来なかったこのピンク色な空気に包まれた空間で上手く頭が働かなかった。

 

大好きなお姉様がどこぞの馬の骨とも分からぬ輩に取られると、思わずにはいられなかった瞬間。

 

 

携帯で呼び出された善鷹は黒子に美琴を任せると言った。

 

 

「ですのコイツのこと頼んでいいか」

 

「ちょっ、お待ちなさい!」

 

 

それだけを告げると善鷹は美琴を黒子に引き渡す形で場を去ることとなった。

ある種の熱に浮かされた少女を残す形で。




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