なんか話数が進む度に善鷹の性格が悪くなってる気がするんですが…皆さんどうですかね?
「さぁ!麦野のお仕置きが終わった今、私に恐れるものはない!!」
強気に出ている少女を眺めながらさっきまで泣きべそをかいていた人間とは思えないな、と善鷹は思う。
彼女等独特のスキンシップというのにしてはやたらと熱烈であったが。
「結局馬鹿にされたままじゃ引き下がれないって訳よ!」
(って、全然懲りてねぇし)
先程散々叱られたというのにまたやろうとしてるあたりフレンダは間抜けなのだろう。
そんなお馬鹿さんに少し、ほんの少しだけ同情したのは内緒。
「俺は相手するなんて一言も言ってない」
「そんなの私には関係ない!!」
「どんだけ自己中なんだコイツ」
めんどくせぇ、一言だけ吐き出された本音が少女へ届くと途端に騒ぎ始めた。
確かに善鷹からしてみればこのお子様少女のお相手は苦しいものがある、どれだけ言い聞かせても突っぱねても全部を全部受けては返してくるのだ。
「君と遊んでやれるほど暇じゃないんだ、分かるかお嬢さん?」
使い慣れない紳士的な言葉遣いでフレンダを説得する。
本当に不似合いな言い回しに彼の知り合いが側にいたら唖然とするだろう、というか卒倒するかもしれない。
それ程に今の一藤善鷹はギャップがあった。
見た目もそこそこ容姿端麗な部類に入るのだし初対面で普段のそっけない口調ではなく紳士な振る舞いを見せれば周りの反応は違ったものになる。
が、それは知らなかった場合だ。
彼女達とは初顔合わせではあるが既に善鷹は通常時の装いを晒してしまっている。
故に少女、フレンダからしてみれば尚のこと馬鹿にされたとしか解釈出来ないというわけだ。
「結局アンタ私のことなめきってるでしょ?」
「いいや、特にそんなつもりはないよ」
「あからさまに言葉遣い変えたってバレバレなのよ!」
どれだけ優しげな口調で話したってフレンダにはもう善鷹がかなりずる賢い嫌がらせの塊みたいな奴という認識しかないわけで。
はっきり言おう、今更取り繕ったって無駄。
「何が言いたいのかな?よく分からないんだけど…」
だがしかし善鷹は偽る。
フレンダの言うデタラメをさも本当であるかのようにしゃべる姿はどこの詐欺師だと疑いたくなる程だったが何分この場には一藤善鷹を知る者はどこにもいない。
つまりは押し通せるだけ押し通せばこっちの勝ちだ。
勝利条件は目の前の金髪少女を黙らせることそれだけ、こんな簡単なこと出来なくてどうする。
方法はなんだっていい店内で騒ぎが大きくならなければ。
「俺、君を怒らせるつもりはなかったんだ」
「ちょっ!」
「……だけど君にとっては違ったんだね、」
「なっ、なんなの結局私が悪いみたいな雰囲気になってない?!」
ファミレスに来ていた客達の視線がフレンダ達に集中する。
善鷹にしてみればこれが狙いだった。
周囲に客がいるなら誰がこの場で悪いかを明確にした上で認知させそれさえも利用してフレンダを抑え込む、実に悪知恵に秀でていた。
傍目からすれば少女を諭す優しげな少年といった風に映るだろう。
善鷹自身騒ぎの中心だったわけだがこの場合主にフレンダが騒いでいたのが幸いして彼に非難の目がいくことはなかった。
「むっきぃー!なによなによ!調子に乗ってんじゃーー」
「乗ってないよ、だからこれ以上騒ぎを大きくするのやめない?」
じゃないと店から追い出されるかもしれないし、それに、
「君のお友達が
にっこり、そんな表現がしっくりくる笑顔。
でもフレンダには見えていた僅かに、ほんの僅かに善鷹の笑顔が邪悪に満ちていた。しかもフレンダにしか分からないように。
(その身を以て理解しろ)
と、そう表情から読み取れた。
そこでようやくフレンダは理解する。
目の前の少年は己の手は汚さずフレンダだけのせいにするつもりなのだと。確かに騒ぎを広めたのはフレンダだったかもしれない、けどそれならこの少年も同罪じゃないか。
「だったら私だけが悪いわけじゃ…っ!」
「フーレーンーダー?お前さっき言い聞かせたところだよなぁ?」
「麦野違うってば!悪いのは私…でもあるけど、でもでも!結局コイツだって原因の一つって訳よ!!」
「問答無用!!」
「みぎゃぁー!悪いのは私だから、ゆっゆる、許してって訳よぉおおおおおお!!!」
あーあ、と不憫な金髪少女を視界の端に入れつつ目を瞑る。
べつに可哀想だとは思わない、あれは謂わば自業自得己自身で招いた種だ。折角気にかけて態々注意してやったのにこれじゃあ意味がなくなってしまうじゃないか。
口元を手で覆って見えなくしているがおもいっきりにんまりと笑みを形作っていた。
(だが俺は悪くない何故なら、)
ーー勝手に自滅したのはあの餓鬼だ、せめてもと忠告したがそれさえ棒に振るった大馬鹿野郎を擁護してやる優しさは持ち合わせちゃいない。
実に一藤善鷹らしい理由だった。
だがしかし善鷹してみればこの場合大事なのはフレンダの一部始終を見届けるのが今彼の望みなのだ。フレンダ=セイヴェルンの本日二度目の死亡フラグを眺める姿は極悪人だろう。
「お待たせ致しましたご注文のコーヒーとペペロンチーノです」
「あ、どうも」
注文の品を店員から受け取ってまずコーヒーに口をつける。
どうやら砂糖もミルクも入れないあたり彼は甘党でないことが伺えた。まぁ今回は大して重要ではないのでこの話はここまでにしておくこととしよう。
「よくこんな状況で食事出来ますね」
「むしろこんな状況だからだろ。それに注文したからには食事を進めるのは当たり前だろう?」
「それもそうですね。ですが目の前でこんなに騒ぎになっているというのに食事を続けられるなんて超空気読めてない思います」
「なら敢えて言わせてもらうが常識的に考えて俺が場の空気を読めない奴だっていうならアイツ等の騒ぎを黙認しているだけのお前はどうなんだ」
人のことを貶す暇があるなら自身がどうかを思い返してみろ。
善鷹は真っ向から挑発を促す。
本当に初対面同士の会話とは思えない、お互いがお互いの出方を見聞しているようでそのどちらもが相手の先手を取れずにいた。
「ぐっ、貴方超性格が歪んでいると言われたことがありませんか?」
「生憎とそこまで親しい間柄の人間がいないんでね、なんともいえねぇな」
「先程までフレンダと言い合っていた時の口調からかなり崩れているようですが、いいんですか?」
「所詮はその場凌ぎの会話だ使えるものは最大限まで使わせてもらうってのが俺の自論なんでね」
「超ひん曲がった性格なのはよく分かりました」
フレンダを弁護するつもりが毛頭ない絹旗は彼女に見向きもせず食事を始めた善鷹に話しかける。
「アンタはあの喧しいお嬢さんのお友達なんじゃないのか」
いいのか放っておいて、と頼んだペペロンチーノをフォークでくるくると巻きつけながら会話を続ける。
絹旗からすればそのモーション一つでさえ何か裏があるんじゃないかと疑わずにはいられない。
「友達なんかじゃありませんよ、彼女はただの仕事仲間です」
「へぇ…、仕事仲間、ね。あのガキンチョもアンタも見たところ普通の学生に見えたんだが」
訳ありってやつか。
瞬間的に何か日常から脱したものを感じた善鷹だったがここでこの少女に深追いするのも何だし、今日出会ったばかりの赤の他人と縁を結んでもおそらくプラスになり得ることは限りなくゼロに近い。
それに下手に足を踏み入れて自滅、もしくは共倒れ、なんてことになるのは避けたかった。
「なんです?途中で話を切られると超気になるんですが」
「いいやプライバシーにまで踏み込む気はねぇよ、相席しただけの他人がとやかく言うことじゃない。俺もある程度は場の空気くらい読める」
「さっきの仕返しのつもりですか?だとしたら超性格悪いです」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
善鷹と絹旗の攻防戦はわりと呆気なく終了した。
絹旗は不満たっぷりといった風で終始睨んでいたが善鷹は気付いているのかいないのか、余裕の表情で少女の不服顔を堪能することとなった。
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