失踪しないよう気ままに頑張ります。
─────どうしてこうなってしまったのだろう。
草木も眠る丑三つ時、切り立った崖の上で青年は一人考える。
眼下に映る大海は青年の心を表すかのように真っ黒であった。
─────本当につまらない人生だった...
ただひたすらに時間を、金を浪費し、そんな自分に嫌悪する。
「今度こそは自分を変えよう。」何度そう考え、実行しただろうか。
だが結局は自分自身の愚かさを再確認するだけで全て終わってしまった。
1人では何もできないと考え、誰かに手を借りようとしたことがあった。
しかし手を借りようとした途端に自身のくだらない
そうして人生を消費していくうちに青年は全てを諦め、挑戦することさえやめてしまった。
夢から、自由から、努力から、現実から、あらゆるものから逃げ続けた果てに青年はここにいる。
─────ごめんなさい。許してください...
口から零れ落ちる言葉は今まで育ててくれた母親に対しての謝罪。
青年の両親は離婚してしまい、父親とはもはや滅多に顔を合わせることはなかった。
感謝することも謝罪しなければならないこともある。返せていない恩もまだまだある。
けれど...
─────もう、疲れてしまったんです...
これ以上、自身を嫌悪することにはもう耐えられない。これから先、自分の人生が良くなるとは思えない。
故にこれ以上、恥を重ねることがないように。これ以上絶望することがないように。
─────俺はここで死のう。
遺書はない。遺すものも何もない。当たり前の話だ。青年は何も遺す気がないのだから。
周囲にひたすら迷惑をかけてきた自分が、せめて死ぬ時くらいは誰にも迷惑をかけないように、こんな深夜に誰もいないであろう場所にやってきたのだから。
飛び降りも、電車も、練炭も、首吊りも、どれも誰かに対して迷惑をかけてしまう。自分という
誰にも知られず、自分がここに来たという痕跡さえ遺さずに自殺を成功させる。
それが青年にとってのせめてもの配慮であると同時に、自身の
その為に青年は何かを遺す訳にはいかなかった。
周囲を確認し、誰もいないことを確認してから万が一死にきれなかったことを考えて、水中から浮上することがないように重しを装着する。
そして青年は眼下の大海へと1歩ずつ歩みを進めていった。
─────もしも...もしも次があるのなら...
進んでいく中でそんな考えが頭の中をよぎった。そしてそんなことを考えてしまった自身をまた嫌悪する。
次なんてない。次なんてあるはずがない。ましてや何か大きなことをなした偉人ならともかく、自分のような人間に次の生なんてものがあるわけがない。
そうして自身の甘い考えを消し去ろうとする。しかしそんな甘い考えは自身の中で
次なんてない。次なんてあるはずがない。だが、もしも...もしも次があるのなら...
─────強くなりたい
夢を見よう。自由を手に入れよう。努力しよう。思い描く理想を手に入れて見せよう。
彼女を作り、友人を作り、誰からも尊敬されるような男になってやろう。
理想を思い描いているうちに青年はふとかすかに笑みを浮かべていることに気づいた。
─────考えるだけで何もかもが上手くいくのなら、理想になることができるのならどれだけ楽な人生だろう。もしもそうなら自分はここに立っていないというのに...
先ほどまでの自身を嘲笑し、立ち止まる。終点だ。これ以上先に進めば
これ以降はもう引き返すことはできない。最後の決断を前にして深呼吸しリラックスする。
そして
落ちる。落ちる。落ちる。落ちる。死へのカウントダウンが順調に進んでいく中、頭を走馬灯が過っていく。
内容は、友達と遊んだことや親と外に出かけたことなど取るに足らない日常ばかり。だが
─────そんな日常が何よりも楽しかったな...
死を前にしてようやく気付く。今更引き返すことはできないし、引き返そうとも思わない。未練はある。後悔も小さなことも含めれば数えきれないほどある。
それでも悲しいことばかりではなかったことに最後に気づくことができたのが何よりも嬉しかった。
海面に叩きつけられる。身体に大きな衝撃が走る。しかし即死することは叶わなかったらしい。
元々それほど期待はしていなかったが、即死していた方が楽だったのにと思う。
息ができない。意思に反して身体は
辛い。苦しい。冷たい。痛い。考えていた以上の苦痛に襲われる。
これが自分の犯した罪の罰だ。それだけのことをしたのだと自分を納得させる。
どれだけの時間が流れただろうか。5分?30分?それとも1時間かそれ以上?もしかするとまだ1分も経っていないのかもしれない。
あぁ...まだ死ぬことはできないのか...あとどれだけの間苦しめばこの苦しみから解放されるのだろうか
もはや逃れることのできない死を前にして湧き上がるものは生への渇望と後悔であった。
なんて自分勝手なことだろうか。散々好意を無視して死のうとしておきながら、いざ死を前にすると生きたいなどと思うなんて。
しかし最早助かる方法はなく、段々と体の末端から感覚がなくなっていく。
─────あぁ...よかった...
最後にそんな風に考えて青年の意識は暗闇の中に消え去った。
読んでいただきありがとうございました。
書いているうちに自然とダークな感じになってしまいましたが次からはもっと明るい感じで書いていきたいです...
自分は2千文字を書くだけで数時間とかかってしまったので万を超える文字数を書いている人は本当に尊敬します。
次回は気分が乗り次第書いていこうと思うのでのんびりとお待ちください。
ご感想お待ちしています。