TSアルビノ少女は逆行する。   作:和海狐

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大変長らくお待たせしました。
気が付けば最終投稿から10ヶ月、連載開始から1年以上経ってました。
次はないように気を付けます。


美空と1ヶ月とやらかし

この身体になってから1ヶ月程が経過した。

自分の姿以外にも前世との変化がないか探したり、慣れない生活に順応しようとしている内にそれだけの時間が過ぎてしまった。

結果としては前世との相違点らしきものは自分以外見つからなかった。流石に細部までは覚えていないので分からないけれど、それでも覚えている限りのことは、男の時と全く同じだった。

体調の方はあまり良いとは言えない。

2日目の時のようなことが何度も起こっている。

大体週に1日、多くて2日ほどだろうか。症状の重さは日によってさまざまだけれど、基本的に足に異常が起きるというところは同じだ。

この1ヶ月の間でにお母さんに連れられて病院に行ってみたりもしたのだが、結果はなんの異常も無し。別の病院に行ってみても診断結果は同じだった。

医者からは何か精神的な問題ではないかと言われたのだが、精神的なこととなると心当たりが多すぎて逆に何が原因かわからない。

結局、何一つとして分からずじまいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平日の午後3時過ぎ。

殆どの人が学校や仕事に勤しむであろう中、自分はリビングで本を読んでいた。

下の階からはお母さんが掃除機を掛けている音が聞こえてくる。

こんな年から本を読めることを誰かにバレたりしたら怪しまれるんじゃないかと思うかもしれないが問題ない。既にバレた後だ。

 

 

─────不覚だった...

 

 

まさか、家族全員がちょっとした用事で出かけて、家に自分1人だけになった時に、あまりの暇さに本棚に立てかけてあった本を読んでいたらそのまま寝落ちしてしまうなんて。

幸い、その時読んでいた本が振り仮名付きの本だったので何とか納得してもらえたとは思うが、あの時の自分は本当に間抜けだった。

とは言え、こうして好きに本を読めるようになったのだから結果的には良かったと言える。

 

 

─────暇じゃないって良いな...

 

 

自分以外誰もいない静かな部屋にペラリペラリとページを捲る音だけが響き渡る。

最近はこうして1日を過ごしていることが多い。

健康や体質などの様々な理由によって幼稚園に通えていない自分は、やれることが少ないのだ。

だからと言って、幼稚園に通いたいかと聞かれれば答えは否だろう。

今の自分が幼稚園に通うとなると、脚の障害やら日差しやら厄介なことが幾つも付き纏うだろうし、何より周りの子供たちに合わせなければならないので余計な心労を負う羽目になる。

おまけに、例え幼稚園に行けたとしても体質の関係上、幼稚園のイベントに殆ど参加できない。

と、どう考えても懸ける労力と利益が釣り合っていない。

 

 

─────まぁ、幼稚園に行くか否かは両親と医師が話し合って決めたことであって、自分は殆ど

     関わっていないんだけど。

 

 

理由はどうあれ小学校に入学するまでの間は、こうして家でのんびり過ごそうと思っている。

幼稚園で出会うような同年代との関わりは小学校に入ってからでも間に合うはずだと思いたい。今は今後のために少しでも自分の身体を治すことが最優先だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同年代と関わらないとは言え、幼馴染だけは別だ。

大地達とは積極的に会うようにはしている。

現に、今からも学校から帰ってきたお兄ちゃんに誘われて、大地達と会うつもりだ。

 

 

─────まぁ一緒に遊んだりはできないんだけどね。

 

 

とは言え、こんな身体では外遊びなんて到底できるはずもなく、大抵はベンチに座って皆が遊んでいる姿を眺めていたり、目の届く範囲をぶらぶらとうろついているだけである。

大地達もそれを分かってくれているのか、積極的に話しかけてきたり軽く誘ってくることはあれど、無理に参加させてきたりということはしてこなかった。

ただそんな自分でも少しだけなら一緒に外で遊べる日というのが実はあったりもする。

それは日が殆ど出ていない日、要は曇りの日だ。雲がぶ厚ければ傘を差す必要がなく多少は身軽に動くことができる。

それでも元が弱い身体である以上、激しい運動なんてしてしまうと数日先まで地獄を見ることになってしまう。

 

 

─────もうあんな目には合いたくないかな...

 

 

そうなことを考えながら玄関を出る。

今日は晴天、梅雨を前にして段々と蒸し暑くなってきている。

こうも晴天だと残念ながら一緒に遊ぶどころか日陰から出ることもできなさそうだ。

せめてもう少し雲が出ていればいいのに。

まあ別にいい。もう慣れたし何より身体はどうあれ中身は大人だ。その程度の我慢はできる。

いつものように眺めるだけで十分だ。

 

 

「────」

 

 

ぼんやりと物思いにふけりながら前へ進む。

少し暑い。肌を隠すために来ている長袖が日に日に暑く感じるようになってきている。

まだ5月でこれなのだから本格的な夏になってしまうとどうなるのだろう。

熱中症で死ぬんじゃないだろうか。

 

 

「─い───ら」

 

 

─────あっつい...

 

 

駄目だ意識すると余計暑くなってきた。

何か別のことでも考え...

 

 

「おい!美空!」

 

「ひゃいッ!?」

 

 

─────なになになに!?!?

 

 

突然、大声で呼びかけられて我に返る。

慌てて後ろを振り向くとお兄ちゃんがムッとした表情でこちらを見つめていた。

何だか知らないが怒らせてしまったらしい。

 

 

「お兄ちゃんか...びっくりさせないでよ。」

 

「何度呼んでも返事しない美空が悪い!」

 

「えっ?...ごめん気づかなかった。」

 

 

そういえば何か喋っていたような気もする。

暑さに気を取られて完全に意識していなかった。

 

 

「それでどうしたの?」

 

「美空がどっか行こうとするから。」

 

「え?公園じゃないの?」

 

「今日は早苗の家で遊ぶんだぞ。」

 

「あっそうなんだ...」

 

 

そういうことはもっと早く言ってほしい。

だがいいことを聞いた。自分にとってはむしろ好都合だ。

家の中なら日の光に当たることも暑さの心配もない。

それに余程のことでもない限りは今の自分でも一緒に遊ぶことができるだろう。

 

 

「早くいこー。」

 

「うん。」

 

 

逸る気持ちを抑えてお兄ちゃんの後を追った。

 

 

 

 

 

─────やっぱり近いなぁ...

 

 

時間にして約15秒の長旅()を終えて、早苗さんもとい大地の家に着いた。

近所なのだから当たり前だが、やはり近い。

そのおかげで、こんな子供でも好きな時に遊びに行けるのだから有り難いが、外出の際は必ずと言っていいほど目に入るので、珍しさとか目新しさと言ったものはない。

 

 

「祐樹くんに美空ちゃんいらっしゃ~い。」

 

 

家の前には大地のお母さんが立っていた。

わざわざ出迎えの為に待ってくれていたらしい。

 

 

「早苗のお母さんこんにちはー。」

 

「こんにちは。」

 

「こんにちは~。早苗も大地も待ってるから上がって上がって。」

 

「それじゃあ、お邪魔しまーす。」

 

「お邪魔します。」

 

「早苗達はこの先のリビングにいるから。美空ちゃんも楽しんでね~。」

 

「うん。」

 

 

─────懐かしい...

 

 

中に入るのと同時に懐かしさが一気に湧き上がってくる。

思えば、前世で最後にこの家にお邪魔したのは何時になるだろう。

高校生?いや中学生だったかもしれない。

となると4~5年程前だろうか。

段々と会う気力も時間も無くなってしまったのだから仕方がないが、改めて考えると悲しく感じてしまう。

今世では何年経っても一緒に遊ぶような仲でいたい。

 

 

─────願わくば前世以上の仲に...

 

 

もちろん親友という意味で。

そのためにも今日は目一杯遊ばせて貰おう。

 

 

 

 

 

言われた通り、リビングに入ると早苗さん、大地、哲也くんの姿があった。

 

 

 

「よー早苗。」

 

「あ!祐樹に美空ちゃん!こんにちは!」

 

「こんにちは。哲也くん、大地もこんにちはー。」

 

「こんにちはー。」

 

「...」

 

「むっ。」

 

 

大地からだけ挨拶が返ってこない。

それどころか此方を見ることすらしない。

気づいてない訳がないし、これは明らかに無視されてる。

このまま気にせず放置してもいいけれど。

仲良くなりたいといった矢先に、そんなそっけない対応をしていいものか。

でも、変に接してしまったせいで逆に嫌がられても困るし...

 

 

─────どうしよう...

 

 

実を言うと1か月経った今でも周囲の人達との距離感はあまり掴めていない。

幼馴染辺りが特に顕著だ。

今まで何度も対応に困ってしまうことや返答に時間がかかることがあった。

話し言葉なんかもそうだ。男口調ではないとはいえ、男の時の様な感じで喋ってしまえば奇異の目で見られてしまったり、子供心で何度も尋ねられるのだ。

お母さんからも「美空はお利口さんで助かるわ。」とか「周りの子より成長が早くて手が掛からない。」なんて言われたけれど、流石に少しは怪しまれていそうだ。

そういう訳で最近は話す言葉にも少しだけ気を付けている。

 

 

─────あ~本当にどうすれば...

 

 

「美空ー。」

 

「んえ?」

 

「なんでずっと立ってるの?」

 

「あっ。」

 

 

気づけば、部屋の中で立っているのは自分だけという状況だった。

このまま突っ立ている訳にもいかないので、空いていた大地の横に座った。

 

 

─────俺何かしたっけ。

 

 

未だに此方を見向きもしない大地を横目で見ながら考える。

つい先日、遊んだ時は無視なんてしてこなかったのに。

何かしてしまった覚えはない。

やったことと言えば、いつも通り喋ったことぐらい。

 

 

「ねぇ。」

 

「...」

 

 

取り敢えず話しかけてみるも、返事はない。

それどころか反応すらしない。

聞こえなかっただけかとも思ったけれどやっぱり違う。

これだけ近くから言ってるのに、何の反応も示さないのだからこれは間違いなく無視されている。

 

 

「...ねぇ。」

 

「...」

 

「ねー。」

 

「...」

 

「おーい。」

 

「...」

 

 

今度は身体を揺すってみたり、耳元で囁いてみた。

それでも反応はない。

来た時と変わらず、俯いて座っているだけだ。

 

 

─────なんなんだほんとに。

 

 

少しくらい反応してくれたっていいじゃないか。

ちょっとくらい反応してくれないと、こっちだってどうすればいいのか分からない。

これじゃあこっちが馬鹿みたいじゃないか。

もう諦めて放置してもいいけれど、こうも無視をされると無理にでも反応させたくなってくる。

 

 

「ねーー。」

 

「...」

 

「...」

 

「...」

 

「...はぁ。」

 

「どうしたの美空ちゃん。」

 

「あ。大地のお母さん。」

 

 

身体を大きく揺さぶりながらもう一度大地に話しかける。

それでもやっぱり反応はない。

何か知っているかもしれない早苗さんはお兄ちゃん達とテレビの前で何かしているので何だか聞きづらい。

どうしたものかとため息をつくと大地のお母さんが話しかけてきた。

 

 

「大地が無視してくるの。」

 

「あー...」

 

 

大地のお母さんなら何か知ってるかもしれないと思い、無視してくることを伝えると何だか申し訳なさそうな顔になった。

 

 

「実はね...」

 

「うん。」

 

「皆が遊びに来るちょっと前までね、早苗と大地は喧嘩してて...」

 

「え?」

 

「拗ねてるんだと思う。」

 

「へ?」

 

 

─────拗ねてる...?

 

 

なんだそれは。

どんな理由かと思えばただ拗ねているだけ?

そんなまさかと思って下から顔を覗き込んでみると確かに不機嫌そうな顔をしている。

俄かには信じ難いが、まさかそんな理由だったとは。

意外というか、完全に予想外である。

 

 

─────へぇ~...そっかー拗ねてるだけかー。

 

 

「こら、大地。美空ちゃんが話しかけてくれてるのに無視したらダメでしょ。」

 

「...ふんっ。」

 

「こーらー。」

 

 

─────そうだよな、まだ子供だもんな。

 

 

お母さんの言葉に僅かながらも反応を返した大地を見ながらそう思う。

まだ子供。それも小学校に通う年齢にさえなっていない子供だ。

そうと分かっているはずなのに、拗ねているという考えが思い付かなかったのは、自分が未だに目の前にいる大地と記憶にある大人の大地を重ねてしまっているからだろう。悪い癖だ。

 

 

「ほら、美空ちゃんにごめんなさいするの。」

 

「...」

 

「だーいーちー!」

 

「...」

 

「...ふふっ」

 

 

尚も可愛らしい抵抗を続けようとする大地を見ながら小さく笑う。

何故だか今の大地を見ていると、何時もと違った感情が湧き上がってくる。

うまく言葉で言い表せないが、愛らしいというか優しくしてあげたいというかそんな感じだ。

自分には縁のない存在だったので正確には分からないけれど、もし自分に年の離れた弟とか息子とかがいたらこんな気分になるのだろうか。

 

 

─────撫でたい...

 

 

ふとそんな願望が頭に浮かんだ。

 

 

「っ!?な!やめろ!?」

 

「あらあら~」

 

 

自分に背を向けて蹲っている大地に近づいてそっとその頭を撫でる。

当然のように大地には嫌がられるが、それを無視して撫で続けてやった。

正直、自分でも何故こんなことをしているのか分からないけれど、1つだけ確かなことがある。

意外と撫で心地はいい。

 

 

「あ。大地が撫でられてるー。」

 

「やめろー!!」

 

「~♪」

 

 

大地の声で早苗さんが気づいてしまったらしい。

その上、早苗さんの声でお兄ちゃんや哲也君までこっちを向いた。

だからと言って撫でるのを止める気は全くないけれど。

知らず知らずのうちに鼻歌まで歌いながら、大地を抱き寄せて撫で続ける。

 

 

「やめろー!!!」

 

「うるさーい!」

 

 

─────ああ、どうしよう。

 

 

何だかこのままだと大地を幼馴染として見れなくなってしまいそうだ。

でも不思議と気分がいい。何なのだろうこの気持ち。

離れようとする大地を抑えながら暫くの間撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「祐樹くんに哲也くんに美空ちゃん、また来てね。」

 

「ばいばーい。」

 

「皆またねー」

 

「おう。またなー。」

 

「またねー。」

 

「うん。またねー」

 

 

─────楽しかったー。

 

 

「お邪魔しました。」と一言言ってから家を出る。

あの後はずっと交代しながらテレビゲームやっていた。

出てくるゲームは懐かしいものばかりだったけれど、良いゲームは何時やっても楽しいものだ。

対戦ゲームではずっと集中狙いをしてくる大地が邪魔だったが、大人の心で適当に接待した後、一度だけボコボコにしてやった。

 

 

─────何だったんだろうな...

 

 

思い出すのは、遊びに来て直ぐに起こった撫でたい衝動のこと。

結局あの後は、5分程撫でたところで大地に逃げられてしまったのだが、それ以降は撫でたいなんて思うこともなかったし、いつも通り幼馴染として接することができた。

あの時どうしてああ思ったのかは分からない。

拗ねた大地を見ていると不思議とそう思ってしまったのだ。

 

 

─────嫌われてないよな?

 

 

大地にはかなり警戒されてしまったけれど、帰る頃にはまた自然と打ち解けていたので結果オーライだったとは思う。

ただ今後も今日みたいなことがあれば、何時かは大地に嫌われてしまわないか心配だ。

 

 

「ただいまー。」

 

「ただいまー。」

 

「おかえりなさい。どう?楽しかった?」

 

「うん。楽しかった。」

 

「楽しかったー。」

 

「そっか。良かったわね。」

 

 

今日は文句なしに楽しかった。

久しぶりに大地達の家には入れた上に、一緒に遊ぶこともできた。

子どもとしてはどうなのかもしれないが、今日のような日がもっと増えてくれると自分としては嬉しい。

わがままだけれどやはり見てるだけというのは退屈だった。

 

 

─────次は何時遊べるかな~。

 

 

次に遊べる日が今からでも待ち遠しい。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
ほんとはゲームやる話も入れるつもりだったけどなんか纏まりが悪くなりそうだったので止めました。
後、子供の喋り方とかどうですかね?変でなければいいのですが...
変でなければ8話の方も手直ししようと思います。
次はまた時間を飛ばして夏の話になると思います。(じゃないと何時まで経っても小学校にすら入れない。)

次回こそは早く投稿できるよう頑張ります。
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