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下手な文かもしれませんがこれからもよろしくお願いいたします。
あつ森やってたら遅れました。すいません。
「ごちそうさまでした。」
名前の件の後は特にこれといった会話もなく、食事を終えた。
食器を持ち台所へと持っていく。身長が低いせいで苦労したがなんとか落とすことなく食器を置くことができた。
─────これから何をしようか。
これからの予定を考えるために時間を確認しようと時計を見ると
─────まだ起きてから1時間も経っていないのか!?
予想に反して進んでいない時間に驚く。時間の流れはこんなにも遅いものだっただろうか?
昔に年齢を重ねるにつれて時間の流れが速く感じるようになると聞いたことがあったが、本当にその通りに思えてしまう。
今の自分と大学生の時の自分の体感時間を比較するとどれだけの違いがあるのだろう。
思いもよらない出来事に思わず考えが脱線しそうになってしまうが、すぐさま思考を切り替えて本来の考えへと戻す。
これといった予定もなく、時間は有り余っている。一体何をしようか?
─────まずは着替えからか。
自分がまだ寝間着姿であることに気付く。
特に外出する予定もないのだからわざわざ着替える必要はそこまでないのかもしれない。
ただ寝間着をずっと着続けているとどうしても少し気持ち悪く感じてしまうのだ。
それに自分が知らないだけで何か予定が入っている可能性だってあるのだから着替えておいた方が後々の為にも良いだろう。
「お母さーん。着替えってどこにある?」
周囲には着替えらしきものは見当たらない。
ならば、まだ着替えが出ていないか、目に見えない場所に置いてあるのだろう。
「ちょっと待ってね。今出すわ。」
やはり出ていなかったようだ。
その場で少し待っていると着替えを手渡される。
渡された着替えは白色のTシャツに前にファスナーのついた黒色の少しゆったりとしたパーカー、動きやすい灰色のスウェットパンツとこれといって可愛らしさのない部屋着だった。
一体どんな服を渡されるのか内心戦々恐々だったが少し肩透かしを食らった気分だ。
出来る限り自分の身体を見ないようにしながら手早く着替える。
パーカーのファスナーは閉めると少し暑く感じてしまうので開けておくことにした。
無事着替え終わり、自分の姿を近くにあった移動式の姿鏡で確認してみる。
─────悪くない...
オシャレさといったものは感じないがなかなか良い。
自惚れなのかもしれないが、今の自分の容姿はかなり優れていると言っていい。
男の時の自分と比べると天と地の差だろう。
そんな可愛らしい少女の部屋着姿というものはどことなく感じるものがある。
もちろん出てくる興味や感情は劣情とは全く違うものであるが。
もう少し自分の姿を見続けていたい気持ちもあるが、未だにわからないことだらけの現状を一刻も早く理解するためにも、後ろ髪を引かれる思いでその場から離れた。
─────また状況が落ち着いて、1人になることができた時にでも色んな服装を試してみるのもよさそうだ。
そんなことを思いながら朝食の前に考えていたリビングの探索を始めることにした。
リビングの探索を初めて小1時間、色々と発見があった。
まず第1に『私』が生きている時間は、『俺』が死んだ時よりも過去であろうこと。
このことはリビングに置いてある家具や家具の配置から分かった。
中学2年の時から飼っていた犬がいないことから少なくとも6年は昔じゃないだろうか。
もちろんこれまでの件のことを考えると、元々犬を飼っていない可能性もあるため、過去であると断言することはできない。
─────過去...逆行かぁ...
はっきり言って逆行なんてあまりにも非現実的だ。以前の自分であれば到底信じることが出来ないだろう。
だが既に少女となってしまった自分という異常事態の一例があるのだ。
信じるしかないのである。今の自分ならば魔法や異能力があるといわれても信じてしまうのではないだろうか。
次に『白河裕也』という人物は存在していないということだ。
このことは断言しても良いだろう。小1時間もの間探し続けて、『俺』の痕跡を1つも見つけることが出来なかったからだ。
お母さんに聞いたり、写真を見ることが出来たのならすぐに分かることなのだろうが、今の自分は不信感を与えないためにも怪しい行動をする訳にはいかなかった。
最後に自分は俗に言う『アルビノ』であることだ。
まあ初めて自分の姿を見たときからそんな気はしていたのだが...
アルビノの生物はほとんどの場合、視覚的障害があるはずだが今のところこれといった障害は感じない。
何にせよ、外出をする際は幾つか気を付けなければならないことがあるだろう。
他にも小さな違いや発見は多々あったが、大きな発見はこの3つだけだった。
リビングの一通りの探索を終え、大きく深呼吸をする。
そして今までわざと目を背けていたものを視界に収めた。
─────カレンダー...
リビングの探索を始めた時からあることには気づいていた。
今が一体何時なのかはカレンダーを見ればすぐに分かったことなのだろう。
それでもわざと目を背けていた。それは何故か?
─────怖い...
真実を知ることが怖かったのだ。真実を知るにはあまりにも心の準備ができていなかった。
なので先に部屋の探索をし、仮説を立てる中で何があってもいいよう心の準備をしていた。
遂に
ゆっくりゆっくりと少し視線を下に向けながらカレンダーの方へと近づいていく。
数歩程の距離だが、30秒ほどの長い時間をかけてカレンダーのもとへと辿り着く。
そしてゆっくりと視線を前に向けた。そこに書いてあったのは...
─────っ!?20XX年4月4日!?
思わず驚いてしまう。20XX年それはつまり
─────1....5年前...
自分が自殺した時から15年前である。
多少は昔であると考えていたが、予想以上の事実に頭が真っ白になる。
15年前ということは今の『私』の年齢は4歳ということになる。
通りで身長が小さい訳だ。4歳ならば身長が1m程しかないことも納得できるだろう。
しかし頭の納得とは裏腹に驚きのせいか足がふらつき倒れそうになる。そのまま重力に身を任せしばらく床に座り込んだ。
少し時間が経ち、気持ちが落ち着いてきた。
時刻は現在9時51分とまだ起きてから2時間弱しか経っていないが精神的疲労は既に一日の許容量を大きく超えている。
だが1日が終わるまでまだ半日近くあるというのだから本当に気が滅入ってしまいそうだ。
─────移動しよう。
このままずっと床に座り込んでいるわけにもいかない。座るのならばリビングのソファーの方が断然いいだろう。
ふらふらと立ち上がりソファーへと向かう。同じ部屋の為、数歩歩くだけで前まで来ることができた。
座ることなくそのまま前に進み、ソファーに倒れこむ。
─────疲れた...このまま昼寝でもしようか。
この先の予定は何もない。それに今はもう何もしたくない。
ならば目的もやる気もなく彷徨うよりも昼寝でもして少しでも疲れをとった方が有意義というものだ。
クッションを枕に仰向けの姿勢で寝転がり目を閉じる。
精神的疲労のせいかはたまた慣れない身体に予想以上に疲れていたのか、すぐに眠気が訪れ意識が朦朧としてきた。
眠りに身を任せ意識を手放そうとする。
<どこかの部屋の扉が開く音がする。>
眠りを妨げられたことを不快に思いながら僅かに目を開ける。
耳を澄ませることで音の発生源を探ろうとする。場所はすぐに特定することが出来た。
─────上の階か。
音は3階から聞こえてきた。音を出しているのは誰なのだろうか。
お母さんかと一瞬考えるが、お母さんは先ほど下の階に用事を済ませに行ってからまだ戻ってきていない。
ならば...
─────お兄ちゃんか。
十中八九お兄ちゃんだろう。
15年前であれば候補は元々3人しかいない。お父さんとお母さんとお兄ちゃんの3人だ。
そしてお母さんは先述の理由で除外だ。そうなるとお父さんとお兄ちゃんのどちらかということになるが今日は土曜日、お父さんは仕事中だろう。
よってこの音の正体はお兄ちゃんということになる。とても簡単な問題だ。
そんなことを考えているうちに音はすぐ近くの階段にまで近づいていた。
ゆっくりと体を起こしお兄ちゃんと思われる人物を待つ。数秒後、音の正体はその姿を現した。
「おはよーお兄ちゃん。」
「うん。おはよう。」
現れたのは今の自分よりも少し身長の高い少年だった。
記憶よりもかなり若い少年と朝の挨拶を交わす。
─────それはそうか。
予想通り音の正体はお兄ちゃんだった。最後に見た記憶では歴とした大人だったが15年前なので少年の姿なのは当たり前だろう。自分とお兄ちゃんは2歳差であるため、今のお兄ちゃんは6歳だろうか。
「お母さんは?」
「今1階にいるはずだよ。」
「そっか。ありがとう。」
お母さんの居場所を聞かれたので素直に答える。お兄ちゃんはお母さんを探しに行くのか下の階へと降りて行った。
気になっていたことが解決し、また1人になったため仰向けの姿勢へと戻る。
これでもう眠りを妨げるものはないだろう。ふぁーと大きなあくびを1つする。
目を閉じて少し過ぎるとまた心地よい眠気が襲ってきた。
意識が朦朧とする。今度は誰にも邪魔されることなく意識を手放した。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
昔々あるところに1人の少年がいました。
少年は他人よりも少し臆病で泣き虫ではあったけれど、自分の将来に夢を見て、努力をしながら日常を過ごす何処にでもいるような子供でした。
少年は一緒に暮らす家族のことが大好きでした。お父さんもお母さんもお兄ちゃんも全員のことが大好きでした。
少年の家族もまた少年のことを大切に思っていたのでしょう。少年に何かあれば心配し、時に優しく、時に厳しく教育しました。
少年は家族と共に暮らす日常が大好きでした。
お父さんと海で釣りをしたこと。お母さんと買い物に出かけたこと。お兄ちゃんとゲームで遊んだこと。
お父さんに怒られたこと。お母さんに叱られたこと。お兄ちゃんと喧嘩したこと。
そのどれもが少年にとっては大事な日常でした。
少年はそんな日常がいつまでも続くことを願っていました。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
目が覚める。
随分と懐かしい夢を見たような気がする。
夢の内容は全く覚えていない。
だが呼吸は落ち着いていて、それ程汗をかいていない事から少なくとも悪夢ではなかったのだろう。
身体をゆっくりと起こしてから自分の身体に掛けられている
─────毛布...
お母さんが掛けてくれたのだろうか。
季節が春へと変わる4月とは言え、まだまだ肌寒く感じる日は多い。
その為こういう心遣いは素直に嬉しかった。
大きく伸びをしてからソファーから降りて立ち上がる。自分はどのくらい眠っていたのだろうか。
「おはよう。と言ってももう昼だけどね。」
食卓の方からお母さんの声が聞こえてくる。
声の方を向いてみるとそこには食事をしているお母さんとお兄ちゃんの姿があった。
時計を見てみれば針は12時21分を指している。どうやら自分は2時間以上眠ってしまったようだ。
「昼食できてるけどお腹は空いてる?もし空いてなかったら後で食べても良いのよ。」
「大丈夫。お腹空いてるから今食べるよ。」
朝食を食べてから半分以上の時間を眠っていたが、そもそも朝食に食べたのは食パンと牛乳だけだ。
既に昼食を食べられるぐらいにまでお腹は空いている。
「昼食何?」
「今日はうどんよ。」
「うどんかー。」
昼食の内容を聞きながら食卓の席に着く。
正面の席にお兄ちゃんが自分から見て右の席に母親が座っている。
席に着いてから少し経つとお母さんが丼に入ったうどんを持ってきてくれた。
「いただきます。」
男の時よりも一回りほど小さな手で箸を持とうとする。
─────持ち難い...
物を持つ程度ならば何の問題もなかったが、箸を持つとなれば話は別のようだ。
ただでさえ慣れていない子供の身体に持ち難い箸が合わさればここまで難しいのか。
何とか箸を持ち、手を震わせながらうどんを掴む。
そしてゆっくりとうどんを持ち上げ口元まで持ってくるとチュルチュルと啜り始める。
─────おいしい。
うどんは手軽に作れて美味しいから好きだ。
持ち上げていた麺をすべて啜り終えるともう1度うどんを持ち上げ啜る。
同じ動作を繰り返していく内に次第にコツを掴んでいき、うどんを掴むことが容易になっていった。
「ねぇ美空。」
「チュルッ...うん?」
会話もなく食事をすることに集中していると先に食べ終わったお母さんから話しかけられた。
啜っている最中のうどんを噛んで切り、口内のものを飲み込んでから返事をする。
「どうしたの?」
「もし美空が良かったらなんだけど、1時半くらいからお出かけしない?」
「お出かけ?」
「そうよ。もちろん美空ができる限り日の光に当たらないよう対策はするから。今日は調子も良さそうだしどうかしら?」
「それなら別に良いよ。」
「ありがとう。良かったわ。」
一体どんな用事かと思い、聞いてみればただの外出の誘いだった。
アルビノである自分が日中に外に出ることは良くないのかもしれない。
だが今の自分よりも美空のことを知っているお母さんが対策をすると言うのなら多少は大丈夫だろう。
何より、ある程度今の『私』について知ることができた自分は手持無沙汰により暇だった。
お母さんからの誘いは、どうやって暇を潰そうかと考えていた最中の自分にはとても嬉しい誘いだ。行かないわけがないだろう。
「お兄ちゃんはどうするの?」
「祐樹?祐樹も一緒にお出かけする?」
「俺はいいかなー。2人で行ってきなよ。」
「そう。なら2人で行きましょうか。」
「うん。わかった。」
どうやらお兄ちゃんは行かないらしい。
因みに祐樹というのはお兄ちゃんのことだ。『
ついでに言えばお母さんの名前は『
「ごちそうさまでした。」
話をする傍ら、食事も続けていたが無事にうどんを完食することができた。
時計を見れば時刻は12時41分と1時半まではまだ時間があるようだ。
食後は正直あまり動きたくないので本を読んだり、TVを見ながら出発の時刻までのんびりと過ごすことにしよう。
─────その前にトイレ行きたい...///
少女としての2回目のトイレは、最初よりは多少はマシと言っても直ぐに慣れる訳もなく、恥ずかしさで狂いそうだった。
時刻は1時15分。
2回目の恥辱を無事?に終え、そこからは予定通りTVを見ながらのんびりと過ごしていた。
「美空ー。」
「何?」
「はいこれ。」
「何これ?」
お母さんから話しかけられ返事をすると、
広げてみるとどうやら1つの服のようだ。
「...ワンピース?」
「そのままの格好で出かけるわけにもいかないでしょ?だからそれに着替えなさい。」
「まぁ...確かに。」
一理ある。今の自分の服装は完全に家にいる時用の服装だ。
このままの服装で買い物に出かけたら悪い意味で目立ってしまうだろう。
それに折角優れた容姿をしているのだから自分に似合う可愛い服装をしてみたい気持ちもある。
だがそれでも...
─────ワンピース...ワンピースなぁ...恥ずかしい。
精神が男である自分にとってはまだ避けていたいものの1つだ。
自分の予定ではこの身体に慣れてから段々と女性の服装を慣らしていく予定だった。
しかしまさか初日にして着なくてはならない事態になるとは思わなかった。
心では着ようと思っていても、身体が思い通りに動いてくれない。
もちろんお母さんに言えば着る服を変えてくれるかもしれないが...
─────あぁもう!覚悟を決めろ『俺』!(精神は)男だろうが!!
女性らしい服装が何だ。何が恥ずかしいだ。
部屋から出る前に少女らしくすると決めたばかりじゃないか。男に二言はない。
どうせ夜にはお風呂に入って、嫌というほど自分の身体を見ないといけなくなるんだ。
今更自分の服装くらいで恥ずかしがっていたらずっと前に進めないだろう。
─────ゴクリ...いくぞ...
1度大きくつばを飲み込み、着ているパーカーとTシャツを手早く脱いでいく。
脱ぎ終わった後はすぐに渡された長袖の白いワンピースへと手を掛ける。
ワンピースを自分の前に持っていき1度大きく深呼吸をした。
そして服を脱いだ時とは反対にゆっくりとしたスピードでワンピースを着ていく。
じっくりと時間をかけてワンピースを着終えると最後に履いていたスウェットパンツを脱いでおしまいだ。
着替えが終わり立ち上がる。
─────め、滅茶苦茶スースーする...///
女性の服装をしている恥ずかしさと下半身を襲う寒さに頭から湯気が出そうなほど顔が熱くなっていく。
覚悟はしていたとは言え、実際に着てみると予想以上に恥ずかしい。
何か別のことを考え続けていないと脳が茹で上がってしまいそうだ。
─────女性は凄いなぁ...
街中で見かけるワンピース姿の女性達は全員この感覚に耐えているのかと考え感心する。
自分には好き好んでこんな服を着ることは絶対できない。
「はいこれ。」
必死に未知の感覚に慣れようとしているとお母さんからまた別の何かを渡される。
少し短めの灰色のズボンのようだが、これは一体なんだろうか。
「...これは何?」
「レギンス。ワンピースの下に履くものよ。」
「あ。そうなんだ...」
渡された灰色のレギンスをワンピースの下に履く。
下半身を襲っていた感覚が無くなったことで急速に頭が冷えていった。冷静に考えてみれば下に履くものが無い筈がない。
平常時であればすぐに気づくことができただろう。だがあの沸騰した頭ではそこまで頭が回らなかった。取り乱してしまった自分の落ち度だ。
でも1つだけ言わせてほしい。
─────もっと早く渡せえええええぇぇぇぇぇ!!!!!
そういうものがあるんだったら最初から渡してよ...
心の底からそう思った。
「ど、どうかな?似合う?」
あのくだりから数分経ち、ようやく気慣れない服の感覚にも慣れてきた。
未だに恥ずかしさは残っているが、ある程度は違和感なく振舞えるだろう。
「えぇ。似合ってるわよ。」
「そ、そうかな。なら良いんだけど。」
「ほら自分で見てみなさい。可愛いでしょう?」
お母さんが朝にも使った姿鏡を自分の前に持ってくる。
言われた通りに鏡を見てみれば、今の『私』の姿が写っていた。
─────これが私か...
白。その一言に尽きるだろう。
頭から足先に至るまで全身の殆どが白に染まっている。
はっきりとした色を持っているのは空色の眼と薄い赤色をした唇、それと胸元に付いている青色のリボンの装飾くらいだ。
そして全身を覆う白がそんな数少ない色をより一層引き立てている。
ただでさえ際立っている容姿だったが、最早この世のものとは思えないような雰囲気を感じさせる。
しかし不思議と違和感は感じない。
呆けた表情で鏡を見つめる自分の姿を見て、表情を変えてみようと思い立つ。
どういう表情をしようか迷ったが、無難に鏡の自分に向かって微笑みかけてみることにした。
─────ぎこちない...
随分と不自然な笑顔だ。容姿が優れているからこそ余計に表情の不自然さが目立ってしまっている。
この不自然さが作り笑いだからなのか、どの笑顔もこうなってしまうのかはわからないが早急に解決すべき問題だろう。
─────日課に笑顔の練習でもしてみようか。
何事も練習だ。案外すぐに自然に笑えるようになるかもしれない。
そこまで考えたところで自分が鏡に向かって笑顔の練習をしている様を想像してしまい、思わず吹き出してしまう。
客観的に見れば滑稽以外の何物でもない。
「随分楽しそうね。」
「フフッ...そう見える?」
「ええ本当に楽しそうに見えるわ。」
鏡を見てみれば不自然さを感じさせない微笑を浮かべる自分が写っていた。
笑顔とまではいかないが口元はしっかり笑っている。
なんだ。練習なんてしなくともちゃんと自然に笑えるじゃないか。
─────今はこれでいいや。
どうせ一日一夜で解決する問題ではないのだ。少しでも自然に笑えるのなら今はそれでいいだろう。
作り笑いについてはこれから少しづつ改善していこう。突然人生が終わりでもしない限り、まだまだ時間はあるのだから。
「うん。本当に楽しい...」
─────この時間がもっと続いて欲しいな。
姿鏡から離れ、部屋の中を歩き回ってみる。
膝下まで丈のあるスカートが動きの邪魔になるのではないかと懸念していたが、ほとんど気にならない。
むしろズボンよりも動きやすく感じる。
それでも好き好んで履こうとは思えないが、時間が経てばこの思いも変わるのだろうか。
「美空ー。日焼け止め塗らないといけないからこっち来なさい。」
「わかった。今行くー。」
日焼け止めに関しては塗るだろうと予め予想はしていた。
何故ならアルビノである『私』にとって日光は害でしかないからだ。
紫外線の害から身を守る働きを持つメラニンが殆どない以上、自分は日光に短時間当たるだけでも日焼け若しくは火傷を負ってしまう。
そうならない為にも紫外線対策を自分でしっかりとしなければならない。
先ほどの場所に戻り、お母さんから日焼け止めクリームを受け取る。
そして渡された日焼け止めを腕や足、顔などの服で隠れていない部分に塗っていく。
外出するたびに塗らなければならないのは面倒だが、命に関わることの為仕方ないだろう。
─────おかしな話だ。
命を捨てた自分が命の危険を避けなければならないとは何たる皮肉だろうか。
しかし自分が捨てたかったのは以前の『俺』であって今の『私』ではないのだ。
調子の良い話と言われても仕方がないことは分かっている。
だが少なくとも今の『私』は死にたいと思っていない。全ては今後次第である。
「塗り終わったよ。」
「それじゃあそろそろ時間的にも良いし、出発しましょうか。」
「うん。」
「祐樹ー。行ってくるわね。」
「行ってきますお兄ちゃん。」
「行ってらっしゃーい。」
さぁ少女となってから初の外出の時間だ。
そこまで男っぽさを出せてないんじゃないかと不安になる。
この主人公は基本的には少女の仮面をずっと被っているので、男っぽさが表面上に出ることはあまりないです。
ですから内面で男っぽさを出そうとしているのですか上手くできているのかわからない。
次回こそ初日を終わらせたい。
次はもっと早く書けるよう頑張ります。