何度も書き直していたらいつの間にかこんなに時間が経ってしまいました。
そして結局初日は終わりませんでした。
ごめんなさい...
失踪するつもりは微塵もないので、気長に待っていただけると幸いです。
それではどうぞ。
今日はいい天気だ。空には太陽がさんさんと輝き、顔に当たる春風は気持ちがいい。
きっと何処にあるかも知らない草原で寝転がって昼寝でもしたらさぞ心地いいことだろう。
─────ま。そんなことをすればどうなってしまうのやら...
自分はもう太陽の下には出られない。今手に持っているものがいい証拠だ。
外側は白で、内側は反対に真黒な日傘。自分が外を出る際の必需品となるだろう。
それだけではない。肌は日焼け止めを塗った上で長袖を着て隠し、眼には強い光にやられないようサングラスもかけている。
何も対策しなければ一体何分耐えられるだろうか。長くとも10分、もしかすると5分も持たないかもしれない。
そのぐらい今の自分が外に出るということは危険なことなのだ。先述の行動は自殺行為と言ってもいい。
─────どうであれ、俺に文句を言う資格なんてないのだけれど。
今の自分の状況は本来であれば有り得ないことだろう。死んだ人間が過去に戻るなど異常だ。
自分が完全に死ねなかったのには、何か理由があるのだろうか。しかし真相を知るすべはない。
ならば、自分にできることはただ次の生に感謝し、精一杯生きることだけだ。
─────それに折角のお出かけなのだから楽しまなければ損だ。
お母さんとのお出かけなんて何時ぶりのことだろうか。
高校に入るまでは日曜日にはよく一緒に買い物に出掛けていたが、高校に入ってからは休日は昼まで寝てばかりで一緒に出かけることは殆どなかった。
朝早くに起きて高校へ向かう生活に疲れていたので仕方がないことかもしれない。けれど少し思うところはあった。
だからこそ嬉しい。またこうしてお母さんと一緒に出掛けられることが何よりも嬉しい。
歌でも1つ歌いたいくらいには今の自分は機嫌が良かった。
「お出かけってどこに行くの?」
「お出かけと言ってもちょっとした散歩みたいなものなんだけどね。取り敢えず向こうの百貨店まで行こうと思うわ。」
「そうなんだ。」
「10分くらい歩かないといけないから辛くなったら何時でも言ってね。」
「うん。わかった!」
10分程度であれば何の問題もない。景色を見ながら歩いていれば直ぐに着くだろう。
幸いなことに今は春だ。街中の至る所に桜が咲いている為、見るものには困らない。
それに街並みもまた、15年前ということもあり最後に見た様子とはかなり違っている。
─────懐かしい...
目に映る全てのものが懐かしい。
改めて戻ってしまった年月の長さを実感することが出来た。
15年という年月は同じ場所をここまで違うものに変えてしまうらしい。
もちろん15年後と何も変わっていない部分も少しはあるが、それでもその周囲のものは大なり小なり変わっていた。
あまりの変わりように何とも言えないもやもやしたものが浮かび上がってくる。
─────15...いや、7年も何やってたんだか...
街が段々と変わりゆく中で自分は何をしていたのだろう。
8年後...小学校を卒業するまでは本当に楽しかった。純粋に生というものを謳歌していたように感じる。
だが中学校に入ってからは一転して最早地獄だ。ひたすら失敗した。恥を重ねた。後悔をし続けた。
次第に自分で自分のことがどうしようもなく嫌いになっていった。自分に期待すらしなくなってしまった。
街が段々と改善していく中で自分は改悪していったのだから笑いものだろう。
そしてその結果があの結末だ。
─────駄目だな...どうも悪いことばかり考えてしまう。
どんなことでも悪いように考えてしまうのは自分の悪い癖だ。
この悪癖には何度も何度も苦しめられてきた。
できることならこんな悪癖さっさと直してしまいたい。しかし癖というものはそう簡単に直せるものではないのだ。
直すことが出来ない以上、自分にできることは精々悪いように考えてしまわないよう気を付けることくらいである。
─────折角良い気分だったのに台無しだ...
心の中でぶつくさと文句を言いながらお母さんから離れないよう歩いていく。
願わくばデパートに着くまでにあの良い気分に戻りたいものである。
「ねぇ美空。」
先程の嫌な気分が落ち着いてきた頃、近くを流れる川や咲いている桜を眺めながら歩いていると突然お母さんに話しかけられた。
「うん?何?」
「美空はさ、こうやって外に出ることは好き?」
「うん好きだよ。」
自分はインドア派の人間ではあるが、外に出ることが嫌いな訳ではない。
適度な運動はやっていて楽しいし、嫌なことも忘れられる。
休日に何の目的もなく商業地区を放浪するのも良い。
目に付いた店に入店して、その場の気分で物を買うことだって大好きだ。
「そう...」
お母さんが気まずそうな顔をする。
気軽に外に出れない身体で生んでしまったことを申し訳なく思っているのだろうか。
どんな身体で生まれるかは運でしかないのだから、お母さんは何も悪くないというのに。
「その─────」
「でも私は家で過ごすことの方が好きだよ。」
「ッ!?」
これは本心からの言葉である。
先ほど言った通り、外出することは気分転換にもなるから好きだ。
だが、心が落ち着く場所は家以外にはない。
外にいるとどうしても人目が気になってしまい、落ち着かないのだ。
現に今も、人とすれ違うたびに好奇の目で見られてしまうのでそわそわしている。
「どうして?」
「何も気にしなくていいからかな。」
人目を気にせず、のんびりと過ごすことができる。
本当の自分を曝け出すことだってできるのだ。
眠っても良い。だらけたって良い。泣いたって良い。
何も気にすることなく自分の好きなことができるから家で過ごすことが好きだ。
「そう。ありがとうね。」
「ん。」
─────解決したなら良かった。
お母さんが自分に向けて感謝の言葉を言ってくる。
そこに先ほどの気まずそうな顔はなかった。
良いことだ。やはり母親には笑っていて欲しい。
自分はもうお母さんのあんな姿を2度と見たくないのだ。
歩き始めてから少し経ち、目的地である百貨店が見えてきた。
百貨店の周囲には休日ということもあり、大勢の人で賑わっている。
─────足が痛い。
たかが10分程度と侮っていた。両足が痛みを訴えかけてきている。
一歩も歩けないという程ではないが、なるべく早くどこかに座って足を休ませたいものだ。
─────これは流石に無視できない問題だな。
恐らくこの身体はかなりの運動不足なのだろう。
でなければ15分程度の道でここまで足を痛めたりはしないはずだ。
家で暮らす分には何の問題もないのかもしれないが今回の様に外出する必要があるとなると話は別だ。
15分程歩いただけでこの痛みなのだから、これ以上の外出となると考えたくもない。
今後の生活の為にも運動不足は早急に解決しなければならないだろう。
─────アルビノである以上、頻繁に外に出ることは厳禁だしな...
しばらくは室内でできる運動を考えることが課題になりそうである。
「美空。疲れたでしょう?あそこで休憩にしましょうか。」
お母さんが指差した先を見つめる。
見えたものは小洒落た一軒の喫茶店。
確か有名なコーヒーチェーン店ではなかっただろうか。
何はともあれ休めるのならば丁度良い。
お言葉に甘えて休ませてもらおう。
「うん。休憩にする。」
お母さんに返事をして、喫茶店を目指して歩いていく。
─────迷子にならないように気を付けないと。
喫茶店へと行くためには百貨店の前の道を通っていくのが一番近い。
しかし、百貨店の周囲には先ほども言った通り、大勢の人が歩いている。
ただでさえ小さい今の身体にこの人の量だ。気を抜けばすぐに迷子になってしまうだろう。
お母さんと逸れてしまわないように気を付けなければならない。
逸れないようにお母さんの直ぐ傍を歩きながら周りの開いている店へ目を向ける。
そしてあることに気付いた。
─────見られてる...
それも1人2人の少人数ではない。目に映る殆どの人が自分のことを見ていた。
中には指を差してくる人や、スマホを此方へ向けて写真を撮ろうとしている人までいる。
やめてほしい。盗撮は立派な犯罪であることを知らないのだろうか。
当人からすれば軽い気持ちによる行為なのかもしれないが、こっちからすればたまったものではない。
もしその写真をネットに上げられでもしたら自分はどうすればいい。
見られている原因は既に分かっている。十中八九この全身真っ白な異様な見た目が原因なのだろう。
しかし原因が分かったところで解決のしようがないのでどうすることもできない。
─────見ないでよ...
向けられる好奇の目が気持ち悪い。
一刻も早くこの場所を通り過ぎたいという思いが自然と足を速くさせる。
だが、どれだけ先に進んでも新しい視線に襲われてしまうので意味がない。
「ヒッ!?」
突然誰かに腕を掴まれ、悲鳴が漏れる。
「なんだ、お母さんか...」
驚いて後ろを振り向けば、自分の腕を掴んでいるのはお母さんだった。
それにしても何故、私の腕を掴んでいるのだろうか。
「どうかしたの?」
平静を装い、お母さんに尋ねる。
「どうしたのってこっちが聞きたいわ。いきなり走り出して、逸れたらどうするの?」
「あの..その...ごめんなさい。」
「...何かあったの?」
何かを察したらしいお母さんが逆に尋ねてきた。
「周囲の視線が怖い。」と素直に言うべきなのだろうか。いや、言わない方が良いだろう。
お母さんにいらない迷惑を掛けたくない。この程度、時間が経てば直ぐに慣れる。
「...別に何もないよ。」
「ちゃんと顔を見て言いなさい。」
「何もなかったよ。」
「本当に?」
「うん。だから早く行こう!」
「そう...」
今できる精一杯の笑顔をしながらお母さんの質問に答えた。
これで良いのだ。いつもと何も変わらない。
お母さんに迷惑を掛けるくらいなら1人で苦しむ方がマシだ。
「美空。」
「何?」
「手、出しなさい。」
「...はい?」
いきなりどうしたのだろうか。
言葉の意図がわからない。
私の手で一体何をする気なのだろう。
「何で?」
「いいから!」
理由を聞こうとするも、何も答えてはくれない。
仕方がないので言われた通りに手を差し出す、するとお母さんは差し出された手を直ぐに握った。
─────何なんだ?
ただお母さんと手を繋いでいるだけである。
この行為にどんな意味があるのか全く分からない。
「落ち着いた?」
「ッ!?」
お母さんの言葉に驚く。
まさか気付かれているとは思わなかった。
一体何時から気付いていたのだろう。
「何で...」
「何だか辛そうに見えたからね。」
「...そうかな?別に普通だと思うけど...」
「美空がどう隠そうとしてもお母さんにはわかるの。」
「そっか。」
自分の行為は全て無駄だったらしい。
得意げな表情で此方を見つめるお母さんの顔を見ながらそう思った。
不思議と嫌な気はしない。むしろ嬉しく感じてしまっている自分がいる。
「それじゃあ、行きましょうか。」
「うん!」
─────安心する...
手を通して伝わってくるお母さんの温もりが心地いい。
視線ももう気にならなかった。
「美味しい?」
「うん。美味しいよ。」
「そう。なら良かった。」
あの後は特に問題もなく店内へと入った。
店内は間接照明にゆったりしたBGMが流れ、落ち着いた雰囲気を感じさせる。
現在はテーブル席でお母さんと注文したものを食べている最中だ。
お母さんがショートケーキとカプチーノを自分はサンドイッチとオレンジジュースを注文した。
注文の際に素でブラックコーヒーを頼んでしまいそうになるというハプニングはあったが、未遂で済んだので良しとしよう。
「この後って何処かに行くの?」
「この後?うーん、特に行きたいところもないから帰ろうと思ってるけど」
何か目的があって此処まで来たのかと思ったがどうやら違うようだ。
本当にただの散歩だったらしい。いや私の為のリハビリに近いのかもしれない。
この身体の運動不足は元々備わっているものだろう。
ならばそれを解消するために日常的にこういったことをしていてもおかしくない。
「美空は何処か行きたいところはある?」
「私?私はなー...」
行きたいところと言われても、思い浮かぶところはない。
それにもし思い浮かんだとしてもそこが15年前に存在するのかは行くまで分からないのだ。
「特に思い浮かばないかなー。」
「そう。なら食べ終わったら帰りましょうか。」
「それでいいよ。」
話もほどほどに自分の前にある食事を食べることに集中する。
今はこの時間を楽しむことにしよう。
「今日は楽しかった?」
現在時刻は3時前、帰り道の途中だ。
結局1時間以上あの店で過ごすことになってしまった。
途中で追加注文したことが原因だろうか。
「うん。本当に楽しかった。」
楽しかった。心の底からそう思う。
此処まで楽しい時間を過ごすことができたのは何年ぶりだろう。
「良かったわ。朝からずっと浮かない顔をしてたから心配だったのよ」
─────!?
思わず声が出そうになる。
本当に何から何までお見通しだったらしい。
それとも自分が分かりやすいのだろうか。
「...凄いね。」
「お母さんだもの。」
「そう...」
理由になっていないような気もするが何故か納得できてしまった。
自分もお母さんのような人になれたら良いのに。
「ねぇ美空?」
「どうしたの。」
「貴方がどうしてそんなに辛そうなのかまでは、私には分からないけれど。」
「...」
「辛かったら何時でも相談していいからね?貴方は私の大事な娘だもの。辛そうな顔はしてほしくないわ。」
「聞かないんだ?」
「今はまだ聞いて欲しくなさそうだからね。美空が言いたくなるまで待つことにするわ。」
「ごm...ううん、ありがとう。何時か必ず言うね。」
「約束よ?」
「うん。約束。」
どうして自分が此処にいるのか。何故少女になっているのか。男の自分はどうなってしまったのか。
この身体になってから分からない事ばかり増えてしまっている。
それだけではない。前世のことも未だに自分を苦しめ続けているのだ。
本当は今すぐにでも言って楽になりたい。
─────でもそれは駄目だ。
どれも1人で解決すべきことで誰かに助けを求めるべきではない。
そう思ってしまうのだ。だからこの事をお母さんに言うのはもっと先のことになるだろう。
でも何時か必ず言おう。問題がすべて解決した時、笑ってお母さんに話そう。
「ねぇお母さん。」
「うん?」
「手、繋いでほしいな。」
「フフッ...いいわよ。」
「ありがとう。」
この日常がずっと続けばいいのに。
この主人公少しでもメンタル回復させないとすぐに死んでしまいそうで怖い。
次回こそは初日を終わらせます。
最近配信ものが結構人気ですけど自分もああいうの書いてみたいですね。
書かないと思いますけど。