そして遅れて申し訳ございません!!!
1ヶ月に1話は必ず投稿しようと思っていたのに物凄い遅れました。
次からはこうならないようにします。
後、今回は話の内容が結構重いです。
ではどうぞ。
「あれ...?」
厚手のカーテンによって光が遮られた部屋の中、少女の間抜けな声が響く。
TS逆行生活2日目。時間はおそらくお昼ぐらい。
声の主である白い少女は寝ぼけ眼を擦りながら身体に違和感を覚えていた。
「う~ん?」
一見すると何処にもおかしいところはなかった。
何度確認してみても違和感の正体が分からず、思わず首を傾げてしまう。
しかし、気のせいかと思い身体を動かしたところでその正体に気付いた。
「......嘘」
気付いてしまった事実に唖然とする。
そして時間をかけてようやく絞り出した声は震えていた。
「なん..で..嘘...えっ夢?....」
この光景が夢なのではないかと思ってしまう。
だが、試しに頬を抓ってみてもただ痛いだけで夢から覚めるなんてことはない。
それに夢にしてはあまりにも意識がはっきりとし過ぎている。
だから間違いなくこれは現実だ。
それはわかっている。わかってはいるが信じられない。
「なんで脚が動かないの...?」
自分の脚が動かないなんて。
思えば、ヒントのようなものはそこら中にあったのだ。
昨日の朝のお母さんの発言、何故か手すりのある階段、異常なまでに運動不足で低体力な身体。
どれもアルビノだと考えれば納得できるものばかりで、自分が女性になったことと比べれば些細な違いだと思っていたが、こうなるのならばもっと気にしておくべきだった。
「何でこうも上手くいかないかなー」
分からないことだらけの初日が終わり、今日から『私』の輝かしい人生が始まる。
なんて考えていたのに実際はこれだ。
流石に文句の1つでも言いたくなってくる。
「でもまだマシな方か...」
脚が動かないことだけならまだ遣り様はある。
これがもし脚だけでなく腕も動かなかったのなら完全に打つ手がなかった。
たとえそうだとしても、理想を目指すという目的は諦めないのだろうが。
「それに一生このままってことはないだろうし...」
よくよく考えてみれば昨日はちゃんと歩けていたのだから、これから先ずっと脚が動かないままなんてことはないだろう。
流石に完全に動かせるようになるには時間がかかるかもしれないだろうが、明日には多少は動かせるようになっていてもおかしくない。
「そろそろ行こう。」
これ以上考えたところで脚は動かないのだから、後はなるようになれというやつだ。
起きた時から段々と強くなってきている空腹感の為にも一刻も早く朝食を食べることにしよう。
はやる気持ちを抑えながらリビングに向かった。
「わっ!?落ち...キャアッ!!?」
ドサッ!!!
「──────────ッ!?!?」
最低限の練習ぐらいはベッドの上でしておくべきだったかもしれない。
かなりの時間と体力をかけて、ようやくリビングに辿り着いた。
少し前から身体はボロボロで、お腹はペコペコだ。
「おはよー。」
「おはよう美空。」
「おぉ、おはよう美空」
リビングにお父さんがいたことに舌打ちを吐きそうになる。
基本的に休日のお父さんは自分の部屋にいることが多いので、今日もそうだと思っていたのだが、何故か今日はリビングにいるらしい。
いなくていいのに。
「そういえばさっき上から凄い音が聞こえたけど、何かあったのか?」
「...えっ?.....あーちょっとね...ベッドから落ちただけ」
「大丈夫!?怪我してない?」
「あ、うん全然大丈夫。」
大丈夫じゃなかったら此処まで来れていない。
といっても足に関しては別件で負傷している為、厳密には大丈夫とは言い難いのだが。
まあ自分が大丈夫だと思えば多分大丈夫だろう。うん。
「そう...なら良かったわ。お腹空いたでしょう?お昼ご飯にしましょう。」
「あーうん...その前に少し良い?」
「?...どうかしたの?」
何と言えばいいか迷ってしまい、言葉に詰まる。
無駄な不安を抱かせない為にも、あまり大事にはしたくない。
だからといって、事が事だけにぼかして言って隠し通そうとしても直ぐにばれてしまいそうだ。
どうするか迷ったが、しばらく悩んだ末に正直に言うことにした。
「実は起きた時から殆ど足が動かなくて...」
「「ッ!?本当(か)!?」」
「...うん。本当だよ。」
目に見えて動揺しているのが分かる。
反応から考えるに流石に脚が動かないというのは今まで1度もないか、滅多にないことのようだ。
まあこんな異常事態が日常茶判事になられても困る。
「立つことはできるの?」
「無理かな。」
「無理して1人でリビングに来ようとせず、私達を呼んだら良かったのに。」
「別に動けないってわけじゃないから大丈夫だよ。」
「美空にとって大丈夫でも私たちは心配なの。」
「...ごめんなさい。」
良かれと思ってやったことだが逆に迷惑を掛けてしまったようだ。
とは言え、誰かの手を借りるのはやはり性に合わない。
今後も余程のことがない限り、誰かの手を借りることはなさそうだ。
「分かればいいの。それじゃあお昼ご飯にしましょう。」
「あ、その前にトイレ行ってくるね。」
「分かったわ。連れて行ってあげる。」
「え゛。」
冗談じゃない。
何が悲しくて、精神年齢ほぼ大人にもなって親にトイレを連れて行ってもらわなければならんのだ。
他のことなら多少は妥協しようと思えるが、それだけは嫌だ。
何とかして1人で行けるよう説得しないと。
「1人でも大丈夫だよ。さっきだって1人で階段下りられたし移動だっt」
「美空。」
「はい。」
「心配なの。」
「はい...」
駄目でした。(この後物凄い介護された。)
「あれ?お母さん何処か出掛けるの?」
「ええ。買い物に行ってくるからお留守番宜しくね。」
「そうなんだ。分かった。」
昼食が終わって身体を動かそうと努力しているとお母さんが何処かに出掛けようとしていた。
どうやら買い物に出掛けるから留守番をして欲しいらしい。
それくらいならお安い御用だ。
自分にとっても自分だけの時間ができる上に、過剰な介護から解放されるので嬉しさしかない。
「りょーかい。全然良いよ。」
「そう。お父さんも家にいるから、困ったことがあったらお父さんに言ってね。」
─────いなくていい!!
「お、お兄ちゃんは...?」
「祐樹は一緒に買い物に行くわよ。」
「あ、そうなんだ...」
選りにも選って、お父さんと2人きりになるとは。
最悪だ。ただでさえ、お父さんと同じ部屋にいるだけでも辛いのに2人きりでおそらく数時間を過ごさないといけないなんて最悪としか言いようがない。
先程のように1人でも大丈夫だと言いたいところだが、言ったところでどうせ突っぱねられそうだ。
─────何でお父さんと。
しかし、どうせ2人きりになるのならお兄ちゃんとが良かった。
そうだ、それが良い。一応今は夫婦なのだからお父さんとお母さん2人で買い物に出かけて、自分とお兄ちゃんがお留守番すれば全て解k...
─────いや、駄目だ!
それは駄目だ。というかそっちの方が駄目だ。
お父さんとお母さんが2人きりで出かける姿なんて想像しただけで吐きそうだ。
そんな光景を見てしまったら今の自分では耐えられる気がしない。
一瞬で気絶する自信がある。
─────自分も付いて行く?
無理そうだ。
付いて行っても何の役にも立てない上に、何より付いて行く手段がない。
脚が不自由な人の移動手段としてパッと思いつくものと言えば、車椅子だがこの家に車椅子はおそらくない。
となれば後は背負ってもらうぐらいしか自分は思いつかないのだが、そっちは最早論外だ。
頼めばやってくれそうではあるが、何の役にも立たないどころか逆に迷惑を掛けてしまっている。
それならしない方が良い。
─────詰みか...
諦めた方が良さそうだ。
大人しくお父さんと2人きりになるのを我慢するしかない。
「そろそろ行ってくるわね。」
「ああ、うん。行ってらっしゃい...」
「祐樹ー!そろそろ行くわよー。」
「はーい。」
「お兄ちゃんも行ってらっしゃい...」
─────早くお母さん達帰ってこないかな...
留守番が始まって約1時間が経とうとしているが、気まずい静寂がずっと続いている。
正直に言って早く終わってほしい。
「美空。」
「ん?何?」
「脚大丈夫か?」
「...うん。別に大丈夫だよ。」
時折こうして話しかけてくれることもあるが、それも2言3言で終わってしまう為、話が全く続かない。
それに、相も変わらず身体の内側からはドロドロしたものが溢れてくる。
ある程度は覚悟していたとは言え、これは予想以上だ。
─────やばい吐きそう...
「美空?」
「...どうしたの?」
「本当に大丈夫か?もしかして何処か痛むのか?」
「大丈夫だから気にしないで。」
「でも辛そうだz─────」
「良いから!!!」
「!?」
「お願いだから放っておいて...」
「...分かった。」
「...ごめんなさい」
心配なんてしなくていい。変に期待なんてさせないでほしい。
今後の為にも、お互いの為にも自分には構わないで欲しい。それが最善策なのだから。
お願いだから、自分に無駄な希望を持たせるような愚かなことはしないで欲しい。
「何処に行くんだ?」
「下の階。」
「連れていこうか?」
「いい。1人でも大丈夫。」
別に何か用がある訳ではないが、とにかく1人になりたかった。
1階に下りたところで頭が冷え、先程までの自分の行動に呆れ果てた。
自分がやっていることはただの八つ当たりでしかないことは分かっている。
同じ姿で、同じ声で、同じ名前で、同じ命の別人。
今後の為を思うなら先程の様に跳ね除けるのではなく、父と娘として助けあった方が良いのだろう。
「はぁ...」
だが、自分にはそれができない。それだけはどうしてもできない。
あの姿を見ると必ず昔の記憶が蘇ってしまうのだ。
あの忌々しい記憶が。当事者を除けば自分しか知らない、何年経っても忘れられないあの記憶が。
そして最悪なことに自分はまた同じ光景を見なければならない。
─────嫌だな...
あの光景を2度も見たくない。
1度見ただけでトラウマなのに2度も見れば今度こそ心が壊れるかもしれない。
だが、両親が離婚するのならあの出来事は必ず見ることになるだろう。
しかし、離婚を阻止するのかと聞かれれば、答えは『いいえ』だ。
確かに自分が何かすれば多少は引き延ばせるかもしれないが、どれだけ頑張ろうとそれが精々だ。
─────やるだけ無駄だし、やる気もない。
「美空。」
「ん。」
階段から声が聞こえてきた。
見てみればお父さんが階段を下りてきている。
考え込んでいたせいで全く気付かなかった。
「どうしたの?」
「どうしたじゃないよ。そんなところにいたら風邪引くぞ。上に戻ろう?」
「そうだね...」
「何か悩み事でもあるのか?お父さんで良ければ聞くぞ?」
気付いていたらしい。そもそも隠そうとすらしていないけれど。
とは言え、気付かれていようと何も言う気はない。
それに自分が抱える悩みごとの原因の大半はお父さんだ。
解決するはずがない。
「別に悩みごとなんてないよ。」
「そうか、ならいいんだが。もし悩み事があったら相談してくれよ?美空は大事な俺の娘なんだから。」
─────娘...娘ねぇ...
「もう、そろそろ上に上がろうか。」
「もう少しだけ1人にさせて。」
「...」
「...」
「はぁ...あと少しだけだぞ。」
「ごめんなさい。」
上の階に上がっていくお父さんの背中を見送ってからため息を吐く。
「娘...大事な娘か...」
自分はもう貴方を尊敬なんてしていない。
それどころかお父さんと呼びこそすれど、既に家族だとすら思っていない。
自分の家族は母方の人達とお兄ちゃんだけで、自分の親はお母さんだけだ。
逆行したからと言って「もしかして」と希望を抱く気はない。
どうしようが結局はまた裏切られるのだから。
「どうせまた裏切られるのなら端から期待しなければいい...」
心がズキリと痛んだような気がした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
足の不自由に関しては、最後の最後まで悩みました。
でも逆行なんてしたのだから代償の1つや2つは必要だよなと思い付けさせて頂きました。
とは言え、話の前半に少し書いたようにずっと足が動かないという訳ではありません。
普段ではせいぜい走れないくらいです。
お父さんのことに関しては書くのはかなり先のことになるでしょう。
それまでお楽しみいただけると幸いです。
因みに書く予定はありませんが、この後帰ってきたお母さんに色々お世話されて、凄い赤面します。(お風呂とか)
それでは次回はできるだけ早く投稿できるよう頑張りますので、次回もお楽しみに...