深海棲艦との戦争後の響さんのお話。
これは、あくまでも二次創作です。
BADENDものです。
戦争が苦手、happyENDが好き、
残酷な描写がダメ、鬱展開が苦手な方などは
観覧することをお控え下さい。
実在の人物、団体などとは関係ありません。
(作者の知識不足、ミスがあったら指摘して下さい)
評価、ありがとうございます!
自己犠牲が、嫌いだ。
…………私が守れたモノは確かにあった。
生前、私が守れなかった姉妹たちは守れた。
それだけで、私は満足する。
する筈、だったんだ。
まだ日の昇らない頃に家から出て、
私は港から、水平線の彼方を見つめる。
また、未練を残してしまった、
あの場所があった方角を。
「おはようなのです、響ちゃん」
「……………」
「響ちゃん?」
「………え、あ、あぁ、ごめん。おはよう、電」
背後から掛けられた声にやっと気づく。
そこには、私の妹、末っ子の電がいた。
もう身長は160を越え、
長い茶髪が風になびいている。
まだ起きたばかりなのだろう、
髪の寝癖が治っていない。
私は謝り、挨拶と微笑みを返す。
「まだ太陽も昇っていないのです。
もう少し寝てもいいんじゃ…………っ!」
「…………わざわざ言いに来てくれたのは嬉しいよ。
だけど─────ごめんね、気を使わせて」
「ごめん、はこちらの台詞なのです………」
私がつけている腕時計を見せ、
言いたいことを察してくれた妹は顔を伏せる。
全く、優しい子だ。
あの戦いが終わって、もう10年だと言うのに
あれから全く変わっていない。
「…………そうか、もう10年か。早いものだね」
「……そう、なのですか。
本当に、早い…………のです」
「長かった戦争が終わって…………司令官…………」
私は顔を伏せ、歯軋りをしてしまう。
無意識に強く握り締める掌に爪が食い込み、
血がどくどくと溢れてくる。
「あれは響ちゃんのせいじゃ──!!」
「うん。……………分かってるよ。
あれから10年。私だって、もう大人だ」
顔を上げた妹を手で静止させ、
私も顔を少し上げる。
多分、酷い顔をしているだろうから
前が見えない程度に。
分かってる、そう言ったが………
私の心の底ではまだ、
〝分かったつもり〟なのだろう。
まだ私は、あの戦いが、あの人の最後が───
ザッ
「────っ!?
ぐっ、う、うううううう………!!?」
「響ちゃん!?だ、大丈夫なのですか!?」
「あ、あ、ぁぁぁぁあぁぁ………!!!」
突如、頭にノイズが走る。
あの体でなくなったというのに、
体が燃えるように熱くなり、胃酸が逆流してくる。
『────さよならだ、響』
あの時の言葉がグチャグチャな脳内に走り、
私のあの人との過ごした記憶が、
頭の中を凄まじい速度で駆け巡る。
「があ、あぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!」
「響ちゃん!!?
と、とにかく今はお家に……!!」
吠える。
やめてくれ。やめて。やめろ。
どうか、あの時の決断を。
間に合った筈だ。助けられた筈だ。
考えなおせた筈だ。
何も間違ってはいなかった。
間違っては…………いなかった?
「あぁぁぁぁぁ!!!違うっ!!!
ダメだ!!!お願いだからぁぁっ!!!」
「響ちゃん!!しっかりするのです!!」
「嫌だ!!!嫌だ嫌だ嫌だっ!!!
待って!!!待ってぇっ!!!!」
「響ちゃん!!!」
「あ────」
脳内はグチャグチャで、何も、何も考えられない。
プツン、と何かが切れる音がして。
私の意識は、闇に落ちた。
夢を、見た。
フワフワとする感覚、足が地につかないような
不思議な浮遊感から、夢だと理解した。
唐突に、声が聞こえた。
「第六駆逐艦、響。
司令官、キミの鎮守府に着任した艦だ。
よろしく頼むよ」
「あぁ、よろしく。響」
あぁ、懐かしい。
まだ幼さの残る童顔の司令官。
男にしては長く、珍しい白髪、漆黒の瞳。
私は確かこの時、心配になったんだっけ。
『キミが司令官で大丈夫か』って。
「響、ここの鎮守府だが、実は最前線なんだ。
だから結構何もない。勿論、鎮守府もな」
「………は?」
ふふっ、そうだ。確かに、私はこんな、
すっとんきょうな声を上げたのを覚えている。
その司令官の言う通り、そこには何もなかった。
そう、文字通り。鎮守府すらも。
完全に無人のただの島だった。
だからまずは鎮守府を
建てることからスタートだった。
最前線だった為、流れ着いてくる
他の艦娘たちを助け、送られて余った資材で
修理や怪我の治療を行ったんだ。
深海棲艦はこちらを確認もしなかった。
何もなかったからこそ、私たちは無事だったんだ。
それから、少しずつ鎮守府を大きくし、
私たちは仲間を増やして、遂に出撃できた。
『よし、ハプニングもあったが、
無事で良かった。全員、帰投してくれ』
なんと初出撃は無傷で、
しかも予定になかった、はぐれ深海棲艦を
倒すことが出来たのだ。
無論、私たちは唖然。
司令官の帰投の指示など気づかぬほどに。
司令官は若いかったけど、
その指揮は目を見張るものがあった。
観察眼は隙を見逃さない。
かなり後から聞いた話だったけど、
司令官は深海棲艦が現れる前は海軍で
戦術指揮を担当していたらしかった。
司令官は敵の攻撃、防御、あらゆる行動を
短時間で把握し、制圧する。
最新の探知装置を開発し、
敵の動きを完全に読み取っていた。
私たちは指示通りに動くだけで敵を殲滅できた。
「よし、それじゃあ次は指示無しか」
鎮守府での日々に慣れてきた頃。
司令官は指示無しの出撃を出した。
勿論、私たちはそんなこと考えられなかった。
司令官の指示無しでは、と。
だが司令官は「大丈夫!」と言って
私たちを送り出した。
結果、なんと司令官の指示無しで
私たちは敵艦隊を撃破した。
またもや私たちは唖然としたな。
私たちは無意識でも司令官の
意図、指示を聞かずに連携を取ったり出来た。
司令官が言うには、〝慣れた〟らしい。
「俺の戦闘の指示に慣れた、ってこと。
人間も艦娘も同じ、慣れる生き物だからな。
こうすれば回避できる、こうすれば攻撃できる、
最善の行動が分かってきた証拠だな!」
それから、私たちはどんどん有名な艦隊になった。
何度も戦った。でも、不思議と辛くはなくて。
司令官も生活の中ではのんびりで、
私たちも気兼ねなく接することが出来た。
明石の発明で事件が起こったり、
鎮守府の皆でパーティーをしたり。
数々の死線をくぐり抜けた。
幾千の昼と夜を経た。
とても楽しい、充実した日々だった。
そんなある日のことだ。
「響、結婚しよう」
もう、司令官は私をどれだけ幸せにすれば
気が済むのだろう。
差し出された指輪に、私は涙を流して。
私とは既に仮のケッコンをしていた。
だけど、彼は、
世界にたった1つだけの指輪を、愛をくれた。
もう、本当に幸せだった。
そしてまた、幾千の昼と夜を経た。
遂に私たちは深海棲艦の根城を発見。
通信の繋がらない海辺の洞窟。
レーダー便りだった為、発見出来なかったのだ。
一週間の猶予の後、司令官は出撃を発令した。
これが最後の戦い。とても厳しい戦い。
私も、その最後の艦隊にいた。
愛する人と、「必ず帰る」という約束をして、
私は出撃した。
「……………呆気なさ過ぎる」
最奥の深海棲艦を倒した、私の感想がそれだった。
無論、苦戦した。だが、何かがおかしい。
他の艦娘たちもそれを不審に思い不安の中、
鎮守府との通信の繋がる洞窟の外に出る。
『聞こえるか!
急ぎ、応答しろ!!応答しろ、早く!!』
私は、その司令官の珍しく慌てる声に驚き、
通信機を装着する。
その内容は、最悪だった。
『くそ!!生き延びることに
執着していた奴らがまさか特攻とはな!!』
「どうしたんだ司令官!!?
そっちで一体何が起こってるんだ!!?」
『深海棲艦の本隊がこちらを襲撃した!!
急ぎ、戦闘態勢のまま帰投せよ!!!』
「「「「「「な───っ!!?」」」」」」
馬鹿な。司令官の言う通り、
深海棲艦は生き延びることに執着していた。
絶対に根城に本隊がいるのだと思っていた。
だが、まさかそれすらも…………!?
私たちは全速力で鎮守府へ帰投しようとした。
その前に、海の底から深海棲艦たちが
湧き出してくる。
待機していたのか!?
「くっ、急いで殲滅する!!」
湧き出していく深海棲艦をなぎ倒していくと
10分ほどで鎮守府が見えてくる。
「…………っ!!!」
鎮守府は、炎上していた。
思い出が、始まりの場所が。
群がる深海棲艦。
だが、違和感を感じる。
「なんだ………
私たちの艦隊の1人、天龍が気付き、叫ぶ。
そうだ、こちら側の艦娘が1人もいない。
というか、
まさか、成す術もなく………
いや、それはあり得ない。
司令官ならば必ず対策として戦闘を行う筈だ。
と、そこまで考えたその時。
『あー、あー、聞こえるか』
司令官の声が、聞こえた。
これは、鎮守府全体用の拡声器だ!!
良かった、無事だった!!
私の歓喜は、次の一言で掻き消される。
『どうやら万事休すのようだ』
「え────」
どういう、ことだ。
何があっても諦めなかった彼が………諦めた?
万事休す………とは。
私は、体の力が抜ける感覚を味わう。
『えー、これから3分後、最後の抵抗をする。
──────誰も、その場から動くなよ?』
その言葉に、世界が静止した。
凄まじい威圧感。
拡声器を通じているというのに、
ビリビリと肌が震える。
私も、味方の艦隊の艦娘たちも、深海棲艦さえも。
誰もが、凍りつく。
『あー、全艦娘は避難完了した。
避難場所は、○○鎮守府。
安心してくれ、最後の艦隊。姉妹は無事だ』
その言葉に、姉妹たちの安全は確認できる。
だが、司令官は────最後の、抵抗?
『あと2分後───
この鎮守府と島一帯を吹き飛ばす』
「「「「「「!!?」」」」」」
その言葉に、私たちは目を見開く。
言葉など、出てこない。
─────自爆。
『明石に緊急で作らせたモンだが、
一発で島が消し飛ぶヤツだ。
それを5個、この島に仕掛けた。
爆弾は連鎖し、島を吹き飛ばすだろう』
司令官は、息を荒くする。
崩れ落ちる音が、拡声器越しに聞こえた。
『最後の艦隊に命ずる。○○鎮守府へ行け』
私は、天龍に脇に抱えられる。
周りを見ると、艦隊の全員が
その鎮守府への方向へ走り出していた。
「待って────!!」
そして、司令官は、言った。
『絶対に、何があっても振り返るな!!!!』
涙を流しながら、皆は走る。
『さよならだ、響。じゃあな』
そこからは、よく覚えていない。
ただ、凄まじい爆風が私たちを吹き飛ばしたこと、
大きい轟音が聞こえたことだけを、覚えていた。
「…………ぅぁ………」
目が覚める。
夢、にして悪趣味が過ぎる。
気分は、最悪だ。
横を見ると、姉妹たちが
ベッドを囲むように眠っていた。
心配してくれていたのか。
「……………?」
ぼぅっとしていると、
ふと、私はミニテーブルの上に何かボロボロの
錆びた機械のようなものがあるのに気づく。
下には、新しそうな便箋が。
私は眠る姉妹たちを起こさぬよう、
ベッドから出る。
機械と便箋を取り、
悪い気分を払拭するために外へ。
再び水平線が見渡せる場所へとやって来る。
私はベンチに座り、便箋を開く。
「これは…………」
見覚えのある文字だ。
確か…………大淀の筆跡。
司令官の机上の資料には彼女の文字も
多かったものだから、よく覚えている。
便箋を読む。
かなり短いようだ。
───────────────────────
暁型姉妹、元第六艦隊へ
先日、あの島の付近の鎮守府の物品の捜索を
行ったところ、島の砂浜の辺りの海底から
提督のボイスレコーダーを発見しました。
レプリカを他の艦娘たちへ送りました。
あなた方、特に響様には個別のメッセージが
残っていましたので、現物を送ります。
どうか、お聞きになってあげて下さい。
我らが提督に冥福をお祈りします
大淀
───────────────────────
私は泣きそうになる目を擦り、
ボイスレコーダーを起動する。
雑音が2分ほど、続いた。
そして、声が、愛する人の懐かしい声が聞こえた。
「司令官………!」
ボイスレコーダーが、声を刻む。
『あー、ちゃんと入ってるよな?
えー、鎮守府が終わるのでこれを記録する。
海に沈みさえすればその内見つかるだろ?』
『まず、我らが艦娘たち。
お疲れ様、と言っておく。
君たちの功績あって、戦いは終わった。万歳!』
『俺はこの海で死ぬが…………
だが、俺の意思はお前たちが継いだ、と思う。
好きに生きろ、人として。
お前たちが守った平和をしみじみと感じろ』
『時間がないんで、個別に送りたかったが無理だ。
なんで、好きにしろ。旨いもん食えばいい。
恋愛すればいい。姉妹と生きればいい。
だけど、一つだけ、禁忌がある。
俺の後を追うな。これだけは守れ。いいな?』
『それじゃあ、さよなら、だ。
みんな、俺は見守ってる。
お前たちが守った、この海の平和をな』
ボイスレコーダーは、ここで途切れる。
と、思ったとき。
『我が、最愛の者へ。
ここに、我が最後の声を残す』
『ありがとう。未来へ、生きて行け』
『その先で、俺は待っている。ゆっくりでいい。
ゆっくり、俺の待っている場所へ来い』
『お前は、決して1人じゃない。
────それを、忘れないでくれ』
『そして、思い出を聞かせてくれ。
───その、凛と響く、最後まで生きた声で』
「……………うん」
涙を流しながら、私は頷く。
何度も、何度も。
生前、1人だけ生き残った。
最初に、暁が。
次に、雷が。
次に、電が。
私は、1人取り残された。
また、1人になったと思っていた。
だけど、それは────
「違ったんだ───そうだよね、司令官」
私は、1人じゃない。皆が、いる。
司令官がいなくなっても。
あの鎮守府がなくなっても。
あの艦隊が、思い出が、消えたわけじゃない。
「生きてくよ、司令官。
首を長くして待っててくれ」
あの愛した人との絆が、切れたわけじゃない。
「きっと、笑って話せるようになろう。
この涙も、この物語も」
大きな風が吹く。
ありきたりだと、私は思う。
涙を拭って、私は海へ叫ぶ。
「見ているんだろう、私は今でも、
そして、これからも─────!!!!」
「あなたを、愛している!!!!!!」
~完~
…………どうだったでしょうか。
思いつきだったのですが、
中々じゃないかと思います(自画自賛)。
私自身、他の小説でbadendが
好きだと書いたんですが、これはちょっと。
響推しなので、ちょっと確認で読み返して
かなり堪えました。悶絶(悪い意味で)。
badendは好きですが、
どうせなら進行形で皆が死んだ方が良いです。
こう、残されたりした人の気持ちは
考えたくないんです。私ヘタレなんで。
皆死ぬか、1人犠牲を出すくらいなら、
全員助かった方が良いですよね。
happyendが嫌い、という訳ではないのです。
私も親友?のような存在を
リアルガチで1人亡くしたことがあります。
でも、託されたモノが確かに、あると思うんです。
だから、たとえ十字架を背負ってでも。
今、この時を生きるんです。
死んだ人は甦らない。
甦ったとして、それは彼女(彼)じゃない。
だって、それは世界の理だから。
誰かの死を糧にして、屍を積み上げて。
私たちは今を生きるのだから。
長くなりましたね。
ここまで読む人はかなり物好き………
コホン、優しい御方ですね。
では皆様、いつか会えたなら、どこかで。