隻狼が荒れ寺で仏を彫っていたらいつの間にか荒れ寺ごと幻想郷にいた件について   作:荒北龍

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久しぶりの二次創作だから結構時間がかかりました。すみません。


透明妖怪だと思った?残念無意識妖怪でした

 

 

 

 

 

外が自分の居た場所と異なることはすぐにわかった。

 

しかし、それを気にしてどうにかなるものでもなし。俺が仏を彫ることに変わりはない。

そんなことを思いながら、後ろに広がる自分とは異なる世界を見ようとすることも無く、ただただ仏を彫り続ける隻狼。

無くした左腕の代わりに足で木材を押さえ、誰に教わったわけでもなく、自分の頭に思い浮かんだ顔を彫り続けた。そしてそれは決まって鬼のように憤怒する顔であった。

まるで仏師殿が作った鬼の様な顔をした仏たちのように、そして自分はそれを彫っていた仏師のように。

そんなことを考えていても、結局はどうにもならない。そう思うと、重い瞼を一度閉じて、無心になり、仏を彫る。それは最早隻狼にとって日課でしかない。何も考えずに、仏を彫り、出来上がればまた新しい木材で仏を彫る。

そうしているうちに、また一つ、憤怒した顔の仏が出来上がる。

果たしてこれを仏と呼んでいいのか、自分にはそれを考える余力すらない。

しかしながら、この不自然にも仏の腕に引っかかっている黒く可愛らしい帽子(・・・・・・・・・)を不自然に思う余力くらいはある。

隻狼は不自然に思いながら帽子を仏から掴み取り、マジマジと、自分の見たことも無い布地やデザインに少し興味が引かれた。

そしてまた、どこかで感じたことのあるこの違和感。そう確かこの、()()()()()()()()()違和感は確か···············

 

「あの白い布を被った猿以来か ··········」

 

あの幻覚のような世界に迷い込んでからずっと何かに見られているような違和感。他の三匹の猿を殺しても、その違和感は消えず、その違和感には恐怖すらした。

ほぼ勘で自分の背後を斬り裂いた。無論俺の刀は空を斬ったと思ったが、それは血肉を斬ったよく慣れた確かな手応え。そして猿は現れた。あの時の感覚によく似たこの感覚。

一度は遅れをとった。しかし二度も同じ過ちを繰り返すほど"元忍び"も甘くはない。

 

「何をしている」

「いったぁ!」

 

すると、諸刃刀に触れようとする自分の真横にいた少女のデコを軽くデコピンしてやると、少女は驚きと痛みに声を上げてデコをさする。

隻狼はそのまま帽子をぽすりと被せてやると、デコをさすって涙目になっている少女を見て隻狼は(少し強くやりすぎたか)と少し負い目を感じながら、軽く頭を撫でてやった。

 

「ねぇねぇ!どうやって私を見つけたの!?」

 

そう思ったのもつかの間、少女はすぐに顔を上げ、その純粋無垢な瞳を輝かせながら、こちらを見上げる。

 

「··········勘だ」

 

隻狼は無愛想に淡々と答えながら、仏を彫る作業に戻る。

 

「おじさんは何者なの?」

「······························仏を彫るだけしか出来ないただの"うつけ"だ」

 

自分はもはや忍びではない。ならば身分を隠す理由もない。しかし、名乗る名すら持ち合わせていない。故に空っぽで、何も無く、また己の道すらも見失った愚か者。

そんな者をうつけと言わずなんと呼ぶ。

狼、隻狼、修羅、御子の忍び、様々な名で呼ばれたが、今となってはそんな大層な名など、主を手にかけた時には既に捨てた。

己をうつけと名乗る隻狼に、少女は首を傾げた。

 

「うつけ?変ななまえ。おじさんて人間だよね?」

「··········いかにも」

「仏を彫るのって楽しいの?」

「···············いや、そうでも無い」

「じゃぁなんで彫るの?」

「····················さぁな」

「えーー、教えて教えて!」

 

「本当の名前教えてよー!」

「どこから来たの?」

「この仏全部おじさんが作ったの!?すごーい!」

「おじさん元は忍びなの?すごいすごい!!じゃぁ影分身とか螺旋丸とかできるの!?」

「私は古明地こいし!」

 

何者かと話すのはいつ以来だろう。この荒れ寺で仏を彫り始めて早数年。たまにエマが様子を見に来るが、たいして話すことも無く、ただただ自分のそばに座って、自分の仏を彫る姿をどこか懐かしそうに眺めていた。

そんな懐かしき記憶に浸りながら、こいしと呼ばれる少女の質問にそれとなく返す隻狼。

そんな少女からの質問は終わることを知らず、少女が質問しては、隻狼が答える。そんなことが幾度が続くと、不意にこいしからの質問の声色が変わった。

いや、それは質問と言うより、誘いだった。

 

────ねぇおじさん、かくれんぼしよ?

 

「····················」

 

その誘いに、隻狼は口を閉ざした。

この誘いを受けるか、それとも断るか。受ける理由もなければ、断る理由もない。

しかし、この誘いにはなにか意味があるのだろう。少女の瞳からは、そんな何かを期待するようなものが感じた。

少しの間、隻狼は少女を見つめると、仏を彫っていた手を止める。

 

「···············このようなうつけでよいのならば」

「本当!?それじゃぁおじさん鬼ね!」

 

少女は上機嫌なのか、腕を広げてクルクルと回ったりぴょんぴょんとうさぎのように跳ねたり、隻狼の周りをスキップしたりと落ち着かない様子。

そうしているうちに、いつの間にか寺の入口に立って隻狼を見つめていた。

 

絶対見つけてね?

 

そしてにっこりとどこか期待に満ち満ちた笑みを浮かべるこいしに、隻狼は相変わらず静かに、淡々と

 

「···············御意」

 

と、短く返事をするのであった。

 

 





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