隻狼が荒れ寺で仏を彫っていたらいつの間にか荒れ寺ごと幻想郷にいた件について 作:荒北龍
「···············」
こいしは消えた。
それにも関わらず、隻狼は驚くことは無い。
なぜなら彼女は消えた訳では無い。ましてや姿を消したわけでも、音をなくしたわけでも、気配を消した訳でもない。彼女は
(·························)
何だ、この人も結局私が見えないんだ
こいしはそんなことを思いながら、隻狼に顔を近づけた。普通であれば見た目が少女にしても、急に顔を近づけてくれば驚くか、後ずさるが、それをしないと言うことは、自分が見えていないと言うあかしだ。
こいしはガッカリしたように隻狼の顔を見つめて目を細めた。
(バイバイ、私を見つけてくれてありがと。とっても嬉しかったよ、"うつけ"のおじさん)
きっともう自分を見つけてくれる者は誰もいないのだと、そんな思いを胸に、先程までの胸に満ちていたあの期待と愉快な気持ちは失ってゆく。
かわりに、先程までの笑みは失せ、目は黒い絵の具で塗りつぶしたかのように不気味に黒く染まり、その視線は氷より冷たく、恐ろしい。そして、ひどく興醒めした。
こいしは隻狼に背を向けて荒れ寺を出ようとする。どうせこの寺には元々用はない。人里で噂になっている『妖怪山近くで怒った仏を掘る奇人』を聞いて暇つぶし来た程度なのだから。きっとこの寺を出れば、こいしは隻狼の事など忘れ、また別のことに意識を向けるだろう。
そしてこれからどこにゆこうか、次は何を見ようか、そんな思いを胸に、寺の外へ出ようと足を前に出した刹那、その思いは手首の軽い違和感によって一瞬にして消えてしまった。
「───────アハッ、ミツカッチャッタァ♡」
後ろを振り向けば、荒れ寺を出ようとする自分の手首を強く掴む隻狼の姿が自分の目にはっきりと写った。
そして今度は先程とは比べ物にならないくらいの期待と、愉快な気待ちと、頭がおかしくなりそうなほどの興奮と快楽が身体中を駆け巡った。
「··········見つかったのに嬉しそうだな」
「うん!だってはじめてなんだよ?誰かが
きっと少女は
十中八九この妖術は自分の意識とは別に発動しているらしい。もしもこの妖術が自分の意識で自由自在に操れるならば普通、妖術を見破られて悔しい、などそう思うはずなのに、こいしはそれとは別に顔では隠しきれない程の喜びを露わにしていた。
想像もつかないだろう。自分だけがこの世から存在するのに存在しない、透明人間のような人生。
どれだけ叫んでも、触っても、願っても、それは届くことは疎か、見つかることはなく、意識さえされない世界など、生きるに値するだろうか。
否。それは見失ってしまいそうなほど、気の遠くなってしまうほど、辛く、哀しく、退屈で、ただ見ていることしか出来ない世界など、生きる意味すらない。
それでもこいしは生きることを選んだ。どれだけ自分が言葉を発してもそれは誰の耳に届くことがなくとも
たとえ自分がそこに居ても居ないものと認識されようとも
たとえ何百人、何千人と、自分の存在に気が付かぬとも、それでも、それでもなお少女は、こいしは
生きる道を選んだ。
退屈で退屈で、自分の存在が誰からにも気づかれなくとも、ただただそこに漂うだけの存在になろうとも、それでもこいしは生きることを選んだ。
もしもこれがこいしでない誰かなら、その者はそれに耐えられず、自害を選ぶだろう。
それほど辛い世界なのだ、こいしの生きてきた世界とは
「···············どうした、これでおしまいか?」
「····················!それじゃあ今度は本気で
「·········良かろう」
そんなひとりぼっちの世界で生きてきた少女の"遊び"に付き合ったくらいで、きっとバチは当たらぬだろう。
そんな思いを背に、再び自分の視界から消えるこいしに対し、隻狼は再びこいしを見つけることだけに意識を向けた。
最近ジャンプの方が暑いですね。とくに鬼滅の刃とか。
そういえばチェーンソーマンと呪術廻戦 のキャラが横に並んでても違和感がない気がするの自分だけっすか?
さて、今日はここまでです。また次回会いましょう。
あ、早く今月号のジャンプ買わなきゃ
高評価おねがいします