隻狼が荒れ寺で仏を彫っていたらいつの間にか荒れ寺ごと幻想郷にいた件について 作:荒北龍
「ほぉ、あの時の腑抜けではないか」
「····················弧影衆」
弧影衆
政府の忍であり、その戦い方は独特で、主に刀ではなく足を使い、その技は仙峯寺拳法の伝書に書かれた仙峯脚にも似た戦い方をしている。
他にも下段、突き、そして脛の部分にクナイをくくり付けその威力を強め、懐に隠したクナイは遠距離から敵を仕留めるため。
そして戦う際は、常に外套で左腕を隠しているが、不意打ちを狙ったものなのだろう。
そして弧影衆には左腕を毒に侵し、その腕を凶器に使う者もいる。
他にも口笛を使い忍犬を使う物。
そしてその弧影衆一人一人が実力者でおり、そのものたちを束ねる者が、自らの名を捨て"太刀足""忌み手"などと評される。
そして今、その弧影衆を束ねる実力者である"太刀足"が紅魔館の門のど真ん中に立っている
「あら、知り合い?」
「1度殺した」
「10回ほど殺して1度殺されかけた」
「あまりいい関係じゃなさそうね」
その割にはあまり敵対してないわね、とつけ足しながら、レミリアはどこかおかしな単語が聞こえたような、と思いながら門を開ける。
ちなみにこの幻想郷では死にかけの人や、1度死んだ人間も紛れ込む。どうやら紫がいじくったのか、殺されて蘇生されてから幻想郷に来る人間も少なくはないので、レミリアが引っかかった言葉は殺したという単語では無いのは確かだ。
「····················拾われたか」
「拾われたのだ。お前に殺されたあとな」
「瀕死でぶっ倒れてたし、殺すのもなんかもったいないから拾ったのよ。それにこいつ掃除も料理も警備も一流で助かってるのよ」
かつて何度も自分を蹴り殺し、斬り殺した相手は、今では屋敷の掃除や料理やらをやっていると聞いた隻狼は、随分と忍びが丸くなったなと思ったが、それは自分も同じか、と思うのであった。
「それじゃぁ門番はもういいから、次は窓拭きお願いね」
「いいだろう」
そう言って一足先に太刀足は屋敷の中に入っていった。
「···············弦一郎は、何がしたかったのかしらね」
「葦名を守りたかった。それだけだ」
弦一郎はずっとそうだった。
葦名を愛し、葦名を守り、葦名の為に戦い、最後は己の無力を嘆きながらその使命を祖父に託した。
人は弦一郎を愚か者などと罵るかもしれない。
弦一郎がした事は歴史に名を刻む程のことでは無い。
小さな国が、大きな国に潰された、有りきたりの話。
しかし、それでも葦名弦一郎は、倒れず、諦めず、血反吐を吐きながら、禁忌に手を出しながら、自身の身体などとうの昔に壊れてもなお、弦一郎は───
止まらなかった。
───俺とお前は似ているな
「あぁ、そうだな」
「···············?」
その姿が、その生き様が、修羅の道に片足を入れたその瞳瞳が、その鬼のような不屈の精神が、どこか自分に似ていた。
「ねぇ、弦一郎は死ぬ前に私と約束したことがあるのよ。その約束、弦一郎を殺したあなたが果たす義務があるんじゃない」
「····················」
「沈黙はYESでいいのかしら?」
三日月型に口角を上げ、異様に発達した牙を見せ、背中に生えたコウモリのような翼を広げ、どこか怪しい雰囲気をだす彼女の姿は、幼女の姿ながら、500年生きた吸血鬼だと確信させた。
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「それじゃぁまずは屋敷の窓拭きからね」
「····················」
「またあったな。そしてここではお前の名前は新入りだ。わかったか新入り」
「···············承知した」
三角巾を頭に被り、雑巾とエプロンをつけた弧影衆の姿と、全く同じ装備をつけられた隻狼の姿は、何故か絵になっていた。