たった一人の戦いに疲れ果てて沈むとき   作:Buffooln

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Long Long Ago, 20th Century

「うーん……はっ!」

 

 響は突如ベッドから飛び起きる。そして勢いよく顔を振り、周囲を確認する。

 

「どうしたのー響? 悪い夢でも見た?」

 

 そんな響にテーブルでりんごの皮を剥いていた未来が声をかける。

 

「あっ未来!うーんなんかよく内容は覚えてないんだけど怖い夢見たっぽくて……それでなんかすごい未来の顔見たくなったんだよねー」

「私の? なんか変なの」

 

 笑う未来。その未来の顔に響もまたつられて笑う。

「へへへ、そうかも……あ、未来りんご剥いてるの? ちょうだい!」

 

「はいはい、今剥き終わったからどうぞ。まったく食いしん坊なんだから……」

「まあねー。……あ、そういえばギャラルホルンってそろそろ治るんだっけ?」

「お腹に食べ物入れた途端に話題変えないでよ。別に壊れてたわけじゃないから治るって良い方は変かもしれないけど、そうらしいね」

「うーん大丈夫だったかなぁ、つながってないときになんか変なことなかったかなぁ」

「大丈夫じゃない? 一応観測だけは先にできるようになってたけど、とりわけ目立った反応はなかったっぽいし」

「ふーん、ならいいんだけど。あ、そだ! こんどみんなでピクニック行く予定あったよね! 何作ってこっか!」

「だからころころ話題を変えないでよ。うーんそうだね……クリスは食べ方が汚いだけでなんでも食べくれるけど、そういやマリアさん達の好きな食べ物ってよく知らないなぁ。翼さんはやっぱ和食かな? エルフナインちゃんは素麺が好きだけどさすがにピクニックに素麺はちょっとなぁ……」

「うーん今度リサーチしてこよっか?」

「うん、お願いね響」

「任せて! いやー! 楽しみだなーピクニック!」

「……そういや、あっちの響も今は楽しく食べられてるのかなぁ」

「ん? どしたの未来?」

「ううん、なんでもないよ。さ、まだまだあるからどんどんりんご剥いちゃうからね」

「わーい待ってましたー!」

 

 

   ◇◆◇◆◇

 

 

 初めて力を手にしてからどれくらいの月日が経ったのか。

 自分が一体何者だったのか。

 今の彼女にはわからない。

 彼女はただただ戦い続けた。

 人間の自由と平和を守る。それだけが彼女の心にある目的だった。

 そのために、彼女は常に悪を滅ぼしてきた。

 だが、いくら倒しても悪は潰えることなく、故に彼女の戦いは終わらなかった。

 そうしていくうちに、彼女は感情も、記憶も、彼女らしさのすべてを失ってしまった。

 老いもせず食べることもなく、眠ることもなくなった今では、人らしさと言えばただ手足があり二足歩行で歩いていることぐらいだろう。

 もはや彼女には何もない。あるとすれば、彼女の行動を決定している使命、そして、胸にいつまでも残る、空虚と哀しみだけである。

 常に満たされず、常に苦しむ。

 それでも彼女は戦う。それしか彼女にはないから。

 今日もまた彼女の眼下で悪がはびこる。

 彼女はそれを止めるため、悲しみを生まぬために戦いに出る。

 それで彼女に、返ってくるものが何もないとしても。

 黒く染まった太陽は、今日も人を見つめる。

 


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