それにしてもアーマードコアの二次創作って相変わらず少ないですね。真偽不明とはいえ新作の情報がリークしてる影響で少しは増えそうなもんですけど。
マグヌスの【
対するマグヌスも負けてはおらず、燕のような俊敏な軌道でパルスライフルの猛追を躱しつつ【
(……強くなっている。以前より確実に)
セロは焦っていた。彼我の実力差が大きいからではない。むしろお互いに致命打が与えられていない分、実力は拮抗していると言えるだろう。だからこそセロは早く決着を付けようと焦っていた。
その決定的な理由は二つ。一つは相手がスーパーコンピュータ搭載のAIだという点、もう一つは無人機であるという点だ。前者は0.1秒単位で常に状況を分析・解析して最適な行動を導く他、クセと言うには余りにも微細な
この二つの要素が兼ね備わったナインボール相手に戦闘を長引かせることは悪手以外の何物でも無く、ゴングが鳴った時点で不利を押し付けられている状態に他ならない。だからといって致命打を与えようと不用意に行動すれば隙を突かれて今の拮抗状態が崩れ、パワーバランスが一気にナインボール側に持って行かれることにもなりかねず、セロは手を
《――フッ、出し惜しみしている場合じゃないか》
そう独りごちったセロは操縦桿を握り直し、ギンッ!と目を見開いてモニター越しにナインボールを睨んだ。徐々に白目の部分が空のような水色に染まっていき、毛細血管が電子回路を彷彿とさせる金色に燦めき始める。
そうして両目が染まり切った瞬間、目の前のナインボールの前面から霧掛かった実体を持たない半透明のナインボールが出現した。
半透明のナインボールは本体よりも先に動き出し、パルスライフルを構えてマグヌスめがけ連射しつつその場を離脱するが、その弾丸も同じく実体を持たないためマグヌスの装甲を傷一つ付けること無く通過していく。数秒後、本体のナインボールが半透明のナインボールと
当然、セロは難なくこれを回避。続いて亡霊が離脱した方向へ【
【本機被弾率および敵機回避率著しく急上昇。対象をイレギュラーと認定。修正プログラム発動、状況を開始する】
《……案外そんなものか。予測と予知じゃ格が違う。相手が悪かったな》
セロはそう言いながらつまらなさそうな笑みを浮かべるとフットペダルを蹴り抜いてQBを発動、マグヌスをナインボールに肉薄させて会敵時と同様に【
先程の一撃によってセロをイレギュラー認定したナインボールもイッシン側の機体と同じようにいままでの戦闘が準備運動とでもいうような圧倒的挙動で敵を殲滅しようと全兵装を駆使して闘うが、その攻撃の全てが軽々と回避され、逆にマグヌスの攻撃は面白いほど当たっていく。
ここまで一方的な展開に突然なった理由はセロが持つ【
ナインボールが0.1秒単位で分析・解析したとしてもそれが予測である以上、大小さまざまな誤差が必ず生じてしまう。その誤差に対して起こり得る予測を修正し、確定させ、また0.1秒後に同じ作業を繰り返す。つまり『現在』の連続なのだ。
対してセロが使う予知能力は一種の『確定した未来』を見る事に特化している。過程も理屈も全てすっ飛ばし、こうなると決定した事柄だけを見せる。単純にして強力な能力だ。
こうなってしまえば決着は火を見るより明らかとなり、ナインボールの装甲はヘコみや風穴が無い部分を見つける方が難しいほどに損傷し、関節という関節から電子ショートがバチバチと鳴っている悲惨な状態になっていた。しかしナインボールのAIは目の前のイレギュラーを殲滅しようと必死に食らい付いていく。
トリガーを引き放しでパルスライフルを振り回し、自滅覚悟で連装ミサイルとグレネードランチャーを超至近距離で放つが、セロはその全てを躱し的確に、確実にナインボールを追い詰める。
最後はナインボールが完全な死角からの不意打ちで発振した最大出力のレーザーブレードを舞うように回避して、一言。
《まぁ、及第点だな》
そう言ってマグヌスに【
《さてと。あっちはどうなって………へぇ》
朝飯前の一仕事を終えたような物言いのセロの眼は水色が抜けて元の白色に戻っており、馴らしついでにふと視線を移す。そして目に飛び込んできた光景に思わずニヤリと口角を上げた。なぜなら視線の先で、手負いのナインボールとJOKERが彗星のような速度で高速戦闘を繰り広げていたからである。
【敵機機動および反応速度急上昇および対応戦術数増加を確認。対象をイレギュラーから最優先殲滅対象へ変更。殲滅プログラム始動、状況を開始する】
「ざっ………けん……なっ!!!!」
イッシンが【限界機動】をJOKERで行うのは今回が初めてだ。前回はストレイドで発動し、かつ重兵装を背負っての状態だった。それが愛機の軽量級ネクストに
衝撃を和らげるリンクススーツを着用していても余りある強烈なGによって肺胞の一片に残っている空気すら押し出され、身体を巡る血液は全て背中に集約し、一挙手一投足をJOKERに指示するだけで骨が砕けそうな感覚に襲われる。それがイッシンの持つ【限界機動】のイメージだったが彼は甘かったとセレンの鬼訓練に次いで再認識した。
(JOKERで試すのは初めてだけどヤバすぎだろ! 気ぃ失うどころか走馬灯がチラついて逆に気絶できねぇ!!)
それでもなおナインボールの動きを凌駕することは出来ない。JOKERが【限界機動】によってナインボールよりも速い機動性を有しているのは間違いなく確かだ。しかし対するナインボールの分析・解析能力も並大抵ではなく、迫り来るJOKERの猛攻を装甲塗料一枚分の紙一重で躱していく。
【
コンソールパネルを見るとJOKERが既に最高速に到達していること、これ以上の加速は機体そのものの自壊を招くことが記されており、10秒も経たない内に緊急停止プログラムが作動するというカウントダウンも併せて表示されていた。
「……は…やす…ぎ…んだろ……!?」
無情な宣告に操縦桿に握る手が震える。まだだ。まだ終われない。こんなところで死ぬ訳には行かないんだ。だからJOKER、もっと力をよこせ!
イッシンの思念に反応するようにJOKERのメインカメラが一際大きく輝いた瞬間、コンソールパネルに表示されていたAMSシンクロ率が100%を突破する。
刹那、AMSから情報を受け取る側だったイッシンが突然AMSに情報を差し出す側になった。アスピナのCUBEと同じく光が逆流してきたのだ。
見たことも聞いたことも無い風景や音が脳内を駆け巡り、情報量が脳の許容をオーバーしてしまいイッシンは戦闘中にも関わらず白目を剥いて痙攣する。
《イッシン! 気をしっかり持て!》
「……なんだこれは……どうなってんだ……」
《イッシン! 私だ! セレンだ!! 私が分かるか!!》
スピーカー越しにセレンは叫ぶが、その声は届かない。そして意味不明な言葉を口走る痙攣したままのイッシンが操縦出来る訳も無い。やがてJOKERの動きが止まり、メインブーストの推力も切れて地上に力無く落下していく。今まで劣勢を強いられていたナインボールがこの好機を見逃す筈がなく、レーザーブレードに光を灯してJOKERに猛進する。
それまで蚊帳の外だったネリスも我に返り【
この様子を傍観していたセロも流石にマズいと判断し、再び眼球を水色に染め上げて救出するためマグヌスにOBを噴かそうとするが、その直後に動きを止めた。
何故なら、彼には数秒先の未来が見えるから。
ナインボールが発振したレーザーブレードは一直線にJOKERのコア部へ突き立てられ、そして………
ナインボールが蹴り飛ばされた。
《おいおい。俺との殺し合いを預けたまま勝手に死ぬとは良い度胸じゃねえか、首輪付き》
パッチ、ザ・グッドラックです。
いやぁ旦那はどうしちゃったんでしょう。姐さんの呼び掛けにも応じないなんて。それに最後のセリフ、あれは誰なんですかね。なんか物騒なヤツみたいだから友達にはなれないかな~~。
という訳で今週の凡猫は『セロの本気・イッシンの自滅・どこぞの狂人乱入』の三本です。
来週もまた見てくださいね!
じゃ~んけ~ん、ぽん!
……そんなんじゃ、この先生き残れないぜ。