(やはり『才』は桁外れか……)
四脚の巨人〝ストリクス・クアドロ〟を駆る王小龍は目の前で踊るネクスト〝ストレイド〟を
現状況はこちら側が圧倒的に有利。並のリンクスなら辞世の句を詠む様相を呈しているが、目の前のリンクスは違う。
現状況が維持出来ているのは第8艦隊が飽和気味のミサイル攻撃を持続している為である節が強い。仮に我々2機とギガベースのみで迎撃すれば、早々にギガベースは轟沈。追撃もままならぬままストレイドの離脱を許しているだろう。
それを知ってか知らずか第8艦隊のミサイル搭載艦艇のみを破壊している。ミサイル弾幕が交戦当初より薄くなっている事は明白だった。
(頭も切れる。これ程の才能、
王小龍は心中嘯きながらストリクス・クアドロに【061ANSC】を構えさせる。
超大型スナイパーキャノンに分類されるそれは、重量および反動を犠牲に、威力・弾速・命中精度を限界まで引き上げ『撃てば必中』とまで謳われるBFFの集大成だ。
その必中の
(だが、まだ青いな)
回避行動がワンパターンだ。多少の経験と幼子程の頭があれば簡単に気付く筈だが、所詮はルーキーという事か。王小龍は冷笑を浮かべながら引き金に指をかけ、引く。
刹那、ストレイドは急制動。亜音速の砲弾はストレイドの真横を恨めしそうに過ぎ去った。そのさまに王小龍は感心しながらも、冷静に次弾を装填する。
(全く、勘も一級品とは恐れ入る。天は二物を与えずとは良く言ったものだ)
『撃てば必中』も躱されては只の外れ玉に過ぎない。BFF社における設計理念の欠点を体現した現状況に王小龍は自嘲していると、急制動をかけたストレイドが突如、空に向け上昇を始めた。
薄まったとはいえミサイルの弾幕は依然形成されており、上昇するという選択は愚の骨頂である。王小龍は僅かながらに眉をひそめるが、直後その意図を察した。ストレイドの背部では散布型ミサイル【MP-O200I】が起動している。
(早期に決着をつける気か。悪手では無いな)
だが最善手でもない。言うなれば『凡手』であり特別警戒するべき手ではない。断じた王小龍はリリウムに通信を行う。
「リリウム、仕掛けてくるぞ。気を抜くな」
《かしこまりました、
リリウムが応答したと同時に、ストレイドの背部【MP-O200I】が火を噴き、打ち下ろされた。――散布型ミサイルは面の制圧力に特化した兵装である。小型ミサイルを多数同時発射する様は圧巻であり、無数の蛇が降り注いでくる様にも見えた。
その無数を相手にアンビエントおよびストリクス・クアドロはQBを噴かしながら躱していく。散布型ミサイルは両ネクストを捉える事無く着水し、深く沈んでいった。ストレイドは構わず両ネクストに照準を合わせ次弾を装填、打ち込んでいく。
両ネクストが迎撃せずに回避に専念したのは今後の展開を見据えてのことだった。この物量差であれば、遅からず
シンプルかつ確実なプランを瞬時に練り上げた王小龍は、それを実行に移そうとする。そして、停止した。
違和感。
百戦錬磨の戦士でさえ見逃しかねない
僅か2秒の自己問答。
王小龍はある解を導きだした。
そして嘆息を吐き出したかと思えば、再びストリクス・クアドロを駆り始める。
まずは奴を止めなければ……。そう独りごちり、ストリクス・クアドロに再び【061ANSC】を構えさせ、
当の「奴」ことストレイドは、当たらない事実に構わず愚直に【MP-O200I】をアンビエントへ打ち込んでいた。その度にミサイルは対象を掠める事すら無く海中へ呑み込まれていくにも関わらず。
「…………見えた」
王小龍は引き金を引く。打ち出された亜音速の砲弾は吸い込まれるようにストレイドの【MP-O200I】へ着弾し、破壊された。誘爆が起こらないのはミサイルを全て打ち切ったからであろう。ストレイドは着弾の衝撃により錐揉み回転しながらも、素早く体勢を整え海面に着水する。
ミサイルを躱していたアンビエントは、すかさず迎撃姿勢をとる。しかし、ストレイドがとった行動は敵前逃亡すら霞んで見えるほどの全速力撤退だった。
突然の事にアンビエントのリンクス、リリウム・ウォルコットは一時呆然とするが、その間にストレイドの背中はどんどん小さくなっていく。
「
リリウム・ウォルコットが放とうとした疑問は、
いかがでしたでしょうか。
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