それと、今更ながらドラマの英国版Sherlockにドはまりしまして。一話90分のボリュームから繰り出される濃厚ミステリーは絶品です。
なにが言いたいかと言えば、晩酌しながら執筆してます。
であれば今の時刻は間違いなく暁であり、
音の主は四体の異形の巨人。すなわちマクシミリアン・テルミドール駆るアンサング、メルツェル駆るオープニング、ダン・モロ駆るセレブリティ・アッシュ、ハリ駆るクラースナヤの一団である。彼等は一寸の乱れも無い教本のように華麗な編隊を組みながら真っ直ぐ目的地へ向かっている道中であり、その目的地である何の変哲もない高さ30m、幅100m、全長3kmの鋼鉄で構成された巨大な格納庫が光学カメラで視認できる距離まで到達していた。
《あれか》
《【フラスコと硝煙の桃源郷】……過ぎた名前だ。自らの拠点にユートピアを名乗るなど》
《まぁカミソリ・ジョニーらしい納得のセンスですよね。僕なら恥ずかしくて自殺しちゃいます》
《だとしても
ダンが言い終えた瞬間、まるで彼等が各々の感想を述べ終えるのを見計らっていたかのように突如として格納庫の屋根がゴゴゴッと開き始めた。見ると格納庫両端にネクストを直立させられるだけの簡易的なスペースが設けられており、既に一方にはORCA旅団側と同じく四機のネクストが伝説の守護騎士が如く佇んでいる。そして中央にはチタン製らしい鈍い反射を放っている長テーブルが置かれていた。
《ストリクス・クアドロにアンビエント、ワンダフル・ボディと……へぇ、JOKERも居るんだ? ダンさんの話でてっきり死んだと思ってたけど》
《気を抜くなハリ。アイツ単体ならともかく、連携を取った時の彼の危険度は計り知れない》
《流石に警戒しすぎじゃないですか? ラインアークでだって大したことしてないですよ?》
《撃ち抜かれたお前が言うな。どちらにせよ敵陣である以上、気を緩めて良い理由にはならん》
あくまで相手は格下なのだと侮るハリを窘めたオッツダルヴァの言葉に思わず彼は口を噤む。そうして彼等は格納庫端へ降り立つと先客に習って機体を停止させた。
第三勢力であるLOSERSがORCA旅団本来の目的を掻き乱し、あまつさえ全世界に宣戦布告をしている以上、友好的に成り得る両陣営の小競り合いで戦力を消耗させる手を取るなど有り得ない選択だが、もちろん警戒は忘れない。団長であるマクシミリアン・テルミドールを筆頭に、ネクスト内蔵の足掛けワイヤーに掴まりながら彼等は地上に降り立った。
「よ~ダン! ひっさしぶり~☆ あっオッツダルヴァも久しぶりだな! いや~会いたくて会いたくて夜しか寝れなかったぜ!」
まるでハイスクールの同級生と再会したようなテンションで彼等に駆け寄ろうとするイッシンだが、その思い叶わずセレンに首根っこを雑に掴み上げられてグエッと素っ頓狂な声を出して急停止を余儀なくされてしまう。
まぁ、あくまで雰囲気がそうであるだけで彼の片手には、巧妙に隠してあるが、暗器用に改造された10mm無反動拳銃が仕込まれていたのだから仕方ないことだ。有言実行とは良く言ったものである。
「抑えろイッシン。ここはあくまで締結の場だ」
「え~別にいいじゃん脅迫の1つや2つや3つくらい」
「……戦場ならいざ知らず何故この場に奴を同席させるんですか、王小龍上級理事」
「そう
「ちょっと聞こえてるんですけど? 勝手に洞窟のカナリア扱いしないでくれます? ガス吸って死ぬつもり全然ないからね?」
そしてイッシンとセレンの如何とも形容し難い主従関係を目の当たりにし、彼の果てしない奔放さに辟易したドン・カーネルを諫める王小龍。かく言う彼等も内心はイッシンと同じく厚顔無恥にも姿を現したオッツダルヴァとダン・モロに対して憤りを感じている心持ちなのだが、彼等はイッシンと違って大人なので行動には移さない。理性で怒りの感情を御することの重要さを理解しているのである。
閑話休題。双方がチタン製の鈍く光る長テーブル越しで向かい合う。強大な力に対抗するために呉越同舟を辞さず、実際に実現させたこの状況は見る者が見れば感動的なシーンに間違いないのだが、やはりそこは呉越同舟。剣呑というか殺伐というか、ピリピリとした一触即発の雰囲気が形成されていた。
「―――さて、改めて自己紹介を。今回の調印式における企業連代表代理を拝した
「……ORCA旅団団長マクシミリアン・テルミドールだ。どのような形であれ、企業側と
「そうか。私は政治的均衡とは互いのナイフを喉元に突き当てている状態だと考えている。くれぐれも
言葉の雰囲気こそ穏やかだが、話されている内容は威嚇やメンチの切り合いと同じである。端々から漏れ出る敵意と殺意を隠そうともせず、それでいて形式上とはいえ友好条約を結ぶのだから恐ろしいことこの上ない。
そうしてぎこちない握手を交わした二人は早速、条約締結の書類に目を通してサインを署名。その間、後ろで待機している双方の護衛兼立会人達の視線がバチバチと火花を散らしていたことは言うまでも無いだろう。特に酷かったのは意外にもダン・モロとリリウムの二人である。もちろん双方が臨戦態勢のバチバチという訳ではなく、リリウムの鋭い視線をダンが申し訳なさそうに受け流し、それを見たリリウムが更に視線を鋭くするという悪循環が生じたのだ。
最終的に双方の護衛兼立会人達がちょっと引くという事態にまで発展したえげつない睨み合いは、王小龍がパタンと書類ホルダーを閉じる音で一応の幕を閉じる。
「―――これで締結完了、だな」
「ああ。より良い関係を期待する」
王小龍とマクシミリアン・テルミドール。二人が改めて握手を交わし、
《雑種が集まったところで雑種でしょ? それに気付かないなんて、やはり野良犬ね》
蔑むような高圧的で傲慢な女性の声が響き渡る。突然の出来事に、テルミドールと王小龍を除くその場にいた全員が各々隠し持っていた武器を手に取って警戒態勢を構築した。
どうやら格納庫内のスピーカーがハッキングを受けたようで、遠巻きに待機していた白衣の職員達が慌ただしくシステム制御系を操作し始める。その中にはカミソリ・ジョニーの姿もあり、事態の深刻さを物語っていた。この世界において二大勢力である企業とORCA旅団の調印式に水を差そうとする輩など一つしか無いからだ。
「僕のシステムに土足で踏み込むなんて良い度胸してるじゃないか……! 逆探知はどうなってる」
「逆探知―――出ました! 北西20km! この反応……間違いないありません!ネクスト、プロメシュースです!」
職員が答えた名前にどよめきが起きるが、それは無理もないだろう。プロメシュースはBFF社の旧女王メアリー・シェリーが駆る愛機の名前だ。それがこの場に現れたということはつまり……。
《
「――リリウム、行くぞ」
「はい
それまで沈黙を貫いていた王小龍が短くそう発しておもむろに歩を進めると、彼の後ろに控えていたリリウムも彼と同様に迷うこと無く付いていく。あまりに自然な動作だったために見逃しそうになったが、なんとか気付いたテルミドールが呼び止めた。
「待て
「……調印は締結した。ならもはや式を続行する意味は無い」
「そうではなく――」
「アレは
王小龍はそこまで言うと、それ以上は口にせずストリクス・クアドロに足を向けた。
いかがでしたでしょうか。
先週お休みを頂いたことで気分一新、スラスラ書けると思ったのですがそんなことはありませんでした。次回は新旧BFF対決+αです。戦闘シーンはかなり久々なのであまり期待しないで待ってて下さい。
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