それを一言で表すとすれば、退屈がよく似合う光景だった。
そして、その動きに追従するかのように前衛であるアンビエントの機動も遅い。空中機動を主としていて
何も知らない者からすれば当代最高峰のバディである彼等が数の利を制して手を抜いているのだと思うだろう。
対するプロメシュースは優雅に舞う蝶のようにヒラリヒラリと踊りながら非常にゆっくりとした動作で【
刹那、アンビエントの【
射出された弾丸は寸分違わず赤い光条に吸い込まれてその光を減衰させ、レーザーはプロメシュースに届くこと無く拡散した。しかしアンビエントは想定通りといった様子で困惑した挙動を見せることなく更に【
古今東西ネクスト戦において次々と飛来する弾丸の雨に対する
およそ人類が為し得ていい
距離にして1200。発射から着弾までコンマ5秒と掛からない亜音速の砲弾は空気抵抗以外一切の障壁に阻まれることなくプロメシュースに到達する。しかし、砲弾は装甲を穿つことはなかった。何故ならプロメシュースは着弾直前に
更にプロメシュースは
「当ててくるか……!」
流石の王小龍もこれには面食らったようで思わず悪態をつくが直ぐに感情を切り替え、使い物にならなくなった【
同系統兵装の中でも際立って高い巡航速度を有することから、本来想定された運用方法ではなく誘導砲撃に近い運用をされている【
そこまで計算した上で王小龍は【
《自分の武器も知らないのね
プロメシュースは【
《でも教えてあげられないわ。だって私の時代にそれはなかったもの》
「では此方はどうですか!」
リリウムの威勢の良い掛け声と共に、空中に出現したミサイルの黒煙を穿ちながらアンビエントが突進してきた。両手には射撃兵装を持ったままであり、近接格闘戦を行える兵装は何一つ有していない。無鉄砲と揶揄されても可笑しくない彼女の暴挙に僚機である王小龍は驚くが、彼女の意図を即座に理解したメアリー・シェリーは興味深そうに眉を上げた。
《ふん、気付いたのね。バカな小娘》
瞬間、アンビエントのハイキックがプロメシュースのコアを正確に蹴り抜いた。もちろんメアリー・シェリーも直撃を貰うほどお人好しな性格をしていないのでサイトを持った右腕を大きく持ち上げてガードするが、踏ん張り所のないプロメシュースは体勢を大きく崩してしまう。
「いまなら……!」
《よせリリウム!深追いするな》
「っ!」
チャンスと見たリリウムはアンビエントに更なる追撃を許可しようとしたが、コンソールパネルから急に発せられた王小龍の怒声に思わず彼女は急制動をかけて追撃を中止、一定の距離を維持しつつプロメシュースの出方を見る警戒行動へと移行した。
「何故ですか
《狩人たるもの敵の本質を見誤ってはならん。ヤツの腕をよく見ろ》
コンソールパネル越しに映った王小龍の言う通りにリリウムは、とても射撃できる体勢でないプロメシュースを注視する。そこにはアンビエントを冷徹にじっと見つめる【
狙撃タイプのネクストに対する一番の対応策は近距離戦闘に限る。近付いてしまえば装備された遠距離兵装は本来の性能を発揮できず、あとは煮るなり焼くなりどうとでも出来るからだ。その教科書通りの弱点を突かれた。つまり
「申し訳ありません。
《構わん。まずは目の前の戦闘に集中しなさい。余所見をしていい相手ではないぞ》
「承知しました」
《……それとだが》
「?」
自身の至らなさを痛感しつつ、すぐさま修正点を見出して次に生かす。この一連の流れを淀みなく行えるリリウムは間違いなくBFFが誇る才媛であり次世代に担うべき人間だ。そう評価した王小龍は、だからこそ聞いておきたかったのだろう。
《黒煙を利用したハイキックでの肉弾戦強襲、どこで覚えた。少なくとも私は教えていないぞ》
「キドウ・イッシン様の戦闘データを参考にさせて頂きました。大変興味深い戦歴でしたので後学になればと思ったのですが、止めたほうがよろしいでしょうか」
《チッ―――いや、兵装の虚を突いた良い戦法だ。取り入れて損は無いだろう》
『あの意地汚い呆けた間抜け面の悪童の技だと? 直ぐに止めなさい。奴と同じ技を吸えば知能指数の低下は免れないぞ』とは流石の王小龍も言えない。事実、本当に良い戦法であり対ネクスト戦においては非常に有用な技術に成り得るからだ。
間接的とはいえ、あのキドウ・イッシンを認めてしまった自身の客観性にそこはかとない苛立ちを感じた王小龍だったが、直ぐに思考を切り替えて目の前の敵に集中する。先ほど自身がリリウムに言った通り、余所見をしていい相手ではないのだから。
いかがでしたでしょうか。
王小龍おじいちゃんのイッシン君に対する評価はツンデレです。
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