凡人は気まぐれで山猫になる   作:seven4

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痩せようと試みて早一ヶ月。500gの増量に成功しました。何故だ。あっ今回短めです。


133.開戦準備と暴君

《AMSシンクロ率87%、FCSオールグリーン、ジェネレータ稼働率94%、全駆動アクチュエータは正常に稼動中、戦闘シークエンス開始。3……2……1……今》

 

「――っと。相変わらず慣れねぇな、この感覚」

 

《この前まで文字通り接続されていた人間が何言ってる》

 

「やっぱり違ぇもんだって。こう、なんて言うか、熱い風呂に()かってるのと入るのとじゃ全然別物っていうか」

 

《なら今のうちにたっぷり浸かっておけ。最高のパフォーマンスを発揮出来るようにな》

 

 

コックピットのスピーカーから聞こえるセレンの素っ気ない返事にイッシンは苦笑すると同時に懐かしさを覚える。ナインボールとの一戦を終えてから【フラスコと硝煙の桃源郷】で目覚めるまでJOKERに接続されっぱなしだった彼からすればAMS接続は案外心地良くなっているのではと思う者もいるだろうが、実際のところそうでもないらしい。それこそ彼の言う通り『熱い風呂に浸かるか入るか』の違いなのだろう。浸かってしまえば極楽だが、入る瞬間というのは拷問のような責め苦に耐えなければいけないからだ。

 

そんな他愛ない会話を交わしていると不意に隣のハンガーから通信が入る。いったい誰かとコール画面に目を向けるイッシンだったが、表示されていた人物の名前があまりに意外だったので思わず感心してしまう。

 

 

(わり)ぃセレン。ちょっと意外な客からコールだ」

 

《? 誰だソイツは》

 

「まぁ黙って聞いてりゃ分かるさ。――ほいほ~い、聞こえてるぜ~。皆の絶対的アイドルのイッシン君で~す☆」

 

《ふざけた返事だ。切らせて貰う》

 

「まぁまぁそう言うなって。天才王子のオッツダルヴァ様~あっ今はマクシミリアン・テルミドールだったか。じゃあ同盟を組んだ記念に親しみを込めてテルちゃんってことで」

 

《……こんな輩に我々のクローズプランを見抜かれていたと思うと全てが馬鹿らしく思えてくるな》

 

「おいおいあんまり褒めんなよ。お前等が考えた厨二病全開の極悪空想人類救済計画と比べたら俺なんて蟻のすかしっ屁みたいなもんだぜ?」

 

《やはり切るぞ。貴様のような獣と会話するのは精神衛生上、不要だと判断した》

 

 

通信画面に映し出されたそこには元【ランク1】オッツダルヴァもとい【ORCA旅団団長】マクシミリアン・テルミドールが、呆れと諦めと自嘲が()い交ぜになった顔に片手を当てて溜息をついている。カラード始まって以来の実戦型天才として名を馳せていたオッツダルヴァを以てしてもイッシンのふざけ抜いた言動に太刀打ち出来ない場面を見ると、オッツダルヴァの対応力が過大評価なのかイッシンの言動が酷すぎるのか検証したくなってくる。圧倒的に後者なのだろうが。

 

 

「そう言うなってテルちゃん。これでも結構アンタが居てくれて心強いと思ってるんだぜ。政治的配慮があったとしても伊達に元【ランク1】を張ってた訳じゃないだろ? まぁその政治的配慮してくれた古巣は陥落しちまったけども。そこんところどう思ってんのよ」

 

《相変わらず一言多いな貴様は。こんな事態でなければ、改めて一対一でどちらが上か分からせてやるというのに》

 

「ラインアークのことまだ根に持ってんのか。安心しろよ。ありゃ完全に俺の勝ちだから」

 

《……いいだろう。この戦いが終わったらその減らず口をすぐに縫い閉じてやる》

 

「期待せずに待ってるぜ。とりあえず、精々死なねぇように頑張ってくれや」

 

 

そう言うとイッシンはオッツダルヴァとの通信を閉じ、再びセレンとの通信に切り替えた。スピーカー越しのセレンは少々疲れたような溜息を吐いて彼を(たしな)める。

 

 

《――もう少し配慮というものをしてやれないのかお前は》

 

「配慮ってなんだよ。『これから始まる大一番を力合わせて乗り越えましょう!』なんていう(がら)でもねえだろ。ならいっそ憎まれ口叩いて喧嘩の約束したほうがよっぽどマシだぜ」

 

《お前がそれで良いなら構わないが………しかしオッツダルヴァまで来ているのは確かに意外だ。カラードは本部を意地でも明け渡したくないようだな》

 

「まぁ大丈夫だろ。オッツダルヴァにメルツェル、ダンとドン・カーネル、リリウムたんと俺達が居るんだ。それに現場の指揮をローゼンタールCEOが取ってるってことはどうせ【ランク6】のジェラルドと【ランク11】のダリオも居る。これで負けるビジョンなんか逆に見えねぇよ」

 

 

イッシンの言う通り現在のカラード本部にはリンクスの中でも上位および最上位の実力を有する者が集結しており、その数は護衛であるヤンとカニスを含めれば合計10機の戦力だ。現状の企業体制を確固たるものとした国家解体戦争が僅か26機のネクストで完遂されたことを踏まえれば、10機のネクストというのは世界を変えうる力と形容して問題ない戦力である。

 

 

《それはそうかも知れないが……ん?コレは……》

 

「どうしたよセレン」

 

《いや、どうやらカラード本部に現れた船団と同じ編成の船団が各企業の本部に先程現れたらしい。GA、有澤重工、アルゼブラ、インテリオル、ローゼンタール、トーラス……ラインアークにもか》

 

「へぇ、そりゃ大盤振る舞いだな。でも確かLOSERSはメアリー・シェリーが死んだから残り4人のはずだろ? そんなこと出来んのかね?」

 

《それこそ奴らにしか分からんさ。――発進準備完了、いつでも行けるぞ》

 

「了解。キドウ・イッシン、JOKER、出るぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと配備完了、か。この俺をここまで待たせるとは随分と手間取ったなアンミル」

 

《そんなこと言うなよマウロスクく~~ん。あの量を気取られずに配備するのって結構神経使うんだぞ~~? この世界の理に沿って滅ぼすって言った僕自身のせいだけども》

 

「神という種族は自らに縛りをかけるのが好きなのだな。俺のように我が道を進むには縛りなど要らないだろう。実に下らない」

 

《流石の傲慢だねぇ。神話の時代でも神様相手にそこまで言う人間はいなかったよ》

 

「単にそいつらの自我が弱かっただけだろう。身に余る強大な精神を完全に屈服させる自我の強さこそ神に対抗出来る唯一の手段だと言うのに」

 

《まるで僕らに挑戦するような口振りだねぇ? たかが定命の分際で》

 

「無論だ。いつか必ず認めさせてやる。人間の可能性が如何(いか)に素晴らしく、その中でもこの俺が最も素晴らしいと言うことをな」

 

《ふふふ、期待して待とう。じゃあまずは君の力を見せてくれよ。インテリオルのネクスト部隊と戦った時、全然本気じゃ無かっただろ?》

 

《だからあの数を用意させた。――せいぜい刮目しろ、新世代のガキ共。この俺がAMS技術の真髄を教えてやる》




いかがでしたでしょうか。

マウロスク君、実はゲロヤバ能力を使える設定にしております。全然オリジナルだけども。乞うご期待ってやつです。

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