凡人は気まぐれで山猫になる   作:seven4

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やっぱり外呑みより家呑みの方が安上がりだと思いました。市販のレバーパテうめぇ。


134.チート

カラード本部から20kmの洋上。そこにはLOSERS所属であろうと推定される複数隻の所属不明輸送艦が停泊しており、出現時刻から考慮して何某かの攻撃準備を整えていてもおかしくないのだが、その場から動くどころか乗員が乗船している気配すら全くない。

 

全く以ての無。ただ在るだけの構造物としか見えない船団にローゼンタール所属の精鋭ノーマル20機を従えたノブリス・オブリージュとトラセンドのリンクス、【ランク6】ジェラルドと【ランク11】ダリオは防衛線が引かれた港で開戦に備えて睨みつけることしか出来なかった。

 

理由は主に二つ。一つは船団が仮にLOSERS所属だった場合、今までの傾向を踏まえると功を焦って先攻に打って出たこちらを返り討ちに出来るナニカを有している可能性が非常に高いこと。一つは所属不明船団が確実にLOSERS所属である確証が得られないこと。

 

前者は言わずもがな、この戦争に勝つために必要な理由付けがなされているが、問題は後者だ。あくまで企業ORCA連合側が戦争に勝利する仮定での話だが戦後処理で件の船団がどこかのコロニーから遣わされたものと分かった瞬間、矢面に立たされるのは撃破した企業つまりローゼンタールに他ならない。

 

そうなればオーメルとローゼンタールの二軸を失ったオーメルグループは空中分解して跡形も無く瓦解。三大グループが二大グループに早変わりとなる。残された技術者達は間違いなくGAかインテリオルのどちらかに吸収されるだろうが企業の体裁上、今よりも劣悪な労働環境におかれるのは必至だ。だからこそ現ローゼンタールCEOのレオハルトはトップレベルのリンクスを二人有していながら無闇な攻撃命令を出さず、不測の事態にも対応可能な必要戦力が確保出来るまで待機させているのだ。

 

とは言うものの、現場でただ只管(ひたすら)に敵の攻撃を待つというのも中々に精神的な疲労が高まってくる。カラードから理想的なリンクスと評されたジェラルドでも、それは例外ではない。

 

 

「未だ反応無し、か。腹立たしい程に不気味だな」

 

《どうしたジェラルド・ジェンドリン。前回と同じように戦う前から怖じ気づいたか》

 

「結果的にその感覚は正解だっただろ。なら今回も従うまでだ」

 

《………ふん》

 

《聞こえるか。こちらJOKERのオペレーター、セレン・ヘイズだ》

 

 

どことなく居心地の悪い空気が漂い始めた瞬間、凛々しい女性の声が二人の間に割って入ってその雰囲気を霧散させる。自身の踏み台にならない人間にはとことん興味の無いダリオは一体どこの誰かと思案する中、ジェラルドは持ち前の誠実さでしっかりと記憶していた彼女の名前を聞いて顔を明るくした。

 

 

「セレン・ヘイズ……ということはキドウ・イッシンも居るのか!」

 

《もちろんですとも騎士(ナイト)様。支援企業のローゼンタールが窮地と聞けば、このキドウ・イッシンたとえ火の中水の中、どこでも馳せ参じますよぉ!》

 

「それは心強い! (スピリット)(オブ)(マザーウィル)を墜とし、ラインアーク事変に参戦した君が居れば百人力というものだ! ローゼンタール専属としても鼻が高いよ! 今回も並々ならない戦果を期待するとしよう!」

 

《あヤベ。苦手な部類だコイツ》

 

《堂々と言うな。――後ほど、この港にオッツダルヴァも到着する。ダン・モロとドン・カーネル、リリウム・ウォルコットの三名は陽動の可能性に備えて反対側の港で待機中だ。仮に彼方(あちら)側が正解でも距離から見て3分で現着出来るだろう》

 

 

セレンの発した言葉にジェラルドは思わずピクリと反応してしまう。オッツダルヴァ。ランク1を拝して起きながら反動勢力の長として活動していた反逆者。確かに当初は、いや今でもそう思っている。しかし『企業の罪』を知った後のジェラルドは、そんな彼の選択を一方的に軽蔑することが出来なくなっていた。

 

本来人類が為し得る筈の進化を愚かな老人たる企業の利己(エゴ)で摘んでしまった事実。そしてその企業が今日(こんにち)まで存在したことで数多くの人々の生命を生き長らえさせてきた事実。善悪の彼我を大きく超えた二つの事実の計り方をジェラルドはまだ知らない。だから彼は結論を出さず、今の状況に即した最善の選択をした。

 

 

「……そうかオッツダルヴァが……いや、よそう。今は戦力が多い方が良い。たとえそれが偽善だとしても」

 

《ふん、救済の革命家気取りが何の役に立つ? せいぜい脆い弾除けにでもなれば上等だろうよ》

 

《おっ良いこというねぇダリオっち~。その考えはほぼ全面的に肯定するぜ》

 

《黙れ三下。俺よりランクが低いヤツが軽々しく俺と会話できると思うな》

 

《うわマジかコイツ、ゲロヤバモラハラ野郎じゃん》

 

《イッシン、だから言葉遣いを――な、レーダーに反応! これは……馬鹿なネクストだと!?》

 

 

セレンの驚愕する声とほぼ同時に所属不明輸送艦すべての天井ハッチが開き、中から人型のナニカが徐々にせり出してきた。

 

旧レイレナード社の標準ネクスト【03-AALIYAH(アリーヤ)】とプロトタイプネクストを掛け合わせたような禍々しい機体形状に、面取りされた三角のバインダーが両肩に装着され片手にはレーザーブレードの発振装置、もう片方には大型のレーザーライフルらしき射撃兵装が装備されていた。プロトタイプネクストに並ぶ旧レイレナード社が遺した負の遺産、自律式ネクストである。しかしそれらに相対したジェラルド、ダリオ、イッシンの反応は意外にも冷めたものだった。

 

 

「あれは……レイレナード社の002-Bか。それが30機とは、まぁ中々豪勢だな」

 

《ふん、撃墜数(スコア)にもならん。拍子抜けだな》

 

《いや、まぁ、うん。あのレーザーブレードは確かにヤバいけど、実際問題ヤバいかと言われると……》

 

 

彼等の大小様々な消極的反応には理由があった。自律式ネクスト最大の欠点は搭載されたAIがあまりにお粗末なことである。標的に対して不必要な攻撃行動を取るほか、搭載されてはいるもののQBとOBをAIの仕様上、発動する事が出来ないのだ。もちろんリンクス戦争を生き抜いたセレンが002-Bの存在を知らない筈も無く、疲れたような溜息を吐いてマイクに音声を乗せる。

 

 

《――一応、警戒は怠るな。固めのノーマルだと思って相手をすれば大火傷では済まないぞ。アレの攻撃は生半可ではないからな》

 

「そりゃそうだけどよ? 30機って中々エグい数字だけどよ? なんつーか、このメンバーならあの数の自律式ネクスト相手でも意外と楽に――ってあれ。なんか思ってたのと結構……いや全然動き違くね!?」

 

 

それまで002-Bを侮っていたイッシンが感じた違和感はなんら間違っていない。何故なら輸送艦から飛び立った鈍重な筈の002-BがQ()B()()()()()()()()()()()()()O()B()()()()()()()()()()()。しかもその動きは決してお粗末なAIのものではなく、カラードの上位リンクスに勝るとも劣らない的確で論理的な軌道を描いている。刹那、発信源不明の超広域通信がカラード陣営に入った。

 

 

《俺の名はサー・マウロスク。LOSERSの一角にして貴様等を滅ぼす人類最高のリンクスだ》

 

「マウロスクってことはセレンの――」

 

《本来なら一方的に終わらせるのが俺の流儀だが、アンミルの意思に従って貴様等に002-Bのタネ明かしをしてやる。ありがたく思え》

 

《……サー、本当に貴方は……》

 

《俺のAMS適性は特異でな、A()M()S()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()だ。つまり貴様等同盟が相手取る002-B全機に、俺が乗っていると思え

 

《なっ!? 馬鹿な、そんな芸当が――》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《さぁ……せいぜい足搔(あが)いて見せろ!!!》




いかがでしたでしょうか。

マウロスク、君にはツヨツヨ能力を授けたから活躍するんだよ……。

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