凡人は気まぐれで山猫になる   作:seven4

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ちょっと余裕が出来たので、早めに投稿。

そういえば、参考にしようと思ってUCの小説を読み返したんですが諦めました。プロってすげえ(小並)


15.化け猫VSヒーロー・Ⅰ

イッシンはストレイドを前進させつつ、コンソールパネルにて各武装の確認を行う。

 

左手にはBFFの名銃【051ANNR】

右手にはインテリオル社製レーザーライフル【LR02-ALTAIR】

背部両側はオーメル製散布ミサイル【MP-O200I】

肩部にはインテリオル社製AS(AutoSighting)ミサイル【SM01-SCYLLA】

 

俗に『ダブルトリガー』と呼ばれるこのアセンブルは、現状イッシンが用意出来る最良の装備であった。原作通りのランクマッチであれば背部と肩部のミサイルは廃し機体の軽量化に努めるべきだろう。だが、今回は相手の行動予測が読めないために万が一の保険として搭載している。

 

ストレイドがマップ中央部、廃ビル群が無造作に倒壊している場所に近付くと、イッシンは機体上空に向け肩部のASミサイルの発射口を展開させた。

 

 

「先ずは挨拶から……!」

 

 

トリガーを引くと、ミサイルは白い尾を牽きながら発射され、空高く進んでいった。数瞬後、急激な方向転換をしたかと思えば一点をめがけて突き進んでいく。

ASミサイルは、その名の通り発射側でのロックを必要とせず、ミサイル本体が敵機を捕捉して命中させるシステムを採用している。その様子は、空高く飛翔し獲物を見つけるや否や、一直線に狩りにいく荒鷲にも似ていた。

 

イッシンはASミサイルが敵機を捕捉している事をレーダーの軌跡で確認しつつ、ストレイドをそのまま前進させる。ミサイルの着弾位置は、即ち相手の位置。戦闘において機先を制するのは相手の位置情報をいち早く入手出来た者だ。

 

ミサイルの反応が消える。刹那、爆発音と金属音が入り混じった鈍い不協和音が辺りに響いた。

 

 

(掛かった!)

 

 

2時の方向、距離1500。

ストレイドはQBを噴かし廃ビル群を駆け抜け、音速を超えるスピードでビルとビルの隙間を抜けていく。既にレーダー上ではセレブリティ・アッシュの信号は捉えており、相手もこちらを捕捉していると考えた方が良い。

 

セレブリティ・アッシュとの会敵まで距離300。

 

操縦桿を握るイッシンの両手に自然と力が入る。それに呼応するように、ストレイドの腕部からも僅かな駆動音が漏れ出た。

 

 

「それじゃ、行きますか!」

 

 

イッシンは足元のペダルを勢いよく踏み抜き、ストレイドに戦闘開始の合図を伝える。その合図に内包された荒々しい闘争心に応えたストレイドは横っ跳びの要領でQBを噴かし、両手に据えられた双銃を構えながら飛び出した。

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

――イッシンの視界の先に居たのはセレブリティ・アッシュ、ではなく()()()()()()()()。その閃光がストレイドのメインカメラを覆い尽くした。

 

一瞬。

 

状況整理の為の、ほんの一瞬だけイッシンの思考にラグが生まれる。時間にして1.0秒にも満たないその一瞬は、相手に取って『待望の一瞬』だった。

 

鈍く甲高い金属音と爆発音と共に、ストレイドは大きく後方へ仰け反りバランスを崩す。脳が偏ったと錯覚するような激しい衝撃に対し、イッシンの身体は反作用的に大きく前へ揺さ振られるが、イッシンは操縦桿を離さず再びペダルを踏み抜いた。

 

即座にストレイドのメインブースターが点火し、衝撃を受けた方向へQBを発動。瞬間時速1000kmという急激な増速からもたらされるG(加速度)により、身体中の血液が背中に凝縮される不快感を感じながらもイッシンは止まらず、ストレイドに再び銃を構えさせた。

 

イッシンはQBの加速を殺さず、眼前に展開されている数十個もの閃光の中へ強引に飛び込み、トリガーを引く。

【051ANNR】と【LR02-ALTAIR】による掃射は対ネクスト戦において非常に有効な火力であり、被攻撃側が無傷でやり過ごせる事は皆無だ。惜しむらくは、イッシンが閃光の中へ無理に突入した為に射撃統制装置(Fire Control System(FCS))のロック機能が正常に作動せず、無捕捉(ノーロック)状態であったことであろう。

 

そんな事実に構うこと無く、イッシンはトリガーを引き続ける。あくまでこれは敵機後退を主眼とした射撃であり、当たれば御の字だと割り切っているのだろう。そんな掃射を継続したまま閃光の海より抜け出すと、一機のネクストが後方へ離脱しようとしていた。

 

青と白を基調としたカラーリングにオレンジの差し色。

ストレイドと同じく『TYPE(タイプ)-HOGIRE(オーギル)』の頭部。

主にGAグループのパーツで占められた機体構成。

左肩には古いコミックヒーローのデカール。

そんな機体を見間違える筈も無く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「当て逃げとは良い度胸じゃねえか、No.3のダン・モロさんよぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……参ったな。今ので後退しないのは君が初めてだよ」

 

「度胸には自信があるんでな!!」

 

 

ダンの呆れ混じりの賞賛を手厳しく返すと、イッシンは即座にシステム系を確認する。幸い、FCSは既に回復しており正常にセレブリティ・アッシュを捕捉している。

 

であれば、やることは一つ。

 

イッシンは背部両側の【MP-O200I】を展開。全てのミサイル発射口が正面に立つセレブリティ・アッシュめがけ獰猛に口を開いた。

 

 

「こいつは、お返しだ!!」

 

 

トリガーを引く。

瞬間、吐き出されたミサイルは白い尾を牽きながらセレブリティ・アッシュに野犬の如く襲いかかる………ことはなく、ミサイルの本分を果たせぬまま爆発した。あまつさえ、飼い主であるストレイドの【MP-O200I】を誘爆させ、その背中を傷つけてしまうという最悪の結果と共に。

 

 

「なっ………!」

 

 

ストレイドは脚部を接地させていたため大幅に姿勢を崩すことは無く、直ちに戦闘姿勢に立て直す。が、それ以上にイッシンは背部で突如引き起こった誘爆に動揺していた。

 

誤作動?

有り得ない。ランクマッチ内ではそういった不確定要素は排除されているとセレンから聞いている。

なら、何故?

 

 

不意にイッシンは先程の奇襲を思い出す。

 

 

眼前に展開された閃光は、おそらくフレアだろう。

だが、その後の()()は?

原作中にてセレブリティ・アッシュの兵装は実弾ライフルと近接武装(レーザーブレード)、初期分裂ミサイルと追加レーダーのみ。ストレイドを硬直させる程の武装は持ち得てない筈だ。

 

ということは………。

 

 

「散布は勘弁願いたいのでね、破壊させて貰った」

 

 

ダンの声が聞こえ、イッシンはセレブリティ・アッシュの方向をみると、()()()()()()()()()()()()()がこちらを向いていた。

 

 

「流石に至近距離からの()()は反応出来ないようで安心したよ」

 

 

【049ANSC】

 

BFF社の最初期モデルである【049ANSC】は搭載弾数の多さ、使い勝手の良さから正式採用(ロールアウト)されて数十年経った今でも、その性能に定評のあるスナイパーキャノンである。

しかし同時に、日進月歩の技術革新が日々積み重ねられているこの世界において間違いなく旧式に分類される骨董品でもある。

そんな代物が、セレブリティ・アッシュの背部に搭載されていた。

 

 

王大人(ワンターレン)から勘の良さは聞いていてね。倉庫からわざわざ引っ張り出してきた甲斐があったよ」

 

「……たかが新米(ルーキー)相手にトップランカー同士が内輪話なんて、大人げないと思わねぇのかよ」

 

 

イッシンの問いに、ダンは暫し考え、答える。

 

 

「思わないね、全く。『敵を知り己を知れば百戦危うからず』とよく言うだろう?」

 

「へっ。当代最強のリンクス様に警戒されるなんて勲章ものだな」

 

 

次々と繰り出す軽口とは裏腹に、イッシンはコンソールを睨みながらストレイドの損傷状況を確認していた。

 

両背部の【MP-O200I】は誘爆により使用不可。

メインブースター出力は60%まで低下。

コアは初手の狙撃によって損傷させられたが稼働に問題は無く、エネルギー供給は正常だ。

使える武器は【051ANNR】【LR02-ALTAIR】【SM01-SCYLLA】の3種。一応、格納武器も搭載してはいるが使えるかは甚だ疑問が残る。

 

一方のセレブリティ・アッシュはほぼ無傷。

【SM01-SCYLLA】の先制ミサイルで装甲に若干のへこみと煤をつけているが、ダメージは皆無だろう。

 

 

(畜生、スナイパーキャノンは俺に恨みでもあんのかよ!)

 

 

イッシンは自身を二度続けて射殺そうとする長筒に心底悪態をつきながら、勝ち筋を見つけ出そうとしていた。

 

 

ランクマッチ開始から約3分。

喧嘩は始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか。
セレブリティ・アッシュの機体構成は追って掲載する予定です。

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