……このゲーム向いてないのでは?(今更)
追記:終盤の一部文章を改訂しました。2020/5/29
ランクマッチ開始から数分。
ランクマッチにおいて数分など序盤も序盤。
これから最高潮に向けて
当の本人達も足を組み、三流プロレスを観戦しているような面持ちである。
無理もないだろう。
双方合わせて僅か五手にも満たないやり取りで片や重傷、片や無傷となれば結果を予想出来ない方が難しい。
6人居たカラード職員の内、ダンの初手でモニターから離れたのは4人。残った2人も二手目が決まった瞬間、つまらなさそうに離れていった。
――やっぱり
――そんなもんだろ。それより昼飯行こうぜ。
――にしてもダン・モロも大人げねぇな。
――喧嘩吹っ掛けた
その
「貴様は外さんのか」
「おいおい、ランクマッチはギャンブルと同じだろう? 一発逆転がいつ起きるか判らないから面白いんだ」
「……確かにな」
ジョージの言う通り、ランクマッチが人対人である以上は何が起こるか判らない。それはセレンも同意見だ。しかし、その芽すら摘み取られたような現状況の前では只の皮肉にしか聞こえない事も確かだった。
暫しの沈黙。
モニターの向こう側から発せられる轟音と空調のノイズが混じった、どこか心地良いその沈黙を先に破ったのはジョージだった。
「なぁ、一つ聞いてもいいか」
「何だ」
「
「………」
「隠遁したいなら分かるんだ、その方が楽だからな。だがあんたは身を隠す訳でもなく顔を変えた訳でもない。ただ、名前を変えただけ。どうし――」
「無粋な男は嫌われるぞ」
セレンは遮るように言い放つ。それ以上踏み込むな、という明確な意思とともに。
流石のジョージも察したか、鼻息を一つ鳴らして押し黙り、再度モニターを眺める。
ジョージに追求の意思が無いことを横目で確認し、セレンはモニターを見つめる。
そこには満身創痍となりながらも、己を傷つけた相手に一矢報いんと戦場を駆けるストレイドの姿が映し出されていた。
……負けるなよ。お前は私の――
「――だあぁ!チートだろ、今のは!」
《努力の賜物だと言って欲しいね》
ストレイドから放たれ、イッシンが必中を確信した【051ANNR】と【LR02-ALTAIR】の偏差射撃は空を舞うセレブリティ・アッシュに、さながら白鳥の如く軽々と躱された。
戦術の立て直しのために、砂埃を巻き上げながら廃ビル群へ後退するストレイドをダンが見逃す筈もなく、セレブリティ・アッシュは背部兵装【049ANSC】を構え、追撃する。
ストレイドのコックピット内に衝撃が駆け抜け、電子音声による損傷報告が鳴り響くが、イッシンは構わずにフットペダルを踏み込み、比較的頑丈そうな廃ビルを盾にして一息入れる。
「ハァ…ハァ…。当代最強は伊達じゃねぇってか」
《気付いて貰えたようで何よりだ》
「……その余裕
一息入れた事によって得られた僅かな休息と冷静は呆気なく消し飛び、イッシンの苛立ちと共にストレイドはQBを始動。盾となった廃ビルから飛び出し、再び【051ANNR】と【LR02-ALTAIR】による掃射を敢行する。
対するセレブリティ・アッシュは、もう一つの背部兵装であるVTFミサイル【DEARBORN02】を展開。脱兎の如く駆け回るストレイドに対し、計四発のミサイルを発射した。
VTFとはその名の通り(
「そんな鈍亀に当たるか!」
イッシンはセレブリティ・アッシュへ向けられた【051ANNR】および【LR02-ALTAIR】の銃口をVTFミサイルへ変更し、己の盾となる廃ビル群を駆け抜けつつ迎撃する。
鉄と光の雨に晒されたミサイルは使命を果たすことなく爆散し、続くミサイルも爆発に巻き込まれ誘爆。虚空に一輪の黒薔薇が姿を現した。
「まさか。君相手に当たると思ってないさ」
ダンの声が聞こえたかと思えば、空中に漂う黒い薔薇が内側から穿たれ、セレブリティ・アッシュが
セレブリティ・アッシュの急接近にイッシンは行動の即断が出来ず、回避のQBが一瞬遅れる。
「うおっ!」
《片腕、貰うよ!》
その機を逃さず、セレブリティ・アッシュは【EB-R500】を斬り上げながら振り抜く。金属が溶断される際に発せられる特有の音と、電子回路がショートする音が混じりながら、ストレイドの右腕が孤を描き、宙を舞った。
ストレイドは斬り上げられた衝撃により、機体右側が大きく跳ね上がる。
恐らくランク下位いや、上位のリンクスであったとしても、自機の戦闘継続能力を勘定した上で降参の意思を伝えるだろう。そして、自らの力量不足とNo.3の圧倒的実力を痛感し、今後に活かす手立てを考える筈だ。
しかし残念かな。
ストレイドのパイロットに
イッシンは機体右側に発生した衝撃を利用しつつ、機体左側のQBを始動。その場で
「じゃあ、てめえの頭も貰うぜ!」
《なっ?!》
ストレイドの右脚
咄嗟の判断でダンはセレブリティ・アッシュの右腕を挙げ防御姿勢をとるが、ネクスト1機分の重量が乗った回し蹴りを片腕で受け止められる道理はなく。
右腕に装備していた【EB-R500】は中央からひしゃげ、その威力を物語るようにセレブリティ・アッシュが横へ吹っ飛んだ。
まるでアニメのようにそのまま廃ビル群へ突っ込み、轟音と土煙が巻き起こる。駄目押しと言わんばかりに、突っ込まれた廃ビルが瓦解し、セレブリティ・アッシュを上から瓦礫の毛布で包み込んでいった。
「ふぅ…ふぅ…っふぅー。……これでどうだ!」
瓦礫が土煙を巻き上げる様を見届け、イッシンが声を上げる。
ダンからの腹立たしい返答は聞こえず、代わりに倒壊した廃ビル群の瓦礫が少し崩れる音がした。
イッシンはそう考え、多少の安堵と共に自ら築造した瓦礫の山へ歩を進めた。
ランクマッチは撤退等による勝利の概念が存在しないため、あくまで相手ネクストが戦闘不能となった場合に強制的に勝敗が決まる。つまり、勝敗が明示されない以上、セレブリティ・アッシュ自体は未だ戦闘継続可能であるという事になる。
まぁ搭乗者が気絶している以上、コア部に牙を突き立てればいいだけの話なのだが、それが億劫に感じる程にイッシンは疲労していた。
「たくっ……。早くやられてくれよ」
《悪いが、こちらにも
刹那、廃ビルの瓦礫が盛り上がり、崩れる。
薄汚れた土煙と瓦礫の山から、まるで不死鳥の如く甦ったかのようにセレブリティ・アッシュが再び立ち上がる。
今回が初めてとはいえ、幾度となく切り結んだイッシンにとってセレブリティ・アッシュの立ち姿は戦闘前と同様に感じられた。
「………
《いや、随分効いたよ。お陰でブレードが壊れた》
そう言い、ダンはセレブリティ・アッシュは右腕をヒラヒラと踊らせる。
ダンの言う通り、右腕に装備された【EB-R500】は火花を散らしながらショートの閃光を垂れ流している。どんなに良く見積もっても、兵装として使用する事が困難であることは明白だった。
《さて、と。無為に長引かせるのは性に合わないんでね。そろそろ決着と行こうじゃないか》
「……奇遇だな。俺も同じ考えだ」
イッシンは手元のコンソールを操作し、ストレイドの現状を把握する。
メインブースター出力は変わらず60%
切り飛ばされた右腕の痕では電子系のショートが絶え間なく火花を散らし、使える兵装は左手の【051ANNR】と両肩の【SM01-SCYLLA】のみ。しかも、双方共に残弾僅か。
(こりゃ、
イッシンはそう思案すると、左腕に格納されていた格納武器【EB-O700】の動作確認を行う。
【EB-O700】は予備兵装として使用される
あくまで予備兵装であるため威力等は通常兵装に比べて劣るが、ジリ貧の消耗戦に於いては心強い効力を発揮する兵装でもあった。
(
両者は立ち尽くしながら、お互いを睨み合う。
悠久にも思える機先の読み合いの果てに、動いたのはストレイドだった。
ついで、セレブリティ・アッシュもOBによりストレイドへ弾丸の如く向かっていく。
そして、互いの戦闘距離が重なった瞬間。
ストレイドとセレブリティ・アッシュの間に、眩い閃光が放たれた。
如何でしたでしょうか。
最近は某実況者さんの配信をひたすら眺めているのですが、自分以外が動かす一人称視点は勉強になりますね。
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