すまぬ(つд`)
サブタイトルは勢いでつけました。
あとで変えるかもです。
GAグループ本社『THE・BOX』77階 最高評議室
GA(
本社自体の外見は、荒野に似つかわしくなく一般的な高層ビルであるが『THE・BOX』たる由来は、
本社を中心に厚さ20mに及ぶ超剛性カーボン合金製の壁が四方500m毎に3枚設置されており、壁の全高は1kmを誇る。
壁ごとの出入口には声帯・網膜・指紋・血液・パスワードの五重認証システムが導入されており、この過剰なセキュリティの前には、想像を絶するような訓練を受けた人間であろうと、GAグループにて登録されていなければ侵入不可能である。
更に守備部隊として自立砲台1500門、ノーマル800機、AF〝ギガベース〟3機、GA専属ネクスト1機が常駐しており、仮に今すぐ企業間戦争が勃発したとしても即時応戦が出来るだけの戦力が集結していた。
正に『
その箱入り娘の最上階〝最高評議室〟では、GAグループ傘下企業の各執行役員による定例会議および各分野の売上報告が開催されていた。
部屋の中央には巨大な大理石製の円卓が設置されており、席次はグループ宗主を最上座において企業規模順に下座へ向かっていく形となる。
「―――以上が、わが社クーガーからの報告となります。何かご質問はあるでしょうか」
「……ひとつ、いいかね」
最下座に座るクーガーCEOからの報告を受け、対面に座るGAグループの宗主であるスミス・ゴールドマンが口を開く。
ゴールドマンは禿頭と丸眼鏡が特徴的な、恰幅の良い齢70を過ぎた老人である。元々は末端の平社員にすぎなかったが、休暇中に身内遊びの一環で計画・発案したプレゼンが社内外を問わず好評を博した事を機に、才能が開花。
実現不可能と言われた数々のプロジェクトを難なく成功させ、今ではグループ宗主の席を手にするまでになった傑物である。
彼の最大の功績が『AF設計思想の発案および開発』と聞けば、その重要度が計り知れないことは理解出来るだろう。
ゴールドマンは手に持ったペンを弄りながら、クーガーCEOを見つめる。その眼光は齢70を過ぎてなお、人を射殺さんばかりの鋭さを持っていたが、クーガーCEOは怯まずゴールドマンを指名する。
「なんでしょうか、宗主」
「資料と説明を見た限り、企業業績は前年比11%増。主軸のロケット産業部門も好調だな」
「ええ、そうです」
「ではネクスト部門はどうだね?」
クーガーCEOの眉が一瞬引きつる。
GAグループはインテリオル・オーメルと異なりネクスト技術で総合的に一歩出遅れており、ブースター関連においては完全に後塵を拝している。
それはクーガーCEOも理解しており、だからこそ他グループの人材を引き抜いてまで技術開発に力を入れている。
「先ほども申し上げた通り、わが社が新開発のブースターについては現場からも好評を――」
「
「……どういう意味でしょうか」
「出力データとエネルギー効率比を確認したが、アレは従来型を再調整しただけだろう。そんな物は新開発とは言わん、只の改良品だ」
評議室の空気がピリつくと同時にクーガーCEOの顔つきが、僅かにではあるが悲壮感を漂わせ始めた。まるで父親に叱られている子供のように、その背中は小さくなっていく。
「知っての通り、わがグループのブースター部門はインテリオル・オーメルには大きく遅れをとっている。その中で
「……仰る通りです」
「よろしい。……君達には期待している。必要なら私自らトーラスへ技術供与の交渉をしよう。彼等の片割れも、元はわが社の一翼だからな」
手厳しく指摘し、柔らかく期待と手助けを示す。
数多の古狸共と交渉のみで渡り合った末に研鑽された懐柔の術を駆使し、ゴールドマンはクーガーCEOを諭した。
クーガーCEOも幾分か落ち着きを取り戻したようで、宗主に一礼すると後ろに控える秘書を呼びつけ、耳打ちする。
クーガーの技術者はしばらく休めないようだな。
ゴールドマンは内心微笑んでいると、進行役の評議室長が口を開く。
「それでは、今回の定例会議はこれにて閉――」
「待って頂きたい」
異議の声が上がった方向を見れば、一人の男性が不敵な笑みを浮かべながら他の執行役員を見渡していた。結びを汚された評議室長は多少の不満を顔に出し、男性を指名する。
「開発本部長、いかがいたしましたか」
「皆様。もう一つ議題をお忘れでは?」
開発本部長と呼ばれた男性は、その地位を獲得出来る才能を持つが故の傲慢さをひけらかしながら自信満々に勿体振る。
「皆様ご存知のように、先日わがグループが誇る新型AF〝ギガベース〟が撃破されるという事態が発生しました。それもカラードに登録されて間もない新人リンクスに、です。」
評議室が静かにざわめいた。
しかし、彼等は本当にギガベース撃破の報を知らずにざわめいた訳ではない。
開発本部長以外の執行役員達が
開発本部長は周囲の反応を意に介さずに続けた。
「問題は護衛部隊が居たにも関わらずなぜ撃破されたのか、という事です。………ご説明願えますかな?〝BFF上級理事〟
開発本部長の視線を追うように、評議室全ての視線が一人の老人に注がれた。グレースーツを着こなした痩躯の老人は何事も起こっていないかのように、後ろに控える少女に声を掛ける。
「リリウム、コーヒーを頼む」
「承知しました。
「……聞こえておいでか、御老体」
自身の発言を無視されたかのような立ち振る舞いに、開発本部長はこめかみに青筋を立てながらも、苛立ちを押さえつつ尋ねる。リリウムを目で追っていた王小龍は開発本部長へと向き直り、首を傾げた。
「失礼、取りあう価値のない会話は聞き流す性分でして」
「価値がないだと! グループの信用に関わる重要な問題を引き起こした張本人が、何を言うか!!」
自らの会話を不必要と断じられた事にプライドが傷つけられたのか、開発本部長は円卓に拳を叩きつけ怒声を上げた。
対照的に、王小龍は冷笑を浮かべながら静かに開発本部長を見つめる。
「それは言い様ですな。私から言わせれば、グループの信用に関わるのは貴方だ。」
「何だと!?」
「当時の護衛体制はギガベースに搭載されたレールキャノンによる超長距離砲撃を主軸に展開していくものでした。
しかしながら
「馬鹿な!レールキャノンの整備性は良好であるとの運用試験結果が出ているんだぞ!」
「……リリウム。撃破されたギガベースのブラックボックスと、現場検証に当たった整備員の記録を」
いつの間にか王小龍の後ろに戻っていたリリウムは王小龍へコーヒーカップを手渡したあと、手元のブリーフケースから資料を取り出し、開発本部長を含めた執行役員に配る。そうして全員に配り終えると、リリウムは再び後ろへ控えた。
資料に目を通して一分も経たず開発本部長の肩が震え始め、資料を持つ手に過剰な力が入り、顔が引きつっている。
その様子を見た王小龍はカップのコーヒーを一口含み、大袈裟におどけてみせた。
「そういえば、開発本部長殿はレールキャノンの開発責任者でしたな。インテリオルより技術供与を受けながらこの程度の完成度では、グループの信用に関わるのはどちらか明白でしょう?」
「……なるほど。だが、ギガベースが撃破された理由には結びつかんな」
今まで静観を守っていたゴールドマンが口を開く。王小龍はジロリとゴールドマンを見遣ると微笑を浮かべた。
「無論、私に非がないとは言いません。ギガベースを守り切れなかったのは私の責です。処分は謹んで受けましょう」
「……構わん。それよりもレールキャノンの代替品をどうするか提案が欲しい。欠陥品を載せ続けるのは、私とて気が引ける」
「であれば有澤が適任かと。信頼性と制圧力は目を見張るものがあります」
「ふむ。……どうだ、有澤の」
ゴールドマンが〝有澤〟と声を掛けた先には、荒武者に見紛うばかりの壮年男性が座っていた。
その男性は口髭を生やし、ニホン伝統のゆったりとした和装に身を包んでいるが、その布越しからでも筋骨隆々であることは一目瞭然である。
「……二週間程頂ければ試作品を納品出来ます」
「結構。すぐに取りかかってくれ」
「御意」
「開発本部長、君への処分は追って連絡する。それまでは謹慎するように」
「……分かりました」
「―――皆様、宜しいですね。では、今回の定例会議はこれにて閉会いたします」
評議室長の一声により、執行役員達は重い腰を上げて一斉に立ち上がり出口へ向かう。王小龍もリリウムを連れ、波に乗ろうとしたとき不意に呼び止められた。声の主はゴールドマンである。
「王。すこしいいかね」
「……構いません。リリウム、外してくれ」
「承知しました、
リリウムは一足先に黒樫の重厚な扉をくぐり、静かに閉じる。他に誰もいない静寂の中で二人の老人が相対した。なんとも悲哀に満ちた構図だが、当の本人達からは強烈な威圧感が溢れ出ている。
海千山千、酸いも甘いもかみ分けた
「それで、用件とは?」
「……わがグループは現場第一主義だ。それは知っているだろう」
「勿論。現場の声が一番の判断材料ですから」
「だからこそ君に聞きたい。
王小龍は内心溜息をついた。
……まったく、鼻が良いことだ。この
「少なくとも、現状だと他企業への牽制程度には使えますな」
「展望は?」
「今後次第ですが、実力は最上位リンクスに匹敵するかと」
「……欲しいな。出来るか?」
「既に動いています。ご安心を」
「よろしい。任せたぞ」
密会を終えて、ゴールドマンと共に評議室を出た王小龍は外で待たせていたリリウムを呼ぶ。
リリウムはうら若き少女とは思えぬ堂々とした所作と共に王小龍の元へ向かったが、どこか不安そうであった。
「どうした、リリウム」
「
「……うむ。リリウム、一緒に来なさい」
「分かりました。
高速エレベーターに乗り込み、エントランスに到着するとGAグループの職場達が世話しなく歩き回っている。それを尻目に王小龍とリリウムは正面玄関へ向かい、外へ出た。
眩しいばかりの日光に照らされたが、今は春先。少し肌寒さが残る季節であるため、『THE・BOX』の敷地風景もどこか寂しげだ。
ふと道脇を見ると、有澤と呼ばれた男性が仁王立ちで辺りの風景を見ている。有澤の身長は2m近くあり、迫力、気迫ともに仁王そのものにも見えなくもない。
王小龍はヤレヤレと呆れながら有澤に歩み寄り、隣に立つ。お互いに顔を合わせず、風景を眺めながら会話が開始された。
「来たか」
「何の用だ、私も忙しい」
「良く言う。貴殿が他人の肩を持つときは、見返りを求める時だけだ」
「人を小悪党のように言うでない」
「事実を言ったまでだ。……
「……あるリンクスを手懐けたい」
「例の新人か」
「話が早くて助かる。……根回しはこちらで行う、連絡は後日でいいか?」
「構わん」
「決まりだな」
王小龍はそのまま有澤を見ず前へ進み、待たせていた要人用輸送車両に乗り込む。続いてリリウムを乗り込んだ事を確認すると、運転手は搭乗ドアを閉めてエンジンを始動させた。
静粛性と力強さがあいまった独特なエンジン音が響くと同時に、王小龍の携帯端末が着信を知らせる。
「……私だ」
《―――――――――》
「結果はどうだった」
《―――――――――》
「だろうな」
《―――――――――》
「ほう、お前をしてそこまで言わせるか」
《―――――――――》
「こちらでも動いている。無理はするな」
《―――――――――》
「ふっ、余計なお世話だ。切るぞ」
《―――――――――》
王小龍は携帯端末を切り、ふと車窓を眺める。
そこには枯れ草しか生えていない荒涼とした大地が広がっていた。
―――種は蒔いた。後は時流の雨に打たれ、どう成長するかだが、それは神のみぞ知る事だろう。
(さて、お前はどう転ぶ。キドウ・イッシン)
いかがでしたでしょうか。
この小説初の完全オリキャラ登場です。といっても本筋に深く食い込む事は無いのでご安心を。
ギガベースのレールキャノンは設定資料集から拝借しました。本編未使用って噓だと思うだろ、本当なんだぜ?
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