今後とも気楽に頑張って行きますので、よろしくお願いします。
《作戦エリアに到着。……酷い有様だな》
思わずセレンは呟いた。輸送機の眼下に広がる光景は焼け野原と呼ぶに相応しく、2機のAF〝ランドクラブ〟
「相当ヤバい相手みたいだな」
《うむ、気を引き締めねばなるまい》
《二人ともいいか。あくまでマロースの援護、救出が最優先だ。無理にやり合う必要ない、分かったか》
「言われなくても、こんなエグいこと出来る奴とマトモにやり合うつもりはねぇよ」
《小生は一向に構わん。イレギュラー風情に雷電が削り切れるものかよ》
「……自身満々で何より」
《よし、現時刻よりミッションを開始する。投下の衝撃に備えろよ。……3……2……1……投下、今》
セレンの掛け声と同時に、両輸送機のネクスト用懸架ワイヤーアタッチメントが解放され、ストレイドおよび雷電は直立体勢のまま自由落下していく。
空より産み落とされたネクスト達は、地上に降り立つ直前にメインブースターを噴かしてゆっくりと減速。ほぼ無反動で大地に降り立った。
《イレギュラーおよびマロースの反応は現在地より40km南東で確認されている。詳しい位置情報を送るから確認しておけ》
セレンの声に連動するようにコックピット内のコンソールパネルの光が増し、三次元的な地形図が表示された。世界最大級の農業プラントを謳っているだけあり、農耕に適しているであろう平坦な地形が黄緑色で形成される。その中で一際存在感を放っている二つの赤い光点には注釈で『Target Point』と示されていた。
「それじゃ行きますか」
《ストレイド、暫し待て》
雷電が遮る。イッシンがストレイドのメインカメラを向ければ、雷電の背中に折り畳まれた巨砲が展開している最中であった。そして展開が完了する頃には、ネクストの全高と同等の巨砲が姿を現す。
【OIGAMI】と銘打たれたソレは有澤重工の名作と名高いグレネードキャノン【YAMAGA】を遥かに上回る破壊力を誇り、その威力は数発でAFを墜とせるほど。しかし、そんな規格外の威力を得るためには〝砲身の長大化〟という代償が必要であった。ネクストにネクスト大の砲身を搭載するなど荒唐無稽に他ならないが有澤重工は折り畳み式の砲身とすることで、これを克服。晴れてネクスト史上最大の兵装の名を冠することとなった。
……まぁ並大抵のネクストでは砲身の自重に耐えられず脚部関節が故障するので、実質的にタンク型ネクスト専用の兵装ではあるが。
そんな化け物じみた巨砲を構えながら、雷電は
《ストレイドのオペレーター、表示された位置情報は正確か?》
《無論だ、誤差は±20m程度に収まっている。……どうするつもりだ?》
《
「はい?」
イッシンが間抜けた声を言うより早く、雷電は【OIGAMI】を発射。その衝撃と発射の風圧により付近の麦畑が大きくたなびかせ、その煽りを受けたストレイドは軽くよろけた。発射された砲弾は曲射の如く大きな弧を描きながら、刻一刻と青空の彼方へ吸い込まれていく。
突然の出来事に呆然としていたイッシンとセレンであったが、セレンは目の前で起こった事象をいち早く把握し、雷電に向けて怒鳴り散らした。
《雷電、貴様正気か!?今回のミッションはマロースの撃破ではなく救出なんだぞ!!》
《承知している。だからこそ射貫いた》
「……イレギュラーの目をこっちに向けるためか?」
《察しが良いな。その通――》
刹那、彼方の
ドオォォォォン!!
数秒後、先ほどの【OIGAMI】発射時の衝撃が可愛く思える程の轟音が雷電とストレイドを正面から襲う。
「な、なにが起こった?」
《……【OIGAMI】の曲射を撃ち落とすとは、相当の手練れと見た》
「冗談キツいぜ、そんなことあって――」
《イッシン、雷電!イレギュラーが速度1800で急接近、80秒後に会敵するぞ!》
イッシンの嘆き節はセレンの悲鳴にも似た怒号によって掻き消される。コンソールパネルを確認すれば、セレンの言う通り先ほどの赤点の一つが尋常ではない速さで
瞬時にイッシンの脳内には迎撃という言葉が駆け巡り、そこに撤退の二文字が介在する余地は無い。イッシンはすぐさまコンソールパネルを指で弾き、慣れた手つきで全兵装の動作チェックを開始した。その目には闘争心が宿り始め、操縦桿を握る手にも力が入る。
「社長殿、こんな事に付き合わせてくれたんだ。マージン上乗せでお願いするぜ!」
《構わんが、あまり期待するな。小生が自由に動かせる金などたかが知れている》
雷電のつれない返答にイッシンは思わず口角を上げる。原作では主人公が雇える最高の僚機であったが、この世界でもそれは変わっていないようだ。イッシンは背中を預けられる安心感からか思考に若干の余裕が出来たので、
イレギュラーネクストって誰だ?リッチランド繋がりでラスターさんか?いやだけど、この時期はまだ
《あいむしんかーとぅーとぅーとぅーとぅとぅー、あいむしんかーとぅーとぅーとぅーとぅー》
突然、ストレイドのコックピット内に鼻歌が流れる。声の主は男性だが雷電の声ではない。恐らく接近してくるイレギュラーネクストのパイロットが歌っているのだろう。
しかし、只の鼻歌にも関わらず空虚で、冷徹で、享楽的な印象が脳裏に無理矢理植え付けられるような鼻歌だ。
そしてイッシンは、
身体中から滝のような冷や汗が噴き出し、全身の毛が逆立つ。呼吸が浅くなり、荒くなった。脳内のアドレナリンが大量に放出される感覚の中で、イッシンは必死に平常を保とうとする。
――いやマジかよ。ロリ爺の時も大概だけど、お前はホントに来ちゃダメな奴だろ。R18も真っ青なド腐れ外道さんよぉ。
イッシンの呼吸が乱れた事に気付いたのかセレンはイッシンに話しかけ、乱れた平常心の再構築を手伝う。
《イッシン、大丈夫か》
「……あぁ問題ない」
《無理はするな、初めてのネクスト戦がイレギュラーなら誰でも緊張する》
《しかし初見で手練れの狂人と相対するとは、小生も思わなんだ》
この状況下に置かれているにも関わらず、雷電は動揺の影すら見せない。仮に動揺していたとしても、それを見せぬ胆力は社の看板を担う者としての風格を感じられずにはいられない程だった。
やがて遥か前方にOBによる土煙を巻き起こしながら
全身が黄土色でカラーリングされた異形の巨人は、昆虫を連想させる有機的な線形のコア部と逆関節型の脚部を有しており、角張った細身の腕には大型のショットガンとゲリラが好んで使用するような意匠のライフルが握られている。何より目を引くのは、長い流線形を象った大型のスタビライザーが皿のように平たい頭部から生えている事だった。
その黄土色の巨人は【OIGAMI】の通常有効射程を知っていたかのように相対距離1200でOBを解除し、付近の麦畑に着地した。
黄土色の巨人は麦畑に巨大な
そして、ストレイドと雷電を見据える。
《――派手な挨拶だったが、どっちが撃った?》
《小生だ。マロースは無事か》
《あ?誰だそいつ?知らねぇし興味ねぇな。それよかてめぇら、強そうだな》
黄土色の巨人は両手の兵装をストレイド達に向ける。その姿は鎌を携えた死神が舌舐めずりしている姿を彷彿とさせ、同時に幻視した。凄まじい殺気に雷電とイッシンは思わず臨戦態勢をとる。
「多分、あんたが想像してる100倍は強いぜ」
《いいねぇ、雑魚に飽き飽きしてたんだ。簡単に死んでくれるなよ?》
《……匹夫が。この雷電に削り合いを挑む蛮勇、愚かと知れ》
カラードNo.31〝ストレイド〟キドウ・イッシン
&
カラードNo.14〝雷電〟有澤隆文
VS
イレギュラー〝???〟???
いかがでしたでしょうか。
まさかチャプター1だけで20話超えるとは……。
週1更新の鈍亀ですが、今後ともお付き合い頂ければと思います。
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