凡人は気まぐれで山猫になる   作:seven4

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UA100超えました。……早くない?
これも皆様のお陰です。失踪しないよう、適度に気を抜きつつ頑張って行きます。


3.過去の遺物、異物を迎える

セレンが運転する車に乗り込み、俺達はカラード本部に向かう。辺りは既に暗く、セレンさんはヘッドライトを点灯させる。

 

カラードは先の大戦後に設立された、いわゆるリンクス管理機構である。

()()は企業間による争いに過剰戦力(ネクスト)を極力持ち込ませないよう管理する為に。

()()は圧倒的過ぎる個の力(リンクス)を恐れた企業が、独断で動きかねない連中を管理する為に。

 

 

「―――正直な所、そのどちらも形骸化しているがな。今のカラードは実質的なリンクス登録所。大した権力も持っていない、人気の天下り先だ」

 

「そうなんですね……」

 

そんな現状を運転席に座るセレンさんから聞かされる。ちなみに、俺は助手席だ。

まぁ、そうだろうな。カラードがいい仕事したって話は原作中なんにもなかったし。

 

俺は相槌を打ちつつ、外の景色を眺める。

 

原作だと、この世界はアクチュエータ複雑系が実践兵器、いわゆるネクストに運用される世界だ。さぞ近未来的な風景が広がっているだろうと若干の期待をしていたのだが。

町ゆく人々はごく一般的なシャツやズボン等に身を包み、待ち合わせをしていたり、コーヒーを飲んでいたり、夕飯の買い物をしていたり。

前世とあまり変わらない街並みと風景がそこにはあった。

 

 

「……どうした?」

 

 

セレンさんの問いに、俺は思わず肩を竦める。

 

 

「なんていうか、あまり変わらないんだなぁと」

 

「それは前世と比べると、というやつか」

 

「えぇ、まぁ……あっ」

 

 

他愛ない会話だが、俺はまた前世と口にしてしまう。

今はAMS接続による記憶障害と思われており、まだ大事にはなっていないが今後の事を考えれば黙っていた方が得策だ。ナニカサレルなんて絶対嫌だし。

 

そして、会話が途切れる。

 

 

「…………精密検査の予約をしておこう」

 

 

セレンは小さく、溜息交じりに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラード本部は1k㎡、高さ50mの巨大な建造物だ。あらゆる攻撃に耐えられるよう設計されているらしく、実弾兵器はおろか、エネルギー兵器でも傷一つ付かない外壁が最大の特徴だ。

 

何でも建設に当たり、全企業の技術提供により完成したらしく、壊せるのは特大の隕石ぐらいだと開発責任者は豪語しているらしい。壁面は光沢のある黒一色に統一されており高級感と(おごそ)かさを両立している。

 

また、カラードの敷地内には常時200名前後の警備員が武装して駐在しており、不審者は即捕縛と言う徹底振りだ。

 

(もっと)も、その外見と厳重な警備のお陰で一部の人間には最強の刑務所(ブタ小屋)と呼ばれているが。

 

そんなカラード本部の地下駐車場にセレンは車を停め、外に出る。俺も一緒に外へ出るが、セレンが向かった先には長いスロープが横たわっている。

 

そのスロープの先にある正面玄関には重苦しい金属製自動ドアが設置されており、その片側に受付用の透明なパネルが設けられていた。セレンがパネルの前に立つと、電子的な案内音声が流れる。

 

 

「ようこそ、カラード本部へ。網膜認証および登録番号の確認を行います」

 

「セレン・ヘイズ、登録番号0401-STJ。リンクスの登録に来た」

 

 

セレンは告げると、パネルは認識作業を始める。

 

 

「…………照合完了。ご帰還を歓迎します、セレン・ヘイズ。登録はC-1ブロックにて行います」

 

 

そう言い終わると同時に重苦しい自動ドアは軽やかに開き、セレン達を迎え入れる。

 

迎え入れられた先にあったのは白と青を基調とした円形のエントランスだった。セレン達が来た通路を含め東西南北に一カ所ずつ通路があり、中央には誰かの胸像が鎮座していた。夜と言うこともあって、職員然とした人々の往来はまばらである。

 

 

「よし、こっちだ」

 

 

俺はセレンさんに言われるがまま付いていく。

複雑に入り組んだ廊下を進むと、セレンさんがある扉の前に止まる。妙に大きく、そして威圧感のある扉だ。

 

「ここはリンクス用のラウンジだ。登録手続きや定期会合はここで行う。…………さぁ、入ろうか新人(ルーキー)

 

セレンさんは悪戯っぽい微笑を俺に向け、扉を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、珍しい来客だな。デートには遅すぎるんじゃないか?」

 

「生憎、こんな男をたらし込むほど飢えてないさ。話していたリンクスの登録にきた。手続きを頼むぞ、レイ」

 

 

中に入ると、さながらオーセンティックバーのような内装になっており、正面のカウンター越しにラフな格好の男性が立っていた。どうやら、資料を整理しているようだ。

……というか、セレンさん俺のこと軽くディスってなかった? 

 

そのままカウンター前まで歩を進めると、レイと呼ばれた男は値踏みするような目で俺を見る。

 

レイ・フリードマンは体格の良い、白髪混じりの茶色い短髪が似合う欧米人のようだ。こめかみには古傷が見え、年は30後半だろうか。目尻の皺は深いが眼光は鋭く、数々の修羅場をくぐり抜けた歴戦の雰囲気が漂う。

 

「ほぉ、こいつが……。坊主、年はいくつだ?」

 

「えっと、今年で23です」

 

「おいおい、新人をスカウトしたとは聞いていたが、カレッジ卒業したての少年とは聞いてないぞ。本当に大丈夫か、セレン」

 

 

レイは呆れながらセレンに問いかけるが、当のセレンはどこ吹く風だ。

 

 

「安心しろ。AMS適性も身体検査も基準値以上だ。それに経歴は事前資料で把握済みだろう」

 

「ジョークの一つくらい付き合ってくれよ。――じゃ、登録を始めよう。基本情報は事前資料通りで問題ないな?」

 

レイはカウンターに置かれたキーボードを操作しながら確認を行う。

 

「あぁ、問題ない。AMS適性はB+。身体検査結果は異常なし。それと――」

 

セレンとレイは淡々と事務作業をこなして始めたが、ここまで俺は蚊帳の外。なにもしていない。

 

 

(暇だな……)

 

 

そう思い辺りを見渡す。オーセンティックバーらしく酒の種類も豊富そうだ。前世では聞いたことも無いような銘柄が多数置いてあるのが見えた。暇潰しには持って来いの場所だなと考えた刹那、耐え難い眠気に襲われた。前世でもこんな眠気は感じたことがない程に。

 

……いや、あるな。確かあれは――。

 

 

「セレンさん……すいません。何処かで仮眠をとってもいいですか」

 

「ん、ああ構わんぞ」

 

「寝るなら、そこのソファーで寝てくれ。ヨダレは垂らすなよ」

 

 

そう言ってレイが示した方向には白いソファーがあった。俺は少しおぼつかない足取りでソファーに辿り着き、静かに横になる。

どうやらソファーは高級品らしく、フワフワとした感触が俺の体をまるで母親のように受け止めてくれる。

 

 

(随分と久しぶりに寝た気がする)

 

 

そう思ったのを最後に、俺は意識を手放した。

 

 

 




いかがでしたでしょうか。
正直、「戦闘シーンいつじゃボケェ!!」との声が聞こえて来そうですが、もう少しだけ待って頂ければ幸いです。

…………次は説明回になりそうです(コソッ

感想・評価よろしくお願い致します。
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