「マザーウィルの被害を」
「ノーマル58、ミサイル砲台3、機関砲12。総戦力の8%が被害を受けています」
「敵ネクストの状態は?」
「キルドーザーの直撃を加味すれば予測値として26%の損傷が出てます」
「足りんな。砲台の予測演算速度を30%上げろ。管制班、ノーマル全機にオペレーション・コヨーテを発令」
「ノーマル全機に通達。オペレーション・コヨーテ発令。繰り返す、オペレーション・コヨーテ発令」
ゴドック准将は自身の席に座りながら現況報告を険しい顔つきで聞き、現在与えられている情報の中で最善を尽くしている最中だった。ネクスト【ストレイド】と交戦しておよそ十分、彼我の損傷具合を比べればマザーウィルが優勢である。
要塞戦において攻撃側が守備側を正面から打ち崩すには三倍程度の戦力が必要とされている昨今、マザーウィルとストレイドの物量差を考えれば落とされる事はまず無いと考えて然るべきだろう。にも関わらず――。
「ゴドック准将、お言葉ですがネクスト1機に対してやり過ぎでは?」
圧倒的有利な状況で有りながら攻勢を緩めないゴドック准将に、横に立つ年若い士官が尋ねた。ゴドックは士官をチラリと見やると、深い皺の刻まれた顔を向ける事無く嘆息を吐きながら問いに答える。
「中尉はネクスト戦を経験したことがあるか」
「ありませんが、士官学校でローディー特別顧問より対ネクスト戦の教練を受けています」
「……後学のために覚えておけ。いくら教練を重ねようと奴らのような天災は必ずその上を行く。我々のような凡人は、自身の生死を賭して初めて同じ土俵に立てるんだ」
そう言いゴドックは前方のモニターに目を移した。艦橋の窓は既に防護シャッターが敷かれているため、備え付けのモニターのみがゴドックにとって唯一の目になる。そのモニターの中で、ハエのように縦横無尽に駆け回る機械がいた。
《右腕武器残弾40%、左腕武器残弾50%》
「くそっ!ジリ貧ってレベルじゃねえぞ?!」
《どうする。予定より早いが投入するか》
「まだだ!自分の仕事くらいキッチリこなさねぇと後々面倒だからな!」
《分かった……ノルマは残り3基だ。お前なら出来る》
「当たり前よ!」
《おぉりゃああぁぁ!!》
「相変わらずウルセぇなお前は!」
これ以外に攻撃を知らないと言わんばかりに突進してくるキルドーザーの鉄拳をストレイドは空中でQBを噴かし回避する。そのまま後方へ距離を取ると肩部フレア【YASMIN】を発射した。無数に放たれたフレアは上空より迫って来ているミサイル群を撹乱し爆散させる。
その勢いのままQBによる高速ターンで180度回転したストレイドは、甲板上で砲撃を仕掛けようと狙うノーマル部隊を視認。イッシンはフットペダルを踏み抜き、ストレイドのOBにより彼我の距離を一気に縮めると背部兵装【CG-R500】を起動させる。格納時は鎌のような外見の奇怪な兵装だが、射撃体勢に入ると前時代的な機関銃を彷彿とさせる銃身が肩からせり出した。単発の威力こそ低いものの秒間10発の高レートで放たれる弾丸の雨が危険でない筈も無く、ノーマル部隊は己の役目を果たさぬまま爆炎に呑まれていった。
障害となる敵が視界から消え失せた事を確認したイッシンは再びフットペダルを踏み込み、OBを起動させてノルマのミサイル砲台破壊へ向かおうとするが、突如として現れた後方からの衝撃に思考の変更を余儀なくされた。
その衝撃をキルドーザーからの遠距離攻撃と即断したイッシンはストレイドを錐揉み回転させるかの如く捻り上げ、牽制を兼ねた【MR-R100R】を発射しようするが、そこにいたのは白煙をもうもうと引き連れたミサイルの群れだった。
「なっ……ロック
《レーダーにも写っていない。衝撃度合いから見て、おそらくノーマル部隊から放たれたステルスミサイルだ》
「くそっ!ずいぶん芸が細かいな!」
《高価なステルスミサイルを最前線の判断で採用するのは考えづらい。どうやらマザーウィルの指揮官は切れ者らしいな》
「良いニュースありがとさん!」
まったく有難くない情報にイッシンは皮肉を返し、即座に【YASMIN】を打ち上げる。先ほどと同様にフレアに群がるミサイルが爆散した事を確認するとイッシンは再びOBを起動させミサイル砲台へ向かった。一度起動してしまえば通常兵器が捕捉することは困難なほどの超加速を全身で受け止めるイッシンは気を失わないように歯を食いしばる。
そのまま加速したのち、やっとの思いで辿り着いた目標のミサイル砲台を視認したイッシンは軽い感動を覚えるが、長い感慨に浸る事は無く背部兵装【EC-O300】を起動。黄色の光条がミサイル砲台目掛けて放たれると、寸分違わずド真ん中が射抜かれ爆炎が上がる。
「残り……2!」
自身に課したノルマ達成まで僅かとなり、早々に終わらせようと残りのミサイル砲台を捜すために周囲を見渡すイッシンは、直後に目に入った光景に内心涙した。破壊したミサイル砲台に並列した甲板上に、申し合わせたかのように2基のミサイル砲台が設置されていたのだ。
(日頃の行いが良いからだな、うん!)
天に感謝しつつイッシンは【EC-O300】の照準をミサイル砲台に定めた。そして放った光条はいとも容易く砲台を貫き爆散、砲台の撃破ノルマも残すところあと一基となった。放たれた【EC-O300】の再装填は数秒で完了するため、ノルマ達成を確信したイッシンは目の前の獲物を仕留める事だけに集中する。否、
《ふんぬぅうぅ!!》
空中で狙いを定めていたストレイドの真下から響く咆哮は、一瞬にして距離を詰めストレイドの目と鼻の先に現れた。独立傭兵のチャンピオン・チャンプスが駆る、GA社の旧標準機SUNSHINEを素体としたネクスト〝キルドーザー〟が。
完全に意識の範囲外から出現したキルドーザーに思わず硬直したイッシンにつられ、ストレイドの動きも硬直してしまう。【解体屋】の異名を持つチャンプスはその隙を見逃さず、肩よりせり出た【EC-O300】の砲身を片腕でガシッと掴み、腕部アクチュエータのトルクを限界まで引き出す。
《だぁありゃあぁぁ!!》
「このっ……ざけんな!」
イッシンはGAフレームの弱点であるレーザーライフル【ER-R500】をほぼゼロ距離からキルドーザーのコアに連射するが、キルドーザーの腕のトルクは緩まるどころか更に出力が上がったらしく、それまでメシメシと音を立てていた【EC-O300】の砲身は金属特有のグシャッとひしゃげる音と共に握り潰されてしまった。
「嘘だろ!?」
《どすこぉおぉいぃ!》
「ぐっ……がぁぁ!」
《イッシン!?》
【EC-O300】の砲身を片腕で握られ、逃げる事が出来ない状況でキルドーザーの鉄拳がストレイドのコアを直撃する。容赦ない攻撃に苦悶の表情を浮かべるイッシンだが、キルドーザーは立て続けに鉄拳を抉り込んだ。
《ふんがぁあぁ!》
「げ……ぐぇ……」
《イッシン!気を保て!早くパージしろ!》
「……!!」
セレンの悲鳴のような怒声に何とか反応する事が出来たイッシンは【EC-O300】をパージした。プシュウと音を立てて宿主を失った【EC-O300】の重量は非常に軽くなり、それを支えとして鉄拳を振りかぶっていたキルドーザーは空中で大きく体勢を崩す。
《おぉっ!?》
「このやろ……吹っ飛べ!」
【EC-O300】をパージした事によりキルドーザーから解放されたイッシンはストレイドに空中でショルダータックルの姿勢を取らせ、OBを発動させる。キルドーザーの鉄拳の比ではない質量と速度により、砲弾そのものとなったストレイドはそのままキルドーザーに突進。空中という不安定極まりない状況で踏ん張れる訳もなく、戦闘開始冒頭の意趣返しのようにキルドーザーは吹っ飛んでいった。
突然現れた
「これで……ノルマクリア!」
イッシンの掛け声と共にストレイドは【MR-R100R】の引き金を引く。吐き出された銃弾達はミサイル砲台に続々と着弾し、達成の喜びを伝えるかのような火柱を立ち上がらせた。
「はぁ……はぁ……セレン、俺のノルマはこれで終わりだよな?」
《無論だ。あとは奴らの到着まで回避に専念しろ》
「このまま帰還って選択肢はない感じ?」
《ないな》
「……鬼ババア」
イッシンはセレンに聞こえないギリギリの声量で呪詛を吐くが、セレンはその呪詛を敢えて無視。このミッションの要である仕上げの作業に取り掛かった。と言ってもオペレーションルームでセレンの隣に座る、紫の頭髪をした女性に言葉を掛けるだけだが。
「聞こえていたな?膳立てはこちらで済ませた。報酬分はキッチリ働いて貰うぞ」
「もちろん。俺たちの力みせてやるよ。なぁ少年!」
《いい加減少年呼びは止めてください、バイオレットさん》
バイオレットと呼ばれた女性は、モニター越しに応える年若い男の声を聞いてフフッと笑う。その画面には真紅に染まった先鋭的なネクストが一機、VOB接続を行っており出撃をいまかいまかと待ちわびているように佇んでいた。
プレステ5情報がリークされたみたいですね。
仮にアーマードコアの新作が出たとして、4K画質のOPムービーとか想像出来ないです。
実はもう現実世界で運用されてるんだろ分かってる分かってる的な完成度を期待しています。