凡人は気まぐれで山猫になる   作:seven4

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久々に畑作業をしたのですが、ヤーコンが想像以上に豊作だったのでビックリしました。


43.怖い人が怖い人

青年は目を覚ますが、その場から動くつもりは無かった。鳥がさえずり、木漏れ日の暖かさとベットの温もりに包まれている早朝というシチュエーションは間違いなく『日曜日』に相応しい始まりである。

 

 

冷徹非情な女性に一切の迷い無く、寝室の扉を蹴破られるまでは。

 

 

「仕事だ」

 

「………うそぉん」

 

 

 

 

 

ミッションの概要を説明します。

ミッション・オブジェクティブは、旗艦ティターンのミミル軍港脱出支援です。ミミル軍港は侵食海岸を利用した天然の要害ですが、現在GA艦隊により半包囲状態にあります。

 

従って、今回のミッション・プランはティターンに随伴しGA艦隊による攻撃をすべて排除。安全に軍港を離脱させる流れとなります。また、ECMによる索敵妨害も予想されます。留意してください。

 

なお、ユニオンはティターンの離脱を前提として他僚艦の離脱にもボーナスを設定しています。

 

ミッションの概要は以上です。

ユニオンは、このミッションを重視しています。

成功すれば、貴方の評価は更に高いものとなるはずです。

よいお返事を期待していますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで日曜日に包囲なんかするかねぇ。GAには労基の概念が存在しないのか。それともあれか?偉大なるステイツのために身を賭して屍の土台を作れと。そういうことか?」

 

《たまの休日を潰したのは悪いが緊急依頼だ。旨味もあるし、インテリオルに恩も売れるだろう》

 

 

高度6000m上空、ネクスト輸送機に合金製多重層ワイヤーロープで簡易懸架されているJOKERのコックピット内。この世の摂理を無視したGAグループに対し、呪詛の言葉を吐き続けるイッシンを少しでもなだめようとセレンが利点を説明するが、図らずもイッシンの矛先は彼女に向けられた。

 

 

「その割には報酬額が低くないか?古巣だからって安請け合いしてないよな?」

 

《……すまない》

 

「えっマジで安請け合いしたの?」

 

《スティレットさんに睨まれて生きた心地がしなかったんだ、許してくれ》

 

「あ~……うん、そういう事もあるよね」

 

 

スティレットとはインテリオルグループ最高戦力の一角であり、最初期のリンクスである【オリジナル】の一人であり、カラードランク7に位置する最上位の女性リンクスである。

 

イッシンは原作での経験からうっすら勘付いていたが、スティレットはセレンにとって途轍もなく怖い先輩らしく慇懃無礼でお馴染みのセレンがスティレットから着信が来ただけで一時硬直。その後電話越しにも関わらず直立不動かつ常時敬語で応対していた事を思い出した。あのセレンが、である。

 

確かに原作でもクールというか無感情な印象が強いスティレットではあるが、まさかセレンを縮み上がらせるほどの御仁とは思っていなかった。だからこそイッシンは相槌を打つ。だって敵に回したくないものマジで。会ったこと無いけど絶対ヤヴァイ人じゃん。

 

 

《――コホン、射出フェイズに移行する。タイミング合わせろよ》

 

「了解、いつでもいいぜ」

 

《カウント数え……3……2……1……今》

 

 

バツンと大きな音と共に輸送機のネクスト用懸架ワイヤーアタッチメントが解放されると、JOKERはスカイダイビングの要領で身体を大の字に開きながらメインブースターを噴かして落下していく。

 

今回のミッションは既に護衛目標が包囲されており通常接近がままならないことから、索敵レーダーに探知されない高高度からの侵入が最善と判断し、高度6000mからの自由落下が選択されたのだ。そのまま重力に導かれるままブースターを噴かすJOKERはどんどん加速していき、目の前に形成されている積雲に突っ込んだ。時間にして5秒足らずのホワイトアウトを抜けると、直下に目標地点であるミミル港が迫ってきている。

 

 

「……セレン、インテリオルじゃ無人島のことを軍港って呼んでんのか?」

 

《あくまでも軍艦整備を主とした拠点だ。軍港といっても問題ないだろう》

 

「にしてはデカすぎんだろ」

 

 

イッシンの眼前に飛び込んできたのは断崖絶壁の岩肌しか見えない、半分ほど海に侵食された島だった。端々に近代的な設備がちらほらと見えてはいるが、それも気持ち程度。偽装も兼ねて大方の機能は航空写真からは判別されないように島内部に作られているのだろうが、だとしても無骨過ぎはしないか。天然の要害とは良く言ったものである。

 

高度500mを切り、イッシンは目標地点である格納ドック付近を視認するとバックブースターによるQBを一度噴かして減速を開始。JOKERは軽量機最大の特徴である『軽さ』を活かして音も無く着水し、あらかじめ教えられていたチャンネルに合わせて回線を開いて暗号(コード)をマイクに向けると凜とした女性の声が応答する。その声はセレンの声質とは違う、歪みを知らない実直な声だった。

 

 

「ルームサービスです」

 

《……シャンパーニュは頼んでいない》

 

「55年物のベル・エル・カサパは如何ですか」

 

《どう飲めばいい?》

 

「床に飲ませるのが一番かと」

 

《……確認した。こちらティターン艦長のカーティス・V(フォン)・ミュラー大佐だ。リンクス、救援感謝する》

 

 

応答と同時に目の前の格納ドックが開かれると、中から大型巡洋艦1隻と駆逐艦2隻が姿を現すがイッシンはその光景に違和感を覚えた。旗艦を守る駆逐艦達がそれ相応の最新装備を備えていることは理解できるのだが、肝心の旗艦が何というかあまりにも……。

 

 

「旗艦にしては旧式過ぎないか」

 

《――リンクス。本艦はインテリオルの軍事機密を保持している故、形式的に旗艦となっているだけだ。足を引っ張るつもりはないが露払い(エスコート)を頼む》

 

「なるほどね。……これよりティターンの脱出支援を開始する。セレン、水先案内(ナビゲート)よろしく」

 

《早速来たぞ。11時の方向からフロート型ノーマル3機、後詰めで同型6機》

 

「それじゃ試運転と行きますか!」

 

 

イッシンはフットペダルを踏み込み、メインブースターから完全燃焼を意味する青白い炎を放たせながらJOKERは前進させた。その加速はストレイドの比では無く、通常ブーストの今ですら後頭部を押さえつけられているような感覚に辟易する。QBを発動したらどうなるのか想像もしたくないイッシンであったが、幸運にも発動の機会は即座に訪れた。

 

11時方向の岩陰から現れたノーマル部隊は既に後詰めの部隊と合流しており、計9機のノーマルが出会い頭のタイミングで主兵装であるバズーカを全機斉射してきたのである。いくらノーマルの攻撃といえどバズーカの斉射は流石に馬鹿には出来ず、イッシンはペダルを蹴り抜いてJOKERに右QBを発動させた。瞬間、ストレイドでは経験した事のない強烈なGが全身に襲いかかるが、速度・移動距離共にストレイドを大きく上回るQBにより難なく全弾を回避する。

 

出会い頭の攻撃を一発も当てることが出来なかったノーマル部隊であったが、その事実に戸惑うことなく行動を継続。前方3機は即座にバズーカを投げ捨ててライフルを構え突撃、その後方には再びバズーカを構える4機とミサイルを展開する2機が確認できた。

 

 

(練度が段違いに高いな。精鋭部隊か?)

 

 

イッシンの疑念が晴れるより早くノーマル部隊は攻撃を再開した。攻撃はJOKERの進行方向を万遍なくカバーしており、ミサイル攻撃も相まって壁のような威圧感を帯びている。確かに徹底した面での攻撃は縦横無尽に駆け回るネクストにとって有効な手段の一つであるが、必ずしも最適解という訳ではない。それがJOKERのような『特化機体』であれば尚更であった。

 

イッシンはペダルを踏み込み前方へ向けてQBを発動。弾丸の壁が急速に迫って着弾する直前、JOKERは()()()()()()()()()()()()。いくら壁のような攻撃と言えど本物の壁ではない時点で必ず穴は存在する。その穴であった弾丸と水面の僅か1mの隙間を機体の大半を水中に沈めながら通り抜け、JOKERは一切の損傷を出すことなく弾丸の壁を躱しきった。それはストレイドの推力と重力では為し得ることの無かった曲芸である。

 

――ストレイドでは躱す事の出来なかった攻撃を躱す事が出来る。

――ストレイドでは出来なかった曲芸が出来る。

 

この事実はイッシンを神経を今まで以上に興奮させ、血中のアドレナリン濃度が倍増したように感じる。イッシンは身体の底から込み上がる昂ぶりを抑える事が出来ず、気付けば叫んでいた。

 

 

「最っっっ高だぜぇ!」

 




壺マニアの二次創作が完結しましたね。
正直終わり方があっさりし過ぎている感もありましたが、外伝等で補足するのでしょうか。

願わくば壺マニアロスの読者様達が漂流の果てに当作品と巡り合って頂ければな、などとゲスい考えを持っている次第です(笑)

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