凡人は気まぐれで山猫になる   作:seven4

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仁義なき戦いを全作品見直しているのですが、主人公の菅原文太さんが渋すぎて震えます。


45.水と油・Ⅰ

海上を縦横無尽に駆け抜けるJOKERは一定の距離を保ったままQBを噴かし【04-MARVE】を放った。ノーマルであれば粘土のように装甲を穿つ貫通性の高い弾丸であったが、海上に佇むワンダフルボディは躱す素振りすら見せずに【GAN02-NSS-WR】を構える。弾丸はプライマルアーマーを軽々と貫通しワンダフルボディの胸部装甲に着弾するが、カンッと浅い弾痕を残して弾かれてしまう。

 

JOKERは的を絞らせないためにワンダフルボディを中心とした円軌道とジグザグ軌道を織り交ぜた高度な回避行動を取るが、ワンダフルボディは構いはしないと言わんばかりに【GAN02-NSS-WR】に火を噴かせた。威力こそ【04-MARVE】よりも劣るが、圧倒的総弾数が実現したライフル系随一の継戦能力を誇る【GAN02-NSS-WR】の利点を遺憾なく発揮した射撃は途切れることなくJOKERを追い回す。

 

初めこそ回避に専念していたJOKERだったが、このままだと活路は見出せないと判断したのかQBによる急制動ののちOBを発動。機体重量の軽さもあって最高時速3000km/hに迫る超加速は瞬く間に彼我の距離を縮める。被弾を最小限に抑えながらJOKERは【AR-O700】を構えている右手を大きく後ろに引いてトルクを貯め始めた。対するワンダフルボディは敵ネクストの一連の行動を気に留めることなく【GAN02-NSS-WR】を撃ち続ける。

 

相対距離50を切った瞬間、JOKERは右手を大きく突き出して【AR-O700】による刺突を繰りだした。空を切る音すら遅れて聞こえるほど鋭く狙い澄まされた刺突はワンダフルボディを的確に射抜かんとするが、【AR-O700】の切っ先はコアに到達する直前に【GAN02-NSS-WR】を握る重装甲の右腕が現れ、その前腕装甲を滑らせるように機動を逸らされた。

 

まるで合気道のように機体重心をずらされたJOKERは大きく体勢を崩しながらもワンダフルボディから目を離すことはなかった。否、離せなかった。何故ならワンダフルボディをワンダフルボディたらしめる象徴的な兵装【GAN02-NSS-WBS】の大口径を握りしめた左腕が、獅子のような獰猛さを放ちながらJOKERを狙っていたからだ。

 

JOKERは咄嗟の判断で右QBを発動させ、その場で急速旋回。フィギュアスケートのような高速回転を以て【GAN02-NSS-WBS】の射線上からの回避を成功させた。刹那、ドドンと連続的な砲撃音が至近距離で発破し、JOKERのリンクスであるイッシンの鼓膜に不快な残響音が木霊する。

 

【GAN02-NSS-WBS】はGA社が進めるプロジェクト『NSS計画』の一環で開発された散弾バズーカである。『NSS計画』、正式名称『NewSunShine計画』はAMS適性の低いリンクス、所謂(いわゆる)『粗製』を上位リンクスと同等の戦力として運用する事を目的としたプロジェクトであり、〝GAの英雄〟ローディーにあやかり2匹目のドジョウを釣ろうという下心が透けて見える計画だが、結果としてドン・カーネルという上位リンクスが発現しているのはGA上層部の慧眼と言うべきだろう、()()()()()()

 

被弾を免れたJOKERは軽業師のようにワンダフルボディのコアを踏み台にする格好で後方へバックジャンプを決めると数刻前と同じように一定の距離を保つ。踏み台にされたワンダフルボディは身じろぎ一つせず、淡々としていた。

 

 

《……速いな》

 

「そう言うアンタは肝が据わり過ぎだぜ。いっそ有澤に移籍したらどうだ?」

 

《下らん》

 

 

イッシンの軽口にも一切乗ることなく、ドン・カーネルはフットペダルを踏み込んだ。点火したメインブースターは完全燃焼を示す青い炎を吐き出しながら重量級ネクストであるワンダフルボディの巨体をいとも簡単に持ち上げ、ミサイルを彷彿とさせる突進力でJOKERへと向かっていく。

 

 

(原作より速いっ!)

 

 

イッシンはワンダフルボディの加速力に面食らいながらも一定の距離を保つことを失念することは無く、絶えず【GAN02-NSS-WBS】の射程保証距離400以上を維持したまま両の手のライフルを要所で撃ち込む。【GAN02-NSS-WBS】はバズーカ弾を散弾銃よろしく正面に撒き散らす散弾バズーカというカテゴリの兵装だ。よって散弾の一発当たっただけでも相応のダメージは必至、全弾命中した場合など考えたくもない。だからこそイッシンは不用意に接近せず、好機と見れば必殺を狙ったヒット&アウェイを繰り返していた。

 

そんな膠着状態だからこそイッシンは軽口を重ねる。理由の半分はドン・カーネルの気を散らして隙を作るため、もう半分はワンダフルボディと交戦してから不思議に思っていたことへの好奇心だ。

 

 

「タイマン勝負なんて古風だな!ノーマル部隊にティターンを向ければ済む話だろ!」

 

 

そう、それまで凄まじい練度を以てティターンの進行を妨害していたノーマル部隊がワンダフルボディが出て来た途端に攻撃を止め、ワンダフルボディの後方へ撤退したのだ。こちらに一斉攻撃を仕掛ければティターン撃破どころかJOKERの首も獲れる可能性があったにも関わらずである。どう戦術的に考えても不合理極まりない選択に、当初はセレンと共に困惑していたのだが、蓋を開けてみれば何の事は無かった。

 

 

《……性に合わん》

 

「!……ハハッ、とんだ決闘士(グラディエーター)だな!いや狂戦士(バーサーカー)か?どっちにしろ()()()()()()()()()()!!」

 

 

期待した以上の答えにイッシンは心躍り、それに呼応するようにJOKERのメインカメラが一際輝く。刹那、ドン・カーネルは自身の目を疑った。だが仕方の無い事だろう、JOKERの連続QBによる超速接近で相対距離450が数瞬で詰められたのだから。想定外の高機動に反応が遅れたドン・カーネルを尻目にJOKERは背部兵装【TRESOR】を展開していた。

 

【TRESOR】は変態企業と名高いアクアビット社が設計・開発を手がけた低弾速高威力のプラズマ兵器であり、装弾数10発ながらも優れた携行性が評価させている兵装だ。

 

しかし、プラズマ兵器最大の特徴はネクストのバリア的役割を担うプライマルアーマーの減衰性能にある。クリーンヒットすれば一発でプライマルアーマーの約半分を削ることも出来る【TRESOR】は最も被弾したくない兵装の一つだ。そんな兵装をイッシンは至近距離でワンダフルボディに撃ち込む。

 

 

《……ッ!》

 

 

プラズマ兵器特有の大きな放電現象がバチバチと音を立てながらワンダフルボディを襲い、プライマルアーマーを形成するコジマ粒子濃度が大幅に希釈された瞬間、イッシンはフットペダルを踏み抜き、ワンダフルボディの腰回りに向けてタックルを見舞った。いくら重量級ネクストであるワンダフルボディも流石によろめいて後方へ倒れ込みそうになるが現在地は海上、水中へ沈むのは何としても避けたいドン・カーネルは姿勢を立て直そうとメインブースターを目一杯噴かし、背面の水上に風圧と熱気で出来た大きな窪みを形成した。

 

 

《くっ――》

 

「ドン・カーネル。アンタにゃ聞きてえことがあるんだ」

 

 

そう言うとイッシンは手元のコンソールパネルを操作して外部通信の一切を遮断し、接触暗号回線に切り替えた。その後ドン・カーネルだけに見えるよう光信号をJOKERのメインカメラより発すると、イッシンの思惑を汲み取ったドン・カーネルも同じく接触暗号回線に接続、声を発する。

 

 

《何のつもりだ》

 

「単刀直入に聞くぜ?新吾(シンゴ)が言ってたイワンってのはお前だよな?」

 

《……ならばどうする》

 

「お互い転生した身だろ。一旦休戦して話がしたい」

 

《そうか――》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《――なら、死ね》

 

 

瞬間、ドン・カーネルはワンダフルボディの右手に握られた【GAN02-NSS-WR】の銃口を冷たい殺気と共に、腰元に抱き付くJOKERに向ける。その殺気を刹那で感じ取ったイッシンは即座に回避行動へ移行し【GAN02-NSS-WR】の銃撃を紙一重で躱した。あまりにも唐突な出来事に状況が整理できないイッシンは外部回線を回復させ、ドン・カーネルに向けて怒鳴り散らす。

 

 

「てめぇ、どういうつもりだ!!」

 

転生者(きさまら)と馴れ合うつもりはない。それだけだ》

 

 

ドン・カーネルはそう切り捨てると再びメインブースターに青白い火を灯し、JOKERめかけて突進してくる。勢いに迷いは無く、ただ愚直に迫ってくるワンダフルボディに向けてイッシンが出来ることは精一杯の睨みだけだった。

 




いかがでしたでしょうか。

ドン・カーネル、よちよち歩きの可愛らしい君はどこへ行ってしまったんだ……。

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