よもやよもやです。鬼滅見たこと無いけど。
という事で今回はスピンオフ回。
旧合衆国 ハワイ諸島
雲一つ無い澄み渡った空。エメラルドグリーンに輝く海。燦々と照らす太陽。純白の砂が敷き詰められたビーチ。
まさにこの世の
「……暑い」
「24回目」
「あ゛?」
「ここに来てから【暑い】と言った回数だ。いい加減慣れろよ」
「無理。暑いもんは暑い」
「……はぁ。こんなのを天使と崇め奉る野郎どもの気が知れないな」
「勝手に言ってれば? 私がアイドルである事に変わりは無いし」
「落ち目の、だけどな」
「うっさい」
緑ビキニの女性――メイ・グリンフィールド――は清廉な顔つきとは正反対の粗雑な言葉遣いで隣に腰を据える男を貶めた。対して男性――ジョージ・オニール――は溜息を吐いてもう一度ブルー・ハワイを咥える。
一部の愛好家に熱烈な支持を受けるカラード公認雑誌〝週間ACマニア〟のグラビアにて絶大な人気を
事の発端は二週間前に発売された週間ACマニアにおいて、同GAグループのBFF所属である〝ランク2〟リリウム・ウォルコットのグラビアが掲載された事に始まる。どこの誰がどんな手練手管を使ったのか皆目見当がつかないが、〝陰謀家〟王小龍を説き伏せてリリウム・ウォルコットのグラビア撮影を許可させた手腕は見事と言うほか無かった。
リリウム嬢の白魚のような透き通った肌、今後の展望を大いに期待させる成長途中の身体、齢相応の羞恥に顔を赤らめたあどけない表情。こんな逸材の登場に
《リリウム嬢しか勝たん。異論は認めぬ》
《新しいアイドル……惹かれるな》
《リリウムたんカワユス!!拙者のOIGAMIが火を噴きますぞ!!》
《その粗末なGAN01-SS-WH.E早くしまえよ》
その後もリリウム人気は留まることを知らず、遂には〝週間ACマニア〟の絶対的女神であったメイのファンを僅か三日で70%ほど寝返らせ、その日のネット内人気投票ではぶっちぎりの一位を獲得する驚異的な伸びを見せた。
当然、自ら築き上げた王国を一瞬で瓦解させられたメイ・グリンフィールドは激怒。彼女は専属マネージャーの胸ぐらを掴み、血走った目で半ば恐喝紛いの交渉を持ち掛け、ハワイ諸島でのグラビア撮影を無理矢理セッティングして今に至る。
「で? なんで俺もいるんだよ」
「仕方ないでしょ。ここ最近ハワイ諸島で所属不明ノーマルによる襲撃が相次いでるって話があって、万が一に備えてネクストとオペレーターを連れてけって上層部がウルサいんだもん」
「いやネクストはともかく、お前のオペレーターはエルカーノさんだろ」
「エルカーノさんは両親のお見舞いでクレイドルに滞在中。他のオペレーターも空いてなかったし、どうしようかなぁって考えてたらアンタを思い出したってわけ」
「あのな、ダンもお前も勘違いしてるが俺はあくまで仲介人だぞ。オペレーターは仕方なくやってるだけだからな?」
「その割には評判いいみたいね。誘っていいか上層部に相談したら『彼なら適任だ。ダンの戦績も以前より良くなっているし、何より仲介人兼オペレーターだ』とかなんとか」
「……上にとっちゃメイと俺は
「私は別にいいわよ。代わりにホテル代とか買い物代とか、全部経費で落としていいって言質はとってるし♪」
「俺のは?」
「え?あるわけ無いじゃない。ジョージはそこら辺の民宿で十分でしょ?」
「……はぁ、また貧乏クジかよ」
――メイさ~ん。スタンバイお願いしま~す!
ジョージがガックリと肩を落としていると、遠くの砂浜から撮影スタッフらしき男性が手を振りながらこちらに向かって叫んできた。その奥では数十人のスタッフがレフ板やら休憩用の椅子の設営やら世話しなく動いている。
「は~い! 今行きま~す!」
「アイドルは大変ですなぁ。好きでもない男にビキニ見せつけて、あまつさえ全世界に発信されるってんだから」
「もうちょっと上品に言ってくれない? アンタのお腹みたいに
「おいこれでも腹筋はそこそこ割れてる……って行っちまった」
ログハウス風の小屋から飛び出したメイは豊満な身体を惜しげも無く揺らしながらスタッフの元に駆けていった。つい先程までの
「……確かにあれだけ見りゃ、天使と崇め奉るな」
「ん~~~♡ ここの料理最っ高!!」
「お褒め頂き光栄です。こちらは蒸してグリルしたオマール海老をアメリケーヌソースと絡めた一品ですので、白ワインとのペアリングはいかがでしょうか?」
「勿論頂きます!」
日も落ちた夕方、メイは滞在先の三つ星オーベルジュにてコンシェルジュ付の豪勢なフルコースを愉しんでいた。今日のグラビア撮影が終わるなり、メイはスタッフの目にも止まらぬ速さで身支度を整えて早々に自身の部屋へチェックイン。そしてこの日のために用意してきたドレスに着替える。
ドレスはエメラルドグリーンを基調としたベーシックな作りだが太股まで入った深いスリットが非常に扇情的であり、メイの魅力的な身体と相まって周囲のテーブルに座る異性の目を我が物にしていた。
――誰だよあの美人は。
――知らねぇのか?リンクスのメイ・グリンフィールドだよ。
――『天が二物を与えた女』か、まさか実在するとはな。
(フフフッいいわよいいわよ。もっと私に釘付けになりなさい)
「にやけが隠しきれてないぞ、メイ」
「はにゃ!?……ってジョージ?」
死角から突然核心をつかれると想定していなかったので思わず変な声を出してしまったメイが声の方向を見ると、そこにはブラックタイとタキシードに身を包んだジョージの姿があった。
昼間の怠惰な格好が噓のように背筋の伸びたジョージは髭を剃りつつ髪をオールバックに撫でつけており、筋肉質で頑強そうな体型と左腕にはめられた旧スイス製ドレスウォッチの相乗効果で、某英国諜報員を彷彿とさせる出で立ちである。
「どうだ? 悪くないだろ」
「悪くはないけど……なんで居るのよ」
「上に直談判して、俺もここに泊まれるよう手配したんだ。『リンクスとオペレーターは一心同体。万一に備えて同じ場所に宿泊した方が賢明ですよ』ってな」
「はぁ。そういう所だけはちゃっかりしてるんだから」
「俺もここの料理は食べたかったんだ。席、いいか?」
「どうぞご自由に」
「ありがとう。……失礼、彼女と同じコースを。あと食前酒にシャンパーニュをグラスで」
「銘柄はいかがしましょう?」
「センチュリオンのノンエイジを」
「かしこまりました」
少しして食前酒が運ばれてくるとジョージとメイは軽くグラスを掲げて乾杯した。以降、次々と出てくる逸品に舌鼓を打ちながら二人は他愛も無い会話を楽しむ。
「ずいぶん場慣れしてるのね。もっと粗雑かと思ったけど」
「これでも仲介人だからな。GAのお偉いさんと会食するのにマナーは大事だろ?」
「そうやって首の皮一枚で雇われ続けるのって嫌にならない?」
「全く。――そういえば、最近ずいぶんと熱心なファンが出来たらしいじゃないか」
「え? あぁ、キドウ・イッシンのこと?」
「次代のエース候補に目を掛けられるなんて、お前さん持ってるよな」
「ファンというか、只のナンパ野郎よ。レイさんの店で会う度に使い古されたクサイ台詞で口説いてくるんだもの」
「そいつは災難だったな。既にお前の気持ちはダンに一直線だって言っといてやろうか?」
「ジョージ!?」
「そんなに怒るなよ。折角の美人が台無しだぞ?」
こうしてハワイ諸島での束の間の休息である、二人の楽しい夜は深まっていった。
旧合衆国 ハワイ諸島 とある無人島
「――全機に通達、明日の12:00に作戦を開始する。それまでコックピットで待機だ」
《了解。……隊長、報告したいことが》
「何だ」
《はっ。現在、当該地にはメイ・グリンフィールドが滞在中との連絡が入っています》
「ほぉ。〝スマイリー〟がか」
《どうしますか》
「作戦に変更は無い。我々は任務を遂行するだけだ」
いかがでしたでしょうか?
メイさんの性格は『いい女には裏がある』って事でご容赦頂ければと。はてさて、次回はどうなる事やら。
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