凡人は気まぐれで山猫になる   作:seven4

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先日、日間ランキングでACFA二次の他作品がトップ10に躍り出た時は自分の事のように嬉しかったです。

やっぱり皆、闘争を求めているんですよ!!(錯乱)


59.【幕間】とある二人の災難休暇(バカンス)・下

《まもなくスコフィールドバラックス駐屯地だ。既に駐留部隊にそれなりの損害が出ているが、所属不明ノーマルは可能な限り鹵獲しろってのが御上の意向らしい。……子飼いはツラいな》

 

「貴方に憐れみを持たれると惨めになるからやめてくれる? それに、このメリーゲートなら何も問題は無いわ」

 

 

上空500mを単独飛行する緑色で統一された重厚な機体のコックピットに座るメイ・グリンフィールドは、機体と同じく緑一色でまとめられたリンクススーツを身に纏っており、オペレーターであるジョージ・オニールを(たしな)める。

 

彼女の乗機であるメリーゲートはGAグループの名作重量級ネクストである【GAN01-SUNSHINE】をベースとして、頭部・コア部を新型ネクストである【GAN02-NEW-SUNSHINE】のものに換装した機体である。

 

腕部兵装は右手にGA製標準ライフル【GAN02-NSS-WR】、左手には同じくGA製標準のバズーカ【GAN01-SS-WB】、背部兵装は重量レーダー【MARIAS02】およびGAグループ子会社のMSACインターナショナルが手掛ける最新型多連装垂直ミサイル【WHEELING03】、肩部兵装には同じくMASAC製の多連装連動ミサイル【MUSKINGUM02】を搭載しており、機体コンセプトである『継続的な攻撃支援機』に徹したバランスを取らせている。

 

 

「……見えた!」

 

 

メイが叫んだと同時に正面スクリーンの一部が拡大されてスコフィールドバラックス駐屯地を映し出した。めぼしい施設は全て炎と共に黒煙を立ち上らせながら燃えており、その中心では黒一色の所属不明ノーマル部隊が応戦するGA正規軍の【GA03-SOLARWIND】を無慈悲に蹂躙している。

 

 

《ずいぶん派手にやってくれてるな》

 

「他人の庭を荒らすとどうなるか教えてあげないとね」

 

《ご指導頼むぜ、スマイリー》

 

「もちろん。メイ・グリンフィールド、メリーゲート――行きます!」

 

 

冷静だが威勢の良い掛け声と共にフットペダルを踏み込んだメイはメリーゲートにOBを発動させ、一気にスコフィールドバラックス駐屯地に到着。機体の両踵でアスファルト舗装を削り取りながらランディング着地すると同時に両腕の武装を前に構え、所属不明ノーマル部隊がこちらの存在に気付いた事を確認してから警告する。

 

 

「こちらカラードランク17、メリーゲートです。そこの所属不明ノーマル、武装解除して投降しなさい。この勧告に従わない場合は撃墜も許可されています」

 

 

淡々としてそれでいて芯のある強さが込められたメイの勧告だったが、彼女の登場により動きを止めていた所属不明ノーマル部隊は意思を取りまとめるかのようにお互いを見合わせたかと思った瞬間、内一機がOBを発動。レーザーライフルとレーザーブレードの両方を構えながらメリーゲートめがけて突進してきた。

 

こちらの勧告を蹴り下すように紛う事なき敵意を向けられたメイだったが、その顔には笑みがこぼれる。

 

 

「分かり易くて助かるわ。細かいのは性に合わないの」

 

《ばっ、メイお前まさか――》

 

 

ジョージがメイの意図に気付いたときには既に遅し。先陣を切った所属不明ノーマルが懐に入ったと同時にメイはメリーゲートの右脚を振り抜かせて、的確にコックピットを蹴り上げた。

 

重量級ネクストに蹴り抜かれた敵ノーマルは、その重量比を指し示すかのようにメリーゲートの頭上高くまで浮き上がる。その瞬間をメイは見逃さず、メリーゲートの左手に握られた【GAN01-SS-WB】を宙に浮くノーマルに向けて引き金を引いた。

 

ほぼゼロ距離で放たれた砲弾は吸い込まれるように敵コックピットへ着弾し、爆発。黒一色の装甲から紅蓮の炎が巻き起こり大輪の薔薇を作り出す。

 

激しく燃え上がる赤い炎を背景にしたメリーゲートは機体色である緑をより一層鮮明に映えさせており、エンブレムである『緑色のスマイリーフェイス』が不気味なほどの笑顔で所属不明ノーマル達を見据えている。

 

 

《メイ、作戦聞いてたか?》

 

「言ったでしょ。細かいのは性に合わないの」

 

《――わかった。ならせめて一機は鹵獲してくれ》

 

「好きよ、貴方のそういうところ」

 

《お世辞でもありがたいよ……来るぞ、今度は二機同時だ》

 

「任せて」

 

 

数少ない僚機を難なく撃破された所属不明ノーマル達はメリーゲートに対して単機での対処は不可能と判断したようで、ジョージの言う通り二機同時に襲いかかってきた。隊長格らしい残りの一機は踵を返してOBを発動。ネクストほどではないが、十分に速い速度で駐屯地施設を遮蔽物として身を隠そうと戦線を離脱した。

 

それを守護するように向かってくる所属不明ノーマル二機はレーザーライフルを連射しつつ、一定の距離を保ちながら円を描くようにメリーゲートの周りを周回する。

 

 

《いま逃げたのが本丸だ。早々に片付けて追うぞ》

 

「任務達成のために進んで命を投げ出し、対ネクストに最も効果的な時間稼ぎを行う……よく訓練された兵士ね」

 

 

連携してこちらを効率的に抑え込もうとする二機のノーマルに敵として最大の賛辞を送ったメイは、背部兵装【WHEELING03】および肩部兵装【MUSKINGUM02】を展開。絶え間なくレーザーライフルを撃ち続ける二機に対してロックを掛けた瞬間、メリーゲートの全身が隠れてしまう程の排煙を撒き散らしながら無数のミサイルが敵ノーマルめがけて放たれた。

 

【WHEELING03】は垂直ミサイルの名に違わず一定距離まで上空に飛んでいき、そこから鷹の如く急降下して獲物を狙う。対する【MUSKINGUM02】はメリーゲート正面から放たれ、まるで小鳥の大群のように敵ノーマルへ押し迫った。この状況に敵ノーマル二機は無傷で回避することは困難であると判断したらしく、双方ともOBを発動してメリーゲートに突撃を仕掛ける。

 

仮に撃破されたとしても、追尾してくるミサイルを誘爆させる事でメリーゲートに幾分かのダメージを与えられる作戦に気付いたメイは内心歯噛みした。

 

 

(やっぱり状況判断が早い。ウチの特務遊撃大隊と遜色ないレベルなんて、こいつら何者なの?)

 

 

GA正規軍が有する特務遊撃大隊は〝ランク12〟ドン・カーネルを中心とした最精鋭であり、インテリオル・オーメルにおいては畏怖の象徴ともなっている部隊だ。そんな彼等と同レベルの組織をインテリオル・オーメルが抱えているなんて情報は聞いた事が無く、編成中だとも聞いた事が無い。メイの疑問は至極当然だった。――しかし。

 

 

「……考えるだけ無駄ね」

 

 

メイは独りごちると両の手の【GAN02-NSS-WR】と【GAN01-SS-WB】を迫り来るノーマルに向けて、照準を合わせた。OB発動中は急旋回などのトリッキーな動きは出来ない、加えて刻一刻とこちらへ突進してくるのであれば予測射撃で穿つことは可能である。

 

メイは息を整えて、二機のノーマルを見据えた。

 

――レーザーブレードを発振させてOBを吹かす彼等はどんな表情をしているだろうか。

 

自暴自棄になった憤怒の顔?

死にゆく運命に悲嘆する哀しい顔?

作戦の成功を仲間に託した決死の顔?

 

いずれにせよ良い表情ではない。そして、それを直せと言える暇があるほど戦争は甘くない。だからこそ。

 

 

「せめて、安らかに」

 

 

メイは聖母のように優しく、たおやかな笑みを浮かべてトリガーを引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらスカベンジャー。目標を確保した、これより帰還する」

 

 

スコフィールドバラックス駐屯地が襲撃されたという生中継ニュースを聞いて、その様子を一目見ようと野次馬が詰めかける中、紺色のスーツに身を包んだ男性が右耳につけたカナル型イヤホンを通じて連絡を取っていた。

 

オールバックに撫でつけられた髪は栗毛色、体格は筋肉質でガッシリしている。何より特徴的なのが左目に当てられた黒い眼帯で、二本の赤いラインが斜めに入れられたデザインは冷徹さと情熱を併せ持つ不思議な印象を与えた。

 

男性は小脇に抱えた大きめの紙封筒を大事そうに一瞥すると、野次馬の波を掻き分けて現場を後にする。その顔は一見すると無表情そのものだが、どことなく疲労感が漂っていた。

 

――長時間の遠隔操縦、やはり消耗が激しいか。

 

男性は消え入るように呟いた瞬間、太陽が遮られて目の前が突然暗くなる。何事かと上を見上げた男性は目を疑った。

 

何故なら身長2メートルはあろうかという筋骨隆々の大男が腕組みをして見下ろしていたからである。

 

突然の出来事に理解が追い着かない男性を他所(よそ)に、大男がゆっくりと口を開く。

 

 

「鼠が紛れ込んだか。困ったものだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《メイ、有澤社長から入電だ。敵は確保したってよ》

 

「ふぅー。これで一安心ね」

 

 

メイは張っていた緊張の糸が解けたようにドカッと背もたれに背中を預けて大きく深呼吸した。そんな様子を聞いてジョージも、普段通りの気の抜けた笑いを返す。

 

話は少し遡る。

 

二機の敵ノーマルを撃破したあと、勢いのままに隊長格のノーマルを鹵獲したメイはコックピット内に生体反応が無いことに気付く。瞬間、ハメられたと悟った彼女は自身をコケにされたことに酷く憤り、スピーカー越しのジョージを親の仇のように怒鳴りつけて遠隔操作の逆探知を敢行させた。

 

いくらチューンナップされたノーマルとはいえ、ネクストと同様のアクチュエーター複雑系を備えた機体を遠隔操作して戦闘を行うことは簡単ではない。移動式機材の性能と通信距離によるラグを考慮しても最高操作距離300mが限界だ。ならば敵はノーマルを中心とした半径300m以内にいるはずだ。

 

そこからはジョージの逆探知により大凡(おおよそ)の位置を割り出して、あらかじめ連絡を取っておいた有澤隆文――雷電――と和太鼓楽団一行に怪しい人物がいないか徹底的にマークしてもらい、見事確保した運びである。

 

 

《一時はどうなるかと思ったが、結果オーライってとこか》

 

「私の勘が冴えたお陰よ? ローディーさんから直々に感謝されてもいいんじゃない?」

 

《それなんだが、丁度ローディーさんから連絡があってな》

 

「えっなになに!? 実は大捕物で豪華なご褒美がある的な!?」

 

《いやなんというか、言いづらいんだが……》

 

「何よぉ!勿体ぶってないで早く言いなさいよ」

 

 

 

《『ハワイに居るんならお土産にマカダミアンナッツ買ってきてね。あんまり甘くないやつ』だそうだ》

 

 

 

「……ん? ごめん、よく聞こえなかったんだけど」

 

《だから、甘くないマカダミアンナッツを買ってこいって――》

 

 

「あんのクソじじぃーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっきし!!…………風邪か?」




いかがでしたでしょうか。

久し振りにバーボンウイスキーのブッカーズを飲んだのですが、やっぱり美味しいですね。GW中は昼間からチビチビやりながらWOWOWシネマでも見ようと思っています。

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