凡人は気まぐれで山猫になる   作:seven4

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一週間ほど三食全て『味噌汁+御飯+納豆』で過ごしてみたのですが、意外とイケてビックリしてます。


62.猟師とカーニバル

『人を呪わば穴二つ』とは良く言ったものだ。

 

相手を地獄に叩き落とすのならば自身も叩き落とされる覚悟が必要だと言う慣用句だが、なにも呪術に限ったことではない。どの世界、どの業界にも少なからず存在する不文律であり因果律でもある。

 

そしてそれは傭兵稼業においても同様だ。

もし例外があるとすれば、それは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ネクストの反応を確認。【ランク28】パッチ、ザ・グッドラック、不明ネクストが2機の計3機か。相変わらずいい加減な情報だ。なんのためのブリーフィングだと思ってる、バカバカしい》

 

「やっぱセレンてインテリオルに嫌われてる? この前意見状突き付けたのがトドメだった?」

 

《……いや、相手はイレギュラーだ。この程度の想定外は想定している》

 

《流石はMs.セレン。手際の良さは一級品のようで》

 

《軽口は程々にしておけ、ロイ。楽に勝てる相手じゃないぞ》

 

《もちろんだ……ロイ・ザーランド、マイブリス、出るぜ》

 

「キドウ・イッシン、JOKER、出るぞ!」

 

 

掛け声と同時に合金製多重層ワイヤーロープの懸架から解放されたJOKERはポップコーンが弾け飛ぶようにQBを発動し、キタサキジャンクションめがけて突き進んでいく。対する鈍色の最新鋭輸送機は下部ハッチを開放して格納されていたネクストの腰部をアームで固定しつつ、うつ伏せの状態でせり立たせた。

 

亀の甲羅のように丸みを帯びた頭部に輝くモノアイと折れた角を模したスタビライザーが特徴的なそのネクストは、全体的に角に丸みを持たせつつマッシブな重厚感と堅実な堅牢さを実現させたアルドラ社の不世出の傑作である重量級ネクスト【HILBERT(ヒルベルト)-G(ゲー)7(ジーベン)】であり、ロイ・ザーランドが駆る乗機【マイブリス】そのものであった。

 

眼下に地上が見える恐怖を微塵も感じる様子も無く、手慣れた手つきでコンソールパネルを操作するロイは乗機マイブリスが輸送機と平行である事を確認して輸送機のアームを開放した。ガコンッと支えを外されたマイブリスはうつ伏せのまま地面めがけて自由落下状態となるが、数秒後には機体の全ブースターを細やかに点火して滑らかに直立の滞空姿勢に移行する。巧みな姿勢制御技術によって難なく体勢を整えたマイブリスはOBを発動、重量級ネクストならではの大出力によって背中に翡翠色の翼を形成して先行するJOKERに追従した。

 

 

《あまり飛ばすなよ青年。30過ぎると年下に追い着くのも一苦労なんだぜ》

 

「その割には余裕そうだな。なんならもっとスピードあげてやろうか?」

 

《必死に食らいつくのは柄じゃないんでやめてくれ。それより、くるぞ》

 

 

イッシンの軽口をロイが受け流したと同時に、砂丘の陰から放たれた垂直ミサイルの群れが彼等を出迎える。先に反応したのはイッシンであり、彼は脊髄反射的にすぐさまJOKERの右手に握られた【AR-O700】を構えて迎撃しようとする。しかしそれはGA製ガトリング【GAN01-SS-WGP】が装備されているマイブリスの鈍色の左腕に制された。

 

 

「なんのつもりだよロイ」

 

《まあまあ。ここは年長者に従えよ》

 

 

スピーカー越しにも分かる年若への侮りが込められた諭し方が癪に障ったイッシンだったが、相応の何かがあるのだろうと自身に言い聞かせてロイの指示に従う。良く出来たご褒美としてマイブリスの頭部を大きく頷かせたロイは制した左腕の【GAN01-SS-WGP】の銃口をミサイル群に向け、トリガーを引いた。

 

回転する銃身から目にも止まらぬ速さで順々に放たれる弾丸はロープのような弾幕を形成しつつ、やがて()()()()()()()()()()()()()()()()()に着弾する。着弾したそのミサイルは通常ミサイルとは比較にならない大爆発を起こし、周囲のミサイルを巻き込んで大輪の爆炎を作り上げた。予想だにしていなかった攻撃にセレンは思わず声を荒げるが、イッシンは動ずることも無く淡々としている。

 

 

《なんだ今の攻撃は!?》

 

「コジマミサイルだ。たしか変態トーラスの最新式じゃなかったか?」

 

《おっ、気付いていたのか》

 

「当然。それでどうするんだ? 3対2じゃ数的不利はこっちだぞ」

 

《ミサイルを撃った奴は俺がやる。青年は他の2機を頼むぜ》

 

「了解、しくじんじゃねえぞ」

 

《心配されるほど老け込んじゃいないさ》

 

 

ロイはそう言うとマイブリスにQBを吹かさせてミサイル射撃点の砂丘上空へ進行する。ある程度の距離を縮めると右手に握られたインテリオル製ハイレーザーライフル【HLR09-BECRUX】を構えて、隠れるのに手頃そうな砂丘をいくつか撃ち抜く。【HLR09-BECRUX】は威力の高いハイレーザーを二発同時に発射することで瞬間火力を強化した最新式ライフルであり、敵を炙り出すには効果的な兵装でもあった。

 

そうして三番目の砂丘を撃ち抜いた時、突然砂漠が舞い上がったかと思えば全身焦げ茶色の逆関節タイプの重量級ネクストが空中へ姿を現す。

 

 

《フフフッ。見破るとは流石ですね》

 

「隠れんぼは嫌いじゃ無いが、美人とのデートが懸かってるんでな。早めに終わらせて貰うぜ」

 

《あまり私の鎧土竜(ヨロイモグラ)を舐めない方が身のためですよ、首輪つき》

 

 

刹那、全身焦げ茶色のイレギュラーは背部兵装を展開して再び垂直ミサイルの群れを展開してマイブリスに襲いかからせる。ロイは距離を取りつつ先程と同じ手順でミサイルを迎撃しようと【GAN01-SS-WGP】を構えるが、咄嗟にQBを吹かして右方向へ急加速した。次の瞬間、元いた空間にレーザーと弾丸の雨が降り注いできたからだ。

 

しかしロイも最上位リンクスの一翼。その程度で隙を見せるほど甘くは無く、自身を追いかけてくる弾丸群を回避しつつ確実にミサイルを迎撃していった。そして全てのミサイルを迎撃したロイは攻守逆転とばかりに再び銃口をイレギュラーに向けるが、思わず閉口してしまう。

 

何故ならイレギュラーの背部兵装が()()()()()()()()()()()()()()()()()()、夥しい数のミサイルが顔を覗かせていたからだ。幾戦練磨のロイもこれには面食らってしまった。

 

 

《ミサイル・カーニバルです。派手にいきましょう》

 

「……おじさん泣きそ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間はほんの少し遡って。

 

 

《私達も行くぞイッシン》

 

「おっし。先ずはノーカウントを締め上げてイレギュラーとタイマンに持ち込むか」

 

 

イッシンはフットペダルを踏み込んでJOKERのQBを発動してマイブリスとは逆方向へと進路を取った。こちら側には隠れられそうな砂丘は少なく、代わりにキタサキジャンクションの橋脚が立ち並んだコンクリートジャングルと化している。敵の視界を阻みつつ身を隠す場所も多く、ゲリラ戦を仕掛けるには好都合な立地だと感じ取ったセレンはイッシンに警告する。

 

 

《気を付けろ。ノーカウントはともかく、不明ネクストは一筋縄ではいかんぞ》

 

「分かってるさ。だからこうやって遠距離から偵察を――ドヒュン――ってあぶねっ!

 

 

イッシンはフットペダルを蹴り抜いてQBを吹かし、左方向へ緊急回避する。刹那、JOKERの右肩部に亜音速の弾丸が(かす)って黒一色の塗装に銀色の素地が姿を現した。これには流石のイッシンも肝を冷やし、即座に背部兵装【TRESOR】を展開。敵座標を弾道から予測して割り出した瞬間、二発のプラズマ弾をお見舞いした。

 

プラズマ弾は見事に老朽化した橋脚を抉り取って周辺道路を崩壊させて砂埃を天高く舞い上がらせる。そこにいたのはBFF製スナイパーライフル【047ANSR】を構えていたノーカウントであり、自身の姿が露呈したことに慌てふためいていた。

 

 

《畜生! なんで分かるんだよ!?》

 

「撃てば居場所を知られるくらい常識だろうが」

 

 

イッシンは感情無く淡々と答えるとJOKERのOBを発動させてノーカウントに全力のタックルをかます。軽量級ネクストとはいえフルパワーでタックルした際の衝撃は計り知れず、ノーカウントはゴロゴロと砂丘を転がりながら吹っ飛んで行き、そのリンクスであるパッチは潰れたヒキガエルのような呻きを発してあえなく気絶してしまう。

 

 

「さてと、まずは一体。四脚タイプはどこに隠れて――」

 

《イッシン!9時方向に中規模コジマ反応を確認した、今すぐそこを離れろ!》

 

「――そこか」

 

 

セレンの警告を無視してイッシンは9時方向に機体を転換してQBを吹かす。よく見ると砂丘の背後から溢れんばかりのコジマ粒子が漏れ出ており、見つけてくれと言わんばかりに目立っている。自らの警告を全く聞き入れないイッシンに対してセレンは思わず怒鳴り散らした。

 

 

《何をしてる!? 早く距離を取れ!》

 

「コジマキャノンなら心配ねぇよ。威力全振りの低弾速兵器なんて目を瞑ってても避けられるぜ」

 

 

敵を甘く見るな、そう言いかけたセレンの口を噤ませたのは突然のコジマ反応の消失だった。イッシンも同様に砂丘の裏手で光輝く翡翠色の消失を確認する。

 

オーバーヒートでもしたのかとイッシンが考えを巡らせ始めた数瞬後、翡翠色の収束レーザーが()()()()()()()JOKERに襲いかかってきた。

 

弾速にしておよそ3000、BFF社が誇る最新鋭スナイパーキャノン【061ANSC】を上回る超速度で放たれたレーザーにイッシンは何とか反応して無傷での緊急回避を試みるが、それにはいささか遅すぎた。

 

 

「あ、やべ」

 

 

命中してしまったJOKERの左腕はグズグズに溶解し、握られていた【04-MARVE】は原形を留められずに液体状となってしまった。

 

全くの想定外に目を見開くイッシンを尻目に、砂丘の裏側からノソノソと四脚タイプのネクストが姿を現す。両手に握られたハンドミサイルは原作と同様の【NIOBRARA03】を装備しているが、背部兵装は原作から大きく逸脱していた。

 

背部の両スロットを占用するその兵装は、左側に背負われた巨大な長方形の貯蔵タンクらしき物体から複数のケーブルパイプを直結させて、右側に鎮座する砲門へとエネルギーを供給している。砲門の形状は【061ANSC】に排熱機構を施したバレルと、旧式コジマキャノン【INSOLENCE】の砲身を掛け合わせたような見た目をしていた。

 

不意に四脚タイプのネクストから通信が入る

 

 

《次は外さん》

 

「……チートって知ってる?」

 

 

 

 

 

 

 

【ランク18】〝JOKER〟キドウ・イッシン

 

          &

 

【ランク10】〝マイブリス〟ロイ・ザーランド

 

 

 

          VS

 

 

 

イレギュラー〝ビックバレル〟ブッパ・ズ・ガン          

 

          &

 

イレギュラー〝鎧土竜〟PQ

 

 

 

※パッチ、ザ・グッドラックは戦線離脱




いかがでしたでしょうか。

ビックバレルと鎧土竜も例に漏れず魔改造を受けております。え? エイ=プール?知らないです。

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