凡人は気まぐれで山猫になる   作:seven4

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『当小説以外にも二次小説書いてみたいなぁ』と思い立ったのですが書こうと思ってかけるもんでは無かったです。平行執筆出来る人しゅごい。


63.色男とカーニバル

薄雲のかかる晴天を背景にした空中で、焦げ茶色の巨人は背中に広がる大天使の如き翼――名称を翼型ミサイルユニット【MERCURY】という――から無数のミサイルを発射する。『壁』と呼ぶに相応しい面攻撃の複数箇所では翡翠色の星が獰猛に煌めいており、被攻撃者を爆殺しようと迫った。

 

被攻撃者側の鈍色の巨人は背部兵装【DEARBORN03】を展開して左右の『壁』を迎撃、誘爆させる。紅蓮と翡翠が入り混じった幻想的な大規模誘爆は中央の『壁』を削ぐように消失させていくが、中心部は誘爆に巻き込まれる事なく鈍色の巨人に向かっていく。

 

しかし迎撃しきれない事は織り込み済みと言わんばかりに巨人は左腕に搭載されたGA製ガトリング【GAN01-SS-WGP】を構えて残り少ないミサイル群に向けて発射。無駄弾の一切無い正確な迎撃でミサイル群を爆散させると、直後に生じた黒煙に向けて【HLR09-BECRUX】を一発撃ち込む。黒煙を穿ったレーザーの光条は寸分違わず焦げ茶色の巨人のコアを射抜かんと突き進むが、QBによる緊急回避によりそれは叶わなかった。

 

 

《フフフッ。良い狙いですが、それでは鎧土竜に傷一つつけられませんよ》

 

「いってくれるねぇ。ならコイツはどうだ?」

 

 

鈍色の巨人――マイブリス――を駆るロイ・ザーランドは背部兵装である【DEARBORN03】と【VERMILLION01】両方を展開して焦げ茶色の巨人――鎧土竜(よろいもぐら)――に向けて一斉に放った。鎧土竜の大質量ミサイル攻撃に比べれば打撃力も制圧力も流石に劣るものの決して薄くは無い弾幕に鎧土竜は回避行動の準備をする。

 

着弾までのタイムラグを勘定すれば、しっかりとミサイルの軌道を把握してから回避した方が回避率は格段に上がるのだから、鎧土竜を駆るPQの判断は間違っていない。

 

唯一間違えていたとすれば、ロイの技量を見誤ったことだろうか。

 

刹那、鎧土竜へ飛来するミサイル群の隙間を巧みに掻い潜って後方より二条のハイレーザーが襲いかかってきた。針の糸を通す繊細な芸当をまさか実戦で見ることになるとはPQも想像しておらず、盛大な舌打ちと共にQBを発動。回避を試みるも右脚部に被弾してしまいバランスを崩してしまう。

 

次いで差し迫る【DEARBORN03】と【VERMILLION01】のミサイル群が鎧土竜を捉えるが、リンクスであるPQは急ぎつつも焦らずに鎧土竜の両の手に据えられた【LR02-ALTAIR】および【050ANSR】を構えて的確に迎撃を行った。射抜かれたミサイルは周囲を巻き込みながら誘爆し、鎧土竜に到達することなく線香花火のような小規模爆破を複数発生させる。

 

 

《まだです、この程度で鎧土竜は堕ちませんよ》

 

「あぁそうかい。それなら一つ答えてくれよ」

 

《……戦闘中なのに随分と余裕ですね。まぁ内容にもよりますがお答えしても構いません》

 

「お前、アンデス戦線のフィリップ(Philip)クインネル(Quennell)だな?」

 

《――誰のことでしょう》

 

「誤魔化すなよ。【虫好きクインネル】といえばバーラット部隊も裸足で逃げ出す乱戦の達人って有名だぜ。最近アンデス戦線を離れたって噂は聞いてたが、まさかこんな所であうとはな」

 

 

ロイはPQの経歴を言い当てヘラヘラと笑うが、一発で言い当てられた本人は内心気が気でない。()()に合流するために古巣を離れ、そのためにネクストも新調したにも関わらず、目の前の男にはものの見事に看破された事実は間違いなくPQの動揺を誘った。まずはこの男の情報を集めなければ。

 

 

《私はフィリップ・クインネルでも【虫好きクインネル】でもありませんよ。しかしゲリラ組織の一個人を知っているなんて、貴方も酔狂なのですね》

 

「なあに。昔、おれも同じ穴の(むじな)だったからよ」

 

《……なんですって?》

 

 

昔? いつ頃だ。3年前? 5年前? ゲリラ組織の誰かがカラードに所属した情報は【コルセール】のフランソワ・ネリス以外に知らない。ノーマル乗りからの転向か? いや、ネクストに乗れるAMS適正を持っている時点でゲリラ組織では必ずネクストに搭乗させられる筈だ。………まさか。いやそうとしか考えられない。折れた双角のスタビライザー、正確無比の非情な精度、掴み所の無い人柄、全て合う。

 

 

《フフフッ。【ドルニエの黒鬼】が相手とは私も運がないですね》

 

「そんな(あざな)で呼ばれた時もあったな。お前も良く知ってるじゃねえか」

 

《反動勢力に与する者なら一度は聞く名前ですからね。都市伝説の(たぐい)と高をくくっていたのですが、まさか実在したとは》

 

 

【ドルニエの黒鬼】

 

数年前、GAグループが管理するドルニエ採掘場はある一機のイレギュラーにより占拠されていた。資源コロニーが反動勢力によって占拠されること自体は珍しいことではない。

 

長くて数週間もあれば再びGAグループによって奪還されるのが常であったのだが、アルドラ社の傑作【HILBERT(ヒルベルト)-G7(ゲージーベン)】をベースにしたそのイレギュラーは単機でAF(アームズフォート)6機を沈め、150機のノーマルを葬り去る大立ち回りを演じたのだ。

 

予想外の大損害を被ったGAグループは報復のために自身が擁する【ランク4】ローディーに当該イレギュラーの撃破を命じ、見事完遂した。しかし残念な事にイレギュラーの残骸は全て採掘場付近の洋上に沈んでしまったとの報告を受ける。

 

その後『施設は戦闘により破壊され、これ以上の採掘は不可能である』とのローディーの進言を受けたGAはドルニエ採掘場を放棄し、以降は度々ゲリラ組織の拠点となるのだが、不思議な事に拠点としたゲリラ組織の全てが()()()()()()()ドルニエ採掘場を後にしていくのである。

 

生き残った僅かな生存者は全員気が触れておりマトモな会話が成立しないのだが、唯一共通していることは『黒い鬼を見た』という目撃証言だった。

 

 

「それでどうするよ? 投降してくれるとこっちも楽なんだがな」

 

 

ロイはマイブリスの右腕に握られた【HLR09-BECRUX】を肩に乗せて、左手を天に向けながら肩をすくめる。相手を苛立たせるには最適の仕草だったがPQは誘いに乗ること無く冷静に状況を分析していた。

 

――噂通りの実力なら間違いなく勝ち目はない。生き残る可能性の多寡を考えれば投降勧告に大人しく従って捕虜になった方がいいに決まっている。だが、それでも――。

 

PQは覚悟を決めて操縦桿を握り直す。かつてアンデス戦線を率いた者として、()()()()()に心打たれた者として、投降という選択肢は元より存在していなかった。

 

 

《残念ですが無理な相談です。私がここで貴方を倒すのですから》

 

「そうかい、残念だ」

 

 

応えたロイの声色は一段低く、呆れとも悲しみともつかない呟きを口にした数瞬後にマイブリスはOBを発動した。OBは翡翠色の翼を煌めかせてマイブリスの背面に纏い付いており、速度も重量級ネクストとは思えないレベルの超加速で鎧土竜に迫る。

 

 

(速いっ! しかし――)

 

《堕ちる訳にはいきません!》

 

 

確かに速い。

質量を考えれば驚異的な加速だ。

鎧土竜の機動性では捕捉する事すら困難だろう。

 

ならば正面から叩き潰すだけだ。

 

鎧土竜は背部兵装の翼型ミサイルユニット【MERCURY】を見せつけるように最大展開し、装填された全てのミサイルをマイブリスにロックする。先に放ったミサイル群を差し引いてもコジマミサイル38基、通常ミサイル192基、計230基のロックが完了したサインがコンソールパネルに表示された瞬間、PQは迷うこと無くトリガーを引いた。

 

ミサイルの大群は白煙と翡翠色の粒子が混在した尾を曳きながらマイブリスを丸呑みにせんと伝説の白鯨の如き威圧を以て爆進する。そのまま白鯨と鈍色の巨人の相対距離がどんどん詰められて距離200を切った時、PQは勝利を確信した。数多くの乱戦を潜り抜けて磨き上げた勘がPQの脳内に勝利のゴングを鳴り響かせる。

 

 

――あの距離からミサイルを振り切れるネクストは存在しない。ましてやコジマミサイルが入り混じった必殺の大群だ。

 

――さらば【ドルニエの黒鬼】、貴方と相見えたことを誇りに思います。貴方の貴い犠牲は革命を以て成算させ、必ず理想の世界を………?

 

 

ロイ・ザーランドに手向ける言葉を想い、完全に勝利の愉悦に浸っていたPQにとって()()は明らかな不穏だった。

 

マイブリスの背面に纏い付いている翡翠色の翼が緋色の翼に変化したのである。

 

刹那、PQのコックピットにロイ・ザーランドの呟きが聞こえた。

 

 

 

 

《それじゃ、本気で行くか》




いかがでしたでしょうか。

【MERCURY】はオリジナル兵装です。イメージとしてはヘビーアームズのミサイルポットが翼状に連なっている感じです。表現むつかしい……。

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