凡人は気まぐれで山猫になる   作:seven4

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いつの間にかUA500越え………。怖いよ。
それだけ闘争を求めているレイヴンやリンクスが多いと言うことですね(震え)

これからも気長にやっていくので、よろしくお願いします


7.旧き猛者、新風に震える

イッシンの初陣後の深夜、格納庫(ファクトリー)の待機室にはセレンが居た。報告書は既に作成、提出しており待機室にいる必要は()()()()()()無い。ならば何故居るかと言えば、セレンはストレイドの戦闘記録を見返しており、コーヒーを片手にコンソールと対面していた。

 

 

「やるじゃないか、か。我ながら良く言えたな」

 

 

セレンは自分自身の言葉を反芻し、自嘲する。あいつ(イッシン)の初陣をオペレートして感じた違和感。レーダー上でしか感じなかったその違和感は戦闘終了後の会話で確信に変わり、驚嘆する。

 

()()()()()()()鹿()()()()

 

現代の戦闘において敵を殺さず無力化する事は何よりも難しい。ましてノーマル相手など自殺行為だ。確かにネクストとノーマルの差は歴然だが、いかにネクストと言えどノーマルを侮れば痛い目を見るのは最精鋭ノーマル部隊である〝サイレント・アバランチ〟が証明している。そんな馬鹿げた神業を初陣の、しかも若造が当然のように成し遂げた。

 

 

「全く、とんだ化け物(ルーキー)をスカウトしてしまったな」

 

 

セレンは座っている椅子に寄りかかり、深い一息を吐く。

戦闘記録はカラードを通じ、数日中には知れ渡るだろう。そうなれば企業の連中が黙っている訳が無い。

 

 

従えようとする者。

排除しようとする者。

利用しようとする者。

 

 

力ある者が強者であるという(ことわり)に変わりは無いが、力だけでは魑魅魍魎(ちみもうりょう)跋扈(ばっこ)する世界で生き残る事は難しい。少なくとも傍で支え、導き、助言する人間が必要だ。そして、その役割を私以外に任せるつもりは更々ない。

 

不意に待機室の電話が鳴る。深夜の連絡など非常識極まりないが、セレンは待ちわびたように受話器を取り電話口の相手と言葉を交わし始める。

 

 

「私だ。……分かった、後は手筈通りに……」

 

 

未だ待機室の灯りは消えず、夜はその深みを増していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BFF(Bernard and Felix Foundation)社 イギリス本部

 

一流の調度品を数多く揃えながら絢爛さは無く、閉塞感を感じさせる(おごそ)かな執務室の中で、濃いグレーのスリーピースを着こなし、黒縁メガネを掛けた細身の老人が羽根ペンを走らせていた。

 

老人の名は王小龍(ワン・シャオロン)

名のある華僑の出身でありながら、華僑である事に(こだわ)る家に未来は無いと切り捨て、単身BFFへ入社するため渡英。

偶然にもAMS適性を持ち合わせていた事から、国家解体戦争時には最初期のリンクス【オリジナル】として参戦した。

後のリンクス戦争によりBFFは一時壊滅したものの、持ち前の権謀術数を用いてGA(Global Armments)社傘下となることでBFFを再興。その手腕を高く評価され、リンクスでありながら最高経営幹部に名を連ねる異質なリンクスだ。そんな王の執務室にノックが響く。

 

 

「入れ」

 

「久しいな小龍。面白いニュースとつまらないニュース、どちらから聞きたい?」

 

 

見ると両手に紙コップを持ち、臙脂(えんじ)色のMA-1を羽織った初老の男性が立っていた。ドアを開けたのは秘書のようで、気まずそうにこちらを見ている。

 

 

「申し訳ありません、執務中であるとお伝えしたのですが…………」

 

「構わん。言ってどうなる奴でもあるまい」

 

「話が早くて助かる」

 

 

初老の男性は微笑みながら、紙コップの片方を手渡してきたので受け取る。どうやらコーヒーのようで香ばしい薫りが鼻をくすぐった。王はメガネを外し、布で拭きつつ初老の男性をたしなめる。

 

 

「連絡も無しに来るなと言った筈だが」

 

「硬いこと言うな、同じグループのよしみだろうに」

 

「…………流石は〝GAの英雄〟だ、言うことが違う」

 

 

初老の男性の名はローディー。白髪の交じり始めたG.Iカットと臙脂色のMA-1がトレードマークのリンクスだ。小龍と違い体格は良いが年相応に腹が出て来ており、顔の皺も目立ち始めている。一見気さくな人物に見えるが、しかし彼の本質はそこでは無い。

 

当初、AMS適性の低さから〝粗製〟と揶揄されていた彼は周囲から蔑まれる存在だった。だが、リンクス戦争時に大半のリンクスを失ったGA社は態度を一変。生き残れと言いながら、常に最前線への出動を強制された。

 

誰もが「いつ死ぬか賭けよう」と陰口を叩いていたが、ローディーはその(ことごと)くを完遂。低いAMS適性を経験によって(おぎな)い、GA社最高戦力となった。

そのドラマチックな経歴から『生きる伝説』や『GAの英雄』と呼ばれているが、ローディー自身はやめて欲しいと思っているは、ここだけの話である。

そんなローディーはコーヒーを一口含むと、顔をしかめる。

 

 

「随分濃いな。これがイギリス式か?」

 

お前の国(アメリカ)のコーヒーが薄すぎるだけだ、他の国とそう変わらん」

 

 

……此奴(こやつ)の話に付き合うと、話が進まんな。

言葉で崩すには相手が悪いと悟ったか、王は本題に入る。

 

 

「で、面白いニュースとつまらないニュースがあると言ったな?まずつまらないニュースを聞こう」

 

「おっそうかい?実はな、検定作業中のランドクラブがインテリオルに鹵獲された」

 

「ふん、単機でロロ砂漠なんぞに行かせるからだ。自業自得だろう…………インテリオルからの要求は?」

 

「拘束した全搭乗員の身柄と、わが社の実弾防御技術の一部を取引したいらしい」

 

「…………世相を見れば、受けるのが妥当だな」

 

「だろうな。まぁ、どうするかは御上が決めるさ」

 

 

ローディーは会話の合間、またコーヒーを一口含むと顔をしかめ、王のウォルナット製のデスクに置く。余程、お気に召さなかったらしい。そんなコーヒーを王は平然と飲む。……良い焙煎だ、薫り高い。

 

 

「……面白いニュースは?」

 

 

コーヒーの渋さにしかめ面の形成を余儀なくされていたローディーだったが、王のその一言に『食い付いたか』と言わんばかりの笑みを見せる。

 

 

「カラードに新人が登録されてな。そいつが初陣早々『やらかして』くれたんだ」

 

「やらかし……? どういう意味だ」

 

「まあ、こいつを見ろよ」

 

 

ローディーは懐から手帳ほどのタブレットを出し、王にある映像を見せる。ある一機のネクストが次々と通常兵器を無力化している単調な映像であったが、その映像を見終わった時の王の目には明らかな鋭さが宿っていた。

 

 

「これは……中々だな」

 

「だろ。今後次第だが【アナトリアの傭兵】に匹敵するかも知れん。いや、もしくは」

 

「それ以上、か。…………何にせよ、監視対象は確定だな」

 

「ああ。監視はGA(うち)の連中を――」

 

「いや、BFF(わが社)で用意する」

 

 

不意な返答にローディーは面を食らった。今まで、王に言葉を被せられた経験は一度たりとも無い。

 

 

「どうした? 珍しいじゃないか」

 

「此奴のオペレーターはセレン・ヘイズだ。用心に超した事は無い」

 

「セレン……ああ、成る程」

 

一人納得するローディーを他所(よそ)に、王小龍は黙考を始める。そして王小龍は、(ふくろう)の如き眼光を携えた〝陰謀家〟の顔に変貌を遂げていた。

 

 

時は二月、未だ寒さの厳しい季節の事である。

 




いかがでしたでしょうか。

ローディーって、絶対気の良いオッサンだと思うんです。だってエンブレムにギター書いてるし(偏見)

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