凡人は気まぐれで山猫になる   作:seven4

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海老ピラフって旨いよね。
自分で作って一人で半升食べるくらい好物です。
だからブクブク太るんだよな。


72.アセナとコパラ

暁とも夕焼けとも取れない日の光が照りつけるラインアークのハイウェイに、どこからともなく三体の巨人が舞い降りた。それぞれ深蒼・漆黒・真紅にカラーリングされた巨人達は進化の過程から逸脱したような異形であり、背中から漏れ出る翡翠色の粒子と相まって終焉を告げる堕天使にも似た禍々しさを醸し出している。

 

そのうち深蒼に染め上げられた巨人【ステイシス】を内部のコックピットで操る眉目秀麗の皮肉屋――オッツダルヴァ――はラインアークが現在置かれている状況を、味の無くなったガムのように吐き捨てた。

 

 

「ふん、政治屋ども。リベルタリア気取りも今日までだな。貴様等には水底が似合いだ」

 

「反クレイドル主義を自由意志論と混同するのはいかがなものかと。理想ばかりの衆愚政治を揶揄する目的なら、これ以上ない言葉ですが」

 

「俺むずかしいこと分かんないからパ~ス」

 

 

オッツダルヴァの(うた)めいた言葉に漆黒の巨人【フラジール】を駆る無表情の青年――CUBE――は面白味の欠片も無い解説と肯定で応答し、真紅の巨人【クラースナヤ】を駆るあどけなさの残る少年――ハリ――はコックピットで小難しい話は暇だと言わんばかりに足をバタつかせている。

 

 

「……敵ネクスト部隊接近。【ランク3】【ランク9】【ランク10】のようです。情報が確かなら一機足りませんね」

 

「え~、イッシンいないの?あの人なら楽にカモれると思ってたのにぃ」

 

「ラインアーク居住区の防衛のために後方支援に回ったか。数の利を自ら捨てるとは、やはり愚かだな」

 

 

《それはどうかな。案外私達だけでどうにかできるからかも知れないぞ?》

 

 

終焉の使い達の通信に割り込んで来た男性の声は的確にオッツダルヴァ以下三名の耳朶(じだ)を撃ち抜き、緩んでいた彼等の意識を無理矢理正面に集める。

 

距離300mほど離れた正面には白亜の装甲に身を包んだ気品ある巨人を筆頭に、古いコミックヒーロー然としたカラーリングが施された巨人と、色気のある鈍色が光る巨人が対面する堕天使と同様に背後から翡翠色の粒子を漏れ出させながら降り立った。しかし禍々しさの類は一切なく、むしろ神々しさが目を惹く彼等は叙事詩に登場する英雄にも見える。

 

 

「ダン君の情報通り三機とは。少ないとは言わないが、企業連は人手不足なのか?」

 

「貴方相手に消耗戦を仕掛けるのは効率が悪いと判断したのだと思いますよ。いくら企業連でも戦力を湯水のように使えませんから」

 

「それでもレイブンさん相手に三対三は無謀もいいとこだけどな」

 

 

《ホワイト・グリント……。早速で申し訳ないが大袈裟な伝説も今日で終わりだ。進化の現実ってやつを教えてやる》

 

 

刹那、ステイシスの右手に握られたオーメル製試作レーザーバズーカ【ER-O705】の銃口からオレンジ色の光が煌めいた。ファストドロウの要領で放たれた光条は真っ直ぐホワイト・グリントのコアに向って獲物を喰らい尽くさんと牙を剥くが、白亜の巨人は特に動く様子は無い。

 

そして凶暴な光条がコアを穿とうとした瞬間、ホワイト・グリントの存在が画面上に走ったノイズのように僅かに()()()

 

時間にして一秒足らず。光条はブレた寸分違わずホワイト・グリントのコアを()()()()()貫通し、目的を達成して満足げな光条は彼方に雲を浮かべる空へ消えていく。

 

確実に当たった。

誰もがそう思ったことだろう。

だが実際はどうだ。

 

一秒後に現れたホワイト・グリントのコアには風穴どころか、引っかき傷一つ無い白亜の装甲が日の光を妖艶に照り返している。オッツダルヴァのファストドロウが放たれる前の状態から何一つ変化が見られなかった。……いや、厳密に言えば一つだけ変化がある。それはホワイト・グリントに搭載されたメインブースターおよびサイドブースターが異常に赤熱して、その周りだけ陽炎が発生していることだった。

 

 

「……瞬間的に二段QBを発動して二段QBでキャンセルするか。やはり化け物だな、アナトリアの傭兵」

 

《なあに、適性の無い私が出来るんだ。練習すれば君も出来るさ》

 

《レイブンさん基準で物事を考えると色々バグるんで止めて下さい。てか二段QBの発動だけでもカラード上位で出来るのは一握りですからね?》

 

《僕も二段QBを二段QBでキャンセルは流石に……》

 

《ジョシュアやアマジークは出来てたぞ? 君たちも出来て然るべ――》

 

 

自身の超絶技巧を、それなりの実力者であれば出来て当然の技術だと思っている口調で後輩達に説くレイブンの言葉は最後まで言い切ることが出来なかった。何故なら真紅に染め上げられた異形の巨人――クラースナヤ――が、突如としてホワイト・グリントの目の前に現れて飛び膝蹴りを顔面めがけて仕掛けてきたからである。

 

全くの死角から仕掛けられたレイブンは微かに目を瞠るが、しかしそれ以上動じることは無く、冷静にホワイト・グリントの両腕を前方にクロスさせて受け止める。ネクストまるまる一機分の重量が乗った打撃をまともに受けることは流石のレイブンもせず、ホワイト・グリントに搭載された全てのショックアブソーバをフル稼働させて衝撃を分散させた上で受け止めた。それでも機体を支える脚部周辺のハイウェイにミシッと亀裂が入る。

 

 

《うっそ!? 今の反応出来んの?!》

 

「まだまだ荒削りだな、坊や。悪い事は言わないから早く帰ってハイスクールの宿題を終わらせなさい」

 

《……あんま舐めてっと痛い目見るぞオッサン!!》

 

 

売り言葉に買い言葉。

 

レイブンの挑発が癪に障ったハリはクラースナヤに更なる追撃を命令する。ホワイト・グリントの両腕を支点とした空いている左脚でのハイキックは、抜き手の要領で出て来た右腕で見事に防がれた。ならばと短期決戦用に新調した両手の【04-MARVE】はガン・カタによく似た手捌きで(ことごと)くいなされる。

 

先日のスピリット・オブ・マザーウィル撃破の功績が認められ上位ランカーとして名を連ねられたハリは『やっとカラードで正当に評価され始めた』と思って気分が良くなっていた。そこに【ホワイト・グリント撃破】の依頼が企業連直々に来たとあれば舞い上がるのも無理は無い。加えて味方にはあのオッツダルヴァもいるのだ。負ける要素が無い。

 

そう思った矢先に、()()だ。

 

オッツダルヴァが不意打ちで放った射撃を二段QBなんていう超絶技巧で易々と躱し、自身が完全な死角からカマした飛び膝蹴りを簡単に防いだ上に舐めきられてる。ハリの欲求不満(フラストレーション)を急上昇させるにはこれ以上の材料はない。

 

【04-MARVE】を放り投げて右上段フック。

受けられる。

フェイントを交えたサマーソルトキック。

躱される。

左脚を軸にした回し蹴り。

いなされる。

踵落としから機体を沈め込んで左アッパー。

見事に防ぎ切り、見事なタイミングのカウンターをクラースナヤの顔面に決められた。

 

衝撃で吹っ飛んでいく真紅の巨人は空中で伸身宙返りの如くくるくると回転しながら放られた【04-MARVE】を掴み、体勢を整えてステイシスの真横に着地する。機体全体が肩で息をしているように上下している所を見ると、よほどイライラしているらしい。

 

 

《手を貸そうか? ハリ》

 

「――癪だけど頼みます。あのオッサンは此処で叩きのめした方が良さそう」

 

《では私はマイブリスの相手を。重量級ネクストのデータ収集には最適な対象です》

 

《ふん……それはよかった。じゃ、いこうか》

 

 

オッツダルヴァはハリとCUBEの回答に満足げな言葉を口にするとステイシスのメインブースターに火を灯してOBを発動。連なるようにクラースナヤとフラジールが続いてOBを発動し、こちらへ向かってきた。その様子を見ていたダンは通信でレイブンに意思を伝える。

 

 

《オッツダルヴァとハリは僕とレイブンさんで、フラジールはロイが相手でいいですね?》

 

「問題ない。背中は任せるよ」

 

《了解。頼むぜ、ダン》

 

《大丈夫。上手くいくさ》

 

 

自信に満ち溢れた笑みを浮かべるダンはセレブリティ・アッシュのメインブースターに火を灯すと同時にOBを発動。次いでホワイト・グリントとマイブリスもOBを発動し、一直線に向かってくる彼等を迎撃する。

 

火蓋は切って落とされた。

 

 

 

【ランク3】セレブリティ・アッシュ/ダン・モロ

          &

【ランク9】ホワイト・グリント/レイブン

          &

【ランク10】マイブリス/ロイ・ザーランド

 

          VS

 

【ランク1】ステイシス/オッツダルヴァ

          &

【ランク13】クラースナヤ/ハリ

          &

【ランク31】フラジール/CUBE




いかがでしたでしょうか。

次回から本格的に戦闘シーンです。
果たしてどの勢力が勝つのでしょうか?

ちなみにアセナはトルコ神話、コパラはグルジア神話の英雄です。
調べてみると作中の二人と類似点が意外にあって面白かった。

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