ハイウェイを基点として超高速で移動するステイシスの右手に握られた【AR-O700】が火を噴き、動きの鈍ったセレブリティ・アッシュを捉えた。しかしセレブリティ・アッシュは待ってましたと言わんばかりに頭部のメインカメラを光らせるとQBを発動して紙一重で全弾回避する。
《――残念、大ハズレ》
「分かっている。本命は
躱されることは当然予測していたという口調のオッツダルヴァは、見切った悦に浸る間もなく後方から飛来してきたMASAC製分裂ミサイル【SALINE05】を
「いいぞ、フラジール」
《無論です》
刹那、海面に建てられたハイウェイの橋脚の隙間を縫うようにフラジールがOBを発動させながらホワイト・グリントへ向かっていく。そうしてVOBに匹敵する加速力を持った異形の巨人が白亜の巨人に到達する寸前、フラジールの真横から二本の青い光条の出現を視認したCUBEは
CUBEは青い光条が現れた方向を確認すると、鈍色の巨人ことマイブリスが右手に持つ【HLR09-BECRUX】をこちらに向けている。
《やはり貴方から対処するべきですね》
「当たり前だろ。不意打ちでウチの大将獲れると思うなよ」
そう言ってロイは【DEARBORN03】を起動してフラジールにロックを合わせ、三基のミサイルを放った。しかし、白煙を曳きながら向かってくるミサイルを視認したCUBEは
《その技は先日交戦したイレギュラーとの戦闘記録で学習済みです。重量級ネクストとの貴重な実戦データ収集ですので、戦闘記録に無い優れた技術を拝見させて下さい》
《ならロイより僕の技術を見た方がいいんじゃないか?》
CUBEの挑発にロイが乗るよりも早くダンの駆るセレブリティ・アッシュがBFF製ライフル【047ANNR】を連射させつつ、OBを発動しながらフラジールに迫ってきていた。しかしCUBEは動じることなくQBを吹かして的確にセレブリティ・アッシュとの距離を稼ぐ。
《――お気遣いありがとうございます。ですがセレブリティ・アッシュの戦闘記録は既に充分な量を確保しているので必要ありません。申し訳ありませんが、マイブリスとの実戦データ収集の支障となりますのでお引き取り願えますか?》
「それは出来ない相談だな。格下とはいえ、強者に対して数の利を使うのは当然だろ?」
《なら僕が無理矢理引っ剥がしますね!》
「!?」
刹那、年若い少年の声と共に現れたクラースナヤの跳び蹴りがセレブリティ・アッシュの脇腹を襲った。フラジールに対して腰だめの状態で【047ANNR】を撃っていたのでセレブリティ・アッシュはなんとか肘でのガードに成功したが近接戦に対応できる程の十分な体勢を取ることは出来ず、勢いのまま【04-MARVE】を使ったガン・カタの猛攻を仕掛けてくるクラースナヤに防戦を強いられてしまう。
《一度でいいからアナタと本気でやり合ってみたかったんですよ! 今なら気兼ねなく戦えますから!》
「この……!」
「大丈夫か、ダン!」
《アナタの相手は私です。余所見は禁物ですよ》
「――改造人間に構ってる暇はねえってのに!」
セレブリティ・アッシュがクラースナヤに釘付けになり、フラジールは再びマイブリスとの戦闘に舵を戻す。小細工無しの激戦が繰り広げられるその様子を遠巻きに見ていたレイブンは微笑ましそうにウンウンと頷いていた。
「若い世代が育っているようで何よりだ。この調子だと、私もまだまだ引退出来そうに無いな」
《ほざけホワイト・グリント。貴様の引導は俺がいますぐ渡してやる》
オッツダルヴァの声と共にレイヴンの死角から放たれた【ER-O705】のオレンジ色の光条は一直線にホワイト・グリントを射貫かんと
「ラインアークが在る限り引退するつもりはないさ。君とて終生オーメルの小間使いで居るつもりはないんだろう?」
《下らん問答だな。俺は俺のやり方で生きる、今はオーメルに与したほうが賢いと判断したまでだ》
「その野心と合理性、今の時代によく培ったものだ。師匠の顔が見てみたい」
《なら見てこい。あの世で首を長くして待っているだろうからな》
そうして白亜の巨人と深青の巨人は流星のような速度を保ちつつベーゴマのように弾かれては引かれ、弾かれては引かれの超高速戦闘に突入していった。
「いや~派手にやってんな~」
《カラードの最高戦力同士がぶつかり合っているんだ、当然だろう》
「にしてもヒートアップし過ぎだろ。見ろよ、セレブリティ・アッシュとクラースナヤの戦闘。足場のない空中で体勢を全く崩さずに近接格闘の応酬とか、出てくる世界を間違えたんじゃねえかと思うぜ」
《……確かに。フラジールとマイブリスはお互いの性質を見抜いた上での高度な読み合いになっているし、ホワイト・グリントとステイシスに至っては速過ぎて何をしているか皆目見当がつかん》
ラインアーク側チームと企業連チームが一進一退の攻防で鎬を削っている中、ラインアーク側の防衛要員兼後詰めとして待機しているイッシンは暇そうにストレイドのコックピットに表示された望遠レンズ越しの戦闘を、オペレーターであるセレンとの雑談で消費しながら見ていた。しかも片手には食べかけのシルバーアーチのツインチーズバーガーを持ちながら。
今回のイッシンの役割はラインアーク側チームが何らかの事情により戦線を維持できなくなった場合と企業連側がラインアークに直接攻撃を仕掛けた場合を想定したセーフティであり、そのため兵装は汎用性および打撃力に優れたモノに絞らざるを得ず、結果としてJOKERの積載量を大きく超えてしまったので久し振りにストレイドの出番となっていた。
出会った当初から全く変わっていない空色のTYPE-
馬鹿デカい欠伸を一発かまし、その大口のままツインチーズバーガーを頬張るイッシンの姿はクソニートの怠慢を具現化したような有様だが、しかし手元に表示される友軍の損傷状況と戦況の逐次確認は一瞬たりとも怠っておらず、鬼オペでお馴染みのセレンがいつものようにイッシンに対して怒っていない最大の理由でもあった。
「……なんか気に入らねぇな」
《なにがだ。前線に出られないことか》
「それもあるけど。ダンとハリの野郎、手ぇ抜いてね?」
《あの戦闘を見ていっているのか?》
戦場に目を戻すとクラースナヤの両手に構えられた【04-MARVE】から放たれる弾丸をセレブリティ・アッシュがQBで回避している真っ最中であり、手を抜いている素振りは一切無い。それどころかセレブリティ・アッシュは背部兵装【049ANSC】を起動させると、狙い澄ました一撃をクラースナヤのコアめがけて撃ち込んだ。クラースナヤは紙一重で砲弾を躱すが、コア上部を若干掠めたようで銀色の素地が擦れたように現れる。まさに拮抗していると言って良い状況だ。
「う~ん、なんかなぁ。こう『殺す!』って感じの気迫じゃなくて『勝つ!』って感じっぽく思うんだよ」
《内包する意味は同じだろ》
「いやそうなんだけどさぁ。ニュアンス的な違いっていうか。ほら、軍隊でも実戦と演習って目的は同じだけど心持ちが違うじゃん。そんな感じ」
《……その真偽はともかく、どちらにせよダンがハリに負けることはまずない。私達は粛々と自分の役割に徹してラインアーク防衛に努めるぞ》
「りょ~かい」
いかがでしたでしょうか。
連載物でラインアーク辺りまでいったの本作品が久々なのではないでしょうか。……自分で書いてみてビビっています。マジかよ。怖えよ。
励みになるので評価・感想・誤字脱字報告よろしくお願いします。