これからも気長にお付き合い頂けると幸いです。
《敵ネクスト接近……この速度、オッツダルヴァか》
「じゃなきゃ困る。あの水没王子には聞きたい事が山ほどあるんだ」
《――ロイがやられて気が立つのは分かるが、あまり気負い過ぎるなよ。お前までやられては元も子もないからな》
「イエスマム。あくまでクールに、
《なら良い。……ステイシス、交戦距離に到達。見せてやれ、お前の実力を》
「了解! キドウ・イッシン、ストレイド! 派手に行くぜ!」
イッシンの掛け声と共にフットペダルが蹴り抜かれ、空色の【TYPE-
今回のミッションは後方支援と防衛ラインの守備が想定されていたため、ストレイドの武装はそれに特化した仕様となっている。
右手には現場での信頼性と精度を両立させたBFF製スナイパーライフル【050ANSR】
左上腕部には威力と近接適性を強化することにより機動戦をこなせるようになったローゼンタール製レーザーライフル【ER-R500】
右背部には至近距離戦で絶大な威力を発揮するローゼンタール製チェインガン【CG-R500】
左背部には全兵装中『最速』と謳われるインテリオル製レールキャノン【RC01-PHACT】
加えてイッシンの駆るストレイドも、ローゼンタールのフルパッケージネクスト【TYPE-
事実このミッションを受注するにあたり、可能な限り自社製品を装備して欲しいとローゼンタール側の担当者から打診があったためだ。
何故か。
答えは単純。
オーメルの切り札たるステイシスを、ローゼンタールの標準機であるストレイドで打ち負かす事が出来ればローゼンタールのグループ内における立ち位置が大幅に上がるからだ。
そうすれば独裁的な政治主導権を握るオーメルの牙城に風穴を開ける事が出来、なおかつローゼンタールの発言権もより効力を発揮することに繋がるのだ。
三手先を見通したローゼンタールの采配には脱帽するしか無いが、あくまでその采配は『ミッションの成功失敗に関わらず、最低でもイッシンがオッツダルヴァに勝つ』という大前提の上で成り立っているのだ。暗に『お前なら勝てるだろ?』と言われているイッシンは改めて多少ゲンナリとした溜息を吐く。
「――こんな小間使いで死ぬのは御免だな」
《貴様のような矮小な輩は小間使いが精々だ。戦場で散れるだけ有難いと思うがいい》
どこからともなく痛烈な皮肉がコックピットに響いた瞬間、意識の外側を縫うようにオレンジ色の太いレーザーがストレイドを穿たんと真っ直ぐに飛来してくる。
しかしイッシンは動じることなくフットペダルを踏み込んでQBを発動。今まで搭乗していた軽量級ネクストであるJOKERと比べて挙動の機敏さがないことに若干辟易しながらも難なくレーザーを躱した。
完全に回避が成功したことを確認したイッシンは発射した主を捜すためにそれが放たれた方向を見遣ると、深蒼色の【TYPE-
「
《……ふん。下らん政治屋のために下らん敵と戦う、まるで
「下らないかどうかは、これから決めようじゃねえか!」
イッシンがそこまで言うとストレイドは右手に握られた【050ANSR】を両手持ちに握り直し、腰だめの狙撃手のような体勢になる。そうしてステイシスとの距離を一定以上に保つと、ストレイドに過剰な負荷が掛かる限界ギリギリの高速機動を交えた狙撃戦を開始した。
高速機動によって的を絞らせないことにより自身の生存率を最大限考慮しつつ、弾速の速いスナイパーライフルでステイシスに確実にダメージを与える。現状況を鑑みれば最も安全側に振り切った、ある意味
――確かに前世において、それこそ100回を軽く超える程度にはステイシスを倒している。練習台になって貰ったり、縛りプレイの踏み石になって貰ったり、なんとなく腹が立ったからストレス発散で瞬殺させて貰ったり。
しかしこの世界において、そんな
だからこそ、いくら政治的配慮があるとはいえ【ランク1】の称号を持っているオッツダルヴァの技量に対してイッシンが相応の警戒するのは当然と言えた。
ストレイドが握る【050ANSR】の放つ弾丸は両手持ちにしただけあって直進安定性が抜群に向上しており、ステイシスに風穴を開けるために断続的で不規則な狙撃を繰り返す。
しかしステイシスは未来を見透かしているかのように全ての弾丸を易々と躱していき、返す刀で
明らかに舐められている。
そう感じ取ったイッシンはオープン回線を開き、オッツダルヴァに直接話しかけた。先のイレギュラーと同じく罵詈雑言で相手を精神的にかき乱して強制的に隙を作ろうとする。
「おいおいどうした! 躱すだけが能じゃねえだろ!? 天下のランク1が聞いて呆れるぜ!!」
《あまりほざくな、耳障りだ》
「なら黙らせてみろ! ニヒルでサムイとっつぁん坊やさんよぉ!」
《……いいだろう。望み通り黙らせてやる》
その言葉の直後、ステイシスのメインブースターから青白い炎が燃え上がりQBが発動された。素体である【TYPE-
対するストレイドは【050ANSR】の両手持ちを解し、左上腕部に装備されたレーザーライフル【ER-R500】と右背部兵装であるチェインガン【CG-R500】を起動させた。そして、その様子を見てなお加速を止めないステイシスに向けて掃射を開始。【CG-R500】の濃密な弾幕と【ER-R500】の黄色がかった細い光条が深蒼の巨人に襲いかかった。
軽量級ネクストの真髄は、被弾を最小限に抑えながら高速で対象に接近して瞬間最大火力の高い攻撃を叩き込むことだ。しかしその真髄も、
イッシンはその逆説を見越した上で弾幕を張ったのだ。初手で接近を許しては戦術もクソもあったものではない。先ずは接近することは危険であると刷り込ませて―――!?
驚愕するのも無理は無い。そんなイッシンの作戦プランを嘲笑うかのようにステイシスは弾幕の中に突っ込み、被弾を省みずに最短距離で接近を試みてきたのだから。……いや、正確には【ER-R500】の光条と当たる必要の無い【CG-R500】の弾幕は避けている。まさしく
《教科書通りの戦術が通用すると思うなよ。空気にもなれん下らない塵が》
オッツダルヴァの見下した物言いと共鳴するようにステイシスのメインカメラが光り、右手に握られたアサルトライフル【AR-O700】を槍を突くように引き絞りながらストレイドを穿たんと迫る。
だが、そこは週間ACマニアで『エンターテイナー』と称されるキドウ・イッシン。驚愕の顔から一転してニヤリと笑う。この男、ただで転ぶほど安い鍛え方はしていない。
「突っ込んでくるぐらいは想定内だぜ!」
《下らん
「なに言ってんだ?
《……なに?》
オッツダルヴァの答えを待たずしてイッシンは構えていた【ER-R500】を射線から外し、ジェネレーター出力の20%を集中させた。すると【ER-R500】の両側面から仄かに光が灯り始める。
突然だが【ER-R500】の形状は西洋の細身な片手剣によく似ている。製造元であるローゼンタールの騎士道精神が上手く表現されたデザインだ。そんなカッコいいデザインを前世の頃から見ていたイッシンはある日、常日頃から妄想していた浪漫を知り合いの変態
――剣として振れねえかな、あれ。
――え? 振りたいの? じゃあ
《レーザーブレードだとっ!?》
そう、浪漫に限界など無いのだ。
浪漫があればなんでも出来る。レーザーライフルをレーザーブレードとして運用可能にするなど児戯にも等しい朝飯前だ。故に【ER-R500】の両側面からレーザーブレードが生成されたとしても何の問題も無い。むしろこのギミックに驚くような輩は日頃の浪漫が足りないのだ。猛省せよ。
思わぬ
「教科書通りの戦術が通用すると思うなよ、とっつぁん坊や!!」
《貴様……いいだろう、本気で相手をしてやる。精々気張って見せろ》
意表を突いた反撃と意趣返しの台詞でプライドを傷付けられたオッツダルヴァの額にうっすらと青筋が浮かぶ。数秒後、それまで以上に激しい火花が両巨人の間で飛び散った。
いかがでしたでしょうか。
複合武器ってロマンですよね。
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