《嘘でしょ……ナインボール!? それも2機!?》
「ああ、流石に笑えねぇな」
《
「俺あのミッションクリアしたことないんだけど」
《イッシン、一体どういう状況なんだ。神とか言う
2機の最強に対して3機の転生者が挑む。
この場面だけ見ればラストバトルと称されても10人中10人が納得する地獄絵図だが
「ご名答、あの機体はナインボールっつってな。要するにネクストの数倍ヤバいノーマルだ。この前スフィアでボコしたハイエンドノーマルの到達点だよ」
《……馬鹿な。存在するのか、そんなノーマルが》
「厳密に言うと
《勝算は?》
「あ~~五割あれば上等だな」
まるで難しいコインゲームにでも挑むような気軽さで話すイッシンだが、彼の着込むリンクススーツの中は脂汗が滴り落ちて不快極まりない着心地となっている。別に2機のナインボールが何か特別な覇気を放って彼を牽制している訳ではない。どちらかと言えば、今は機能不全を起こしたガラクタのスクラップみたいに何もせず棒立ちを貫いていた。
ナインボール
アーマードコアを知る者であれば必ず聞く言葉である。比喩表現無しのチートスペックを備えた『人知を超えた完璧な最強』の体現とも言われるナインボールに憧れた者は数知れず、そして越えようと散っていった者も数知れない。あまりの強さから後世では最高の栄誉の一つとしてナインボールという名前が称号化されてしまうほど。
その伝説級チートが目の前に2機立っている。ノーマル程度だった全高はネクスト大までサイズアップされており、兵装は原作と同一のようだ。背部兵装はグレネードキャノンと連装ミサイル、腕部兵装はパルスライフルにレーザーブレード。一見そつが無いバランスの良い兵装に見えるがそれは表向き。彼等の真の実力は相対した時に初めて分かり、そして絶望するのだ。
「どうするか。3対2の乱戦じゃ分が悪すぎる。だからといって分断出来るような地形でもねぇしな」
《ホバータイプのバッカニアからすれば地獄の一丁目ね。ヤツら相手に軽タンクなんて動く的もいいところよ》
《――なら僕が一体引き受ける。1対2なら余計な心配をしなくていいだろ》
不意にセロが言い放つ。見るとマグヌスの両手に握られたレイレナード製マシンガン【03-MOTORCOBRA】とアルゼブラ製ハンドガン【LARE】の動作確認をしており、その気軽さを好意的に解釈するなら使命感から来る自己犠牲という訳ではなさそうである。つまり確固たる勝算があるという事だろう。
しかしイッシンとネリスはこの行動を咎めた。何故なら、つい先程セロが全盛期に打ち立てた貧相な大戦果の詳細を聞いてしまったからだ。その程度の実力しか持たないリンクスをナインボールに単機でぶつけるなど死刑宣告以外の何物でも無い。
《格好つけるのはいいけどアンタに出来るの? リンクス戦争の時みたいに強運で生き残れるほど甘くないわ。持って一分が限界じゃない?》
《ならお望み通り3対2の乱戦に持ち込むのか? 敵戦力が複数かつ強大であればあるほど分断からの各個撃破が重要なのは分かっているだろ》
「だからってナインボールとタイマン勝負はやり過ぎだ。さっき聞いた戦果が本当なら死ににいくようなもんだぞ」
《……僕の心配をしてくれるのは嬉しいが、心配も行き過ぎると愚弄と同等の意味になる。僕にやらせろ。お前達が居ると迷惑なんだ》
出会って間もないとはいえ同類である転生者が自ら死地に飛び込もうとしている状況を黙って見ていられるほど冷徹でなかったイッシンとネリスは半ば
あえてスポーツで例えるならトーナメント戦で自チームが負けそうにも関わらず、来るかすら怪しい次の試合を考えて未だベンチでウォームアップをしているエースを温存・投入しない監督へ向けられる怨嗟の念に近い。
「分かった。ただ、無理はすんなよ。アンタが死んだら俺は一生ラインアークを出禁になるかも知れないかんな」
《ちょっと本気で行かせる気? ビックマウスを信じて行かせたら即撃破、逆に私達がナインボールと1対1に持ち込まれてゲームオーバーなんて洒落にならないわよ》
「ならセロが即撃破される前に俺達が片方のナインボールを即撃破すればいいじゃねえか。2対1なら難しくねえだろ。それに、そう簡単に落ちないだろ? 最初の転生者様は」
《――言葉尻は気に食わないが賞賛として受け取っておこう。まぁ見ておけ、
そう言うとセロはフットペダルを踏み込み、マグヌスのメインブースターから青白い炎を燃え上がらせた。瞬間、QBによる超加速に乗ったマグヌスは機体色と同じ海底のような深い青色の残像と共に片方のナインボールへ向かっていく。セロの標的となったナインボールは依然スクラップのように棒立ちのままだったが、相対距離が300を切った辺りでメインカメラの光が大きく煌めいて各駆動系に熱が帯び始めた。
《センサーに進入した敵性因子に対する自動迎撃……完全自立とは行かないようだな。なら、やりようはある》
『へぇ、君が例の転生者か。先に礼を言っておくよ、ありがとう』
《――戦闘中、通信に無理矢理介入してまで礼を言うとは。神というのは弁えない律儀をするのが好きなのか》
『これは僕個人からの感謝さ。君のお陰で計画していた試練が破綻せずに済んだからね。でもそれが簡単に負けてあげる理由にもならないから、少し頑張って貰おうか』
空間に投影された立体ホログラフィックの神はもう一度右手を天井に掲げて今度は赤い光を迸らせる。すると動き出していたナインボールのメインカメラが赤く輝きだし、続いてもう1機のナインボールのメインカメラも赤く輝きだした。
刹那、セロの標的となったナインボールは弾かれたようにブースターを噴かしてマグヌスへ突撃していく。この動きを読んでいたようにセロは【03-MOTORCOBRA】と【LARE】のダブルトリガーで弾幕の雨を降らせながら迎撃するが、ナインボールはその全ての弾丸を回避。意趣返しと言わんばかりにパルスライフルを構えるとマグヌスめがけてトリガーを引いた。
しかしそれはあくまで
考えてもみて欲しい。EN供給が無限で、かつ【EG-O703】を超える威力・連射速度・射程を誇るオーパーツ級のトンデモパルスライフルがスーパーコンピュータの精密演算処理を用いた予測射撃で撃ち返してくる場面を。はっきり言って地獄だ。
その地獄の中をマグヌスは優雅に舞う蝶のように潜り抜けつつ【LARE】を連射しながら同じ腕に格納されている予備兵装のオーメル製レーザーブレード【EB-O700】を展開。交差するタイミングでナインボールの腰を基点として上下半身を別れさせようと【EB-O700】を横薙ぎで振るうが、その剣撃はナインボールのレーザーブレードで受け止められ軽くいなされてしまう。
勢いそのままに斬り掛かったため、いなされた弾みでナインボールの後方の宙に吹っ飛んでいったマグヌスだが【TYPE-
ここまで僅か20秒。まさに息の詰まるような戦いの中セロは表情も変えず、むしろふてぶてしく口角を上げていた。
《流石に落ちないか。まぁ興味アリだな………さぁ、お前の全てを見せてくれ。そして僕を驚かせろ》
いかがでしたでしょうか。
セロ君はクソ雑魚なんかじゃないんです。本気を出せば出来る子なんです。……まぁ全盛期の戦績は本当だけども。
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