コーネリアに対し、本国で起きた残酷な事実を告げるユーフェミア。
皇帝であるシャルルを呼び捨てにし、彼がその責務を放棄したと言う事実を告げた後、何が起こったのかを淀みなく告げていく。
当初はコーネリアのみに見せていた彼女の姿は、今はダールトン、ギルフォード以下のコーネリア軍と政庁にて任務に就く者達の目にも映っている。
当然のことだが、各租界以外の日本全土には隠すことなくユーフェミアの告白は中継されており、事実を知った日本人はナンバーズも名誉も関係なくあまりに残酷な真実にただただ呆然とするばかりであった。
暴虐と搾取に晒されてきた彼等であっても、ジェレミアが代行として行った統治は評価を受け、コーネリアの統治下であっても不満はあれどクロヴィス時代のような搾取にあえぐことは無い。
一種のガス抜きとも言える状態だったが、そんな状態だったからこそブリタニア本国で起こった殺戮の宴に対して『自業自得』や『天罰』とまで断じることはほとんどの人間には出来なかったのだ。
ディートハルト等が何重にも重ねた電波ジャックがようやく日の目を見た形であったが、ルルーシュとしてはこれがどのような結果をもたらすかまでは計りきれないという。
『リヴァル、大丈夫か?』
そして、騎士団側としてもユーフェミアからの告白によって心身を著しく消耗させている者達は幾人も存在している。
ソフィーをはじめとするアッシュフォード家に仕える者達は本国に親族を残しており、その多くが今回の暴虐の犠牲になっているであろう事は想像に難くない。
それ以上に衝撃を受けているのは、今こうしてドロテアから秘匿回線を受けているリヴァル本人であろうが。
「大丈夫ですよ。ただ、ルルーシュにもユーフェミア殿下にも合わせる顔が無いなって」
『だが、ヴァルトシュタイン卿の汚名が少なくともコーネリア殿下とその臣下達には共有されることになるぞ……』
「俺はそれを受け入れました。ルルーシュがギアスのことを全員に告げるわけにいかない以上、俺達家族が背負う事ですよ」
『…………お前一人が背負う事では無い。それだけは、心に留めておけ』
「……はい」
ドロテアからの通信を終えたリヴァルがユーフェミアの告白へと耳と向け始めると、ちょうど彼女達が帝都を脱して日本へと向かった事を告げているところだった。
『ユフィ、一つ聞かせろ。枢木は……、騎士たる枢木スザクはなぜお前の傍らに居ない?』
やはりと言うべきか、帝都よりユーフェミアを救出し、アーライナの亡骸も回収してきた枢木スザク。
ナンバーズとして初めて皇族の騎士となった男の姿があるべきはずの場に無い。
アーニャの姿を見れば、例え重傷を負っていたとしてもユーフェミアの傍らにあるはずだった。
当初は彼のことを受け入れず、ユーフェミアの頑なな態度に折れるしか無かったコーネリアだったが、それでも彼がユーフェミアと共にあることを当然のモノとして受け入れていたのであろう。
コーネリアの疑問はこの場における者達全員が共有する疑問でもある。
現にユーフェミア達を迎え入れた際にルルーシュ達もその事に言及しているのだ。
最も、スザクに対して個人的な心情を抑えているルルーシュでは無く、ナナリーがユーフェミアに問う形になっていたが。
『スザク……、枢木スザクはこの地には居りませぬ』
そして、覚悟をしていたであろうが、口に出すことになった事実にユーフェミアは目を閉ざす。
一瞬、リヴァルは視線を向けられたような気がしていたが、目を逸らさず彼女の言葉に耳を傾けるしか無い。
『太平洋へと逃れた私達でしたが、ほどなく叛徒達の追撃を受けました』
はじめはタレイランの翼達による航空攻撃であったが、アヴァロンと相対することの不利を悟った彼等は早々と後退していった。
彼等を退けたことで安堵したユーフェミア等であったが、彼等の目的は追撃では無くあくまでも時間稼ぎであったのだ。
まもなく、姿を現したのは、黒と紫を基調とした大型KMFであった。
セシルが帰国後にフロート・ユニットの改良研究を進めていた事もあってか、アヴァロンやランスロット性能は飛躍的に向上していたが、ペンドラゴンの研究機関でも量産化が進められており、彼等に襲い掛かってきたKMFはそれ以上の速度を持って追撃してきたのだ。
新型機であり、おそらくは実証試験も行っていない状態の機体にも関わらず、機動性と汎用ランスのみでアヴァロンからの攻撃をいなし、収容されていたKMF数機も瞬殺して来たそれに対抗できるのは当然のようにスザクのランスロットといまだ試験段階にあるアーニャのモルドレッドのみ。
しかし、傑出した二人のパイロットの能力を持ってしても、その新型機を撃破することは敵わず、突出した防御力を持つモルドレッドの装甲すらも破壊して見せた。
コックピットが破損して重傷を負ったアーニャはなんとかアヴァロンが収容する事が出来たが、アーニャを逃すべく単騎でそれと対峙していたスザクのランスロットも応急修理を施したに過ぎぬ状況にあっては、彼の規格外の能力を持ってしてもそれに対抗しきる事は不可能であった。
『枢木とアールストレイム卿が破れるだと……? 如何な四大騎士団長と言えど、如何に双方が傷付いていたといえ、アヴァロンの支援下で有り得るのか……』
『私達に襲い掛かってきたのは四大騎士団長ではございません』
『なぜそれが分かる? 状況から言って、彼奴等のうちの誰かとしか思えんが』
コーネリアとしても、実力を認めていたスザクとナイトオブラウンズであるアーニャの共闘。それもアヴァロンの支援を含めて単騎でそれを打ち破れる者が居るとはとても思えなかった。
可能性があるとすれば、ミケーレ・マンフレディぐらいであろうが、彼と対峙したことがあるコーネリアとしてみれば、いくらマンフレディでもスザクとアーニャの二人を相手取って完勝できるとは思えなかった。
もっとも、ただ一人、それを成し得うる男の名が一瞬浮かんでいたのだが、彼女はそれを信じたくは無かったのである。
いや、コーネリアだけではない、はじめに話を聞いていた黒の騎士団の幹部達も。特に、リヴァルは信じることは出来なったのだ。
『お姉様がとぼけたくなるお気持ちは分かります。私も、二人を打ち破り、投降を呼びかけてくるまでは信じることは出来ませんでした』
『…………なんと言うことだ。いったい、何があったと言うのだ?』
『相応の理由はございますでしょう。ですが、歴史として残るのは“ビスマルク・ヴァルトシュタインが私達を攻撃してきた”という事実のみにございます』
そして、ユーフェミアの言を持って、コーネリアは、そして彼女の麾下の軍人達は、直視せねばならない現実を突き付けられることとなった。
即ち、ナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタイン……。ブリタニア最強の男が反逆者側に組みしたという現実を。
「受け入れる……しかないんだよな」
そして、突き付けられた現実に瞑目するのは、彼の血を引く少年と彼とともに戦ってきた者達もまた同様であった。
◇◆◇◆◇
(リヴァル…………)
瞑目したまま口を開いたリヴァルの言が耳に届いたルルーシュは、他の者達同様の感傷に浸るわけにはいかなかった。
彼の気持ちを案じることはシャーリーやミレイ。それにドロテア達も出来る。
過去の自分がスザクを除いて唯一信用したと今となれば思える男である。彼が持つどこか一を安心させ、信用させる人徳は悲劇に見舞われたとしても手を差し伸べる者達が必ず側に居るモノだとルルーシュは思っていた。
『おそらくは、あの方の意志すらも超越した何かが背景にはあるでしょう。ですが、私達にもそれを知るよしはございません』
剛毅でなるコーネリアも、その麾下の精鋭達もユーフェミアの言に対しては何一つ口にすること無く耳を傾けている。
「咲世子、ディートハルト、手抜かりは無いな?」
『無論です。ルルーシュ様』
『こちらもです。カオスを表現できないことは残念に思えますが……』
この事に関してはさすがにパニックを誘発しかけないと判断したルルーシュが政庁に詰める官僚達への回線は切らせていた。
精鋭たる軍人ですら言葉を失うのである。
ただでさえ、黒の騎士団が眼前に布陣し、海上にも旧日本海軍の生き残り達が進出し、空と海の出口を抑えられている。
そんな状況下では何が起きても不思議では無い。
ルルーシュとしては、最悪コーネリアとその麾下の軍人達は討ち果たさねばならなくなるとしても、租界内部は平穏に治めたいのが本音であった。
ブラックリベリオンにおける暴動と破壊を繰り返す事の愚かさは身に染みていたし、外縁に布陣したコーネリアに対しても足場崩しによる奇襲は今回は考えていなかった。
“戦わずに勝つ”
“戦の前の勝利を決める”
過去においては、目先の勝利を優先するあまり、すべてを失ったのである。
今回ばかりは、「大切なモノを遠ざける」のではなく、側に置いて守るという贅沢な目的も自分の中にはある。
少なくとも、トウキョウ租界はそれが多くあり、リヴァルはその中でも最上位の属する。
最も、今回の自分の甘さという部分は、リヴァルの人徳に助けられている面もある。
ディートハルトのように、根底に混沌への渇望を行動原理として黒の騎士団に加わった人間でも、リヴァルやシャーリーを理由にすればなぜか受け入れてしまうのだ。
常識と非常識という対極にいる人間同士だからこそ、互いに受け入れる余地があったのかも知れないが。
「手抜かり無く頼む。今回だけは、俺も甘さを見せている。その間、お前達が頼みになる」
「――それで、落としどころはどこに持っていくつもりだ?」
ユーフェミアの告白は、ビスマルクの裏切りという本来なら有り得ぬ事態を告げたことによって双方に沈黙を生み出していた。
その間、ルルーシュは咲世子やディートハルトに内部工作を託し、一息を付く。
それを待っていたかのように、C.C.の試すような声が耳に届いた。
「贅沢は言わない。姉上が簡単に折れるとも思わんし、一戦は覚悟している」
「ルーベンや咲世子の手の者達は内部に浸透しているようだが?」
「租界内部の治安維持や綱紀粛正もルーベンに任せたと言う報告はある。それぐらいの対処法は確立しているだろうよ」
「如何なる堅城も、外の目が向いているときにうちから攻められれば脆いものだがな」
「C.C.。今回の戦いに関しては、俺はわがままでいるつもりだ」
「姉も妹も傷つけず、青春を過ごした学園と都市もそのままに手に入れる……か? やはり、お前はシャルルやマリアンヌの子だな」
「そうだな。俺はわがままなのさ。この年まで自分を殺して生きてきたんだ。今回ぐらいは好き勝手やる」
「なら好きにしろ。馬鹿女が色々とうるさいからこっちは大変なんだぞ?」
「油断するなよ? なにせ、お前と連んでいた女だ」
「ふふ、私はC.C.だぞ? マリアンヌなんかに出し抜かれるモノか」
そう言って不敵に笑うC.C.の言には答えず、ルルーシュは再び仮面を被る。
ユーフェミアの告白は、枢木スザクが破損したランスロットを駆ってビスマルクの動きを封じたところまで進んでいた。
ビスマルクのギャラハットがアヴァロンを追撃してこなかったとはいえ、白き騎士ランスロットがユーフェミア等の元へと戻ってくることも無かったのだ。
『そのまま離脱した私達は、太平洋を東へと突き進みました。各孤島に設置された補給拠点の兵達も、私達を逃がすべく散って行きました。私は守るべき祖国を、民を守らず、多くの兵達を、自らの騎士を犠牲にこの地まで逃げてきたのです』
日本侵略を完了した後、太平洋はブリタニアの内海と言っても良い。すべての島嶼に基地が建設され、規模の違いはあれど弾薬とサクラダイトの備蓄は完璧に成されている。
まさか、反乱の結果、皇族がエリアへと逃亡するために使われるとは思いもしなかったであろうが。
『…………お姉様、いえ、コーネリア総督。そして、トウキョウ租界、いえ、日本に住むすべての皆様。私は、皇族としての責務を放棄し、また、一度とは言え反逆者の縛に付きました』
一度言葉を切ったユーフェミアは、おそらくではあるがビスマルクを止めるべく自らを犠牲にしたであろうスザクの姿がよぎったのであろうか。
過去のように、ギアスによるある種の呪いの無いスザクがビスマルクに。それも、最新鋭のギャラハットに乗っているであろう彼に勝つことは不可能であろう。
明確に撃破されたわけでは無いだろうが、海上にてエナジーが尽きたKMFの運命など、容易に予測できる。
ただ、ビスマルクがそれ以降追撃して来なかったという事のみが一縷の望みとして残ってはいたのだが。
『弱肉強食を国是とするブリタニアにあっては、私には皇族としての資格も無いのでしょう。だからこそ、私は国是を皇帝シャルル・ジ・ブリタニアを否定し、ブリタニアを守ることを決めました。コーネリア総督、私は今を持って“シャルルブリタニア”に反逆し、新たなブリタニアという国家を立ち上げますっ!!』
『なっ!? なんだとっ!?』
『シャルル・ジ・ブリタニアが皇帝としての責務を放棄し、他の皇族達も己が領地と任務を優先し、祖国の民を守るべく動く事はありませんでした。なれば、祖国を奪回した者が、ブリタニア人を守る者が指導者となるべきです。だからこそ、これは反逆ですっ!! 父シャルルにも、叔父ヴィクトルに対しても。私は両者の支配するブリタニアを否定しますっ!!』
それまで、苦悩とも言える表情を浮かべて本国で起こったことを語っていたユーフェミアは、表情を引き締め、さらにはコーネリアを鋭く見据え、逡巡すること無くそう言い放つ。
コーネリアとしては、ルルーシュ等との和解を取り持つか、人質として開城を促すべく引っ張り出されたとでも思っていたのか、妹との反逆宣言にさすがに面食らって言葉を失っている。
それはコーネリアのみならずダールトン、ギルフォードも同様なようで、皆が皆言葉を失っている。
『打倒すべくは、“ブリタニア”ではなく、“シャルル”および“ヴィクトル”に率いられしブリタニア。だからこそ私達はユーフェミア様を同志としてお迎えしたのですわ』
そして、言葉を失ったコーネリア等に対して、神楽耶が間髪を入れずにユーフェミアに対する同意を示す。
『すべての罪を許すわけではないわ。でも、倒すべき相手を間違える事はさらなる悲劇や憎しみを生むだけ。差し伸べられた手を振り払う選択肢は私達には無いわ』
日本とブリタニア双方の血を持ち、双方から差別や迫害に晒されてきた名誉達。今や彼等の代表者となったカレンもまた、神楽耶に続きユーフェミアの手を取ることを選んだ。
「コーネリア総督。貴女がいらぬと断じた我らが同志ユーフェミア・リ・ブリタニア様の決意は理解されたでしょうか?」
『ゼロ……っ!! 貴様はっ!!』
「誤解無きよう。私達はユーフェミア様より差し伸べられた手を取ったにすぎませぬ。彼女の口より聞かされた“ヴィクトル・ジ・ブリタニア”による暴虐と“シャルル・ジ・ブリタニア”による侵略と支配を我々は否定する。あらゆる思想を受け入れると言う建国の理念はあれど、かの侵略思想だけは受け入れる余地は我々には無い」
ルルーシュもまた、コーネリアに対して仮面を被りつつも手を差し伸べようと口を開く。
コーネリアからしてみれば妹を拐かした張本人が目の前に現れたと判断するだろう。
しかし、ルルーシュからしてみればユーフェミアを受け入れる大義名分を得たに等しい。
流れた血が多ければ多い分だけ、血を流していないユーフェミアの存在は貴重なモノになるのだ。
彼女は過去以上に、日本においてもブリタニアにおいても“慈愛の皇女”としての実績を積み上げようとしてきた。
そして、コーネリアもまた、日本に対しては血を流しては無い。サイタマゲットーにおける虐殺は無く、各地のレジスタンスやテロリストの掃討は総督としての職務を果たしただけであるし、キュウシュウ戦役においては騎士団とも手を取って日本を守っている。
ユーフェミアの存在が前提ではあったが、コーネリアもまた日本人には受け入れる余地があるのだ。
『なれば、私はブリタニアの魔女として国是を体現するまでのことっ!!』
とはいえ、ユーフェミアの事実上の裏切り宣言を受け入れる事まで彼女に求めるのは酷な話でもある。
決戦での敗北、祖国の壊滅、母親や親族の死、妹との決別。
それらが一度に降り掛かってきたのである。余人であれば精神に異常をきたしてもおかしくない状況にあれば、自らの生き様に縋ることは当然の帰結とも言える。
本来であれば、ここで一気に畳みかけるべきところであろう。
しかし、敵対し、憎しみあった過去があるとしても、ルルーシュにとって彼女は姉なのであった。
「よろしいのですか? ユーフェミア様を一人我々の元に放り出してしまって」
『何っ!?』
「アーニャ・アールストレイム、ロイド・アスプルントの両名は私と誼を通じている同志。ユーフェミア皇女の元にあるのはともに脱出してきた直属の兵と投降したバトレー・アスプリウス等、元エリュティアの乗員のみ。これが何を意味するのか、分からぬ貴女ではありますまい?」
『貴様っ!! やはり、ユフィは人質かっ!?』
「まさか。私はともかく、皇神楽耶様、カレン・シュタットフェルト・紅月にとっては大切な同志でございます。そして、私は三人を理想を実現する為には悪をも成しましょう」
これは現実的な話でもある。
ユーフェミアを合衆国日本や名誉ブリタニア人達が受け入れ、多くの日本人達が受け入れたとしてもそれは善意で成り立つ関係でしか無い。
ルルーシュ自身やモニカ等ブリタニア人は味方となった以上彼女は守り抜くつもりであったが、それでも彼女には手勢とも言える固有の武力は無い。
ルルーシュとしても、アッシュフォード勢以外をそのままユーフェミアに渡すつもりも無いし、モニカやドロテアとしても二度も主を違えるという理由は無い。
個人としての力はブリタニア本国の残されたすべて彼女を逃がしたこともあり、その価値はブリタニア本国へと攻め込んだ時に発揮される。
だが、今では名目上の同志のままで終わってしまうのだ。
そして、ルルーシュがゼロとしての仮面を被り続けるのならば、今後はさらに影に生きる事になる。
悪を成して巨悪を討つと言うのは最初に掲げた理念であったが、神楽耶やカレンは正義として行動し、自身が悪として泥を被れば良い。
『…………ユフィと話をさせろ。貴様が側に居ても良い、このような茶番に付き合わされるのは癪だ』
そう思っていたルルーシュにとって、コーネリアの返答は意外なものであった。
彼女と言葉を交わす機会は最終的に持つ必要はあると思っていたが、激発した彼女を話し合いのテーブルに着けるには、今一度叩きのめす必要があるとも考えていたのだ。
『私は構いませぬ。…………私の意志は変わりませぬが』
ユーフェミアもまた、意志の強い視線をルルーシュへと向けてくる。
お互い、姉妹を思うあまり本音で話す機会はほとんど無く、ユーフェミアが帰国を決断した時以来の会合とも言えるだろう。
思えば、二人はこの時からすでに別の道を歩んでいたとも言える。
コーネリアが剣では無く対話を選んだのは、相手がユーフェミアだからであろうが。
「承知しました。万一のこともございます、双方、五名まで護衛の者の同行を。ダールトン将軍や騎士ギルフォード等安心頂けるでしょう」
『モニカ、ドロテアの両名は伴うなよ? 顔も見たくない』
「ご安心を。我が騎士、ジェレミア・ゴッドバルトは伴いますが、他の者達は私の決起当初からの同志達になります」
ダールトンやギルフォードの同行は、彼等の警戒心を解き、コーネリアの捕縛と言う可能性を排除させる為でもある。
モニカとドロテアの同行を拒否したのは、さすがに二人が相手ではどうにもならないと言うコーネリアの本心もあるだろう。それ以上に、裏切り者の顔を見たくないと言うのが本音であろうが。
「ジェレミア、万が一のこともあるからいつでも対処できるようにしておいてくれ」
『御意。我が忠義に代えてっ!!』
ジェレミアの同行は当然でもあり、彼自身もコーネリアからの提案があった時からそのつもりであったであろう。
今もなお、ルルーシュの棘として残るあの忌まわしき過去。
ジェレミアとしては、事実を知った後、望まぬままに得た力を得るのが遅かった事をどれだけ嘆いた事であったか。
「シャーリー、リヴァル、ミレイ、咲世子は同行してくれ。ナナリーは万一の時には俺の代わりにカレンと神楽耶を補佐してくれ。ソフィーはナナリーの護衛を頼む」
そして、シャーリー達もまた当然のように頷くが、普段であれば当然のように同行するはずの人物に対して別の任務が課せられたことには顔を見合わせている。
困惑の対象になった本人は、ルルーシュをまっすぐ見据えて頷いているのだが。
『分かりました。お兄様の代わり、不足無く務めて見せます。それとお兄様』
「どうした?」
『二人のこと、よろしくお願いします』
「…………ああ」
そして、秘匿回線を繋いできたナナリーはようやく兄と同じ場に立てた事を喜びつつ、姉妹再会の場に足を運べないことへの思いもまたルルーシュへと告げる。
常に側に居るように見えて、一度も分かり合えなかった兄妹もまた、お互いの理想とする関係へと辿り着こうとしていた。
ビスマルクの名誉に泥を塗る形になっていますが、裏切り=本心とならないのがギアス世界ということで。
前話でも書いた四大騎士団長達に対するギアスもルルーシュの絶対遵守ほどの強制力は無いが、意志が残っている分、よりヒドい苦悩を味わっているという設定もあったりします。
あと、コーネリアに対して映し出された首脳達の並びはこんな感じになっています↓
神楽耶 カレン ユーフェミア
桐原 シュタットフェルト
公方院 ジェレミア
宗像 ルルーシュ ドロテア
扇 モニカ
吉田 アーニャ
井上 ルーベン
玉城 永田 ヴィレッタ(仮面付き)
卜部 咲世子 ナナリー シャーリー リヴァル ミレイ ソフィー(仮面付き)
見づらいとは思いますが、左側が日本人、中央が名誉組、右側がブリタニア人で、下に『ゼロの腹心達』と言う構図になっています。学生組と実戦部隊の咲世子、ヴィレッタはさすがに仮面付きですが。
ルーベンに関しても隠しだけする必要は無いという判断で並んでいます。
卜部は藤堂が居るはずだった地位を進められましたが、密約を告白した際に辞退しています。