ユーフェミアを乗せたアヴァロンが両軍の間にゆっくりと不時着する。
エリュティアとは姉妹艦に当たるが、その姿は広大な太平洋を横断してきただけあって、潮風に晒され、さらにはいくつもの攻撃を乗り越えてきたであろう損傷が見受けられる。
ユーフェミア以外は一人、無傷であるロイドが搭乗していたが、セシル以下の乗組員達は軽重の傷を負っていたため、捕縛されていたバトレー等が運航を任されていた。
皇族に対する篤い忠誠心を持った彼は、自らの失態を挽回すべく、損傷した艦にも関わらず不足無く任務を果たしていた。
そして、内部で待つユーフェミアの元に双方のトップが武装解除の上で乗り込んでいく。
合衆国日本のトップはあくまでも神楽耶であり、名誉ブリタニア人の代表もカレンであったが、事実上の指導者であるゼロ以外にコーネリアと会談する立場には無い。
そもそも、今回の会談は日本側としても名誉ブリタニア人達には関わりは無い話である。
ブリタニアを支配者と位置づけるのならばともかく、彼女等はすでにブリタニアとの決別を選んだ立場であるのだ。
そして、ブリタニアの政戦に関わる会談にゼロは“ブリタニア人のみを伴って参列した”。
一般の団員から玉城のような幹部達に関しては、側近であるシャーリー達を伴うことは慣れた話でも有ったのだが、賢い者達。特に、ゼロの正体を知らぬ立場でも、その位置にある者達にとっては、その意味合いは大きなものとなっていた。
アヴァロンの内部は同行者達とバトレー等、搭乗員達が。外部は黒の騎士団とブリタニア軍が背中を預け合う形で守る形となる。
互いに信頼とは無縁の両者が、こうして背中を預け合う構図はなんとも不思議な光景であったが、それもまた賢い者達をある真実へと導く解となっていたのだ。
◇中華連邦◇
「なるほど、君の協力者がどういった立場に居るか、ようやく合点がいったな」
「私もゼロの正体に関しては聞き及んでおりませんでした。ですが……」
中華連邦にて、その光景を見つめる中華連邦における若手軍人達の指導者、黎星刻と参謀、周香凛は、かねてより、道を違えることになっていた同窓の姿を思い浮かべつつ、その光景に視線を向ける。
ブリタニア国内を襲った動乱は中華にも大きな変化を及ぼしつつある。
父帝シャルルとの政治対立にあって、三極の一つである中華に目を付けた長子オデュッセウスは、シュナイゼル、ギネヴィアとの共謀を持って中華に目を付けてきている。
彼等の治めるエリアも国力という観点ではブリタニア本国に次ぐが、こと兵力に関しては大きく水をあけられている。
中華圏の巨大な人口に目を付けたとも言えるし、ブリタニア本国での政治抗争に晒されて来た皇位継承順位上位者達に取ってみれば、大宦官のような俗物達を意のままに動かすことなど容易いのであろう。
現に、カンボジア軍区がシュナイゼルの勢力圏があった東南アジアのエリア13の援助を受けて独立を表明し、各軍区も不穏な動きを見せ始めている。
「天子様の御心を脅かす者達を相対するには、かつての怨敵をも受け入れねばならぬか」
「カシュガルの地下施設を鑑みれば、ヤツ等が手段を選ばぬ事は自明の理かと」
ブリタニア留学の際に同窓であったモニカ・クルシェフスキーよりもたらされた、ブリタニアの秘密施設。
タクラマカン砂漠西端の地に建設されていた巨大な地下施設。
襲撃をした際にはその目的物はほとんど残っていなかったが、僅かな痕跡と研究者と思われる人間達の死体から、人体実験に絡んだ研究が行われていたことは容易に想像が付いた。
「いずれにしろ、コーネリアの決断次第となるな」
「はっ……」
ゼロの正体に辿り着きつつある両者であったが、それでも両者の思惑が合致する結果になるかはいまだに未知数でもあった。
◇インド◇
『極東の妖怪どもがヤケに執心すると思っていたが』
「それでも、納得のいく話じゃ無いかしら~? ブリタニアを倒せる国家も勢力も無い。だったら、ブリタニア内部の反動勢力を動かすしか無い」
主人達が去ったサイタマゲットーの地下研究施設にて、キセルを吹かしながら本国に通信を繋いだラクシャータ。
中華連邦の衛星国として二大派閥の抗争に明け暮れつつも、技術力を持って反ブリタニア勢力に影響力を保ち続けたこの地は、反ブリタニアの気運が高まりつつある中で独立の機会を窺う。
肥大化するブリタニアに対応するべく中華との連携を受け入れたが、待っているのは隷属の日々であったのだ。
ラクシャータがブリタニアに対して言及したことは、中華におけるインドの立場を代弁していた。
『その割には、小娘の台頭を許したようだが』
「相手が上手だっただけね~。それで、私達はどうするんですか?」
“指導者”たる者を前に、ラクシャータはそれまでの気怠げな態度を改め、声色を落とす。
キョウトの老獪達が、結果として神楽耶とゼロに主導権を奪われたこともまた事実。
そんな事実を前に、インドの行く末を鑑みて決断を下す事が彼等には求められる。少なくとも、兄妹の正体を知るラクシャータには、二人が他者を主導することはあっても、支配するようには思えなかった。
強いて言えば、妹の方には危うさを感じる面もあったが。
『拙速は好まぬ。手並みを拝見するとしようでは無いか』
「あら、そ。拙速を拒んで、手遅れにならない事ね~」
いずれにしろ、事の行く末を把握しないことには動けない。それが国家、組織を預かる者達の実情でもあった。
技術者として派遣されている身であるラクシャータに政治的な判断をする権限は無いし、そもそも彼女自身に興味は無かった。
今は技術者として、そして自身が興味を向けることになった兄妹の行く末に携わるのみであった。
◇EU◇
禍々しく光る水晶の明かりに照らされる暗がりの中に、老境の男女が向かい合って座っている。
「教主様は極東の地に居られたか……」
投影画面を一瞥した後、水晶へと視線を戻した老婆がしゃがれた声に感慨と含ませながら口を開く。
当然だが、水晶に何が映し出されているのかは老婆にしか分からない。
しかし、極東の地ではじまろうとしていた戦いの様子が映し出された画面に、彼女が“教主”と呼んだ緑髪の魔女は映ってはいない。
正確には、ゼロが姿を見せる際にその特徴的な髪色が映ったのだが、気付いたのは彼女以外には数人のみだろう。その数人も彼女が日本に居ることはすでに知り得ていたのだが。
「貴女とは長い付き合いであったが、C.C.殿とも関わりが有ったとはな」
老婆の口にした“教主”と言う言葉は男、宗像唐斎の脳裏に僅かながら刻まれていた。
ルルーシュが六家との会談に際して同行した際のC.C.の人を食った態度を皮肉った際に“教主様”と呼んだ事があったのだが、その時は教主等々よりも“ギアス”そのものへの関心の方が強かったのだ。
老婆が“C.C.”と言う呼び名を知っているかは分からなかったが、それはすぐに答えた老婆の反応から正解であったようだった。
「世を捨てた詐欺ババアの戯れ言さね。それで、イレブンの地を見せて、何を求めると言うんだい?」
「ユーロピアを味方に付けたい。野心溢れる梟雄では無く、真に民とともに立てる人物と手を取りたい。我らが主君である、皇神楽耶様の願いである」
「…………極東より厄災もたらされし時、業火に焼かれし戦女神は降臨す」
ルルーシュと神楽耶より託された伝言を告げる宗像に対し、老婆は外套とサングラスによって隠された表情に僅かながら陰りを見せつつそう口を開く。
何事かと首を傾げた宗像に対し、水晶の光が消え、周囲が画面の明かりだけに照らされる。
「ユーロとユーロピア、双方の野心を煽ったのはあんた達だね?」
「…………だとすれば?」
「呪いに囚われて居るとは言え、あの娘は今は私達の娘さね。こんな残酷な時代で戦う事を選ばずとも、幸せに暮らす術はいくらでもある」
それまで、年老竜鍾を体現するかのような老婆から鋭い声が宗像に対して突き付けられる。
彼がこの老婆の元を訪れたのは、世捨て人となる以前のこと。
第一次太平洋戦争によってユーラシアを席巻していた共産勢力は滅び、欧州を覆っていたファシズム勢力もまた、ユーロピアへの統合の過程で姿を消していった。
当然、その背後にあったのは共産勢力を駆逐し、パクスブリタニカを盤石のモノとした超大国ブリタニアの存在が大きく、旧ソヴィエト勢力圏――かつてのルーシ諸侯が父祖の地を奪回したことでユーロピアは大陸にブリタニアの勢力圏を生み出す形になった。
冷戦―冷たい戦争と呼ばれた睨み合いは、シャルル・ジ・ブリタニアの即位によって打ち破られる。
弱肉強食を国是として掲げたこの男は、代理戦争による勢力圏争いを良しとせず、アフリカをはじめとする欧州勢力圏へと兵を進めた。
突然、打ち破られた均衡。
ブルボン朝を打ち倒したフランス革命の後、二度との帝政と五度の共和政を経てユーロピアの主導権を握ったのはフランスであったが、その過程においては常にイギリス、ドイツ、イタリアという経済大国間の暗闘は続き、内部闘争は権力を腐敗させ、それは民衆へと伝播していく。
西北にブリタニア、東に中華を抱え、中東、アフリカに勢力圏を保ちつつもいくつかの小国は抗争を続けると言う緊張下の中で、内部抗争が繰り返されたのは、単にブリタニア、中華双方も内戦下にあったからでもある。
冷戦という名の睨み合いは、三極の内部分裂と腐敗を肥として咲かせた徒花の名であった。
EU駐在員としてパリにあった宗像が見た老婆の若き日の姿は、出自不明の女性政治家であった。
他者の意図を正確に読み取る機知に富み、政治抗争を続けるユーロピア内部で着実に頭角を現していった彼女は、最終的には四〇人委員会を制し、三人の大統領の一人となる。
その政治手法は先読みに裏打ちされた強硬的なモノが多く、「鉄の女」とあだ名された事からも窺えるように、その決断力などを評価されたモノで有る。
しかし、腐敗した組織にあっては優れた指導力は敵意の的となる。後に、彼女を超えるカリスマ性を見せたブラドー・フォン・ブライガウもまた、大統領就任を前に暗殺されたように、彼女はその先例となった…………はずであった。
「英雄などと言うのものは、いつの時代も狡っ辛い連中が作り上げた偶像さね。自分達で作り上げておきながら、邪魔になれば打ち壊す事に躊躇いはない。それでいて、その死までも利用する」
老婆のグラス越しの眼光が宗像に届くことは無い。
しかし、彼女の先読みの力に寄るのならば、こちらの意図は知れているはずであり、ヴァイスヴォルフ城から退去した“彼女”が老婆の元にあること。
ゼロとの会見からほどなく、欧州へと飛んだ宗像はユーロピアの将軍であるジィーン・スマイラスと接触。
当初は日本側との盟約に乗り気で無かった彼に対し、老婆の過去とスマイラス家の関係、そして今もなおユーロピアにおいてはカリスマ的な存在であるブライガウ家の事を指摘すると、表情を変えた。
それを待ち、ゼロから預かった書簡を彼に届けた宗像は、その後はモニカ・クルシェフスキー、ドロテア・エルンストの両ラウンズと二人に従う近衛騎士達の親族を亡命させる仕事に忙殺されていたが、この推移を見守ってみればその内容には予想が付いた。
すでにヴァイスヴォルフ城の『アポロンの馬車』の情報はユーロ・ブリタニアへと漏れており、本国からの奪取命令を受け取っていた。
そこまでを宗像が告げると、スマイラスは当初の計画を前倒しする形で実行に移す。
当初は日本人を中心とした特殊部隊『w-ZERO』部隊が駐屯していたが、この精鋭部隊の指揮官を即時更迭し、参謀であった“彼女”――レイラ・マルカル少佐を指揮官へと据える。
過去において、日本人を鉄砲玉扱いしていた作戦とは異なり、レイラの立案通りに行われた作戦は、聖ラファエル騎士団に与えた被害こそ過去よりも小さくなったが、損耗率はその半分以下に抑えられている。
その功績をスマイラスは喧伝して回り、マルカル家をはじめとする貴族等の圧力を無視する形で“ブライガウ”の名を最大限に利用することに成功する。
そして、ほどなくヴァイスヴォルフ城はユーロ・ブリタニアによって攻略される。
過去においては、レイラの死を待つこと無くその存在を消し去ったスマイラスであったが、今回はレイラの参謀として、自身の手の者として送り込んでいたクラウス・フォリックを利用し、確実にヴァイスヴォルフ城の明け渡しを成功させた。
宗像はゼロからの書簡におそらくではあるが、レイラの性格を含めた本質を指摘していたのではないかと予想している。
宗像も数度顔を合わせたのみであったが、心優しい少女でもあったが、内面は他者の意のままに操れるような薄弱さは欠片見られなかったのである。
いずれにしろ、レイラ等の退去によってヴァイスヴォルフ城はユーロ・ブリタニアの手に落ち、“アポロンの馬車”に搭載された長距離兵器は対立するユーロピア……の上空を飛び越えてブリタニア本国へと降り注がれることとなった。
ヴァイスヴォルフ城陥落の際、レイラ・フォン・ブライガウと麾下の部隊は全滅したことになっていたし、実際、攻略の指揮を取ったシン・ヒュウガ・シャイングによって謀殺させる予定であったと聞き知っていたが、どういった手段を用いたのか、この老婆達に匿われる形でこのワルシャワ郊外に潜伏していた。
本来の城主たるブライガウ家の息女を討ち取ることを騎士道を重んじるヴィランス大公が拒んだのか? はたまた、“何者かが手引きをしたのか?”
いずれにしろ、ヴァイスヴォルフ城が陥落した際に全滅したとされる「w-ZERO」部隊もまた彼女と同様にこの地に潜伏したままであった。
「…………歴史は繰り返す。と言うべきですかな」
宗像は瞑目する形で老婆より視線を外す。
彼女が時代に翻弄されたように、“彼女”もまた歴史に翻弄される。
過去において、政治からも戦争からも離れて生きることを選んだ女性。
しかし、遠き極東の地にある一人の男にとっては屈辱の過去の中にあるパーツの一つでしか無い。
仮面の男が求める“明日”の中に、彼女のその後の記録は確認できず、ブリタニアの欧州侵攻と瓦解の果てに何があったかまでは知る由も無い。
「教主様は……我らを見捨てた先で、恐ろしき者に呪いを託したのじゃな……」
口を閉ざした宗像の“思考を読み取った”老婆は再び水晶に光を灯す。その光を見据える眼差しの奥底には、赤き光を纏う翼が舞い上がっていた。
◇ブリタニア◇
『決まったようですね』
コーネリアと黒の騎士団との戦いを見つめていたのは難を逃れたブリタニア皇族達も同様であった。
本国を離れた際に互いの家族や仲の良い弟妹を脱出させていたオデュッセウスとギネヴィアはペンドラゴンで起きた惨事に怒りを抱きつつも、結果として陥落の折まで戦いを続けたユーフェミアの存在が自分達を超える結果になりかけないことは容易に理解していた。
ビスマルクの裏切りを告げたところで影像は途切れていたが、彼女を救出した兵士達をはじめとして、ブリタニア国民達が誰を支持するかと思えば答えは明白だろう。
本来、反逆者達を撃滅し、民を守る責務を負った者達は、ペンドラゴンにすら居ない、居たとしても報復を優先して民を見捨てたのである。
ユーフェミアの任地が彼女が不在であって降伏を拒否して抗戦を選び、ゴッドバルト辺境伯領、アールストレイム伯爵領もそれに同調している。
ペンドラゴンを脱出したノネット・エニアグラムもそれに合流したと言われており、ユーロ側への降伏を拒否したブリタニア兵及び州兵を中心とした義勇兵達が続々と参集しつつあると言う。
『このような状況下にある以上、ユフィの民達を見捨てるわけには行かないですね兄上』
「そうだね……。やれやれ、我々が家族喧嘩をしているところを狙われてしまったと言うわけか」
『ペンドラゴンの早期失陥はユーフェミアの甘さがあってのこと。しかし、悲劇のヒロインを演じることでそれは覆い尽くされた。まったく、あの娘はいつもそうやって……っ!!』
映像通信にてシュナイゼルとギネヴィアはそれぞれ真逆の表情を見せることにオデュッセウスは苦笑するしか無い。
この優秀な弟妹の返答を見ても、ユーフェミアと親しかったシュナイゼルと仲の悪かったギネヴィアの対比が分かりやすい。
ギネヴィアは同じ女である事もあってか、嫉妬も入り混じっている様子だったが。
「いずれにしろ、ユフィが日本へと逃れた以上、コーネリアは悪魔と手を結んででも本国にとって返してくるだろうね。我々としては、それに同調しない理由は無い」
『当然。我が麾下のアイランダーどもに陸の戦場を与えやれる絶好の機会です』
ギネヴィアの所領は中立地帯であるオーストラリアを睨む形でニュージーランドをはじめとする南太平洋の島々に有り、彼の地は身体能力に優れる強力な戦力を抱えていた。
KMF全盛時代に有っても歩兵の支援は欠かせず、大陸で有るオーストラリアを中立という名の朝貢国へと貶めたのは彼女の外交力とアイランダー達の戦闘力が背景にある。
『我々はまずはユフィの民達との合流を急ぎましょう。おそらくは、マンフレディを相手取ることになるとは思いますが、兄上も火急的速やかに合流をお願いいたします』
「ああ。私がゴドフロアに勝てるかは分からないが、将兵を信じることとしよう」
シュナイゼルが拠点を置くフロリダ半島はいまだに戦火が無く、ユーフェミアの任地があるオクラホマ州までは中央平地が広がり、兵を進める事の困難さは無い。
とはいえ、現状の明確な大戦力であり、ユーロ側も相応の戦力を用意してくるはずである。
天然の要害が多くあるオクラホマにエニアグラム卿が加われば戦力としては盤石になるはずであった。
『シュナイゼル、国内戦闘であれば船はいらないでしょう? 遊んでいるモノは私のところへ送りなさい。一兵でも多く本国へ向かわせる』
アイランダー諸国は島嶼国家である以上、艦船は生命線でもあったが、商業船が中心であり軍艦はギネヴィア麾下の艦隊のみである。
元々、軍事力としては防衛戦力が中心であったのだ。本国に兵を送り込むにも主力艦隊と合同で動く事が想定されていた。
『良いでしょう。就役したログレス級及びカールレオン級の浮遊航空艦もいくつか送りましょう』
『待ちなさい、そちらの戦力を削るつもりはありませんよ?』
『こちらとしてもそのつもりですが、予備戦力を後方で控えさせておける状況でもございません』
「というと、巡航訓練も兼ねさせると言う事かい?」
『予備戦力も放出する形になりますからね。なりふり構ってはおれませんよ。姉上、よろしくお願いします』
アヴァロン、エリュティアの姉妹艦がエリア11で中華の侵攻を防いだことは万人が知るところである。
KMFのフロート・ユニットに関する研究も含め、これからは空が主戦場となる事は明白であり、ユーロピア侵攻の際に本格的な浮遊艦隊を投入する予定であった。
『航空艦を先行させることは出来なくなる事は承知しておきなさい』
事、ここに至ってようやく本国を離れていた三皇族による討伐方針は定まった。南太平洋に居るギネヴィアはともかくとして、本国と隣接エリアに居るシュナイゼルとオデュッセウスの判断が遅れたのは、単にペンドラゴンを中心としたブリタニア首都圏との情報途絶と諜報員が次々に消息を絶ったことにある。
情報は近代戦には最大の武器とも言うべきものであったが、ヴィクトルはともかくとして四大騎士団長達がその危険性を放置しておくはずは無かった。
「ふう、余計なことは言わなかったと思うが、いつまでそれを突き付けておかれるのですか?」
そして、二人からの映像が消えると、オデュッセウスはふっと一つ息を吐き、後頭部突き付けられた筒状の感触へと意識を向ける。
ハンドガンを握った青年もまた、当人の性向からしたら意外なほどに困惑していた。
そして、オデュッセウスと青年の双方から意識と視線を向けられた老人はそれに答えること無く、両の目に怒りの炎を浮かべたまま沈黙していた。
血を分けた双子の兄に裏切られ、嘘を付かれ、今また自分の築き上げたモノを破壊し尽くされんとする男。
そして、“慈愛”と賞賛されたその性向を心の底では“惰弱”と否定していた愛娘から、『皇帝たる責務を放棄した』とまで糾弾された男。
弱肉強食の国是も、ブリタニアによる世界支配も、それすらも超越する目的のための手段にすぎなかったにも関わらず、その手段すらも足下から崩れ落ちつつある現実に対し、男は怒りの炎を向けるのみであった。
今回はあまり描写していなかった各国の動静が中心となります。
EUが厚くなってしまいましたが、亡国ももう少しアレンジしていきたかったのですが、そこまで物語に組み込むのは難しかったので大婆と宗像の会話という形になりました。
本編は打ち切りみたいな感じでしたが、さすがに世捨て人エンドは無いだろと思ってしまったので、本人達の幸せを無碍にする形ですら、物語に引っ張り出そうかと考えています。
資料などがあまりないので、「これはおかしい」という指摘等が有ったら大変助かりますので是非ともお知らせください。
また、ルルーシュは過去も含めてコーネリアの判断を読み切れていないのに対し、年長組はある程度彼女の性格を掴んでいるという感じの描写もしてみたのですが、この辺も「ルルーシュが劣化してる」という感じになってしまうかも気になったりしますので、御指摘頂けるとありがたいです。