壊れた街灯はあの時のままだった。
「ルルーシュ……」
そう呟いたリヴァルは、バイクから降り、昨日の事故現場へと視線を向ける。
昨日起きた事が事であるので、車の通りはほとんど無く、都市の中央部にもかかわらず静まりかえるその場所。
自分がルルーシュを止めなかったから、ルルーシュは変わってしまった。そんな思いがリヴァルの中にはある。
昨日の事故。
あれはテロリスト達の自爆だったが、親切心でそれを助けに行ったルルーシュはテロに巻き込まれ、それでいてブリタニア軍の虐殺まで目にしてしまった。
ネット環境が整備された情報化の時代、調べる気になればいくらでも詳細を調べる事は出来る。
当然、軍や国家の機密事項であるが、リヴァルは危険を承知でその辺りを調べてみたのだ。
結果として、ルルーシュ達の言っている事は間違っていなかった。
「名誉」になった日本人達の中には、本気でブリタニアに忠誠を誓ったわけじゃ無い人間も多い。
だから、この手のブリタニアの暴虐の証拠とかは案外簡単に手に入ったりするのだ。
「コイツだって、お前と出かけるために買ったんだぜ……」
とは言え、いきなりあんなことを言い出すとはリヴァルとしても思っていなかった。
生徒会で間違いを指摘されながら書類を作ったり、馬鹿な話をしながらイベントの準備をして、時折、割の良いバイトを探して一緒に行って、ルルーシュの体力では何も出来なかったり、賭けチェスに行って金を巻き上げたり、その金でちょっと高い店で食事をしてルルーシュが味付けに対して「ナナリーの口に合わん」と言いだして騒ぎになったり、ちょっとやんちゃな学生生活が続くモノだと思っていた。
隠し事に怒るつもりは無い。
あんな事情があれば誰だって隠す。だけど、どうして自分に教えたのか?
ルルーシュは自分が大事な友達だからと言っていた。
それはありがたい。皇族だからといって自分達の関係は変わらない。それは本音だ。
でも、昨日のテロリストの真似事みたいなことに自分が加わるなんて考えてもみなかった。
だが、ルルーシュは基本的に人に本音を見せないヤツだった。
そう思うとリヴァルは、本音で自分達に語りかけてきたルルーシュの思いを否定できない。
自分も父親と折り合いが悪いが、そんなモノの比じゃ無いぐらいにひどい話なのだ。
子どもを捨てた上に、戦争を始めて殺しに掛かる親なんて、殺されたって文句を言う資格なんて無いとリヴァルは思う。
だからといって、戦争を始めるのは違うとも思う。それしか手段が無いと言うが、ミレイは元よりリヴァルやシャーリーだってルルーシュを守るし、正直言えばエリアの人達がどうなろうと、今のままでも自分達は平和に暮らしていけるとも思う。
だが、ルルーシュの言葉を聞いてそれで良いのか? と言う思いもリヴァルの中にはある。
そんなことを考えながら、リヴァルはバイクを走らせていたのだが、どうすれば良いのか分からないまま、闇夜の中で途方に暮れるしかなかった。
そして、その静寂を破る携帯の着信音が耳に届く。
「――っ!? なんだよ、こんな時に……」
着信画面に浮かび上がった名前は父親のモノだった。
「もしもし?」
『ああ、リヴァルか?』
「なんだよ、急に?」
電話の主はブリタニア本国にいる父親から。
中学の頃からどうにも折り合いが悪く喧嘩ばかりしており、アッシュフォードを選んだのも、家から出たかったからだった。
『急な用というわけじゃない。勉強は頑張っているか?』
「なんだよ、またそれかよ……。心配されなくても、ちゃんとやっているよ」
『心配しなくて済む成績じゃないから電話をしているんだ。父さんはお前の将来が心配なんだぞ?』
相変わらずの上辺だけ心配するような声に、リヴァルは心底嫌気がさしていた。
たしかに、生徒会と言えど、人に自慢できるような成績ではない。赤点の常連というわけでもないが、普通と言えば普通。
それが父にとっては不満なのだろう。
「俺は父さんみたいに国のために働く気なんて無いんだから、別に良いだろ」
『なんだその言い方は? 国のために働かないと言うが、どんな仕事でも、他人の為になったり、税金を払ったりしてるんだから、国のためになっているんだぞ?』
リヴァルの父親は役人である。
細かい役職は分からなかったが、ほとんど家に帰らず、帰ってきても勉強の事しか聞かず、母親には命令するだけ、典型的な亭主関白な父親であった。
そして、役人特有の規律を重視する面が強く、自由奔放をモットーとするリヴァルとは当然馬が合わない。
「……そうかよ。言いたいことはそれだけ? 今、友達が困っているんだからもう切るぞ?」
『何かあったのか?』
「テロに巻き込まれて、面倒なことになっているんだよ。まったく、ブリタニアの役人は何やってんだよっ!? テロ起こすような締め付けをするから困る人が出てくるんだろっ!!」
実際その通りであるが、今困っているのはルルーシュというよりはリヴァルである。
だが、苛立ちが先に立って口調がどうにもキツくなる。自分が置かれた事情も知らないクセに。と言う思いが強くなり、普段は適当に流しているだけの会話も棘のあるモノからはっきりと喧嘩腰になってしまう。
『リヴァル。父さんは本国に居て、エリアの事情は事細かには分からない。だがな、公式発表が必ずしも事実じゃない事ぐらいは分かっているぞ?』
「じゃあ知っているのかよ? シンジュクでイレブンが死んだのは、テロリストじゃなくてブリタニアのせいだって事を」
叫んでいるような口調だったが、声は至って冷静だった。
実際、テロは自分とは関係ないゲットーで起きていることだと思ったが、それにルルーシュが巻き込まれ、彼の怒りから自分の日常は狂い始めてしまった。
原因はルルーシュにあるかも知れないが、それを成させたのは何か? ブリタニアの暴虐が原因じゃないかとリヴァルは思ってしまった。
『知っている』
「は?」
『父さんの仕事はそう言うモノだ。お前には教えていなかったがな』
「はあ? なんだよそれっ!?」
『そう言うモノだとだけ言っておく。それとなリヴァル。友達が本当に困っているなら助けてやれば良い。お前がそれが正しいと思うなら、友達が大事なら、別に悩むほどのことじゃないだろ?』
「…………父さんはそうしているのかよ?」
『しているさ。むしろ、命すら懸けているよ』
さらりと言ってのけた父の言葉にリヴァルは困惑する。冗談を言うような器用な人間では無いし、勉強のことばかり聞くように、くそ真面目な人間だった。
そんな父が命を懸けると言う場面はいったい何なのだろうか?
「命を懸けるって……、役人にそんな覚悟が必要なのかよ」
『役人だからこそさ。役人だから、主君に対しては命を懸けてお守りせねばならない』
「俺達家族を蔑ろにしても?」
『…………そうだな。私は良い父親ではなかったな』
一瞬、父の本音が垣間見えたような気がしていた。もしかすると、父は単純に自分との接し方が分からなかっただけなのかも知れない。ただそれでも、父親らしいことをしてもらった覚えはほとんど無いのだ。
「そもそも、役人って言っても色々あるじゃん。どんな仕事なんだよ?」
『…………騎士だ』
「は?」
『騎士だ。そして、私は軍人だリヴァル』
「は? なんだよそれ? そんなこと言ったことも無いし、うちはただの一般家庭じゃないか」
『それはそうだ。私は公には独身だからな。家族を持てばそれが弱みになる。そう考えていたが、母さんと出会い、お前が生まれた。だが、私はどうしても軍人と父親というモノを両立できなかった』
いったい何を話しているんだと思えてきたリヴァルだったが、こんな話も出来ないぐらい父と話す機会はほとんど無かった。
いや、リヴァルが家庭を顧みない父を否定し、話す機会をほとんど作らなかったのだ。
母からは、父は役人として国家のために働いているという事は聞いていた。
だが、よく考えれば、似合わないスーツの下の身体は子どもが見ても分かるぐらいに鍛え抜かれていたように思える。
そもそも、リヴァルは母親と瓜二つなぐらいに似ているし、ほとんど母親とともに過ごしてきたので、父の外見的なモノから仕事内容を想像する事はほとんど無かった。
『お前とはしっかりと話し合っておくべきだったのだな。だが、お前が高校生になり、家から離れた事でむしろ仕事に専念できると思ってしまった。本当に済まなかった』
「最低だな」
『ああ、最低な父親だ』
「違うよ。俺がだよ……」
『そうか』
お互い不器用なところは親子ならではと言うべきなのか、それでもリヴァルは今更ながら父親の気持ちが分かってしまったのである。
『大切なモノのためにすべてを捨てなければならないことがある』と言う事に気付いたのだ。
「父さん」
『なんだ?』
「仮にだけど、俺がシンジュクで起きたこと――もちろん知っているよな? それを許せなくて、ブリタニアを倒す。なんて言ったら、父さんは俺を殺せる?」
『……何を言っているんだ?』
なぜか、今となっては父親に隠し事をしても無駄だと思えてしまう。とは言え、ギリギリのラインで止まっているとリヴァルは思っていたが。
「巻き込まれた友達がね、虐殺を見ちゃってスゴく怒っているんだよ。だから、俺は将来ブリタニアを絶対に変えてみせるってね。父さんは軍人なら、ブリタニアを変えるなんて許せないだろ? でも、俺がそれに賛同しちゃったらどうするって話だよ?」
『全力で止めるぞ?』
「それでも、反抗したら?」
『…………なんてことを言い出すんだ』
「俺は本気で聞いているよ?」
『お前はそれが正しいことだと思うのか?』
「無抵抗の民間人を殺し尽くすことが正しいと言うならそれは間違いだと思うし、それを肯定するなら、俺はあいつの言うことが正しいと思うよ」
『彼等はブリタニアに反抗したんだぞ?』
「ああ、やっぱり知っているんだな。父さんがそう思っても、俺は友達が言うように間違っていると思う」
そこまで言うと、リヴァルは不思議と今までの悩みが霧散しているような気がしていた。はじめから決まっていたんだと思う。
――友達のためなら、命を懸けられると。
それが分かったのは、父の本音に触れたからなんだろうか? そして、父がこうして自分に対して腹を割って話しかけてきたのも、ルルーシュの事があったからなのだろうか?
『私には何も言えない。いや、お前がその道を行くと決めたのなら、私はそれを応援する。――――だが、私はお前の父親であると同時に、ブリタニアの騎士であると言うことは忘れるな』
「――――――っ!?」
電話越しの会話だったが、明らかに空気が変わったと言う事がリヴァルには分かった。今更ながら、自分の父親がどう言う人間だったのか、たったこれだけの会話で理解できるほどに。
(おいおい、なんなんだよ。ルルーシュも父さんも。俺の近くにはこんな化け物みたいなのばかりだったのか??)
そして、ある意味で父との会話に酔っていたリヴァルは、自分がとんでもない事を口にしてしまったことを自覚する。
ルルーシュが言うように、専制国家である以上、通話記録の開示など日常的に行われる。
父が騎士であるとは言え、『ブリタニアを倒す』等と口にすれば、主義者としてあっという間に逮捕されてしまうだろう。
今更ながら、自分の迂闊さを呪うリヴァルだったが、思いがけない言動が耳に届く。
『…………はぁ。まったく、思いついたことをすぐに言ってしまうのは母さんそっくりだな』
「いや、その……」
『安心しなさい。この電話内容でお前や友達がどうにかなる事は無い。それぐらいの力は私にもある』
「は? 何者だよまったく」
『お前の父だ。いずれにしろ、リヴァル。大切なモノのために出来ることをしたいと言う気持ちは父さんにもよく分かる。ともすれば、私はそのために死ぬ可能性すらあるからな』
「そんなこと」
『こんな時代だからな。お前には電話で近況を聞くぐらいしか出来なかったがな。だが、もう電話でそんなことを言うのは止めてくれ。父さんにも立場というモノがある』
「……ごめん」
『良い。だがなリヴァル。父らしいことを言わせてもらえば、その友達が大切だと思うなら、その気持ちは大切にするべきだ。……さて、そろそろ仕事に戻る。出歩いているようだが、身体は大事にしろ? それと、たまには母さんにも連絡してやれ』
「言われなくても、いつもやってるよ」
『そ、そうか……。まあいい、元気でな』
そう言って、父は一方的に電話を切ってしまう。だが、ここまで腹を割って話せたのはいつ以来だろうか?
そんなことを考えつつ、リヴァルは一つの決断をしていた。
もう覚悟は決まった。父がそうしたように、自分も大事なモノのために生きるべき。そんなことを考えながら、バイクに跨がり、学園へと続く道を走り始めた。
◇◆◇◆◇
ブリタニア帝都ペンドラゴンにある庁舎の一室。
独特な意匠の軍服に身を包んだ軍人達が忙しく行き来する中、男は携帯電話を閉ざす。
「珍しいですね。職務中にプライベートの電話とは」
男の傍らにて書類を添える金髪に穏やかな表情が特徴の女性軍人が口を開く。
規範意識を第一とするこの男が休憩中とは言え、職務中に私用電話ことをする様子を見るのは初めてであり、そこそこ長い付き合いの人間からしたら驚きの方が強かった。
「なぜか、話さなければならないように思えてな」
「それにしては、中々物騒な会話が聞こえてきましたが」
「そうだな……。私とは異なる道――平和に生きてくれれば良いと思っていたが、血は争えないらしい」
「そうですか。となると、若君が成人される頃には私達の列に並んできますかね?」
「それは無かろう。仮に才があったところで、軍教育とは無縁だ。それに、あいつは陛下のことがお嫌いらしい」
「……偽りの経歴を作ってまで庶民に混じる必要は無かったのではありませんか? 若君も軍人としての道を歩ませる選択も」
「あの御方の生き様を知ろうとするにはこれしか無かったのだ。同時に、家族というモノの暖かみもな」
「うーん、あの方は貴方とはとても似つかない方だと思いますけど」
「当然だ。私などあの御方の足下にも及ばん」
男にとって、家族は軍人として、騎士としての自分をなくせる唯一の場所でもあった。だが、それは逃げ込み先であるという思いが、次第に家族への歩みを遠ざける。
妻となった女性はそれを覚悟の上で彼と結ばれたが、息子にはただ寂しい思いをさせただけであった。
そして、あの御方が家族を持っても変わらなかったように、自分もほとんど変わることは無かったのだ。
もっとも、本来の自分であれば、先ほどの息子の言など、絶対に許しはしなかったであろうが。
「……私も丸くなったモノだ」
苦笑しつつ、送られてきた書類の決裁を行う男。新型KMF、特に男や女性が乗る専用機体の計画。
それは、来たるべき中華やEUとの決戦を意識したモノであり、ブリタニア軍中枢にとって、息子の居るエリア11など、第三皇子の遊び場という認識しか無い。
だが、男にとっては先ほどの息子との会話が胸に引っ掛かっている。
――ブリタニアを倒す
自分がいる限り、そんなことは絶対に有り得ないという自負が男にはあったが、それでも本当に息子がそんな無謀な行為に手を染めるというのであろうか?
騎士としてそんなことを許すわけに行かないという思いと、父親として息子の思いを応援したいという思いが交錯する。
そして、それが弱さか、という思いが最後に心に浮かんでくる。それもまた、自分の意思で作り出したモノである。
そこまで考えると、男はそれ以上の思索を止め、目先の業務へと意識を向ける。
考えたところで始まらぬ事であるし、政情不安であるとは言え、息子は遠きエリア11に居る以上は、真意の探りようが無いのである。
そして、男は自身の象徴たる白きマントを身につけると、自身が生涯の主と定めた主君の元へと向かった。
◇◆◇◆◇
もやもやとしたまま休日を過ごしていたシャーリーは、ミレイからの呼び出しに学園の食堂へと足を向けた。
「や、シャーリー。気分はどう?」
「…………良いわけないですよ」
休日であり、お昼にはまだ早い時間帯であるため、食堂に居るのはなぜか制服に身を包んだミレイだけ。
経営者の一族であるが、両親との仲は良好とは言えないミレイは女子寮で暮らしている。
本来二人部屋のところを一人で使っているのだが、それに文句が出ないところは彼女の人徳だろう。
それでも、昨日の今日はその人徳も影を潜めているように見えるが。
「そりゃそうよね。あんなことを告げられて、『殿下の思し召しのままに』なんて言えるのは、元々の臣下とかそう言うモノだけよね」
「会長、こんなところでしゃべって良いんですか?」
「あら? 分かっているじゃない? でもね、私達が盗聴器とかスパイなんかを学園に入れると思ってる?」
そして、変な夢を見たせいで気分の悪いシャーリーに対し、いつもの調子で笑みを浮かべながらミレイは答える。
その言葉のうちは、なんとも自虐めいたものであるが、当の本人がそういうモノだという証明でもあった。
だが、シャーリーは、昨日のこともあり他人に聞かれてはマズいと思い、声を落とす。
そんな様子を見たミレイは、口元にニヤリと笑みを浮かべながらそう答える。
見ると、朝食の準備をしている職員達はあからさまに我関せずといった態度をとっていた。
「だからね、ルルちゃんが言ったみたいな悪いヤツらはシャーリーにもリヴァルにも近づけやしないわよ」
「会長……」
そう言ってウィンクをしてくるミレイ。学園の職員はアッシュフォード家の臣下であり、それはすべてルルーシュの臣下となる。
だから、ルルーシュの言うような懸念は絶対に無いし、シャーリーやリヴァルが普通の学生として暮らせないような状況には絶対にしない。
ミレイはシャーリーに対して力強くそう告げると、再び会長の顔になってシャーリーに問い掛ける。
「それでね、シャーリーはルルーシュが好き?」
「へっ!? な、なんですか突然??」
「ともに戦うとか、そういう次元じゃなくてね。シャーリーは今の生活を失ってもルルーシュ様と一緒に居たいかどうかってことよ」
突然、そんなことを告げてくるミレイ。シャーリー自身、ミレイがルルーシュに対して恋心を持っていることはなんとなく察していた。
祖父のルーベンがと言うよりも、そう言う気持ちがあったからこそ家を上げて彼を守ると誓い、臣下達にも通達したのだろう。
実際、ミレイはルルーシュとナナリーだけでなく、学園の生徒達も守ろうとしていたのだ。
その上で、ミレイは改めてシャーリーに問い掛けてくる。
「もちろん、家族のこともあるし、簡単じゃないのは分かるわ。実際、生き死にに関わることもある。それでもね、結局のところは貴方がルルーシュと一緒に居たいかどうかなのよ」
「ルルと一緒に……?」
「そ。あの方は、いやあの子はね、細かい事に気は回るし、目立つことを好まないし、なんだかんだで争いを嫌っているように見えるけどね、本当のところは見栄っ張りでプライドの塊だし、人なんか力尽くで従わせてやるって言うタイプなのよ?」
「ちょ、ちょっと会長」
「でもね、そんなルルーシュが、シャーリーとリヴァルには全部を話した。このことを、よく考えてみて」
そう言ったミレイの言に、シャーリーはこれまでのルルーシュと過ごした日々を思い返す。
交通事故の後から気になりだしたが故に、彼の良いところは出来る限り見てきたし、駄目なところも見て注意したりしてきた。
それでも、どこか秘密主義的なところがあったり、時折凄く悲しそうな表情を浮かべることもあったと思う。
そんな彼が、自分達に包み隠さずすべてを話した。それがどれだけの覚悟があったのか。ともすればシャーリーもリヴァルも失う。それだけの危険性がある行為だったと言える。
「でも、会長。ジェレミア先生からKMFの動かし方は教わったりしているけど、私もリヴァルもただの学生ですよ? ルルのために何が出来るかって言われたら」
「そうね。でもね、あの後改めて確認してみたけど、何ができるかじゃ無く、側に居てくれるだけでも良い。って彼は言い切ったのよ。大切なモノは遠ざけるのでは無く近くで守るべきだ。俺にはそれだけの責任がある。ってね」
「た、大切なモノって」
「シャーリー。冗談じゃ無く、それはそう言うニュアンスだったわよ?」
そう告げたミレイの言にシャーリーは凍り付く。今までであれば、嬉しさと同時に、ミレイにからかわれたと思って赤面して怒るところだったが、ミレイの表情は本気だった。
「まあ良いわ。一度、家に帰ってご両親に話してみなさい」
「言えませんよ。こんな大それた事……」
「本当のことを言うんじゃ無くて、アッシュフォード主宰の留学に参加するとか、そう言う言い方でも良いし、その辺りはちゃんと両親に話しておくべきよ? 寮に居れば別にバレやしないし、私達も手は尽くすわ」
「ソフィーとかリヴァルのルームメイトはどうするんですか?」
「ああ、言ってなかったけど、あの子達はアッシュフォード家の部下だから問題無いわよ?」
「ええっ!?」
「ニーナのルームメイトもそうだけどね。私の目が黒いうちは大切な子達を危険な目に遭わせるわけないじゃない。言っておくけど、私はルルちゃん以上に手強いわよ~」
鋭い臣下としての顔をしたミレイから、すっかり陽気な生徒会長の顔に戻ったミレイの言にシャーリーはギョッと目を丸くするが、それでも、家族の話が出たときには、話をしておかなければならないとも思っていた。
夢で見た悲しい出来事。それが、自分とルルーシュの運命を変えていった事件。あれがもし、誰かが自分に見せた未来だとしたら、自分達以上に父の身に起こる危機もまた、見過ごすわけにはいかない。
「まあ、そういうわけで、未来の皇妃の座を目指して頑張るか。愛しの皇帝陛下を遠くから見つめるだけになるかのどちらかを選ぶことになるわけだし、しっかり考えることっ!! 月曜日に良い返事を待っているわよ」
そして、再び良い笑顔でとんでもない事を言いだしたミレイに対し、シャーリーが目を丸くしながら二の句を継げなくなっている様に満足したのか、ミレイは足取り軽く食堂を去って行った。
「……まったく、敵わないなあ」
真面目なようでいて、しっかりおもちゃにされてしまったのだが、あの人が支えるならルルーシュも大丈夫だと特に意識せずとも思えてしまうのは、ミレイの人徳故だろうか?
とは言え、寝不足も相まって凄く疲れたような気がするのも事実。両親にどう説明するかを考えつつ、シャーリーは「貴方も大変ねえ」と言いながらデザートをくれたおばさんに感謝するのだった。
さあ、リヴァルの父親は誰でしょう?
後半は少しおちゃらけてみましたが、前半はシリアスというか、こう言うオリ設定は有りなのかな?と思いながらも、リヴァル達を仲間にする意味を持たせたいと思って設定してみました。
正直、彼は日常の象徴みたいな存在ですから、反逆に加えるのは違うのかな?と言う思いもありますが、スザクみたいな歪な友情では無く、隠し事無く言いたいことを言い合える関係を持った友情を持てるのってリヴァルなんじゃ無いかなと思い、彼を仲間に加えるルートにしてみました。
ご意見、ご感想、ご批判等がありましたら、遠慮無くお願いします。