ミレイがシャーリーの背中を押すようなアドバイスをしたのは、主君『達』が道を定めたからでもあった。
◇◆◇◆◇
ルルーシュはリヴァルとシャーリーに話をした後、クラブハウスへと戻ったのだが、ナナリーの事となるとそれまでの決意なども霧散してしまい、話すべきか話さぬべきかで頭を抱え始める。
ジェレミアも一旦、軍の教導部へと戻ったため、クラブハウス内には当然事情を知らないナナリーと咲世子。後は、事情を知っているが助ける気など無いC.C.が居るだけである。
結局、味方が必要とすでにルーベンとの間で覚悟に変わりは無いとも確認を取ったミレイが呼ばれることになったのだ。
「お兄様……。それは、本気なのですか?」
そして、ミレイが来ると上手く話を繋いでもらい、ルルーシュはナナリーと一対一で今後の事を話しかけた。
ルルーシュの部屋であるが、ミレイに外で待機してもらっていても、咲世子が聞き耳を立てて居ることも折り込み済みである。
彼女が頼れる人間な事はルルーシュはよく分かっていたが、今はアッシュフォード家に雇われた身である。
自分達の話を聞かせた上で、ミレイから協力するか否かを問うつもりであった。
そして、ルルーシュはシャーリー達に話したことをそのままにナナリーに告げる。
突然の事であり、ナナリーは驚きつつも、なんとかルルーシュに対して問い返す。
ナナリーからしてみたら、人質同然の生活であっても、ルルーシュやミレイ達の優しさに触れて今日まで生きて来た。
だからこそ、祖国ブリタニアへの恨みなどを抱く事も無く、今日まで過ごしてきていた。
それが、突然ルルーシュが祖国と家族に対しての戦争を決意したと言われれば困惑しかないだろう。
「本気だ。シンジュクでのことは、先ほど話したことが事実だ。クロヴィスが――あの温和で優しかった男が平気で虐殺に手を染める。それだけ、ブリタニアは狂ってしまっている。そして、俺達もまた、その狂った国から逃れることは難しいんだ」
「ミレイさんやルーベンさん達が守ってくれるのではないのですか?」
「アイツらはもちろんそのつもりだ。だが、それだけでは無理だ。それに、ナナリーは日本人が、いや、世界中の人達が苦しめられている現状をどう思う? 許せるか?」
「私は……、もちろん、皆様と平和に暮らせるのが一番です。日本人だって、イレブンと蔑まれていますが、咲世子さんやスザクさんみたいな人も居るんです……。でも、それでも私は戦争なんて」
「ナナリーに手を汚させるつもりなんか無いよ。ただ、ナナリーは俺の帰る場所であって欲しいんだ。だからこそ、すべてを知っていて欲しい」
「帰る場所?」
「そうだ。ナナリーが待って居てくれる。それだけで、俺は戦い続けることが出来る」
実際、ルルーシュが戦った理由はナナリーだった。
ナナリーが平和に暮らせる世界を作る。その思いだけで戦いを始めた。だが、それは自分の理想の押しつけであり、ナナリーには何も知らせずに殺戮に手を染めていった。
その結果が、ユフィの死であり、シャーリーの死であり、ナナリーとの決別だった。
そして、自分が飛躍したのはナナリーが手元を離れてからのこと。ナナリーが自分の元から離れ、総督としてある種の身の安全を確保できたから、合衆国を作るほど立ち回ることが出来たのだ。
「どうしても、止めることは出来ないんですか?」
「ああ。すでに俺は、この手で人を殺めた」
「っ!?……なんてことを。どうしてですか? なぜお兄様がそんなことを? 何で人殺しなんか」
「そいつらはクロヴィスの親衛隊だ。目の前で日本人を虐殺し、俺やC.C.。そして、……生き残った日本人を殺そうとした。その場に居合わせたと言うだけでな」
「殺されそうになったから、殺したと言うんですか?」
「ああ。俺が死んだらナナリーはどうなる? シャーリーやミレイやリヴァルも。そんな思いを抱いたら、もう止まることは出来なかった」
そこまでルルーシュの言を聞いたナナリーは、これが夢ならばどんなに良かっただろうと思う。兄はすでに人を殺め、それを悔やむこと無く、次なる人殺しの道を選んでしまった。
クロヴィスの親衛隊と言っていたが、今は亡きその者達への嫌悪感と憎悪が強くなる。
兄は誰よりも優しく、人を殺めることなど出来ないはずであったのに。それでも、この先戦いを始める理由になるとは思えなかった。
「ナナリー。どうしても、俺が許せないのであれば、アッシュフォード家の伝手でクロヴィスに名乗り出るんだ。俺はあいつが許せない。だが、それでも兄妹は兄妹だ。お前のことも大切にして守ってくれるはずだ」
まだこの時、V.V.の存在を知らなかったルルーシュは、ナナリーに対し、ある程度の決意を込めてそう告げる。
そうなった場合は、クロヴィスは命は取らずにナナリーとともに日本から離れるよう工作するつもりであった。
仲の良い兄であっても、ケジメは取らせるべきであり、ナナリーが自分の元に居てくれるのならば、自分なりの日本に対する贄となってもらう。
シュナイゼルやコーネリアに情けを掛けた結果がジェレミアが経験した過去だったのだ。
家族や親しい人間に対する甘さが、世界を混乱に陥れ兼ねない。
そして、ナナリーの気性を考えれば、自分の元に居てくれる可能性とブリタニアに戻ってでも自分を止めようとする確率は半々だと思っていた。
仮にルルーシュが同じ立場だったとしたら? ルルーシュは全力で守るか、全力で止めるかの二択で迷うことになるとも思った。自分達は兄妹なのである。考えだって似てくる。
「ナナリー、すぐに答えを出せとは言わない。だが、この休日の間に決めるんだ。シャーリー達にも同様の期限を与えた。俺はすぐにでも行動を開始したいが、その間は何も動かないことを約束する」
とはいえ、ナナリーにしても、そんな決断をすぐに出来るはずも無い。
そうでなくとも、兄に対する依存が強かったのである。そもそも、自分の意思で何かを、それも人生までが決まってしまうような決断をしたのは初めてなぐらいだったのだ。
そして、ルルーシュとしてもつらかった。二度と会うことはないと思っていたかけがえのない妹と再会できたのだ。
もう二度と過去のような過ちは繰り返さない。そう思っていても、自身が行く反逆の道にナナリーが簡単に賛同するとは思えなかったのだ。
自分を止めるために、世界を敵に回す覚悟をして戦いを挑んできた。あの戦いの間、ルルーシュはシュナイゼルではなく、ナナリーを主敵として戦ったのだ。
だが、二度とそんな思いはごめんだった。クロヴィスやコーネリアやシュナイゼルとは再び剣を交えられても、ナナリーとは無理だ。
「そんな時間はいりません」
「ナナリー?」
そんなことを考えていたルルーシュだったが、ナナリーは凜とした口調でそう答えると、ルルーシュに対して向き直る。
そして……。
「私は、お兄様を苦しめ、守っていただいていた事に気付いていませんでした。ともに過ごせれば良い。生きられれば良い。そんなことしか考えていなくて……。ですが、私達の生まれを考えれば、そんなことが続くはずもありません。ましてや、お兄様にはお兄様の人生があり、私の為に生きてもらうわけにもいかないのに」
「そんなことは無いぞ。俺はお前のために生きる覚悟はしている」
「それでも、シャーリーさん達がお兄様にはいらっしゃいます。お兄様の幸せは私の幸せですから、私もまた、お兄様のために生きたいんです」
「ナナリー……」
そう言いきったナナリーに対し、ルルーシュは過去の世界で自分はとんでもない間違いを犯していた事を自覚する。
ナナリーを自分の鳥籠に閉じ込め、自分の思いを押し付けた結果、ナナリーは時代の悪意に利用され、お互いに罪に手を染める結果になった。
だが、思い返してみれば、ナナリーは自分と同様に「あの2人」の血を引くのである。
他人の鳥籠に収まるような器でも無く、同時に時代の悪意に翻弄される宿命を負っている。
「ですから、私はもう目を背けません。お兄様、お兄様の戦いに、私も協力させてください。…………っ!?」
「ナナリーっ!? 目がっ!?」
それは、ルルーシュにとっては、思いがけない事であった。あの戦いの最中にでは無く、ナナリーはこの場でギアスの呪縛を打ち破ったのである。
「7年ぶりに、お兄様の顔を見ました。……それが、私が人殺しをさせた顔なのですね」
「何を言っている? それは、俺の意思で成したことだ」
ルルーシュにとっては、嫌な意味での既視感のある声だったが、あの時のそれとは異なり、糾弾では無く、自戒の色合いが強い。
「分かっています。ですが、目が見えなかったのは私への罰だったのですね。目が見えないことを理由にすれば、いつまでもお兄様とともにいられる。そう思いながら、現実から目を背けた結果だったのですね」
「止めろ、ナナリー。自分を責めようとしないでくれ」
「分かっています。ですから、改めて言わせてくださいお兄様」
「なんだい、ナナリー?」
「今まで、私を守ってくださり、本当にありがとうございました。これからは、私もお兄様を守れるよう、努力いたします。私もともに戦います。いつまでも、お兄様とともにある事が出来るように」
そう言って、ナナリーはルルーシュに対し、ゆっくりと手を差し出してくる。ルルーシュは、片膝をつくと、両手でその手を包み込むように握りしめる。
あの、ダモクレスでの別離の儀式と同様の形。だが、今この場においては、それは決別では無く、新たな兄妹としての調和の儀式となったのである。
「お兄様。お兄様は、まだ、私に何か隠していることがありますね?」
そして、儀式を終えたナナリーは静かにそう口を開くと、ルルーシュに『全て』を話すように告げたのであった。
◇◆◇◆◇
紅月カレンは一人、焦燥していた。
シンジュクから脱出したのは良いが、グラスゴーは破壊され、毒ガスカプセルから出てきた女に仲間達は無力化され、さらに居合わせたブリタニア兵に叩きのめされて、ほとんどの仲間が捕縛されてしまったのだ。
なんとか逃げ延びてきた仲間も居るが、扇も吉田も南も居らず、永田もあの時別れたままである。
「ちっくしょーっ!! どうすりゃ良いんだよっ!!」
アジト内部に玉城の苛立つ声が響く。ブリタニア兵に最初にちょっかいを出したせいで、真っ先に叩き伏せられたのだが、すぐに伸びてしまった為に負傷することも無く、逃走に成功していた。
「騒いでもどうしようもないじゃない。他のゲットーの連中だって無理には動けないわよ」
傍らに座る井上がその様子に呆れるように口を開くが、何とか助け出そうと言う気持ちがある玉城に対し、彼女はどこか諦めているようにも見える。
悪い人では無いが、どこか事なかれ主義なところがカレンには鼻につくことがあった。玉城の粗暴さはもちろんだが、二人とも長い付き合いである以上、決別するわけにも行かない。
とは言え、現状では扇グループ内のリーダー格で逃げ延びたのはこの二人だけであり、リーダーの扇も、冷静な参謀役の永田も、熱血肌でみんなを引っ張る吉田もいないのでは、手の施しようが無い。
「グラスゴーさえあれば……」
「そうだよカレン。なんであれに乗って逃げなかったんだよっ!?」
「私だってあの女にひどい目に遭わされたのよっ!! 無茶言わないでよっ!!」
今思い返しても不快に思えるが、扇達のように身動きが取れなくなるほどの事態にはなっていなかったのが幸いだったし、逃げた女と学生を追い掛けた事でブリタニア兵に倒されずに済んだのだ。
あのブリタニア兵にしても、学生にしても、自分と同じ年ぐらいに見えたのに、散々グループをかき回してくれた。特にあの学生。どうにも鼻につく態度でこちらを見ていたのがよけいに腹立たしかった。
「はいはい、喧嘩はそこまで。とりあえず、私達じゃどうしようもないし、キョウトなりなんなりに連絡を取ってみるから、一旦解散しましょう。カレン、この状況じゃどうしようもないから、貴方は学校に行きなさいね?」
今にも殴り合いを始めそうなカレンと玉城を井上が手を打って止め、他の団員達にも解散するよう告げる。どのみち、集まっていたらいつブリタニア兵がやってくるか分からない以上はこの場に居るだけ無駄である。
昨日の夜も、昼間とは違う派手な装いのブリタニア兵達の臨検を受けて、隠して居た武器弾薬を持っていかれてしまったのだ。
『ふーん、こんなのを持ってるんだ? 困るよねぇ僕たちの邪魔をされたら。まあ、今回は見逃してあげるからこれはもらっていくよ?』
軽い調子でそう言い放った青年の態度もまた腹が立ったカレンだったが、玉城も同様だったらしく、あのガキっ!! とか、殴ってやるっ!! とか程度の低い暴言を吐いている。
いずれにしろ、仲間が捕まり、武器弾薬も失ってはどうしようも無い。最悪の事態も想定する必要があるのだろう。と、そこまで考えたカレンは思わず血の気が引く。
このままでは捕まった仲間達は処刑されてしまうだろうし、キョウトとしても勢力を失ったレジスタンスの支援を継続するかは疑問である。
つまりはレジスタンス活動の終焉を意味するのだが、そうなってしまえば自分はどうなってしまうのか?
兄の思いを引き継いで戦って来たにもかかわらず、それを果たせずに終わってしまうのだろうか? そんな可能性のある未来にカレンは絶望しかけていた。
そして、もやもやを抱えたまま、警戒の続くゲットーを抜け出し、素知らぬ顔で家に戻る。
すでに夜遅く当直の侍女達以外はすでに休んでいる時間帯。この辺りならば変に気を使わずに済む。だが、自分は紅月カレンからカレン・シュタットフェルトに戻らなければならないのだ。
「あ、お帰りなさいませカレン様。ずいぶん、遅いご帰宅ですが、お疲れではございませんか?」
「何で待っているのよ、大きなお世話っ!!」
「申し訳ありません。お食事の用意は出来ておりますので、すぐに温め……」
「食べてきたからいらないわ」
そして、家に戻ったら戻ったで最も会いたくない人物と顔を合わせなければならない事態になる。
ここまで素っ気ない態度をとっても、なぜ自分を構うのかという思いが常にある。ブリタニアの男に縋り、平穏な生活に満足している典型的な名誉ブリタニア人。
その事実だけでカレンの嫌悪感は強く、自身の身に流れるブリタニアの血をよけいに嫌悪する結果になっている。
腹立たしく思いながら、着替えを済ませてベッドに飛び込むと、すぐに襲ってくる睡魔。命がけの逃避行となってしまった以上、思う以上に身体は疲弊している様子だった。
そして、カレンは夢を見る。
兄と母とともに平和に暮らしている日々。よくよく考えれば、父もまた顔を合わせるときは優しかったし、実の子では無い兄に対しても分け隔て無く接していた。
だが、そんな平穏な生活も戦争を境に失われてしまう。
父は自分達を保護した後は、慌てて本国へと戻ってしまい、母と兄とともに紅月家ではなく、シュタットフェルト家で過ごす日々。
たしかに、他の日本人に比べて不自由はしていないと思う。自分はシュタットフェルト家の人間として過ごせたし、兄は兄で父の援助を受けて生活をしていた。
だが、それもあの女が父に縋り付いて引き出した結果に過ぎないと思うと、置かれた今の状況も腹立たしく思えるのだ。
兄や扇は自分は今のまま過ごせば良いと言っているが、それでも仲間を裏切っていると言う思いは常にある。
「……また、こう言う事をっ!!」
そんな調子で、不快な気分のまま目を覚まし、顔を合わせたくも無い人間が一人増える事を懸念したカレンは、まだ陽が昇ったばかりにも関わらず身支度を調え、学校へと向かおうとする。
すると、ちょうど目の届く範囲に置かれた弁当箱。中身は、ブリタニアではそれほどお目にかかれないおにぎりがいくつか。
再び、苛立ちが頂点に達し、投げ捨ててやろうと思うも、同時に盛大に音を立てた腹の虫に思わず手が止まる。どうやら、昨日の好意を無碍にしたバチがあたったようである。
「まったく。なんで、こんなにおいしいのよ…………」
始業時間ギリギリまでの時間潰しとばかりに学園の隅でおにぎりをほおばるカレンだったが、自分の好みを知り尽くした味に悪態をつきつつも、目頭が熱くなることを感じる。
どうしてこうなってしまうのか、どうしてああ言うことをするのか。そう思わずにいられないと同時に、捕まった仲間達の事が脳裏をよぎる。
シンジュクで騒ぎを起こし続けるテロリスト。腹立たしいが、ブリタニアの認識はそんなモノであり、待っているのは処刑だけだろう。
しかし、KMFも武器もほとんど失った自分達には為す術も無い状況だった。
「あら? 貴方はカレン・シュタットフェルトさんだったからしら?」
「誰っ!?」
不意に背後から掛けられる声に、カレンはおにぎりを手に後ろを振り返る。すると、女性にしては長身でメリハリの取れた身体ときれいな金色の髪。そして、人好きする笑みが印象的な女子生徒が立っている。
カレンは見覚えはあったが、名前は出て来ない。しかし、シュタットフェルトと呼ばれることには苛立ちを覚えた。
「私? 私はミレイ・アッシュフォードよ?」
「アッシュフォード? ああ、生徒会長のお嬢様ね」
「あらあら、貴方だってお嬢様じゃない。にしては、ずいぶん珍しいモノを食べているけど」
そう言うと、ミレイはカレンが手にしたおにぎりへと視線を向ける。
おにぎりを手に他人をにらみ付けるお嬢様。誰が見てもシュールな光景だった。本来だったら、忍ばせたナイフを取り出すところなのだが、なぜかおにぎりを手放すのを忘れていた。
「珍しいと思うんだったら食べる? こんなの、食べ飽きているわよ」
「気持ちだけいただいておくわ。それにしても、休みの日にこんなに早くどうしたの?」
「は?」
「は?って、今日は土曜日だから休みの日よ? 貴方は病弱を理由に部活動をやっていなかったから、特に用は無いと思うけど」
そう言われて、今日が何曜日かを思い出す。レジスタンス活動に参加していたため曜日の感覚をすっかり失っていた。同時に、学校では病弱な生徒を装っていたのをこの場においては失念していた。
「……帰ります」
「ああ待って。貴方には別の用事もあるのよ?」
「用事? なんですか?」
苛立ちも遠のいて自分に呆れてしまったカレンは、苦虫を潰したような表情をを浮かべながらその場を立ち去るべく立ち上がる。
だが、ミレイは慌ててカレンの前に立ち、自身の用件を伝えるべく彼女を止める。
「言伝と言うべきかしら? 『紅月カレン。仲間を救い、総督を倒したければ、本日一八〇〇、はじまりのあの場所にて待つ。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア』以上よ」
「っ!? あなた、何者よ?」
そして、それまでの明るい学生の表情を捨て、冷淡な貴族の顔になって、主君の言をカレンに対して告げる。
その変わり身と醸し出される殺気とは別の威圧感に、カレンは隠したナイフに手を伸ばしつつ、ミレイに対して身構える。
「私? 私は陽気な生徒会長よ~? まあ、用件は伝えたから私はいくわ。それと、信じる信じないは貴方の勝手。ただし、あの方は貴方が信じなかった場合の責任は持てないと言っていたわよ?」
そして、カレンの詰問に、あっさりと臣下の仮面を外したミレイは手をひらひらさせながらそう答えると、カレンに背を向けてその場を去って行く。
捕まえて問い詰めるべきだ。とも思ったカレンだったが、ミレイの言に一歩足を踏み出したところで動きを止める。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア……? ブリタニアっ??」
思わず自身の言葉を反芻するカレン。
ミレイが口にしたメッセージの送り主。そして、自身の目の前で、一瞬にして親衛隊の命を奪って見せた死んだはずの学生が口にした名前。
それらが、カレンの脳裏に何度も浮かび上がる。それは、自身を苛立たせた要素の1つであり、その他者を睥睨した態度はまさにブリタニア貴族そのものであり、嫌悪感を抱かせるには十分なモノだった。
そして、『ヴィ・ブリタニア』と言う姓。言うまでも無く、「ブリタニア」とは、ブリタニア皇族の証でもある。
当時は、学生の世迷い言かと思ったが、自分を小馬鹿にしたようなメッセージで呼びつけるならば、行ってやろうじゃないか。同時に、自分の身が安全だと思うなと、カレンは思いつつ、表情を引き締めたのだった。
「あの方が?」
「ああ。俺が頼りにし、苦しめてしまった女性の一人だ」
「私と同様に、お兄様の真意を掴めなかったのです。致し方ありません」
そして、その様子を、クラブハウスの窓辺より見つめる二つの影にカレンが気付くことは無かった。
投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。また、多くの誤字脱字指摘をしていただきありがとうございました。
投稿を優先するあまり、文章がおざなりになってしまっていますね。気をつけます。