コードギアス ~生まれ変わっても君と~   作:葵柊真

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第六話 巨怪

 カレンと別れたルルーシュ達は、学園へと続く地下道を歩く。

 

 ここはカレンが脱出のために使った地下道だったが、彼女が租界に出た場所とほど近い場に、アッシュフォード家が秘密裏に整備した地下通路が存在していた。

 租界内部の上下水道工事を利用して作り出したモノであり、ブリタニア側に把握されていないそれは、租界内部に張り巡らされている。

 もっとも、人を移動させる為だけのモノであるので、外見自体は小型のトロッコである。

 だが、KMFをはじめとする多くのメカの動力源となるサクラダイトを利用しているため、移動は非常に快適である。難点は先述のように人のみが対象で、KMFはおろか、大型の火器を運ぶことも困難な事ぐらいであろうか。

 ただし、対歩兵限定ならば最後尾に備えられた重機関銃が火を噴くため、枢木スザクのような人外以外からならば安全に逃走できると考えられている。

 

 

「ルルーシュ、あの子ってシュタットフェルトさんだろ? 一人で帰して大丈夫だったのか?」

 

「ああ。聞いていたとおり。あの姿こそが本来の彼女だ。病弱を理由に学校を休んでいたのは、レジスタンス活動のためだよ」

 

 

 そこを目指して歩く中で、リヴァルがおもむろにルルーシュに対して口を開く。

 リヴァルとしては、病弱なクラスメイトという印象しかなかったのだが、現れた彼女はまるで別人だった。と言うより、下手に暴れられたら絶対に叩きのめされてしまったとも思っている。

 

 

「でもそれって、あの子も兵隊さんを?」

 

「ああ。細かい数は分からないが、彼女は凄腕のKMFパイロットだ。彼女に倒された人間もいるだろうな」

 

「そっか……」

 

 

 そして、カレンの正体を知ったシャーリーが、何か思うところありげに口を開く。

 

 敵を倒すことは、人を殺すこと。

 多くの兵隊にとっての認識は前者であるが、つい先日まで普通の学生だったシャーリーとリヴァルにはまだまだ割り切れない面がいくつもあるだろう。

 

 

「シャーリー。俺に協力すると言うことは、そう言う事だ。一方的に巻き込んでしまってすまないが」

 

「もう。謝るのは無しって言ったでしょ? 私だって、それなりに考えたんだから」

 

 

 本来であれば、C.C.だけを伴ってカレンと会う予定だったが、午前のうちにシャーリーとリヴァルがクラブハウスを訪れ、協力する旨を伝えてきたのだ。

 予想外の早さに困惑したルルーシュだったが、二人の決断を無碍にする意思は当然無く、ミレイとすでに説得済みの咲世子を呼び、計画の変更を伝える。

 同時に、協力者としてC.C.も紹介し、ジェレミアのことも二人には告げる。C.C.の事は現状では最大の機密であったが、それを知る以上、後戻りする手段はギアスで全てを忘れることしか無い。

 二人にはそれだけの楔を打った。だからこそ、ルルーシュは二人の命を背負うことになったのだ。

 

 

「まったく、私までこんなところに呼び出して」

 

 

 そして、当のC.C.は惰眠を貪っていたところを呼び出されてご立腹の様子だった。とは言え、武器という武器が現状ではルルーシュの持つハンドガンと咲世子、ソフィの持つ暗器ぐらいしか無いため、いざとなると彼女のショックイメージは強力な武器になる。

 そもそも、文句を言いながらも付いてきてくれるのは彼女らしいとルルーシュは思った。

 

 

「そう言いながらも最後まで居たじゃないか」

 

「先に帰るわけにもいかんだろ。まったく、どっちも面倒くさい話で盛り上がりおって」

 

「面倒くさいとは何だ」

 

「いやでも、英雄だの何だののくだりは必要だったか?」

 

「そうね~。カレンちゃんの性格だと、トップに立つなんて絶対に受け入れないでしょうし」

 

「会長は彼女のことを知っているんですか?」

 

「そりゃあね。生徒の把握は色々な意味でしておかなきゃだし」

 

 

 そして、C.C.の台詞を皮切りにみんな好き放題、ルルーシュの大仰強い台詞に対して駄目出しを始める。

 先ほどまでの緊張感はどこへやら、止めようと振り返ったルルーシュの目には良い笑顔でその状況を見つめる咲世子とソフィの姿も目に入る。

 

 

「ええい、うるさいっ!! ああ言うヤツには凝った言い回しが重要なんだ。変に挑発すると暴発するヤツなんだぞ? 俺の苦労を考えろ」

 

「分かった分かった。それより、これからどうするんだ?」

 

 

 そして、不利を悟ったルルーシュが声を荒げると、苦笑いしながらそれを宥め、さっさと話題を変えるリヴァル。

 軽くいなされてしまったことを自覚したルルーシュだったが、おもちゃにされるよりはマシだと思い、表情を引き締める。

 

 

「当然、レジスタンスを救出する。そして、クロヴィスを討つ」

 

「ルル、改めて聞くけど、クロヴィス総督はルルのお兄さんでしょ?」

 

 

 そして、そう言いきったルルーシュに、シャーリーが問い掛ける。彼女にも話してあるが、仲の良い皇族の一人であり、芸術方面の才能に優れ、それによって多くの人を魅了する人物。

 虐殺に手を染めていなければ、平和な世であれば。と思わずには居られない男。そうクロヴィスをルルーシュが評した事をシャーリーは思い返していたのだ。

 

 

「ああ。だが、罪は罪だ」

 

「罪って言うのは、裁かれて初めて実体が伴うんだけどね」

 

「それでもだ。多くのブリタニア人は、日本人の虐殺に対して、仮に公表されても仕方が無いと受け入れるだけだろう。だが、それに対する報いを受けたらどうだ?」

 

 

 だが、言葉通り、罪は罪として償わせると言い切ったルルーシュに対し、ミレイが試すような口調で応じる。

 たしかに、エリア民を虐殺しようとそれがどうした?となるのが今のブリタニアの現実である。

 シャーリーやリヴァルのように、まっさらな状態で話を聞かされてそれを不快に思う人間は珍しいのだ。

 

 

「つまり、みせしめと言う事ね」

 

「ああ。俺は、あいつの命を踏み台にするつもりだ。それが俺への罰でもある」

 

「いちいち、言い訳をするな。あの男を利用する。あるのはそれだけだろ?」

 

「C.C.……」

 

「だが、まだ引き返せるぞ? ルルーシュだけじゃ無い。お前達もな」

 

 

 そう言うと、C.C.は試すような笑みを浮かべ、その場に居る全員を見回す。ルルーシュは親衛隊を殺害してしまったが、アレは自業自得の産物。

 それを抜きにしても、シャーリー達や咲世子、ソフィは悪事に手を染めたわけでは無い。

 それよりも、ブリタニアへの反逆を是とする事は、最悪一族郎党にも危害が及ぶ。

 いや、危害が及んだだけならまだマシであろう。罪人であろうと、ブリタニアに反旗を翻したとなれば、事績は残せる。

 だが、ブリタニアの暗部を考えれば、存在自体を抹殺される可能性もあるのだ。

 その人物は最初から存在しなかった。過去の記録、映像、写真全てからその人物が消滅する。

 そう言った手段にシャルルの記憶改変ギアスが加われば、本当の意味で歴史から消されてしまうのだ。ただのレジスタンスならば、これまで通り、有無を言わさず叩きのめされて終わりであろう。

 だが、明確な叛意を持って反逆を起こした人間達に待っている末路はそういうモノであるのだ。

 

 

「C.C.。あまりみんなを脅すな」

 

「おいおい、私は元々シャルル達の仲間だぞ? あいつがどういう人間かは分かっているんだ」

 

「だからって……」

 

「C.C.さん」

 

「ん? なんだ?」

 

 

 そんなC.C.の言に皆黙り込んでしまい、それを咎めるように声を上げるルルーシュ。だが、それを意に返さず続けたC.C.に対し、シャーリーが改めて口を開く。

 

 

「その、皇帝陛下達の計画というのは…………本気なんですか?」

 

「ん、私はともかく、シャルル達は本気も本気だったな。大真面目にそうすることが人類のためだと思い込んでいる」

 

「人類の為って。聞く限りじゃ自分のためでしか無いと思うけどな」

 

「実際その通りだ。アイツらは、自分のためにそれを計画し、俺やナナリーを捨てたっ」

 

 

 そして、ルルーシュはC.C.を通じて、シャルル達の計画すら打ち明けてしまっている。はっきり言って夢物語の範疇であるが、ギアスに関しても咲世子とジェレミアに協力してもらって説明したし、コードについてもC.C.に頼んで説明している。

 さすがに銃で撃つわけにはいかなかったが、小さな切り傷が傷痕すら残さず消えたことでシャーリーもリヴァルも目をむいていた。

 ギアスについては、ジェレミアを呼び、咲世子にビデオ撮影をさせた上で、三人に『俺を殺せ』と命令し、有無を言わさず飛び掛かってきた三人のギアスをすぐにジェレミアに解除させた。

 この場にはナナリーも同席させ、映像を見せた三人と同様に夢を見ているかのように目を丸くさせていたのだ。

 

 だが、これは諸刃の剣でもある。万が一、ナナリーとソフィも含めた5人が敵の手に囚われた場合、利用価値のあるナナリー以外に待っている運命は簡単に予想が付くだろう。

 過去においても、ルルーシュの正体を知らなかったから記憶改変だけで済んだのだ。シャーリーが無事だったのも、ギアスによってゼロに関する情報を失っていたからだ。

 だが、自分が知ってしまっていて、C.C.が側に居る以上、必ず敵の手は伸びて来る。そして、シャーリーのように知らなくても良い事まで知ってしまう可能性は否定できず、自然と巻き込まれる可能性はいくらでもある。

 だからこそ、彼等は危険を承知で全てを話し、彼等はそれを受け入れたのだ。

 

 本当だったらニーナにも事情を話したかったが、ニーナは日本に来てすぐに日本人に乱暴され掛かっているため、日本人との協力は困難だろう。

 彼女が生み出した兵器自体は恐ろしいモノだが、彼女の研究成果までを否定するわけにもいかないため、フレイヤの真実を話すことも味方にすることも今は様子を見ている。

 

 仲間はずれにするのは心苦しいが……。

 

 

「まあ、ルルーシュの気持ちに変わりは無いというのは分かったよ。俺も、これでも腹は括っているしな。それで、具体的な手段は? 俺達には武器すら無い状態だぞ?」

 

「その辺りはルーベンとジェレミアが動いている。ジェレミアが用意してくる戦力はとんでもないぞ?」

 

 

 そんな話をしているウチにトロッコ列車へと辿り着く。列車を守っていたリヴァルとニーナのルームメイト二人が安堵した様子が見てとれる。

 過去において、ソフィと同様に味方と知らずシャルルの手で消されてしまった者達だが、彼等もまたルルーシュにとっては守る対象となっている。

 

 

 アッシュフォード学園は、ミレイとルーベンが作ったルルーシュのための城であり、聖域であったのだが、今となってはルルーシュが守るべき聖域へと姿を変えている。

 同時に、彼が帰ってくる場所としても。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 ルルーシュ達が最初の“戦場”へと赴いた時、ルーベンもまた一つの戦場へと足を運んでいた。

 

 

「貴公が我らの元へ足を運んでくるとは珍しき事よ。雛鳥たちに何かあったのか?」

 

 

 座敷に座す禿頭の老人が試すような笑みを浮かべてルーベンに対し口を開く。

 桐原泰三。戦前枢木玄武政権のフィクサーとして、政戦両面で工作していた「老怪」である。

 元々、六〇年前の大戦を経験した陸軍参謀でもあり、戦後軍を退役して桐原産業を創設。軍部を通じての世界中に人脈を張り巡らせ、経済を支配した人物であったが、七年前の対ブリタニア戦争に関しては、圧倒的な国力の差をどうすることも出来ず、結果として国を売り渡す形で敗戦に導いていた。

 

 それ故に、彼を知る多くの人間からは「売国奴」と罵られている。

 

 過去において、接点が無かった二人であるが、この世界において、ルーベンはブリタニア産業界に影響力を持ち続けているのは彼との関係が大きい。

 とは言え、こう言った形での顔合わせは極力行わず、互いのブレーンを派遣しての事であったが。

 

 

「篠崎を通じて話してあったはずだ。雛鳥はすでに我らをも飲み込む巨獣となっていたのだ」

 

 

 だが、桐原としてもルーベンの影響下にある皇子と皇女に利用価値があるかと言えば否となる。

 人質としての役に立てず、ルーベンに保護されなければ生き長らえたかも分からない。

 だが、一度枢木神社にて顔を合わせた際の強い眼光だけは今も桐原の脳裏にある。

 

 

「口伝だけではなんとも言えぬな」

 

「ふむ。では、これは?」

 

 

 しかし、本来であれば敵対する者同士、腹の探り合いは日常である。

 そして、ルーベンが差し出してきた複数の設計書。それに桐原は目を剥く。

 

 

「なっ!? こ、これはっ!?」

 

「インド軍区に密かに開発させている最新鋭KMF。日本にとって切り札となる機体だったな」

 

「お主、なぜこれを? 篠崎か?」

 

「まさか。先ほど申したであろう、雛鳥はすでに巨獣となっていたと」

 

「なんと……。となれば、我らの地下工作も?」

 

「それどころか、中華連邦への内通事項、ブリタニア主義者との結託、さらには第一皇女ギネヴィア派との秘密協定すら、私の耳には入っているよ」

 

「…………馬鹿な」

 

「すべては、お主の脳みその中にだけある情報であったな。澤崎も片瀬も無様なモノだ。来たるべき英雄の登場の際には、生け贄として捧げられる存在だというのに」

 

 

 この辺りは、過去においてルルーシュが皇帝就任後のブリタニア機密を解読したモノであり、その解除コードはルルーシュの脳裏に刻まれている。

 桐原の工作のほとんどは、彼がブラックリベリオン後に受けた拷問にて引き出された情報であり、彼も他の六家当主達も、処刑される際にはすでに人で無かった。

 そこまでの事をルルーシュはルーベンに話したわけでは無いが、ルーベンぐらい老獪きわまると、夢物語であろうともある程度の察しは付いてしまうのである。

 

 

「残念だが、その英雄はすでに先年死した。藤堂も所詮は現場の軍人。英雄たる資質は無い」

 

「唯一と言っても良い存在は、自ら手を汚し、ブリタニアに尾を振る始末。というのも加わるな」

 

「ふん……っ」

 

 

 桐原も破滅した国家を蘇らせる象徴の存在を否定しない。だが、愛国者に仕立て上げた枢木玄武の息子はブリタニア軍に身を投じ、紅月ナオトはすでに亡く、藤堂鏡四郎は解放戦線という檻に囚われたままだった。

 

 

「だが、悪くは無かろう? 英雄はこちらから提供する。それはブリタニアを焼き尽くし、やがてはブリタニアを復活させるであろう。そして、お主等は処分に困る英雄が勝手に消えてくれる」

 

「だが、今は翼をもがれたままだ」

 

「うむ。だからこそ、その翼を提供してもらいたい。と言うのが我らが主の言葉だ」

 

「はじめから、儂を信用するというのか?」

 

「『桐原公には返しきれない恩がある』とは我が主君の言葉だ。どう言う意図かは分からんがな」

 

「ふむ……。儂は枢木に荷担して彼の者を苦しめた側だったと思うが」

 

「その通りですね」

 

 

 そして、老妖怪同士の対話に、一つの声が加わる。メイドの力を借りではあるが、ゆっくりと室内に入ってくる車椅子の少女。

 桐原は、大きくなったモノだと成長という観点からのみナナリーを観察していたが、一つ異なる点を発見した。

 

 

「これは、ブリタニア皇女ナナリー殿下。しかし、貴方は目が」

 

「はい。つい先日まで、光を失っておりました。ですが、今はこうして」

 

「ふむ。ルーベンよ、どう言う風の吹き回しだ?」

 

 

 桐原はナナリーが現れた意図を探るが、どうにも答えは出て来ない。

 

 

「桐原公。私はお兄様からの貢ぎ物ですわ」

 

 

 しかし、ルーベンが答えること無く、ナナリーがそれに応じる。

 曰く、自分の存在を桐原に伝えること。加えて、誰か信頼の置ける部下をナナリーの側に送るように提案すること。手元に置かせるわけにはいかないが、生殺与奪権だけは与えるとのことである。

 

 

「ふむ、だが貢ぎ物としての価値があるのかね?」

 

「お兄様がアッシュフォード家の宝に止まらず、自ら立ったのはひとえに私のためですわ。桐原公」

 

「あなた様の?」

 

「ええ。私に変事があれば、お兄様は全てを捨てて助けに来ると。つまり、私の命はお兄様の命と同じだけの価値。それを貴方に預けると言うことですわ」

 

 

 もちろん、お兄様と桐原公がお会いするまでの間ですけれど。とナナリーは笑みを浮かべて告げる。

 端から見ると、一方的な子どもの戯れ言である。だが、ルーベンもまた止める様子も無く、本気でナナリーの存在価値を肯定していた。

 キョウトに預けるのでは無く、身柄はアッシュフォード学園にあり、裏切りの際に処断するモノを同行させろと言う。

 

 むしろ、人質を取られるのはこちら側では無いか?とも桐原は思う。

 

 

「桐原公。こちらの提案に疑問を持たれるのは当然ですわ。ですが、私どもとしても、貴方の協力は必須。その気になれば、日本の姫をもらい受けることも視野に入っております」

 

「っ!?」

 

 

 ナナリーがそう告げると、先ほどのメイドが衣服を脱ぎ、同時に闇の中から影が躍り出ると周囲に控えていた護衛や桐原本人の間合いへと暗器に手を掛けながら入り込んでいた。

 

 

「篠崎の手の者か。彼奴め」

 

「荒々しい手段を執ってしまい、申し訳ありません。ですが、私たちには時間もあまりないのです。脅迫という誹りもお受けしますが故、お兄様に翼を授けてくださいませんか?」

 

 

 装束から、忍びの末裔であり、要人警護のプロ集団である篠崎流。

 

 現当主、篠崎咲世子は名誉ブリタニア人として、アッシュフォード家に潜入させていたが、いつの間にか取り込まれてしまったらしい。

 とは言え、忍びというモノは極めて現実的に物事を見つめる。己が身体は道具の一種であり、危険を察すればあっさりと身を引き、必要なことは躊躇わず実行する。

 それらの現当主である篠崎咲世子が眼前の少女、ナナリー・ヴィ・ブリタニアとその兄、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアに靡いたと言う事は、日本の解放を託せるだけの存在と判断したのであろうか?

 

 

「ナナリー様は篠崎咲世子とも懇ろでありますのかな?」

 

「はい。お兄様が留守の時は咲世子さんの助けを借りて今日まで過ごしてきました」

 

「……ふむ、了解した。では、ナナリー様。兄君への支援。あくまでもキョウトでは無く、儂個人のモノとして致しましょう」

 

「それでは?」

 

「貴方の命を担保する必要はござりませぬ。あくまでも、儂の投資にございます」

 

「しかし、それでは」

 

「なに、篠崎流を味方に付けている人間の命を奪うなど、儂には恐ろしくて出来ませぬよ」

 

 

 今でこそ、護衛の流派であるが、その神髄はまさに忍び。ともすれば、暗殺や謀殺と言った手管は元より、傀儡として支配された者も記録には存在する。

 おそらくは、過去にギアスを用いた者が居たのであろうが、桐原のような現実主義者にそのような夢物語は通用しない。

 ルルーシュもまた、真相を全て話す必要は無いとナナリーには言い含めてあった。彼との間に隠し事は不要とも。

 

 

「桐原。こちらも持っていってくれ」

 

「…………っ、これは……だが、お主にとっては命よりも大事であろう」

 

「マリアンヌ様は八年前に亡くなられておる。その幻影を追ったところで変わる事は無い。それに、私が何も出来ぬまま無為に過ごした日々。それでも、実現可能な機体であれば、若き技術者達に託すことも一興であろう」

 

 

 本音は今もアッシュフォード学園に控えるガニメデに興味を示しているロイド・アスプルンドがミレイとの婚約がなった暁にはガニメデともども提供するつもりだったが、生憎とミレイは主君にご執心であり、ロイドも新世代機に掛かりきりである。

 ならば、役立つ場で生かしてやるべきだと彼は考えたのである。それが、祖国への裏切りと呼ばれるなら甘受するつもりで。

 

 

「ふうむ。よかろう……必要物資を言うが良い。すぐに手配しよう」

 

 

 そして、互いに『売国奴』としての心の内を理解した桐原もまた、それに応えるべく動く。

 彼自身は、あくまでも理で動くとしていたが、そこにはたしかな情も存在していた。

 人質としての価値しか見出していなかった幼子達が、互いを思い合いながらも目の前に現れた際に、妻帯すらせず国家と自身の栄達に身を捧げた男の心を動かしていたのかも知れない。




桐原があっさりと味方をするのはちょっと御都合主義的かなとも思いましたけど、自分の力量ではこれが精一杯です。
軍人としての過去は実在の人物の設定を利用させて頂きました。あっちはガチの売国奴でしたけどね。

毎日この時間に投稿できるよう、書き溜め等しっかりやりたいと思います。
感想などもお待ちしております。それでは。
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