コードギアス ~生まれ変わっても君と~   作:葵柊真

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第七話 狼煙

 見覚えの無い豪奢な作りの一室にシャーリーは立っていた。

 

 状況が理解できず、周囲を見回すと、どこから湧き出たのか、貴族風の格好をした老若男女が浮かび出てくるように現れ、室内を満たしていく。

 シャーリーは慌てて出てきた人間の前から飛び退くが、彼等はシャーリーには目もくれず、その後入室してきた一人の人物へと視線を向けている。

 幼いながら眼光鋭く前を見据え、周囲の人間達がひそひそと話す様を無視して、玉座の前へと進み出た少年。

 気付かなかったが、玉座には誰であろう、神聖ブリタニア帝国皇帝シャルル・ジ・ブリタニアが鎮座していた。

 シャーリーは驚きのあまり、目を丸くするしか無かったが、誰もそれを咎め立てることはせず、皇帝の前へと進み出た少年の双方へと視線を向けている。

 

 

「陛下、母が身罷りました」

 

 

 そして、皇帝をにらみ付けながら口を開いた少年の言葉。

 母が死に、妹は事件に巻き込まれて視力を失い、歩くことすら出来なくなったと告げる。

 だが、皇帝の返答は素っ気なく、それまで気丈に振る舞っていた少年は、懇願するように、なぜ母を守ろうとしなかったのか、なぜ助けてくれないのかと言うことを皇帝に対し、詰め寄るように声を荒げる。

 だが、立ち上がった皇帝は怒声を持って少年の言を否定し、彼を生きながらに死んでいると罵倒し、幼き兄妹二人で日本へ赴くよう命ずる。

 それに対し、少年は皇位継承権の返上という形で啖呵を切り、皇帝をにらみ付けてその場を去って行く。

 

 その姿を追おうとしたシャーリーだったが、少年の姿は霧散し、先ほどまでのきらびやかな雰囲気が一変、夕陽がわずかに差し込むどこか重い空気の支配する室内へと変わっていく。

 

 

「シャーリー・フェネット」

 

「えっ!?」

 

 

 はっきりと、自身の名を呼ぶ皇帝の姿に、シャーリーは抵抗する素振りを見せること無く、前に進み出る。

 

 そして、皇帝の口から出たのは身に覚えないことばかり。

 

 ルルーシュの正体。これはすでに知っている。彼が自分の口から自分達に告げている。

 だが、ゼロとは何か? そして、ルルーシュが父の死の原因を作ったと言う事実も、マオという男に翻弄された事実も、ルルーシュによって記憶を奪われたという事実も自分の記憶には無いし、ルルーシュの口からも告げられては居ない。

 

 そして、困惑する自分を見下ろす皇帝の両の目が赤く光る。

 

 

「ギアスっ!?」

 

 

 先日、ルルーシュとC.C.の口から語られた“王の力”。皇帝もまたそれを使役するのだとシャーリーは初めて知った。

 そして、その初めて口を開いた自分の声に、皇帝は驚いた様子で目を見開くと、シャーリーの意識は暗がりの中へと消えていった。

 

 

 

「変な夢を見た?」

 

 

 ルルーシュの告白以降、時折見る夢。

 

 ひどくリアリティがあり、まるで自分が経験したかのようなそれのせいで、朝の気分は最悪になる。

 当然、その様子はいくら隠そうとしてもルルーシュやミレイには見抜かれてしまう。

 

 

「そうなの。皇帝陛下の前に連れて行かれて、変なことを言われて、ギアスを掛けられちゃって」

 

「シャーリー、あの男に敬称なんか付けなくて良い」

 

「気にするところはそこなんだ」

 

 

 シャーリーの言に、ルルーシュは眉をひそめ、吐き捨てるように言い放つ。どうあっても、彼は父親のことが好きになれないらしい。

 話を聞けば当たり前だし、シャーリーとしては父親が普通の人で良かったと思っている。

 

 

「ギアスの事か? まあ、それは分かっているからな。“記憶改変”。これがヤツのギアスだ」

 

「なんて都合の良いギアスだよ……」

 

 

 シャーリーの苦笑いに、ルルーシュは皇帝のギアスに関してあっさりと告げる。記憶改変。皇帝のような権力者にとっては、政敵すら味方に変えてしまえるであろうギアス。

 たしかに、リヴァルの言うように都合の良いギアスだとシャーリーは思った。

 

 

「対処法はあるからな。前にお前達に渡したコンタクト。それさえしておけば問題は無い。ルルーシュのギアスもな」

 

 

 ソファーに寝転び、ピザを頬張るC.C.がそれに答える。

 なぜかアッシュフォード学園の制服を着ているが、それについては無視するしか無い。

 先日もミレイから編入手続きをしようかと持ちかけられたが、面倒くさいの一言で一蹴してしまっている。

 ルルーシュ曰く、千年も生きている魔女が勉強なんかいらんだろう。との事であったが、話を聞いていると、C.C.の知識の深さには驚かされる。

 ぐうたらな面しか無い見せないようで居て、何でもこなせるとも聞いていた。

 

 

「はあ……」

 

「大丈夫か……と、聞くだけ野暮だったか」

 

「寝覚めが悪いのは今日だけだから大丈夫だよ」

 

 

 と、深いため息を吐いたシャーリーに対して、ルルーシュが声を掛けてくるが、このため息は寝不足等々より、シャーリーが勝手にライバル認定しているC.C.のスペックの高さに対するそれであるため、シャーリーも慌てて取り繕う。

 

 ただ、ルルーシュの意図はそれだけでは無かったようだ。

 

 

「無理はするなよ? むしろ、明日はナナリーと一緒にここに残っても」

 

「それは、大丈夫だよ。ルルに協力するって決めたんだから、危ないことだってやらなきゃっ!!」

 

 

 ルルーシュに協力を申し出てから一週間。授業や部活の合間にジェレミアやヴィレッタからKMFの教導は受けている。

 もちろん、実戦経験なんて無いわけだが、協力すると言った以上は、一緒に戦いたいのが本音だった。

 

 

「その気持ちはありがたい。だけど、本当に無理だけはしないでくれ」

 

「うん。ありがとう」

 

 

 しかし、その様子をルルーシュは喜ぶわけでも無く、むしろ巻き込んだ事への後ろめたさが見え隠れする表情を浮かべる。大丈夫だといっても、結局は心配してしまうのがルルーシュの性分であるし、それをシャーリーは理解しているため、特に否定も肯定もしない。

 

 

「にしても、俺も似たような夢を見たんだよなあ」

 

「リヴァルも?」

 

「私もよ? って言うより、これがルルちゃんの言う巻き込まれた結果だったりするんじゃないの?」

 

「あ……」

 

 

 そんな二人の空気に対し、リヴァルが苦笑いしながら口を開く。

 どうやら、リヴァルもミレイも似たような夢を見た事があるらしく、ミレイの言には皆が納得する。

 

 

「有り得るだろうな。シャルルからしたら、ギアスなんぞを知られたらたまらんだろうし、ルルーシュの過去を徹底的に破壊することもやるだろうよ。アイツは本当に根は子どもだからな。欲望に際限が無い」

 

「怖いね……。そう言えば、皇帝陛下と一緒にナイトオブワンも居たんだけど、リヴァルのお父さんってナイトオブワンに似てない?」

 

 

 旧知であるというC.C.の言葉には真実味があり、ただでさえ、現実に迫っている戦いを前にシャーリー達は背中が寒々しくなってくる。

 やはり話題を変えようと夢のことを話そうとしたシャーリーは、無表情に皇帝の傍らに控えていた帝国最強の騎士の事を思い返す。

 

 

「おいおい、シャーリー何言ってんだよ??」

 

「でも、前に見せてもらった写真だと。でも、入学式の時は普通のおじさんだったよね」

 

「だろ? 本国で役人やってるし、案外そっくりさんとして仕事相手を脅したりしているかもなあ」

 

 

 リヴァルもシャーリーの思いがけない攻撃に苦笑いで返すが、実際のところは笑えない話でもある。

 先日の電話で、自分は軍人だと言い切った父の言葉は、普段よりも重々しかったように思えていたのだ。

 

 

「リヴァル、それは笑い事じゃ無いかも知れないぞ?」

 

「ルルーシュまで何言ってんだよ」

 

「ビスマルクがリヴァルの父というのは無理があるだろうし、俺の姿を見て放っておくわけが無い。だが、似ていると言うのは色々と利用価値があるんだ。しかも、役人だろ? 影武者として利用されないとも限らないぞ?」

 

 実際、ルルーシュも入学の際にリヴァルの父親を垣間見ていたのだが、たしかにビスマルクに似ているとも思っていた。

 ともすれば、ビスマルク本人かも知れないという事も。彼自身はラグナロク接続によって、ルルーシュはシャルル達と再会できることを知っている以上、命令が無ければ動かない。という認識もある。

 とは言え、親友の父親が最大の敵の一人とは思いたくも無いため、その可能性は排除していた。

 仮に、本人だったとしても、ビスマルクはリヴァルを巻き込むこと無く、あくまでもナイトオブワンとして自分の前に立ちふさがるだろう。とも。

 

 

「ナイトオブワンが民間人を盾にするような事に納得するかしらねえ?」

 

「シャルルはともかく、ビスマルクは個人としてはまともな男だったからな」

 

「あの皇帝に心酔している時点でまともとはいえんと思うが」

 

 

 大真面目な表情でリヴァルの父親のことを心配するルルーシュであったが、ミレイもC.C.もそれはどうかと応じる。

 帝国の首脳を捕まえて笑いのネタにしてしまうこの場の雰囲気は異質なモノなのかも知れないが、それでもシャーリーはルルーシュが本当の意味で心を開いていてくれていることに安堵していた。

 それまでの、どこか影のある彼の行動の真意を知れたのである。そして、いくつかの夢はおそらくは彼がまだまだ秘密にしていることに繋がる何かなのだともシャーリーは思っていた。

 

 

「失礼いたします。ルルーシュ様、各地の手の者より連絡がございました」

 

「ありがとうございます。咲世子さん」

 

「いえ。万事手抜かり無く、用意できております」

 

「よし。みんな、聞いての通りだ。いよいよ明日が決行の日だ」

 

 

 その時、音も無く生徒会室にやって来た咲世子の言葉に、ルルーシュは静かに肯くと、端から見ても禍々しさのある笑みを浮かべて全員を見返す。

 その表情にシャーリーは身震いしつつも、表情を引き詰めてそれに肯く。

 目の前の少年を一人にはしない。自分は最後まで共にあると決めたのであるから。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 シンジュク事変からまもなく一週間が経過しようとしていた。

 

 事件により壊滅したシンジュクゲットー。その復興は遅々として進まず、生き残った者達には先の見えぬ状況に暗き表情を浮かべる日々を過ごしていた。

 そして、その状況を嘲笑うかのように繁栄の日々を過ごすトウキョウ租界とその栄華の中心にあるエリア11政庁。

 その中の一室。総督が出席する際の大会議室では、とある事情への成果が上がらぬまま一週間が過ぎたことを原因とした重い空気が支配していた。

 

 

「さてさて、どこかの誰かさんが騒ぎを大きくしたせいで、コードRは発見できず一週間。租界中をみんなで探し回っても見つからない。一番怪しいと思ったアッシュフォード家領も空振りと来た」

 

「も、申し訳ありません」

 

 

 行儀悪く椅子に腰掛けるヴィクトルの嫌味のこもった声に、捜索隊の指揮に当たっていたバトレーは流れる汗を拭きながら頭を下げる。

 

 

「まあ、君は単純に尻ぬぐいしただけだ。よけいな命令を出して騒ぎを大きくした誰かさんのね」

 

 

 バトレーの謝罪を不機嫌なまま聞いたヴィクトルは、会議室内の最上位席に座るクロヴィスへと横目を向ける。

 その視線をクロヴィスもまた冷や汗とともに受け止める。コードRを盗み出したテロリスト達はほとんど捕縛できたが、肝心のそれは見つからぬまま。

 租界の外に出てしまえば、発見することはまず不可能だろう。各ゲットーでも捜索を進めているが、結局は余計な破壊行動に出るため、イレブンの協力も得られぬまま。

 ここに来て、ジェレミアが主導する融和方針を否定し、純血派主導の管理方針を採ってきた事が悪い方に作用してしまった。とクロヴィスは頭を抱える。

 ジェレミアの言い分もさすがに主義者の主張に近く、採用するのは難しかったが、その辺りは柔軟に対処すれば良かったのだ。

 

 

「まあいい。強行手段を執るにも今となっては手遅れだろうし、僕もまさか日本中を草の根分けてまで探すのは無理だ。とは言え、失態を取り返す努力はしてほしいものだね」

 

「キングスレイ卿、いくら何でも上から言い過ぎ」

 

「はいはい。まあ、僕もさっさと戻って来いって怒られちゃったからねえ。面倒なことをやってくれた連中には相応の報いを与えるべきじゃないかい?」

 

 

 この場における形式上の最上位者はクロヴィスであったが、事実上の上位者はヴィクトルである。とは言え、それも行き過ぎるのは皇帝の品位を傷つける。

 と言う一点のみでアーニャが彼を窘めるも、ヴィクトルは肩をすくめるだけでさらなる提案を行う。

 

 

「テロリストどもの処断を行うと?」

 

「どうせ死刑だしね。なんなら、ガス抜きもかねて派手にやれば良いんじゃない?」

 

 

 ジェレミアの言に、ヴィクトルは否定すること無く答える。

 シンジュク事変において、全滅したクロヴィス親衛隊。彼等は一度コードRを捕捉している。それを処分したとの報告を受けてはいたが、コードRの特殊性を考えれば、あの場で死んだはずも無いし、遺体も見つかってはいない。

 かといって、人の足でこちらの捜索網を抜けることもほぼ不可能。となれば、親衛隊を全滅させたテロリスト達に匿われている可能性がある。

 ヴィクトルはそう言いたいのだろうと、ジェレミアや他の者達も予想が付く。そして、仲間が処刑されるとなれば、テロリスト達は必ずやってくると。

 

 

「残党も捕らえられれば、行き先を引き出すのはたやすい。イレブンの、それもテロリストなどに慈悲なんて無いからね」

 

 

 そう言って笑うヴィクトルの表情には、これと無い愉悦が浮かんでいた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 処刑台に並んだレジスタンスの顔ぶれにルルーシュは眉をひそめる。

 

 それをバックに演説を続けるクロヴィスはさすがに芸達者な面を見せ、犠牲になった人間への哀悼を抱かせる。

 もちろん、シンジュクでの犠牲は彼等レジスタンスによるモノでは無く、当のクロヴィスの命令に従ったブリタニア軍によるモノ。

 その真相を知る人間は、今この場に居る者達だけ。多くはクロヴィスの演説により、テロリストに、イレブンに対して怒りを抱いていく。

 当のイレブンの側もまた、余計な反抗をしたレジスタンスに眉をひそめ、反抗を続ける人間達に怒りを抱く。

 

 

「とんだ喜劇だな」

 

 

 その映像を見ていたルルーシュは苛立ちを覚えるわけでも無く、その滑稽さを鼻で笑う。

 

 

「笑っている場合かよっ!! アイツらはこのまま、日干しにされて今日の夜には処刑されちまうんだぞっ!!」

 

「玉城うるさい」

 

「井上だって、うおっ!?」

 

「学園内ではお静かにお過ごしください」

 

 

 騒ぎ立てる玉城を井上が窘めるが、さらに叫き散らそうとする玉城の首筋に、良い笑顔を浮かべた咲世子がクナイを突き付ける。

 ジェレミアより情報提供を受けたルルーシュは、カレンに連絡を取り、玉城と井上も掃除業者を装って学園内に招いたが、さすがに叫き散らされては敵わない。

 

 

「状況を考えなさいな。どう見たって誘われているわよ」

 

「総督はC.C.さんを探している。そしてその行方を知っているはずのお兄様達のこともまた」

 

 

 そんな玉城に対し、ミレイが普段の朗らかさを凍結させて口を開き、ナナリーはナナリーで玉城のことを無視して状況を推測する。

 二人の視線に玉城はばつが悪そうに黙り込む。彼自身、扇達の身を按じており、気が急いているのだが、この場においてはあくまでも客人である。

 居心地の悪さからも声が大きくなるのだろう。

 

 

「で、何か作戦があるんじゃないの? だから、私達を呼んだんでしょ?」

 

 

 とは言え、ただこの場で映像を見せるために呼ばれたわけでは無い事もカレンは察している。

 今は学園の生徒の姿であるが、病弱を装う事はせず、この場に身を置いており、鋭い視線をルルーシュに向けてくる。

 

 

「もちろん、そのつもりだ。今日まで動かなかった事も含めて意味はある」

 

 

 カレンの言に、いつもの大仰な姿を持ってそう答えたルルーシュは、パソコンの前に座っているシャーリーに手を上げ、合図を出す。

 

 

『困ったことになったねえ、バトレー。アレが表に出たら、私は失脚だよ』

 

 

 すると、先ほどまでの演説の映像が切り替わり、それは先日のシンジュク事変の際のG1ベース内の様子が映し出される。

 そこでは、自身の失態を知る何かの証拠を隠滅するべく、ゲットーの殲滅を命ずるクロヴィスの姿が映し出される。

 そして、それに応えて、まるで虫けらの如く日本人を殺戮していくブリタニア兵達の姿。さらにそこから、ゲットー各地での殺戮映像が延々と流されていく。

 

 

「毒ガスを撒いていたら、こうなっていたのか??」

 

「多分ね」

 

 

 その光景を見て、呆然とする玉城の言に、井上が視線を背けながら答える。彼自身、軽率な行動で仲間を負傷させ、さらには多くの仲間が捕らえられる原因を作っている。

 さらには、毒ガスを使用してブリタニアに対する復讐が出来るとも安易に考えている節があった。

 

 

「だが、そう考えるのが“ヒト”と言うモノだ玉城」

 

 

 そう告げたルルーシュの言に沿って再び映像が切り替わる。それは、租界内部からトウキョウ周辺のゲットー各地の様子が映り、映像に困惑する市民の様子が映り込んでいる。

 

 

「そりゃそうだよなあ。今までテロリストのせいだと思っていたのが、自分達を守るはずのブリタニア軍がやっていたんだし」

 

「きれい事を並べても、いつ自分達に矛先を向けられか分からないって言うのが現実になっちゃったからね」

 

「それ以上に、クロヴィスお兄様が隠し立てしたかったことが何だったのか。それに注目が集まりそうですね」

 

「ふふ、それがこの極上の美女だったとすれば、さぞかし話題になるだろうがな」

 

 

 各々が自身の意見を述べる中、状況は動き始める。

 

 クロヴィスの演説を中継するために駆け付けてきた記者や報道陣は先ほどの真相を問い掛けはじめ、バトレー等はマスコミ各社に報道規制を敷くよう命令に走る。

 だが、現場に居るジャーナリストを抑えることなど出来はしない。バトレー等の妨害も無視して、クロヴィスのコメントを求めて詰め寄る記者達。

 それに対し、クロヴィスは先ほどまでの貴公子然とした振る舞いから引きつった表情を浮かべて彼等をにらみ付ける様が報じられ続ける。

 

 

「これで、しばらくの間、総督府はパニックになるだろう。さて、行くとしようか。ジェレミア達が待っている」

 

 

 その状況に、不敵な笑みを浮かべたルルーシュの言に、室内の者達は立ち上がる。

 

 

「ソフィ。ナナリーをよろしく頼む」

 

「はい。お任せください」

 

「お兄様、そして皆さん、どうかご無事で」

 

 

 さすがにナナリーを戦場に伴うわけには行かないため、臨時の指揮所として定めた理事長室にてルーベンとともに全体の状況を見極める。

 戦力として貴重なソフィだったが、咲世子を伴う以上、ナナリーとルーベンの護衛は必須でもある。G1ベースの奪取がなれば、ナナリーも伴えるようになるのだろうが、今は無い物ねだりでしかない。

 

 

「シャーリー。殿下、いや、ルルーシュ君に認められるように頑張ってねっ」

 

「ちょ、ちょっとソフィ」

 

「相手が居る前で言うか? まあいい。行くぞみんな」

 

「おうっ!!」

 

 

 そして、初陣へと赴くシャーリーに、ソフィはルームメイトの顔に戻って和やかにそう告げる。

 シャーリーの好意も自分の思いも自覚している元朴念仁のルルーシュとしては、ソフィのシャーリーの緊張を和らげようという配慮に感謝しつつも、巻き添えを食ったことに呆れる。

 だが、戯けるのもここまでだった。これが、この世界の“ゼロ”としての初陣となる。

 

 

 

 そして、自分やシャーリー達の運命もここから動き出すのだという思いを抱き、ルルーシュは再び仮面を付けたのであった。




予定より遅れて申し訳ありませんでした。休日でも中々書き溜め出来ないモノですね。

いよいよ、本格的な反逆が始まりますが、ここまで10万字も掛かってしまって申し訳ありません。

一応、感想などは一言でもモチベに繋がりますので、良かったらドンドンいただけるとありがたいです。
同時に、これまで感想を書いてくださった皆様、本当にありがとうございます。完結まで「全力で見逃しっ!!」ではなく、全力で書いていこうと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。
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