トウキョウ租界中枢に鎮座するエリア11政庁。
ブリタニアによる日本支配の中枢であったが、現状のその場は混乱の極みにあった。
テロリストのしわざとして発表されたシンジュク事変。
その膨大な犠牲者は無差別テロの犠牲者であり、実行犯達の処刑をもってその無念をすすぐ。
同時に、真実を知るレジスタンスの生き残りをおびき出して殲滅する。単純な話であるが、仲間を見捨ててしまえばそれ以上の活動は困難になることは必定。
何しろ、日本全土に点在するレジスタンスは数多くとも、その中心となる日本解放戦線のリーダー片瀬少将のカリスマ不足と連絡網の遮断によって連携面が脆く、統一した動きが出来ないという最悪の欠点を抱えている。
加えて、元々は軍属でも無い素人集団であるため、グループ内での仲間意識が強く、仮に仲間を見捨てるなどと言う行動を取った生き残り達は、その時点で各地のレジスタンス勢力からは爪弾きにされてしまう。
だからこそ、待ち伏せが間違いなくとも生き残り達はやってくる。そういう判断がブリタニア側には成されていた。
だが、思いがけぬ形で真相が明るみに出てしまう。
もっとも、ブリタニア人の多くは日本人=イレブンの虐殺に関してはそこまで同情心を持たない。彼等は戦争に敗れた弱者であり、差別されて当然の存在。
国是としてそう定められているのだから、そう言った印象を抱くのが世間というモノだった。
しかし、今回の場合、彼等もまた残酷なテロの被害者として祭り上げられていた。
普段は同情心の欠片も無い者達に、同情心を植え付けてしまったのである。
それが真っ向から否定されたどころか、総督主導の自作自演に加え、自らの失態を隠蔽しようとした――そういう空気が作り出されたのである。
加えて、クロヴィスが記者からの取材攻勢から退散した間に映し出された光景には、親衛隊によって記録されていたとある殺害場面がクローズアップされていたのである。
それは、親衛隊に暴行されたあげく、的のように銃殺されて倒れていく少年と少女の姿。
顔だけは分からないようになっていたが、着ていたその制服がアッシュフォード学園のモノであり、ともに撃たれた少女は拘束服を着ていたことから、様々なシナリオが見ていた者達の間で作り出されていった。
結果として、総督の命令とは言え、軍はイレブンだけじゃ無く、巻き込まれただけのブリタニア人まで殺すのか?と言う声が大きくなり、一部の人間達が政庁へと押しかけてきたのである。
政庁にのみ、その部分の映像を流さぬよう巧妙に配置されたそれは、咲世子率いる篠崎流の手の者達とルルーシュのギアスによる関係者を利用した工作であった。
ジェレミアは、その光景をコックピット内から静かに見下ろしていた。警備と処刑に関しては、“純血派”の手に委ねていたが、教導の責任者として、処刑場となる練兵場に詰めていると総督に申し出、同じく万一に備えて待機するアーニャの機体を並べている。
『純血派が慌ただしく動いているけど、良いの?』
「私達は形式上は部外者だからな」
デモのような形で政庁に押しかけた市民に対する警備や交通の混乱にも軍隊は対応に追われる。
基本、エリアの統治は軍部主導で行われるため、このような緊急事態では当然駆り出されていく。
さらに、SNSなどを根源としたデマが流れ飛び、その混乱への火消しにも動かねばならなかった。加えて、それを嘲笑うかのように租界内部が停電を起こし、混乱がさらに広がる。
これは、民間の住宅地を中心に狙った工作であり、事故などに繋がりかねない公共機関の電力はそのままである。そのため、停電を原因とした混乱に関しても、政庁と民間人とでは認識に差が出ていた。
『ジェレミア卿、我々も事態の沈静に出動いたしますが、よろしいですか?』
「もちろんだ。ヴィレッタ、君は君の職責を果たしたまえ」
『はっ。それで、テロリスト達は……』
「私達に任せておきたまえ」
そんな状況を見つめていたジェレミアの元に、ヴィレッタからの通信が入る。この世界にあっては、キューエル率いる純血派に属すわけでも無く、教導武官のジェレミアに近い立場に置いている。
とは言え、はじめは他の軍人と同様に日本人に対する差別意識は強かったのだが、純血派と別路線をいくよう指導した結果、優越意識はあっても差別意識までは持っていない。
シンジュク事変の際にも、民間人の救援などを巡って純血派や親衛隊と悶着を起こすぐらいには中立の立場になっている。
そして、ジェレミアの記憶にある事だが、今回捕らえられたテロリスト達の中には、あの男が居たことも大きいだろう。
「ヴィレッタ。尋問などの嫌な仕事もさせてしまったが、それは今回限りだ。済まないことをしたな」
『……意図は計りかねますが、ジェレミア卿。私はあくまでも軍人としての職責を果たし、出世することだけが目的です』
「はっきり言うようになったな……。まあ良い、後の事は任せたまえ」
それとなく、ヴィレッタにかまを掛けてみたが、やはり誇り高き女であるヴィレッタには軽くかわされてしまっていた。
『それで、本当に来るの?』
「当然だ」
『上手く負けろって言うのはちょっと腹立つ』
「そう言うな。今日が初陣の者達だ。私達が死なせるわけにはいかん」
アーニャの言は、今回の救出作戦の際に、リヴァルとシャーリーが初陣となる事に関してである。
ジェレミアの乗るグロースターとアーニャの乗る試作ヴィンセントが二人を相手取り、倒さない程度かつ本気で殺しに掛かっているように戦えというのがルルーシュからの指示である。
基本的に、どんな才能があっても鬼門となるのが初陣である。
これを超える事で一人前の扉をくぐることになるのだが、同時にその手前で死ぬ人間も多い。
この世界にあっては、ジェレミアは二人やミレイにもKMFの教練と称して指導を行ってきたので、搭乗に関してはそこいらの一般人よりはこなせるし、下手な軍人よりは上手く動かせるぐらいには二人とも才能はあった。
だが、それだけでどうにかなるわけでは無いのが戦場である。そして、ルルーシュはジェレミアが相手だというのを教えてはいない。
純血派や警備のKMFも練兵場には居るが、それらに手を出させないように戦うぐらいはジェレミアとアーニャには容易い。
他の機体は紅月カレンの獲物となってもらう予定にもなっているのだ。
過去においては、シンジュクにて対峙した両者だったが、この世界においてはジェレミアは偽装の為に何度か彼女とぶつかり合っている。
と言うより、彼女のグラスゴーの片腕を破壊したのはジェレミアである。何度も交戦する中で、手を抜く余裕が無いぐらいまで彼女の技量は完成している。
いまだ、彼女の愛機紅蓮は完成していないが、ナナリーに絆された?桐原が試作機を送ってきたと聞いており、クロヴィス軍が相手ならば紅月の敵では無いと言うのがジェレミアの見解だった。
「そろそろだな」
そして、まもなく予定の時刻を迎えようとしていた。
◇◆◇◆◇
トロッコ列車を降りた先は、政庁内部の使用されていない倉庫へと繋がる通路である。
先頭を行く咲世子が、外に出ると、巡回していた二人の兵士の背後に音も無く近づき、首筋にクナイを突き立てる。
声を出すことも出来ず倒された兵士達。その死体を目にしたシャーリー達は思わず目を背ける。
「目を背けるな。これを、この先何度でも目にすることになる」
シャーリー達に対して、冷淡にそう言い放ったルルーシュは、改めて仮面を被り直し、ゆっくりを格納庫へと向かっていく。
木を隠すならば森にと言う事であろうか、不使用の倉庫とは稼働していないと言うだけであり、予備の機体が出撃の時を待っている。
そして、それらは肩口をオレンジ色に塗装されたサザーランドと、キョウトより提供された無頼が数機。
そして――。
「これが?」
「現在、キョウトが全力で開発を勧めている純日本製KMFの試作機だ。これは一般的なブリタニア仕様に近い設計でな。グラスゴーに近い感覚で使えるぞ」
倉庫内に入り、カレンを連れて行くルルーシュ。
最奥に置かれたそれは、塗装もされていない状態であったが、それが余計に武骨さを醸し出している。
「へえ? ずいぶん大盤振る舞いしてくれるじゃない?」
「俺は信用されているからな。よし、KMF班は全員乗り込めっ!!」
新鋭機という事で機嫌が良くなるカレンに対し、皮肉を込めてそう告げる。信用があったらあんなに苦労はしなかっただろうと思えたが、それでも桐原の配慮には感謝していた。
そして、それぞれの機体に搭乗していき、ルルーシュはC.C.とともにシンジュク事変の際に救助された復座機に乗り込む。
「打ち合わせ通りだ。咲世子さん達の仕掛けが成功したら、カレン、リヴァル、シャーリーの順に突入。玉城達は後方から三人の援護を優先しろ」
『おうよっ!! 任せとけっ!!』
「闇雲に撃つなよ? 誤射をしたら撃ち返すからそのつもりでいろ。カレン達は警備のKMFを優先して攻撃。リヴァル、シャーリーは俺達の後に付け」
『了解』
『りょ、了解』
テキパキと指示を出すルルーシュに対する返答はそれぞれであったが、シャーリーとリヴァルの声は明らかに上ずっている。
当然と言えば当然であるし、わざわざ戦場を設定したのは二人のためでもある。懸念材料はいくつもあるが、生き残ることを最優先にしてやれば良い。
『“ゼロ”様、いつでも行けます』
そして、咲世子からの合図と同時に、全員のKMFがうなりを上げる。
同時に、練兵場へと続く壁が音も無く亀裂が入り、崩壊を始める。咲世子の部下には、様々な技能を持った精鋭であり、発破の技術に優れた者が仕掛けを作っていたのだ。
「よし、カレンっ、行けっ!!」
『弾けろっ!! ブリタニアっ!!』
言うや否や、カレンのKMFが地面を蹴ると、壁に対して跳び蹴りを見舞う。
試作機であるため、切り札となる「輻射波動」は装備されていないが、それでも機動力や破壊力は後々の紅蓮のベースとなるだけのモノはあり、彼女がこれまで搭乗していたグラスゴーよりも遙かに優れる。
壁の位置は処刑台のちょうど背後になる。ゲットー方面は広く開かれており、攻撃を想定すると当然のようにそちらの守備が厚くなる。
もちろん、背後からの奇襲も想定するべきだが、その背後には政庁があり、敵が来ることまでは普通は想定できない。
だからこそ奇襲が成り立つわけだが、今回は事実上の指揮官であるジェレミアがこちらに内通しているから余計に意識は向いていなかった。
「て、敵襲っ!!」
そして、カレン機による破壊音に唖然としていた1機が破片ごと叩き潰され、敵襲を周囲に叫んだ一機もあっさりと切り伏せられる。
『す、スゴい』
「シャーリー、見ほれている場合じゃ無いぞっ。C.C.、上手くやってくれ」
「分かっている。まったく、なんで私まで」
「お前はエース級と渡り合える腕というのは知っているぞ? どうせ、母さんの相手でもさせられていたんだろ?」
「……行くぞ」
カレンの動きに圧倒されたようなシャーリーの声が届く。だが、見ほれていては真っ先にやられてしまう。そのため、ルルーシュはC.C.にシャーリーとリヴァルを補助するような機動を取るよう話を付けてあり、当人は火器管制と指揮に集中していた。
(ジェレミア、アーニャ。頼むぞ)
とは言え、それもジェレミアとアーニャが二人に襲いかかるまでのことである。普段から時間のあるときにジェレミアの指導を受けている二人だからこそ、ジェレミアの教本通りの動きには付いていける。
アーニャはアーニャで、格下相手に倒さず戦うことなど造作も無いことだろう。
と、そんなことを考えていたルルーシュの脇をリヴァルの搭乗するサザーランドがすり抜けていく。
「リヴァルっ!? 無茶をするな」
『大丈夫だって。任せてくれっ!!』
予想外の事態に目を丸くするルルーシュだったが、リヴァルはなおも混乱する警備隊のグラスゴーをあっさりと撃破すると、純血派と思われるサザーランドの砲撃をあっさりとかわし、そちらも砲撃で追い払う。
その動きはまるでベテランのようであった。
『ルルーシュ様、いかが致しますか?』
「万一のことがある。上手く見守ってやってくれ」
『御意っ、むっ!? 私に挑んでくるか、リヴァル君』
そして、リヴァルの予想外の動きに圧倒されていたのはルルーシュだけではなく、ジェレミアも困惑しつつ、秘匿通信を入れてくる。
だが、そんな心配もどこそこに、リヴァルはなんとジェレミアの乗るグロースターへと躍りかかっている。
(初陣の高ぶりから来る暴走か。これが1番怖いと聞くが)
それでも、ジェレミアのグロースターが繰り出すランスを淀みなく躱し、砲撃を加える様子には暴走している様子も無く、冷静に敵を潰すべく動いている。
さすがに、ジェレミアに傷を付けることは難しいようだが、これだけの動きであるとジェレミアは逆にやりやすそうでもある。
今も、リヴァルの動きを利用して、純血派の機体をフレンドリーファイアで潰している。
「おい、暇そうにしているヤツが来るぞ」
そう言ったC.C.の言と同時に、アーニャの試作ヴィンセントがランスを振るってくる。こちらもトンファで止めるが、それ以上の攻撃はせずに、じりじりとつばぜり合いのように接近してくる
『ルルっ!?』
『こっちはどうするの?』
「そのままだ、俺達の機体をなぎ倒してシャーリーを守ってくれ」
『わかった』
シャーリーの心配する声が届くが、それには答えず、アーニャの秘匿回線に答えると、ルルーシュの言葉通り、ルルーシュ達のサザーランドはごろりと転がされ、アーニャ機はシャーリーの機体へと向かう。
『きゃあっ!!』
鋭く繰り出されたランスを慌てて躱すシャーリーの声が届くが、それでも回避に特化して動いているため、攻撃を受けることは無い。
シャーリーには敵が来たら逃げに徹するように伝えてあり、今はそれを忠実に実行しているのだ。
アーニャもシャーリーがカレン達の交戦域に入り込まぬよう、上手くコントロールしてくれている。このまま、作戦が終了するまで行ってくれれば良いのだが、ルルーシュの中ではそう甘くないことも自覚していた。
「カレン、指揮官機は相手するな。雑魚のみを狙って潰せ」
『ルーキー二人は良いのっ!?』
「そちらに吸い寄せられているんだ。何とか引きつけさせておく」
『友達でしょっ!? 囮にする気っ!?』
「だからこそだ。君の為に二人は囮を買って出ている。だから、期待に応えろっ!!」
『っ!? 分かっているわよっ!!』
柄にも無くシャーリーとリヴァルの身を案じたカレンに対し、やや挑発めいた発破を掛ける。
すでに数機を撃破しているカレンだったが、この場に居る敵を倒しても、外に出ている機体が戻ってくれば数で押しつぶされる。
何より、特派の機体を派遣されれば、さすがにこちらは持たない。
『おらおら、どきやがれっ!!』
そんな時、処刑台の前に陣取った玉城達のKMFが正面の敵機に向けて弾幕を張るように乱射を始める。
カレンやジェレミア達が迷惑そうにそれを躱すが、突入しようとしていた歩兵達が一斉に後退を始める。
人間がKMFの砲撃を受ければたまったモノではないのだから当然でもある。もちろん、玉城達なので、有効射撃など全くないが、虚仮威しには十分である。
「ミレイ、井上、今がチャンスだ。トラックをっ!!」
『おっ任せ~!!』
『了解っ!!』
「こちらも始めるぞ。C.C.10秒で良いから、時間を稼げ」
「わかった」
そして、ルルーシュはあらかじめ用意してあったハッキングを開始する。扇達の手錠は電子制御されていることはジェレミアの伝手で分かっている。
あとは、解除コードをいじるだけで簡単に外せるようになっている。難点は、一定時間でそのコードが変化することであったが、軍ではなくクロヴィス個人の機密データにアクセスすることなど、赤子の手を捻るようなモノであった。
彼自身はやはり、こう言った政治的要素がある事は苦手なままであり、情報の管理も素人同然であるのだ。
そして、井上達の指揮の下に乗り入れたトラックに解放された扇グループが飛び乗っていく。後は、咲世子達が確保している脱出路から逃亡するだけだった。
しかし……。
「おい、なんか変なモノが来たぞ?」
「やはり来たか。スザクっ!!」
やはりと言うべきか、闇夜に映える白き姿のKMFが練兵場へと飛び込んでくる様が見える。
『真っ正面から来るってか。覚悟しやがれっ!!』
「待て玉城!! ……って、もう遅いか」
そんな白きKMF。特派の生み出した新世代機と希代のエース枢木スザクが乗り込むランスロットに対し、玉城はなおも正面から砲撃を続ける。
だが、その射線も何も無視した乱射は普通のパイロットでは逆に近づけないモノ。だが、普通ではないランスロットはそれを巧みにかわすと、正面で砲撃を続ける三機のサザーランドランドへと襲いかかる。
『やっべ!? 逃げろっ!!』
そんな様子に、危機を感じたのか、玉城達はあっさりと機体を放棄して脱出するが、ランスロットにサザーランドがまとめてなぎ倒されたのはその刹那だった。
『ルルーシュ、あれかっ!? 向こうの切り札って』
「そうだ。リヴァル、シャーリー。そいつらの相手はもう良いから、全力で逃げろっ!! カレン、時間を稼ぐぞっ!!」
ジェレミアの攻撃から飛び退き、ルルーシュ機の傍らに近づいたリヴァルは目を丸くしながらランスロットを見据える。
ジェレミアの手加減に何とか食い下がれていたリヴァルだったが、ランスロットの規格外さは本能的に理解できたのだろう。
ルルーシュとカレンがランスロットを挟み撃ちにするように動き始めると、リヴァルとシャーリーはそのまま後退しつつ、ランスロットへと射撃を続ける。
射線がそのまま脱出口になっているため、ジェレミアとアーニャも追撃を断念する形を取って射撃を開始する。
しかし、それを見てか、ランスロットはスラッシュハーケンを用いて飛び上がると、パイロットよろしく壁を走るようにランドスピナーを駆り、後退を始めたシャーリーとリヴァルの元へと迫っていく。
一瞬のことであり、その場に居た5人はあっけにとられるしかなかったが、すぐに正気を取り戻してそれを追う。
しかし、すでにランスロットは2人の眼前にまで迫っていた。
◇◆◇◆◇
眼前のランスロットの動きをシャーリーは唖然としたまま見つめていた。
高速で動いているはずの自分の機体がまるでスローになったかのように感じさせるほど、その機体の動きは凄まじく、そして、砲口がこちらを向く様も見てとれる。
先ほどまで、自分を攻撃していた新型機。ルルーシュからはエース級だから逃げに徹していろと言われていたが、相手は明らかに手を抜いていることぐらいはシャーリーでも分かった。
だが、今回の相手は違う。
リヴァルと並んで後退しているにもかかわらず、明らかに才能があるリヴァルではなく、確実に動きの劣る自分を狙ってきているのだ。
後方から、ルルーシュとカレンの機体、なぜか先ほどまで戦っていた二機も攻撃をしているが、それらの攻撃すらなんなくかわしてこちらへと迫ってくる。
それが分かっているのに、身体は硬直し、まるで動く事は無い。
これが死に直面した恐怖なのかとシャーリーは他人事のように思える。
「やっぱり、私なんてルルの役に立てないんだね」
やっとの事でそう呟く事が出来た。KMFに乗れると言っても、ジェレミアやヴィレッタが数少ない授業のコマや部活の合間に教えてくれるだけ。専門的な訓練を受けている軍人とは時間の段階で差がある。
カレンやおそらく、リヴァルのような才能ある人間なら、それだけで渡り合えるとルルーシュは言っていたが、自分もそうだとは限らなかった。
ルルの助けになりたい。
あの時ルルーシュは自分達に自分の過去や素性を告白してきた。それが理由で自分達が離れて行ってしまうかも知れないと言う恐怖があったと思うし、それだけ自分達のことを思っているのが分かる。
だからこそ、思い悩んだ末に、ミレイの助言や信じてもらえないことを覚悟で父にも話した。
そして、背中を押してくれた。
それでも、自分はただの学生。役に立てるかなんて分からないのだから、KMFではなく、ミレイ達と一緒に後方でサポートをするだけでも良かったのだ。
何より、ルルーシュの大切な宝物であるナナリーの側に居るだけでも良かったのだ。
しかし、後悔してももう遅い。これらの走馬灯が見えてしまっている以上、死は目前に迫っている。
だからこそ、もう一度その姿を見たかったと思っている。
「ルル、ごめんね……。何度生まれ変わっても……」
そう呟きながらシャーリーは、今にも振り下ろされそうなMVSの赤き光を最後に目を閉ざす。
――――刹那。
『死ぬなっ!! シャーリーっ!!』
脳裏に響く一つの声。
さらに、異空間のような光景が脳裏を貫き、やがてそれは意識全体を支配していく。そこまで認識して、再びシャーリーの意識が戻ったとき、先ほどまで眼前にあった白き機体は、カレンとルルーシュに追いつかれて激しい戦闘を行っていた。
「えっ!? な、何があったのっ!?」
『シャーリー、今は良いから脱出するんだっ!!』
わけが分からないまま、周囲を見回すシャーリーの耳にリヴァルの声が届くと、シャーリーは機体が停止していることに気付いた。
サザーランドから降りたシャーリーの目には、通路の壁に刺さって光を失いつつあるMVSの姿が映っていた。
遅くなって申し訳ありません。KMF等のロボット兵器の戦闘描写はこれが初めてだったので、かなりつたなくなってしまいました。
今後も精進いたしますので、よろしくお願いいたします。