コードギアス ~生まれ変わっても君と~   作:葵柊真

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第十話 分水嶺

 ルルーシュ達が出撃してから数時間。

 

 ナナリーはクラブハウスの停電を受け、ソフィとともにルーベンの執務室へと移っていた。

 状況は刻々と伝えられており、すでにミレイやシャーリーは戦場から離脱し、レジスタンス達の救出にも成功したという。

 だが、肝心のルルーシュ帰還の報告は届いていなかった。

 

 

「ナナリー様、一服されてはいかがですか?」

 

「ソフィさん……。ありがとうございます」

 

 

 傍目から見ても分かるほどに、心配で顔色を悪くするナナリーに、ソフィは丁寧に紅茶を入れる。

 

 

「ルーベン閣下もどうぞ」

 

「すまん。……ほう、良い味だな」

 

「殿下から指導されましたからね。ナナリー様のお口に合うよう、女性陣は勉強中なんですよ?」

 

「お兄様が?」

 

 

 実際、ソフィの言うとおり、紅茶の味はナナリーの好みに近く、飲んで落ち着く気持ちになっている。女性陣と言うからにはミレイやシャーリーもなのだろう。

 

 

「ええ。食事などは篠崎さんに任せるだけじゃなく、ご自分で作られていましたよね? それで、紅茶とかコーヒーとか、飲み物にも色々とこだわられているらしいんですよ」

 

「そうだったんですね」

 

「御食事だけでも、我がアッシュフォードが支援するべきだったのかも知れませんが、その辺りも固辞されておりましたからな」

 

「そうですね。包丁とかは使わせてもらえませんでしたが、味付けとかは私も教えてもらいました。目が見えるようになってからは余計に熱心に」

 

「ふふふ、微笑ましいですね。ですから、ナナリー様、心配はご無用ですよ」

 

「え?」

 

「ルーベン閣下すらも警戒するぐらい慎重で、それだけナナリー様を大切にされているルルーシュ様に万が一なんて有り得ませんよ。だから、安心して帰りをお迎えしましょう」

 

 

 大切な家族を心配する気持ちはソフィにも分かる。ましてや、ナナリーにとってのルルーシュは文字通りすべてと言っても良いほどに大切な存在だった。

 ナナリーからしてみれば、兄が戦いを選んだ以上は自分が足枷になってはならないと言う気持ちもあったが、それでもそう簡単に気持ちが切り替わるモノではない。

 それが分かるからこそ、護衛とした残ったソフィはナナリーの気持ちを落ち着かせようと配慮をしてくれたのだろう。

 生徒会には入っていないため、そこまで親しいわけでは無かったが、シャーリーの友人でありルームメイトである彼女は、やはりシャーリー同様に温かい人柄であった。

 

 

「ソフィ、今更ではあったが、君を巻き込んでしまって申し訳無かったな」

 

「閣下? どうしたんです今になって?」

 

「殿下が生徒会のメンバー達を守る為に事実をお話になられたのは知っているな? だが、君たち一般の生徒は、アッシュフォードに仕えていなければ、本当に守られる存在で居られたのだ。その事を思うとな」

 

「護衛として、厳しい訓練を無理矢理施したのに今更ですか?」

 

 

 そんなソフィの様子に、ルーベンは瞑目しながらそう口を開く。実際、彼はルルーシュを守るために学園という小さな庭を作り、そこに居る人間達はルルーシュとナナリーのための人形のような扱いであったのだ。

 だが、目の前でこうして主君に対して見せる人間味を見ると、とんでもない過ちを犯してしまったことを自覚させられるのである。

 

 それに対して、ソフィは目を細めながら答える。

 

 

「それに、閣下が、いえ、理事長が助けてくれなかったら私達家族は路頭に迷っていたんですし、私は感謝していますよ? それに、祖国の皇子様と皇女様をお守りするなんて、普通に生きていたら経験できない名誉ですよ」

 

「そうか……。いや、余計なことであったな」

 

「いえ。閣下も本来なら私の主君ですし、そこまで考えてもらっているなら私達は幸せですよ。あら?」

 

 

 若者特有と言うべきか、堅苦しさもなく、好奇心とも言えるような物言いで主君の護衛を名誉と語るソフィ。

 彼女の人柄もあるのであろうが、これがルーベンに対する配慮だとすれば彼女は大人すぎるととも思える。

 とはいえ、平和な学生生活から、反逆という恐るべき行為に手を染めるのである。そうなれば、嫌でも大人にならざるを得ないのが実情だろう。

 そんなやり取りをしているとき、ソフィの携帯が鳴り響く。

 

 

「シャーリー? ちょ、ちょっとこんな時に携帯はマズいでしょ? ええ? 殿下を? 分かったわ」

 

「何かあったのですか?」

 

「…………はい。閣下、ナナリー様をレジスタンスのアジトへお連れするようにと」

 

「なんだとっ!?」

 

「ルルーシュ様からのご命令とのことです。出来るだけ、手の者の手配を」

 

「分かった。すぐに動ける者を集めよう」

 

 

 電話の相手はシャーリーからであったようだが、ソフィはすぐにそれまでの親しみのある表情を消し去り、護衛の一人の顔になる。

 そして、ルーベンに護衛の手配を頼むと、改めてナナリーへと向き直る。

 

 

「ルルーシュ様がようやくご帰還成されたそうですが、その際に、ある方を捕縛されたとのことです」

 

「ある方?」

 

「クロヴィス・ラ・ブリタニアエリア11総督です」

 

 

 ナナリーの問いに、表情を引き締めながらそう答えたソフィ。

 その言葉に、ナナリーは開かれた目を閉ざし、額に手を当てるしか無かった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 椅子に後ろ手に縛られた状態で座らされたクロヴィスに、玉城が思いきり冷水を浴びせる。

 

 

「ごほっ!? ごほっ!? な、何をするんだ??」

 

「お目覚めですか? クロヴィス総督」

 

「…………お、お前は」

 

「はい。先ほどは失礼を致しました。兄上」

 

 

 無理矢理覚醒されたクロヴィスは、水が喉に入ったのか、苦しそうに咳き込むと、周囲をにらみ付ける。だが、声の主、ルルーシュを目にすると、目を見開きつつ息を呑む。

 

 

「ルルーシュ……、生きていたのか」

 

「ええ。あなた方に捨てられた日より今日まで。もっとも、私は人に恵まれておりましたので」

 

「そうか。ならば良かったよ。君が日本で殺されたと聞いていたから私は」

 

 

 振り絞るように口を開いたクロヴィスに対し、ルルーシュは静かに応じる。

 それに対し、わずかに安堵したかのような表情を浮かべたクロヴィスだったが、それは日本人の神経を逆なでする言葉でしか無かった。

 

 

「だから、俺達を迫害したってのかっ!? ふざけるなっ!! 勝手に戦争を仕掛けてきたあげく、自分等で人質を見殺しにしたクセにっ!!」

 

「ぐぐっ!? 戦争に敗れたのは君たちの自業自得だろうっ!? 国家同士の戦争で被害者面するなっ!!」

 

「何だとてめえっ!!」

 

 

 真っ先に激昂した玉城がクロヴィスの胸ぐらを掴んで恫喝するが、クロヴィスもクロヴィスで玉城をにらみ返して声を荒げる。

 

 

「サクラダイト利権を盾に紛争を煽っていたのは君たちの国の政治家だ。戦争を仕掛けてと言うが、戦争なんて言うのは武力衝突以前に始まっているんだ」

 

「だけど、それはブリタニアのお貴族様と日本の政治家の問題であって、私らには関係ないわよね?」

 

「ブリタニアだって、戦争を決めてるのは皇族や貴族で庶民は巻き込まれた口だろ? そういう言い方をされたって、こっちが納得できるわけが無いな」

 

 

 そんなクロヴィスの言に、井上や南が冷めた目で睨みながら口を開く。

 

 クロヴィスの言い分はたしかにその通りである。資源輸出国が、その富を利用して紛争を煽ったり、外交面で恫喝めいた行為を行うのはどの時代にも有りうる話。

 国家対国家と言う構図になれば、厳密に加害者と被害者の関係にはなりにくいというのが実情でもある。

 だが、この場に居るのは政治家でも軍人でもない民間人上がりのレジスタンス達である。

 少なくとも、選挙制度が完全に整っていたとは言い難い日本において、戦争の責任まで民間人に被せられるというのは話が違うと思っても仕方が無い。

「それを言えば、当時10代のクロヴィスにも開戦の責任は無いさ。だが、総督になって以降の圧政や迫害の責任は確実に有る」

 そう言うと、ルルーシュは懐からハンドガンを取りだし、クロヴィスの額に突き付ける。

 

 

「ル、ルル?」

 

 

 黙って状況を見守っていたシャーリーが声を上げるが、ルルーシュは引き金を引くことはせず、突き付けたまま口元に笑みを浮かべてクロヴィスを見据える。

 

 

「お、おい。一応、コイツはお前の兄貴だろ?」

 

「そうらしいな。もっとも、俺はすでに死んだ身だが」

 

「殺す気なのか?」

 

「はじめからそのつもりだが? 逆にお前達は何のために戦っていたんだ? 玉城、毒ガスを撒いてまでやりたかったことは、総督の打倒ではないのか?」

 

「そ、それは。ブリキ野郎に一泡吹かせられればと思ったから」

 

 

 そんなルルーシュの態度に、アッシュフォード組に加えて、扇グループからも動揺が見てとれる。

 ルルーシュはそれにわずかに苛立ち、玉城に対して彼の短絡行動を問い詰める。

 実際、玉城としては、憎いブリタニア人が苦しめばそれで良かったのだが、シンジュク事変での虐殺の様子を見せつけられては、自分の行動に後悔を覚えていた。

 

 

「扇、紅月ナオトの策はその程度の短絡的なモノだったのか?」

 

「い、いや、ナオトは毒ガスを奪取して、交渉に臨むつもりだったとは聞いている。その後のプランとかは」

 

 

 さらに、扇に対しての問いにはやはり彼らしくどっち付かずの返答である。ある程度覚悟はしていたが、ルルーシュからしたら苛立ちを隠せなくなる。

 

 

「お前達、そんな覚悟で戦っていたのか!?」

 

「それは」

 

 

「『撃って良いのは、撃たれる覚悟の有るヤツだけ』これが俺の信条だが、どうやら君たちにはその覚悟は無いようだな。ジェレミア、クロヴィスを」

 

「はっ!!」

 

「辺境伯っ!! 私をどうするつもりだっ!?」

 

「すべては、我が君の思いのままでございます」

 

 

 なおも曖昧な扇の返答に、ルルーシュは自身の信条とも言える言葉を口にすると、ジェレミアに対しクロヴィスを別室へと連れて行くよう促す。

 ルルーシュの行動を計りかねている扇達は顔を見合わせて居るだけだが、ルルーシュはそれを見据えてさらに口を開く。

 

 

「君たちを救ったのは、俺の野心や目的のために戦ってくれる味方が欲しかったからだ。だが、覚悟のない者達を巻き込むつもりはない。だから、この先は付き合う必要は無い。ただ、部屋だけは借りるぞ」

 

「どうするつもりだ?」

 

「言えば背負うことになるぞ? 覚悟がないならば、この先は俺がけりを付ける」

 

 

 そう告げると、ジェレミアに引きずられるようにクロヴィスは隣の部屋を連れて行かれ、ルルーシュとC.C.、ミレイが後に続く。

 リヴァルとシャーリーはそれ以上何も言えず、扉の前に立った咲世子の傍らに居るしかなかった。

 ルルーシュの言う、背負うことになる。と言うのは、逆に言えば、クロヴィスの死に対する責任。即ち、罪人として追われる可能性という結果を背負得るのかと言うことであろう。

 扇達レジスタンスは、抵抗を止めてゲットーにて細々と暮らしていけば、この先も生き長らえるし、犯罪者としての過去もやがては消える。

 シャーリーとリヴァルも所詮はただの協力者。二人が関与した証拠ぐらいはルルーシュが処分できる。だからこそ、ルルーシュは二人には後に付いてくるように告げなかったのだ。

 

 とはいえ、隣の、それも銃声など誤魔化しようのない場においての処刑である。背負わないというのは難しすぎる。

 要するに、直接手を下す責任までは背負わせない。だが、本当に覚悟のないヤツは去れ。と言外に言っているのである。

 

 

「ルル……、私は」

 

「シャーリー……。俺もどうしたら」

 

 

 そして、残された二人の問いに、咲世子や扇グループもどう答えたら良いのか分からなかった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 別室に連行されたクロヴィスはなおも椅子に縛り付けられたまま、ルルーシュに許しを請うような視線を向けている。

 だが、ルルーシュは彼を見据えるわけでもなく、腕を組んだまま瞑目している。その様子に、ジェレミア、C.C.、ミレイもまた、黙って様子を見るしかなかった。

 

 

「ルルーシュ、私を殺すというのか?」

 

「……ああ」

 

「そ、そんな」

 

「先ほど、玉城達に堂々と言い返していた態度はどこに行った? イレブンが噛みついてきたことに腹が立ったのか?」

 

 

 実際、クロヴィスが反論したのはその通りだろう。彼をはじめ、ブリタニア人の大半はエリア民を下等に見ており、恫喝や罵倒も躾のなっていない飼い犬に噛みつかれたとかそう言った認識が強い。

 

 だからこそ、シンジュクにて反抗した日本人を虐殺できるのである。

 

 残念ながら、ミレイやシャーリー達の日本人に対する平等な態度も、「かわいそうな弱者」と言う意識が根底にある。

 それがブリタニアという国家に生まれた者の宿命とも言える差別意識であるのだ。とは言え、シャーリー達は国是に呑まれず、対等に接しようとするだけ大分マシではあるのだが。

 そう言った国家的な背景があるからこそ、エリア民を対等に扱おうという態度をとるだけで人気が出やすいというのもある。

 ビスマルクやモニカをはじめとするラウンズが実はエリア民にも人気があるのはそういう平等意識があるからだった。

 ジェレミアはそう言った類いの反応を上手く使って統治しているため、主義者というレッテル貼りから逃れても居るのだ。主君の心情を知っている彼からしたら、日本人の上に君臨する形にも忸怩たる思いはあったが。

 

 

「ルルーシュ様、到着いたしました」

 

 

 そんな時、咲世子の声が室内に届く。ほどなく、シャーリーに車椅子を押されたナナリーと、ソフィ、リヴァル。そして、カレンが室内に入ってきた。

 

 

「お前達、どうして?」

 

「一緒に背負うって言ったじゃない。なにより、ナナちゃんまで巻き込むのに私達は逃げるなんて出来ないよ」

 

「カレンも良いのか?」

 

「…………認めたくはないけど、私の身体にはブリタニアの血が半分流れているから。見届けるべきだと思って」

 

 

 そう言ったシャーリーとカレンの言にリヴァルとソフィも肯く。

 そして、ナナリーの登場と仮面を取った者達が皆ブリタニア人かつルルーシュと同年代の若者だと知り、クロヴィスはすっかり言葉を失っている。

 

 

「だそうだ、クロヴィス。同じブリタニア人でも、お前のやり方を認められない人間は居るんだ」

 

「私は正確にはブリタニア人じゃないぞ?」

 

「……ま、待ってくれるルルーシュっ!! お前達が日本に送られたときに、私が何も出来なかった事は謝るっ!! イレブン、いや日本人に対する迫害も必ず責任は取るっ!! だから」

 

「クロヴィスお兄様。まだ、そんなことを仰るんですか?」

 

「ナナリー?」

 

 

 C.C.の茶々にルルーシュが一瞬言葉に詰まると、クロヴィスは正気を取り戻して、ルルーシュに再び請うように声を上げる。

 彼の性格を考えれば、過ちを徹底的に指摘された以上は、それに対する責任はしっかり取るだろう。

 芸術家気質である彼は、その辺りの柔軟性は持ち合わせている。だが、そんな甘い考えを許さないとばかりに彼の言を止めたのは、ナナリーの凍り付いた声であった。

 

 

「私は、目が見えないばかりに現実から目を逸らしてきました。お兄様のように現実を変えるように動くわけもなく、ただ、お兄様から真実を告げられたからこそ、こうして現実を見据えられるようになりました」

 

 

 そんなナナリーの諭すような言葉にクロヴィスはナナリーの視力が回復している事に気付く。だが、彼女の言葉から、それを喜ぶ資格はすでに自分には無いのだと言うことも悟らざるを得なかった。

 

 

「クロヴィスお兄様。証拠の隠滅のために成した虐殺の責任。そんなモノが生きているウチに取れるとお思いですか? どれだけの命が失われたとお思いですか? 反抗したイレブンが、機密を盗んだレジスタンスが悪いと仰いますか?」

 

「そ、それは……。私は」

 

「後悔したところで、もはや時遅いのです。そして、お兄様が私を呼び出したのは、そうなってしまう前に止めることすらしなかった私たちにも罪があるから……」

 

 

 矢継ぎ早に言い立てられたクロヴィスは、それ以上言葉に出来ず、なおもナナリーの自戒を含めた言葉に目を見開く。

 

 

「その通りだ。済まないなナナリー。俺はお前に重きを背負わせすぎだな……」

 

 

 ナナリーの糾弾を聞いていたルルーシュは、やはり過去の現実を思い返す。背負いきれぬほどの罪をナナリーに重ねさせ、自分が背負いきれなかった罪まで彼女に負わせてしまった。

 それがジェレミアの過去の悲劇へと繋がったと言うのに。だからこそ、背負うべき罪の清算を行うべきだったのだろう。

 

 残念ながら、クロヴィスを救うには自分が目覚めるのが遅すぎたのだ。

 

 

「や、止めろっ!! 腹違いとは言え、実の兄だぞっ!!」

 

「実の兄だからこそだ」

 

「止めてくれルルーシュ……。私は、あの頃に戻りたかったんだ。アリエス宮でユフィやアーニャと一緒に遊んだり、シュナイゼル兄上やコーネリア姉上達とチェスをしたり。母上はいい顔はされなかったが、私が楽しく過ごしているのを見てマリアンヌ様への評価を変えたりしたんだ。だからこそ、私はそれを壊した日本が……、君たちが死んだ日本が憎かったんだ……」

 

「そうですね。私としても、あの頃の思いでは決して忘れられるモノではありませんよ」

 

「私もそうです。光こそ取り戻しましたが、あの頃にように野原を駆け回ることはもう出来ません。だからこそ、大切な思い出です」

 

 

 涙ながらにそう告げてきたクロヴィスの言に、ルルーシュもナナリーも言葉を詰まらせる。

 お互い、運命というモノに振り回されてきたと言う自覚はある。ルルーシュとしてみたら、自分が事を起こさず、全てを見て見ぬふりをしていることも出来たという気持ちもある。

 

 いずれ、アッシュフォードが守り切れなくなったとき、シャルル達の計画を阻止すれば、ブリタニアがオデュッセウスの穏健な治世とシュナイゼル主導で平和な世界を作っただろう。

 だが、自分はこうして戦いを選んでしまったのだ。そして、親衛隊だけではない。クロヴィスをこうして殺すことで、自分の退路は消える。そうしなければ、自分はこの先戦う資格は無くなるだろうと、ルルーシュは思っていた。

 

 ふと、目元に柔らかい感触があった。

 

 顔を向けると、シャーリーが涙をこぼしながら、ハンカチで自分の涙を拭ってくれていた。どうやら、無意識のうちに涙がこぼれていたのだろう。

 過去のように、復讐に囚われたわけでは無いからこその感情であろうか。

 

 

「さようなら、兄上。出来るならば、貴方とは平和な世界に生まれたかった」

 

「ルルーシュっ!?」

 

 

 そんなクロヴィスの叫びとともに、室内に、そして外で固唾を呑んで状況に聞き耳を立てているレジスタンス達の耳に、乾いた銃声が響き渡った




ルルーシュがナナリーやシャーリーに人殺しの場面を見せるか? と言うのはちょっと悩みましたが、ルルーシュ自身、クロヴィスを殺した事で本当の意味で戻れなくなったと思っているので、彼女等には共犯になる事でともに戦う義務を負ったと言う形にしてみました。


また、誤字脱字指摘を毎回受けてしまい申し訳ありません。更新頻度を言い訳にしてはいけないのでしょうが、しっかり書けるようにして生きたと思います。


また、お気に入りが500件を越えました。皆様、本当に応援ありがとうございます。
今後も頑張って更新していこうと思いますので、よろしくお願いいたします。
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