コードギアス ~生まれ変わっても君と~   作:葵柊真

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第十三話 降壇と登壇③

 ルルーシュ達がジェレミアから総督代行就任とアーニャの現状について相談を受けていた頃、リヴァルは別の人物からの報告を受けていた。

 

 報告と言っても、それは別に行政に関わるモノでも無い、極めて個人的なモノであるが。

 

 

「エリア11に?」

 

『ああ。急遽、出張が入ってな。時間が出来たら食事でもどうだ?』

 

 

 生徒会室に向かう途中で気付いた着信にリヴァルは一瞬ドキリと心臓が跳ね上がったのを自覚していた。

 電話の相手は父親であったが、それをきっかけに、先日のシャーリー達との会話やその原因になった夢のことを思い出したのである。

 ただ、父親は普段と変わらず淡々としたものであったが、最終的な用件はリヴァルが驚くには十分なモノであった。

 

 

「なんでまた? って、総督にあんなことがあれば当然か」

 

『そう言う事だ。私はエリア11に赴任するわけじゃないがな』

 

 

 先日の夢のことがあるせいか、その辺りが引っ掛かるリヴァルであったが、軍人が混乱するエリアの視察に来ることは不思議でもない。

 総督の死に伴って上層部はかなりの人間が入れ替わるとはルルーシュも言っていたのだ。

 

 

「それじゃあ、母さんも一緒に?」

 

『うむ。部下を持ってから旅行等の機会もなかったからな。行き先が行き先ではあるが』

 

「紅葉がきれいな時期になって来るけど、下手に山になんか行ったらテロリストが居るかも知れないしなぁ」

 

『代行殿や新任総督閣下に頑張って頂くしかないな……。とりあえず、そう言う事だから、成績表を楽しみにしているぞ』

 

「ちぇっ、分かったよ……」

 

 

 先日のやり取り以降、どこかわだかまりあった間柄から逆に角が取れたように思えていた。

 

 とは言え、父は自分が反乱に組していると知ったら全力で止めると言っていた。

 つまりは、事が露見したら学校は退学させられて本国に連れ帰られてしまうだろうし、最悪殺される可能性もあると思う。

 そういう可能性もあるのに、どこか父と打ち解けられてきているというのはどういうことなのだろうか?

 いずれにしろ、ルルーシュ達には伝えておく必要があるだろう。そう思い、リヴァルは生徒会室へと向かう足を速めた。

 

 

 

「なるほど。しかし、軍人とは思わなかったな。……本当にビスマルクに似ているのか?」

 

「体格は良かったけど、俺が見てたのは普通のスーツ姿だったからなあ。あんなヤバいオーラを感じたこともなかったし」

 

「いや、その頃はまだ子どもだったでしょ」

 

 

 そして、生徒会室に到着したリヴァルは、先に来ていたルルーシュ達やジェレミアに事の次第を話す。

 シャーリーは良い機会じゃないかと口にしていたが、ルルーシュやミレイは考える事があるような様子でもある。

 軍人である事と、ナイトオブワンに似ていると言うことに引っかかりを覚えているのだろう。実際、当事者のリヴァルも、絶対に有り得ないと口にしつつも奇妙な感覚が消えないのだ。

 

 

「ヴァルトシュタイン卿が妻帯していると言う話は聞いたことがありませんな」

 

「私もそうねえ。血の紋章事件の頃からのラウンズでしょ? いくら隠しても、ヴァルトシュタイン卿ほどの立場になれば敵はいくらでも居るわけだし」

 

 

 ジェレミアとミレイも首を傾げる。

 

 彼ほどの人物が隠れて家族を持つというのは有り得ることではあっても、貴族の間では暗黙の了解として無視されているだけというのが常だ。

 いざというときの為に恩を売っておくというのは当然に起こり得る話でもある。

 

 

「ギアスでどうにかってのは?」

 

「そこまで行くと俺にも予測は無理だな。ビスマルクのギアスは知っているが……。シャルルが記憶を弄りまくっているのかも知れんが」

 

「ヴァルトシュタイン卿が主君の手を煩わせるような事を成すとは思えませんが」

 

「そうだな……」

 

 

 シャルルの記憶改変のギアスが上書き可能なモノなのか、自分のギアスと同じように1回限りなのかまでは分からない。

 それに加えて、ジェレミアの言の通り、ビスマルクの性格がそれをさせるかと言えば否と言う事にもなる。

 モニカとドロテアの忠誠が真実か分からない以上、最後まで本当の意味でシャルル個人のために戦ったのはビスマルクだけなのだ。

 

 加えて、シャルルだけではなく、マリアンヌにも心酔していたビスマルクが他の女に靡くかというのも疑問ではある。

 

 

「ねえねえ、みんなリヴァルのお父さんを疑いすぎだよ。単純に息子に会いに来たいと言うだけでしょ?」

 

「シャーリー、ラウンズじゃなくても軍人だって言うんだから、最悪リヴァルと戦う可能性もあるんだぞ?」

 

「あ……」

 

 

 それまでの普通の学生だったら、仮にビスマルクがリヴァルの父親であっても、スゴい父親を持ったという話で済む。

 だが、生憎な事に、リヴァルはすでにルルーシュが巻き込んでしまっている。

 そして、ルルーシュは父親と戦うために立ったのであるが、リヴァルはそうではなく、ルルーシュとの友情という一点のみで協力しているのである。

 

 家庭の事情が入ってしまうとなると、巻き込んだルルーシュにもそれを解決する責任があるのだ。

 

 

「ところで、ルルちゃんさっきヴァルトシュタイン卿に対して失礼なことを考えていたでしょ?」

 

「はい?」

 

「『母さんに心酔していたビスマルクが他の女になんか靡くモノか』とかそう言う顔をしていたわよ?」

 

「ええっ!?」

 

「えー、ルルー、それはさすがに失礼だよっ!?」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。いきなりどうした??」

 

 

 突然、臣下から面白いおもちゃを見つけた子どものような表情という仮面を付けたミレイがニヤリと笑いながら口を開く。

 ルルーシュ自身、そう言う事を考えていたため二の句が継げなくなるが、事情を察したシャーリーもまたミレイに同調してルルーシュを咎め始める。

 何事だと困惑するルルーシュだったが、ジェレミアとリヴァルは盛大に置いてきぼりになっているため、助け船を出すことが出来ない。

 

 

「あのねえ、親愛と敬愛とか、愛情と崇拝は違うのよ? 宗教を考えれば分かりやすいでしょ?」

 

「マリアンヌ様を上司や同僚として尊敬、信頼していても、他の女性を好きになる事は普通だよ。仮にビスマルクさんがマリアンヌ様をそれこそ神様みたいに思っていてもね」

 

「ナイトオブワンを“さん”付けするのは世界でもシャーリーだけだろうな……」

 

 

 とはいえ、そう言われるとルルーシュも納得はいく。

 

 自分にとっての第一はナナリーだが、シャーリーとミレイ、リヴァルにジェレミアも大切な人間であるし、大げさなことを言えばナナリーを愛するのと同様にシャーリーに愛情を向けた過去はたしかに存在する。

 

 

「まあ、ビスマルクの恋愛事情は置いておくとしてだ。どのみち、リヴァルは息子として会えば良いだけだし、仮に友達に会わせてくれと言われたら俺は席を外せば問題無いだろ」

 

「ちょっと待て、親父がビスマルク卿だって話で進めるのか??」

 

「言いだしたのはお前だろ。問題は、滞在中に戦闘が起きて戦わなきゃならない場合だな」

 

「ナイトオブワンが居るときに戦闘とか、考えただけでゾッとするわね」

 

 

 形勢不利を悟ったルルーシュはさっとミレイとシャーリーからリヴァルへと視線を戻し、彼に対しては当面取れる対応を告げる。

 

 ジェレミアからはナイトオブラウンズが派遣されてくると言う話を聞いていたため、リヴァルの父親とは関係無しに、ビスマルクが日本に来る可能性もあるのだ。

 となると、スザクが味方ではなく、紅蓮聖天八極式もないカレンでも戦うには厳しいだろう。

 ギャラハットも完成していないとは言え、経験値がまだまだ少なすぎる。

 

 

「その辺りは私が何とかいたしましょう。リヴァル君の家族団欒のためにも。――ルルーシュ様、キョウトにも釘を刺しておくべきでは?」

 

「ああ……、解放戦線にはまだ例の馬鹿者達が居るんだったな」

 

「御意。彼等が事を起こせば、私もルルーシュ様達も動かざるを得なくなります」

 

 

 そんなジェレミアの言に、ルルーシュは“黒の騎士団”が世に出るきっかけとなった事件を思い出す。

 彼等に対しては何の思い入れも後ろめたさもないが、後の悲劇のきっかけや騎士団の分裂の要因にもなった事件である。

 

 

「まあいい、まだ時間もあるし、じっくり考えるとしよう。リヴァルも変に事情を悟られないようにしておかないとな」

 

「親父は軍人だもんな」

 

「ああ。まあ、家族団欒の席では気にせずに普段通り過ごせば良い。電話では普通に出来たんだろ?」

 

「簡単に言うなよ……」

 

 

 これ以上は想定ばかりになってしまうとルルーシュをはじめとする全員が思うところである。

 タイミング的にはラウンズの来日に合わせた“出張”であろうから、日程に関してはジェレミアの元に通知が来るであろうし、今は日本国内で打てる手を打つべきだった。

 

 

「成績次第で気まずくなるかも知れないから、テスト勉強も頑張りなさいよ~?」

 

「いっそ、そっちに話が逸れてくれた方が気楽ですよ」

 

 

 そんなミレイの言に、リヴァルはそう応じるが、成績の心配をしていれば良かった自分にはもう戻れないということを自覚せざるを得なかった。

 

 そして、それは巻き込んだルルーシュも、同じ立場になったシャーリーも同様だった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 クロヴィスの暗殺と代行職にジェレミア・ゴッドバルト辺境伯が就任。

 

 バトレー将軍及びナイトオブサーティーン、ヴィクトル・キングスレイの本国召還等、ブリタニア側に人事面でも大きな変動があってから数日。

 その対岸とも言うべき日本の側に関しても大きな変動が生まれようとしていた。

 もちろん、その原因はクロヴィスを暗殺し、世界に対して堂々と犯行声明を発した“ゼロ”なる人物にある。

 

 

「それで、桐原翁はこの人物とは面識があったと?」

 

 

 トウキョウ租界から西へ数百キロの地にある古都京都。今はキョウト自治区と名を変え、キョウト六家の統治が唯一行き届く都市の中枢にある御所。

 その地に集結したかつての日本行政の領袖達の話題も、件のテロリストにあった。

 そして、その最も上座に座する少女は、第一席に座する桐原に対し、威厳を持って問い掛ける。

 

 ――皇神楽耶。

 

 キョウト六家の筆頭にして、旧皇族最後の生き残りである少女であり、まだ若干15歳ながらもその首席的地位にある。

 皇統というモノが廃止されて以降も日本の事実上の元首として君臨してきた一族であるが、第二次太平洋戦争の敗戦の際、神楽耶の両親をはじめとする皇一門はことごとくブリタニアによって処刑されてしまい、まだ幼い彼女のみが日本最古の血筋を繋ぐ存在としてこの地にある。

 

 

「正確には、彼の者のパトロンとも言うべき人物とじゃ。その者を介し、儂に対し援助を要求してきおった」

 

「それで、例の試作機までくれたやったと? いささか、独断が過ぎるのではないか?」

 

「紅月を失い、中心なきレジスタンスが生きながらえる為の投資に過ぎぬよ」

 

「インドからの抗議をはね除けてまで行う投資とは……。万一の際には、これまで築き上げた関係まで破綻するところであったのだぞ?」

 

 

 神楽耶の問いに桐原はこの場の長老らしくどこかとぼけた口調でそれに応じる。いつもの態度にキョウトの重鎮の中では最年少であり、堂々たる体躯をもった刑部辰紀が眼光鋭く問い詰めるが、桐原は紅月ナオトを失い、勢いを減じつつあったレジスタンスを危惧してのことと弁明する。

 

 刑部自身、元日本陸軍の将官であり、その勢力減退を危惧している身としては、成功させた以上問い詰める気は元々ない。

 単純に、陸上勢力への支援は桐原と共同で行っていたため、抜け駆けを責めると言う意味合いの方が強かった。

 

 だが、外交を担う宗像唐斎としては、インドに隠密に依頼していた新型機の試作一号を無断贈与した事実を問い詰めずには居られなかった。

 

 

「幸い、インドにはクロヴィスの死という結果を添えて返済できたが……」

 

 

 実際、現状日本の抵抗勢力が用いるKMFはブリタニアの最新鋭KMFに対抗するには出力不十分であり、キョウトとしては中華連邦本国に反感を持ち、高い技術力を持つインドに水面下で接近してきた。

 そして、ようやく形になったKMFであり、試作一号機を改良した新型機の到着も目前というところの独断であった。

 元々、中華連邦。特にヒマラヤの山岳地にあったキョウトが開発してきたサクラダイト鉱山の利権をインドに譲り渡すという巨大な代価を払っての新型であるのだ。独断での貸与されてしまうには代償が大きすぎる。

 と、宗像は豊かに蓄えられたヒゲをこすりながら桐原を睨む。元々、温厚篤実な性分であり、これを外交に生かして譲歩を勝ち取ってきたのだが、桐原からしてみたら人が良すぎるという思いもあった。

 

 

「元々、サクラダイト鉱山利権の譲渡は破格の対価よ。弱腰になる必要はあるまい?」

 

「しかしだな、ブリタニアに対抗するには国家間の信用は必要だぞ?」

 

「相手も了承したことだ。それをとやかく言う必要はあるまい。それで、桐原翁、その“ゼロ”なる者を貴公はどうしたいのだ?」

 

 

 動と静、陰と陽とも言うべき桐原と宗像の揉め事はいつものことであり、それを止めるのも公方院秀信と言ういつもの役割である。

 現在は刑部と同様に退役しているが、彼は旧海軍に影響力を持った人物であり、日本解放戦線のような実働戦力が存在しない状況にあっては積極的な発言は控えている。

 

 痩身かつ粘り強い用兵から“ロウソク”と渾名されたこともあり、桐原同様に水面下で行動することを得意としている。

 とは言え、経済面に強い桐原とは異なり、彼は海軍と文化方面へのパイプを持っていたため、双方が壊滅した現状ではやはり桐原に一目置くしかない状況でもあった。

 

 

「話してみた方が早かろう。アッシュフォードを通じ、面会を求めてきて居る」

 

「“ゼロ”がですか?」

 

「うむ。クロヴィスの首を持参するわけではないが、実績でそれを証明した。さらに、もう一つの手土産も用意してくると言う」

 

「ほう? クロヴィスの首以上の手土産があるとでも言うのか?」

 

「それは儂にも伝えなんだ。だが、このエリアに対して巨大な影響力を発揮できるとも嘯いておったわ」

 

 

 そう言った桐原の言に、残りの五名は、お互い顔を見合わせる。

 クロヴィスを討った事でこのエリア11には政治的な空白が生まれているが、代行に就任するゴッドバルト辺境伯は和歌山及び静岡の地に領土を得てキョウトとトウキョウの双方に睨みを効かせる切れ者である。

 部下も穏健な人物を揃え、名誉にならずとも住民に対して穏健な統治という飴を用いて飼い慣らし、明確な身分差を作ったまま手懐けるという油断ならない人物である事はキョウトとしても認識していた。

 評判通りであるならば、クロヴィスや後任と噂されるコーネリアよりはるかに手強い相手であるのだが、ゼロはそれに対する武器を持つと公言しているのだ。

 

 

「それとな、公方院」

 

「なにか?」

 

 

 そして、桐原は顔をしかめつつも公方院に対して向き直ると、流れる汗を拭って口を開く。

 

 

「『海の英霊達を私に頂きたい』とのことじゃ」

 

「なにっ!? 貴公っ!! ヤツにその事を気取られたのかっ!?」

 

「馬鹿を申すな。儂がそのような失態を働くわけがなかろう。じゃが、あの男は知っておった」

 

 

 2人のやり取りに、神楽耶は状況が理解できず宗像と刑部に対して視線を向けるも、両者ともに桐原の言葉に唖然としたままである。

 神楽耶としては、長老達が自分に伝えぬままに国政を動かしていることは若輩の身としては致し方ないと思っても居たが、こうして完全に蚊帳の外というのは気分が悪い。

 

 

「アレはトウキョウ攻略のための秘匿兵器だぞ? それをテロリストの手に委ねろというのか?」

 

「じゃが、牙を研がせたままではいずれ解放戦線のようになろう。ヤツらは一度失敗しておるのじゃ」

 

「二人とも、落ち着きなさい。公方院、あなたの管轄と言うことは、海軍の関係ですね?」

 

「はっ……」

 

「すでに言及されたのだ、神楽耶様も知っておくべきではないか?」

 

「そうですな。そこまで言及した以上は、ゼロとの対面を前に神楽耶様にもお話ししておくべきでしょう」

 

 

 なおも言い合っていた公方院と桐原であったが、宗像の取りなしと神楽耶の鋭い視線を受け、公方院もしぶしぶながらそれに同意する。

 

 滅亡した国家とは言え、その中枢にあった人間達には成すべき事がある。そして、全員が全員相応の秘密を抱えても居るのである。

 そして、そこには過去において日の目を見ることがなかった人間達の存在もあったのである。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 ふわりとした浮遊感にひととき支配され、それになれる頃には日本列島ははるか眼下に位置していた。

 

 ヴィクトルはつまらなそうにそれを見下ろしつつ、“黄昏の扉”を見つけておけばこんな面倒なことはなかったのに。と心の中で嘆く。

 実際、彼が着任したのはシンジュク事変の数日前であり、本来の目的であるC.C.の捜索を優先していたところにクロヴィスが暗殺されてしまったため、その責任を問われることになってしまったのだ。

 

 実際、KMFを駆ってテロリストを迎撃していたアーニャに対し、彼はクロヴィスの護衛どころか彼を糾弾して、その精神を折る事ばかりをしていたため、それがクロヴィスの油断を生んだと言う密告がいくつも本国にあったのである。

 皇帝シャルルの後ろ盾は大きくも、さすがに事態の沈静化が必要となってはシャルルも動かざるを得なかったのだ。

 

 

「まったくもうっ!!」

 

「……っ!? 申し訳ございません」

 

 

 思わず口をついた愚痴に反応したのは、クロヴィスの側近であり、C.C.の正体も知るバトレーである。

 彼はクロヴィスが連れ去られた場に同席していたため、当然のように暗殺の責任を取らされる立場にあり、ヴィクトルともども本国に送還中である。

 もっとも、同じ場に居た親衛隊が輸送機の監房区画に押し込められていることを考えれば彼の待遇は破格である。

 

 

「そうだね。君が余計なことをしてくれたから……。まあいい、君たちがやっていたことは、僕の力にもなるだろうしね」

 

「と言いますと?」

 

「君に拒否権はないと先に言っておくけどね、親衛隊の壊滅やクロヴィスの誘拐。さらには、君たちがコードRと呼んだ女。その全てに関わりのある仕事があるんだよ」

 

「なんと……、あの得体の知れぬ力のですか?」

 

「そう言う事。だからこそ、君に選択肢は二つある。一つはクロヴィスに殉じて死ぬ。もう一つは僕の下についてそれに関する研究を続ける。まあ、選択肢は一つしかないけどね」

 

 

 そう言って笑うヴィクトルに、バトレーはもはや自分は死してクロヴィスに謝する資格さえ無くなってしまったということに気付かされる。

 元々、あの得体の知れぬ女に手を出したことが全てのはじまりであったのだ。という後悔とともに。

 

 

「シャルルには怒られちゃうかも知れないけど、包み隠さず言うことは言わないとね。新しいおもちゃも手に入ったことだし」

 

 

 そう言うと、ヴィクトルは後方の席にて頭を垂れて眠る男に視線を向ける。

 彼の周囲は嚮団員が固め、万一目を覚まして暴れ出しても制圧することは可能である。それに、中々無い面白い技能を有している事実は特にヴィクトルの興味を誘った。

 

 何より、男がしていたヘッドフォン。そこから流れて来る声の主はヴィクトルが良く知る所であったのだ。

 

 

「暴走したまま放置されるなんてかわいそうだよねぇ。それに、愛情を向けても無視されることも。あんなひどい女を頼りにしなきゃならない僕たちも情けないけどな」

 

 そして、過去においてもう一人のひどい女を消した事実を思い返すヴィクトル。

 

 男を惑わすのはいつの時代も女。そういう持論の元、これまでも動いてきた。弟が100人以上も妻を迎えた事実は立場を鑑みても理解できないが、ほとんどは弟という1人の人間ではなく、弟の地位や権力を見る者ばかり。

 そういう人間は逆に脅威にはならないのだ。本当に脅威になるのは人の心に入り込み、支配し、惑わす存在である。

 

 

「それも、嘘のない世界になったら気にならなくなるんだろうけどね」

 

 

 一人、笑みを浮かべつつそう口を開いたヴィクトルに対し、バトレーは冷や汗を流しながら沈黙するしかなかった。




相変わらずの牛歩で申し訳ありません。
キョウト六家の神楽耶、桐原以外の3人に関してはあまりに影が薄かったのでオリジナル設定を加えてみました。
なんだかんだで復活のルルーシュのルルーシュにも居ましたから、彼等はルルーシュを認めていたと思いたいところです。
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