去りゆく仮面の男達の姿を四人の老人達が見つめていた。
その先には、少女の顔に戻り、同年代の車椅子の少女と笑顔で会話を続けている日本の国主の姿もある。
「やれやれ、とんでもない事を言いだしましたな」
「刑部、貴様が片瀬かわいさに挑発するからだぞ?」
「何を言われます。あのままでは、日本の主導権もブリタニアの皇子に渡すところだったのですぞ?」
宗像の言に、桐原が背後の刑部に対し口を開く。
片瀬に対するルルーシュの挑発は、たしかに解放戦線の限界を表していた。そして、キョウトへの現実もまた。
正規軍がテロリストの首魁に堕ち、いつまでも変わることなき敵国の支配に抵抗しても、それを跳ね返す力はない。
その現実を前に、片瀬は苛立ちを見せて立ち去ってしまった。つまりは、ルルーシュへの反論すら出来ない現実を認識させられたのだ。
となると、具体的な力を示して見せたルルーシュの手腕にどうしても期待が集まる。
実働戦力が頼りにならない以上は、目先の力を人は求めがちである。そうなってしまえば、必然と結果を出した者に期待があつまる。
もちろん、ルルーシュもまだ立ったばかりであるし、政治的に総督代行のジェレミアを支配していても具体的な戦力は精々扇グループ程度だろう。
だが、イデオロギーで行動を決める者よりは、本質を見た者の方が頼りになるというのは常識であり、ルルーシュが素性を明かし、ブリタニアの皇子でありながら、ブリタニアに反旗を翻す、と言うある意味での信義に基づいた行動には、仮面を被ったままでは得られない信頼を生む。
唯一の弱点は出自を元にした後ろめたさであるが、それは日本の姫が身をもって取り去ることを約束してしまった。
国主が反逆者を支持すると言うのは、その国家との断絶を意味するが、すでに侵略を受け、今も民を暴虐に晒す国家との断絶に何の後ろめたさがあると言うのか。
「ふ、じゃじゃ馬とばかり思っておったが、やはり皇の血は侮れぬものよ」
「貴様らしくもない。……だが、儂としても意地を張っている状況ではないようだな」
「あの荒くれどももそろそろ大海を欲する頃であろう? あの者が、ヤツらをどう御すかは楽しみだがの」
そんな神楽耶とルルーシュ、そしてその妹のナナリーとのやり取りを見つめる桐原が不敵な笑みを浮かべてそう言う。
経済屋であり、敗戦に際して真っ先に名誉となってブリタニアの内部に入り込んだ事を見るに、桐原は現実主義的な面が強い。
皇の血というものを否定するわけではないが、それは血ではなく本人の資質であると言うのが持論である。
そんな桐原をよく知る公方院がらしくない言い分を鼻で笑うも、彼としても神楽耶の決断には思うところがあったのであろうか。
普段は宗教勢力の統括をしているが故に、経済、外交、軍事の三柱とも言える三者には実力的に劣ると見られるが、彼にはそれを覆すだけの手駒が存在している。
過去において、ブラックリベリオンが突発的に発生してしまったが故に真価をはっきりすることもなく、公方院の死とともに主と同じ道を辿ってしまった者達の存在を。
「ところで、貴様が手懐けたブリタニアの騎士はどうなのだ?」
「うん? ああ、あの者か。あれは傑物よ。とても儂に御せるような“女”ではない」
「貴様はそうであろう。だが、我らの目の前には、修羅の道を行く傑物が居るではないか」
それも踏まえて、桐原はさらに公方院の“持ち駒”を思い起こし、彼に問い掛ける。
公方院も8年も前の事であり、すでに記憶の片隅に追いやっていたのだが、勝者として日本に乗り込んできたブリタニア軍人達の中にあって、ひときわ異彩を放つ人物のことを思い返す。
ジェレミア、ノネット、ドロテア、ミケーレ、アンドレア、ゴドフロアと言った英傑達の飛躍の舞台となった日本侵攻。
だが、これらの若者達をまとめ上げ、その才覚を発揮する戦場を整えた者の事を。
「縁というものは不思議なものよの」
「私といたしましては、もっとも許し難き者の一人でありますが」
その人物のことを思い返した公方院と同様に、該当する人物を思い起こした刑部は表情を曇らせながら応じる。
「だからこそよ。儂と親交を持ちながら、あのような事をやってのけた。聞けば、当時で20歳かそこらであったと聞く」
「軍人として国家の命にしたがっただけとは言え、日本に打ち込んだ楔は巨大でありましたな」
公方院はその人物との交流の日々を懐かしく思いながら、その影で行っていた恐るべき謀略を思い返し、背筋が凍り付く思いを抱いていた。
宗像はその責は個人ではなく、ブリタニアそのものにあると口にするも、結果として日本が負った傷は、ルルーシュの登場がなければ取り返しが付かぬモノであった事も認識している。
藤堂のような作り出された英雄では、戦場の雄になれても国家の英雄にはなれないことも。
「しかし、なぜあの者を? 皇帝の信奉者であると聞き及んで居るが」
「ヤツの出生を調べ上げた。幾重にも書き換えられた経歴の奥底に、付けいるべき一点がの……」
そう言った桐原は不敵に笑みを浮かべると、宗像に対し、ユーロピア、ユーロブリタニアにある手のモノを動かすよう告げたのだった。
◇◆◇◆◇
山岳地を行くトラックの車列。
キョウトから比良、野坂、伊吹、飛騨、信州の山岳地を走り、ナリタまでを繋ぐ山岳道路。
ブリタニアの哨戒圏を縫うように計画され、作り出されたこの道路は、東日本と西日本を繋ぐ動脈であり、同時にブリタニアに発見されることの許されぬ絶対防衛線の1つでもある。
片瀬はその整備されているとは言い難い道路で専用車に揺られながらも移りゆく景色を見つめていた。
先頃のゼロ、いやルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとの会見は、片瀬としてはつまらぬ意地を張って見せただけではない。
自身の限界は悟っており、現状でも藤堂や卜部の助力がなければ満足に戦闘を行うことも出来ず、挙げ句の果てに草壁等、強硬派の跳梁を許す現状。
元々、一つの事件によって自身の手に転がり込んできた指導者としての地位である。加えて、教育者として、教え子達の暴走や死を受け止めねばならぬと言う思いで今日まで来ていた。
今、自分達を今日まで運ぶこの街道とて、部下達の心血の元に生み出されたモノであるのだ。
そこには、決して国を動かしていると自称している者達や己が野心を行動の根源にしている皇子には理解できぬ時間と努力が形として存在している。
だが、民を盾にし、誇りという自己満足に浸るしかない現状は自身の限界でもあった。
「閣下、見知らぬ信号をキャッチいたしましたが、いかがいたしますか?」
「おそらくは、桐原公であろう。すまぬが、防諜機能を起動してくれ」
「はっ!?」
戦闘に置いては指揮車両を兼ねる専用車である。当然、機密性も備えている。だが、今回の相手が桐原ではないことも彼は理解していた。
『なかなか、腹立たしいことがあったようですね。少将』
「ゼロなるテロリスト風情のおかげでな」
『ふふ、人は英雄を求めるモノです。元々、クロヴィス殿下が平等なる正義を行っておれば良かったのですが』
画面に映る女性の姿に片瀬は震える思いで答える。
ゼロの正体を知らぬ女に苛立ちをぶつけてやりたいという思いもあったが、かの事件の真実を告げられては身の破滅である事は分かっている片瀬は、何も言えずに女に先を促す。
『中華との話はまとまっておりますよ。それ以降は貴方の決断次第です』
「あのような愚か者が?」
『愚か者だからこそですよ。上司の死を放置して亡命したような男、地位に目が眩めば、まともな判断は付かなくなります』
それは言外に片瀬にも愚か者になれと言っているに等しかったが、片瀬としてもそれに反論する意思は沸かなかった。
どちらにせよ、自身に選択権は無い。形は違えど、キョウトの楔からも、解放戦線という先の無い楔からも逃れられる可能性があるのだ。
「いずれにしろ、兵達を説得せねばならぬ。即答は避けさせて頂こう」
『あら? 放って置いたら、あのゼロや我々が潰してしまいますよ? そうなってしまえば、待っているのが何か。貴方に分からぬわけが無いと思いますが?』
「貴方が皇帝に忠義を誓ったのと同じように、私とて日本に忠誠を誓った身。堕ちるところまで堕ちるとしても……むっ!?」
これに乗ってしまえば、二度と日本軍人としての道を戻ることは出来なくなるだろう。
そんな思いが片瀬に決断することを逡巡させるが、そう告げた矢先、片瀬の眼に映る女性の表情が目に見えて強ばっていく。
『ううっ!? 忠、義、……私は、皇帝に……ぐ』
強ばった表情から、強い頭痛を感じたのか、女性は目元を覆うように握りしめ、伸びた爪が皮膚を抉り、こめかみから血がしたたり落ちて白皙の肌を赤く染めていく。
片瀬は、異常な事態であるのに、その赤き装飾を美しいと思えるほど、何かにもだえる女性の姿は美しく感じた。
『はぁ、はぁ、はぁ……良いでしょう。ですが、時間は無いと言うことを、覚えておいてください』
そう告げると、女性は一方的に通信を切ってしまう。
それを終えた片瀬は、今日は厄日としか言いようが無いと大きくため息を吐く。いずれにしろ、自分はブリタニア人に終生もてあそばれるのだろうという思いとともに。
◇◆◇◆◇
テレビ画面に映る三人の騎士の姿は、画面越しに見ても威圧感溢れるモノであった。
シャーリーもリヴァルも戦場というモノを経験したからこそ、彼等が歩く道がレッドカーペットではなく、人の血で染め上げられてきたと言うことを本能的に感じ取ることが出来たのである。
いずれも、次期総督の決定までの間の治安維持という名目であったが。一時的にせよ、一つのエリアに四人のラウンズが集結するというのも異常と言えば異常である。
もっとも、総督がテロリストに殺害されると言う事態は異常事態以外の何物でも無いのだが。
「リヴァルのお父さんはどこに居るのかな?」
生徒会室にてメンバーが揃う中での中継である。
先日、リヴァルの父親の話題になり、ニーナもそれを聞いていたため興味が沸いたらしく、遠回しにリヴァルに問い掛ける。
だが、当のリヴァルは困惑しても居た。
電話での一件とシャーリーとの夢に関するやり取りから、先頭を歩くビスマルクがもしかして?と言う思いを抱いていたのだが、よく見るとビスマルクの背後に並ぶモニカ・クシェルフスキーとドロテア・エルンストの両者。
そのさらに後方に続くラウンズ直属の騎士達の中に、ビスマルクによく似た軍人の姿が見えたのである。
その軍人も自分の記憶とは異なるいかにも軍人然としていたが、ちょうどビスマルクを一回り小さくして、あごひげを剃り、眼鏡を掛けるとそのままの父親になるようなそんな姿をしていた。
「でも、あの位置に居るだけでかなりの地位ね。やあねえ、リヴァル。自分は庶民の代表みたいな顔しながら、ちゃっかりお偉いさんの仲間なんじゃない。このこの」
それを指摘したリヴァルに、思い切り上流階級に位置するミレイが良い笑顔を浮かべながらリヴァルの頭に腕を回し、胸元に引き寄せて挟み込む。
「あたたっ!? あ、ありがとうございます。って、会長、痛いですってっ!!」
豊かなミレイの胸の感触に預かれただけでも多くの男子がうらやましがると思うが、実はいざというときに備えて鍛えられているミレイの腕力はかなり強く、リヴァルの頭を締め上げていた。
「おうおう、リヴァル。ずいぶんうらやましい目に遭っているじゃねえか」
「た、玉城さん、笑っていないで止めてくださいよっ!!」
そんな状況のリヴァルを、いつものように清掃業者という名目で入り浸っている玉城が笑いながらつつき回す。
端から見たらうらやましい状況でも、当人からしてみたらキツい状況であるが。
ほどなく、ミレイも満足したのかリヴァルを解放すると、玉城が改めて画面に視線を向ける。
「しっかしまあ、騎士様って言うのはスゲえな。見るからに強そうだ」
「そりゃあ、イレブンなんかけちょんけちょんにしちゃった人達ですから」
「あんだとっ!?」
「きゃっ!? やっぱり、野蛮ですっ!!」
そんな玉城の言に、ニーナがジト目になりながら挑発するように口を開く。
当然、玉城は声を荒げるが、ニーナもニーナで怯える振りをしながら挑発を続ける。以前のように、差別意識丸出しでの行動では無く、表情は落ち着いており、少しは彼女のトラウマも改善されたかのように周りには思えた。
「ニーナもすっかり玉城さんには慣れたね」
「ちょっと、シャーリー。イレブンなんかと仲良くしているつもりはありません」
「だから、名誉だって言ってるだろ俺は」
玉城も玉城で、普段の「ブリキ野郎がっ!!」と言う憎悪に満ちた悪意でも無く、年下の女の子を構うスケベな青年という態度である。
お互い、初対面では最悪な印象と言えたのだが、玉城が一人で生徒会室に来たときに、たまたまのぞき込んだニーナの個人研究を見て、彼女を褒め称えてからニーナの態度も少し柔らかくなったのである。
引っ込み思案で自分に自信が無いニーナであったが、理論など分かるはずもない玉城が子どものように彼女を賞賛したことで自信が付いたのであろうか。
実際、玉城は官僚を志してあっさり挫折したと言う、分かりやすい過去があるため、ニーナが理論の研究を個人でやっていることを知ると、差別意識に腹を立てつつも素直に尊敬したのである。
それから、扇グループとの連絡係という立場もかねて生徒会室にやって来ては、ニーナとは顔を合わせる頻度が増え、お互いの罵倒合戦にも慣れたのである。
もっとも、ニーナに関しては、初対面の時にすっかり怯えてしまった彼女を、シャーリーとナナリーのほんわかコンビが慰めると同時に、玉城に対する印象を良い方向に誤解するように仕向けたのも大きかったが。
彼がルルーシュとはぐれて困っているナナリーを助けたという、ルルーシュという人間を考えたら有り得ないシチュエーションをでっち上げての事であったのであまり褒められた行為でも無いが。
「でも、アールストレイム卿も含めて四人もラウンズが集まるなんて、ちょっと怖いですね」
ひとしきり、玉城とニーナの漫才を笑ってみていたナナリーが表情を引き締めてそう言うと、皆再び視線を映像に集める。
ニーナはニーナで研究を続けると言うことで会話に参加せず、自分のスペースに戻る。彼女は彼女なりに、友人達の変化を感じ取っているのだ。
「また、テロが起きるのかしらね……」
ミレイの言に、皆表情を歪めるが、この場合はテロに対する心情では無く、テロリストを殲滅する結果、犠牲になる日本人達のことを考えているのである。
ビスマルク、モニカ、ドロテア。
皆が皆、騎士として、一個人として、虐殺や暴虐とは無縁であっても、純血派をはじめとするエリア11駐留軍の腐敗は知れたことである。
ヴィレッタ等、ジェレミア寄りの軍人達も少なくは無いが、現状ではジェレミアが派閥抗争に無関心のため、勢力的には弱いままである。
そして、ラウンズ直属部隊もまた、敵に対しては情け容赦の無い軍隊でもある。
戦い方が苛烈である以上、少数の犠牲には目をつぶってしまうのが完成された軍人といえるのだ。
画面の中で、ジェレミアと不敵な笑みを浮かべ合いながら握手を交わすビスマルクの姿を見据えつつ、皆が皆そんなことを考えていた。
◇◆◇◆◇
仲間達が生徒会室で事の成り行きを見つめていた頃、クラブハウスの私室ではルルーシュが文字通り頭を抱えていた。
「くそっ!! 計算違いだ。V.V.を追い出せたと思ったらラウンズが三名だとっ!? シャルルめ、そんなに俺が恐ろしいかっ!?」
「ヤツがお前の事など気にするわけが無いだろ。やるとしたらマリアンヌだ」
「母さんめっ!! どこまで俺をおもちゃにしたら気が済むんだっ!!」
相変わらず計算外の状況に弱いルルーシュは、キョウトを相手に渡りあったときの姿はどこへやら、神楽耶に一本取られた調子のまま、やりたい放題の両親に対して毒づく。
「母さん、いやマリアンヌめ。ナナリーのような天使の笑顔を浮かべながら、俺が苦しむ姿を笑っているとでも言うのかっ!? 第一、アーニャの中から出て行ってから、どこで何をしているんだいったい??」
「それだけは口を割らないな。あの女らしいが」
ジェレミアのキャンセラーが引き継がれていることは喜ばしかったが、最初はギアス諸共消えてしまったと思っていたマリアンヌ。
だが、彼女は今も健在であり、C.C.の脳裏に干渉してくる。
しぶとい女と言うことはC.C.もルルーシュも分かっていたが、ジェレミアがルルーシュに付くことを読んでいることも含めて、ルルーシュを警戒しているのであろう。
シャルルのギアスを合わせればV.V.を出し抜くことも容易だ。
「C.C.っ!! なんとしても口を割らせろっ!! どうにも俺の頭の中を全て読まれている気しかしないぞっ!!」
「無茶を言うな。アレは私と同じで手強い女だぞ? 第一、私が何でそこまで骨を折らなきゃならないんだ?」
そして、余裕が無くなってきた証とばかりに癇癪を起こすルルーシュに、C.C.はやれやれとばかりに肩をすくめると、命令するなと言わんばかりに反論する。
ルルーシュの中では、どうしてもゼロレクイエム直前の彼女の印象が強いため、どうにもわがままめいた物言いが出てしまうのだが、あの時ほどの信頼関係が出来ていない以上、C.C.からしてみたら面倒くさいだけである。
「そもそも、ビスマルクはすぐに帰国すると言うし、あのかませ二人だったらどうにでもなるだろ?」
「あれはスザクとランスロットアルビオンの存在と、シャルルの死という怒りがあったからだ。……先ほどまでの俺と同じでな」
実際、ドロテアとモニカを瞬殺という形で葬れるとはルルーシュ自身も思っていなかった。アルビオンのお披露目の場で選んだが、あの場においては苦戦したとしてもラウンズ四名を相手に勝利した時点で内外に衝撃は与えられる。
ドロテア、モニカ、ジノをあっさり倒してしまったことは、ルルーシュですら驚愕したのである。
怒りというモノは力にもなるが隙にもなる、諸刃の剣と言うことだ。
実際、あの時の彼等は連携というモノは無かった。一目散に突進してきたところをスザクに各個撃破されたのだから、負けるべくして負けたとも言える。
「それだけでは無いな。ドロテアとモニカと言ったか? そいつらにはシャルルのギアスが掛かっていたのだろう? だったら、シャルルの死で副作用が出ていたのかも知れない」
「そんなことが有り得るのか?」
「有り得るもなにも、お前自身がユーロでひどい目に遭ったと言っていただろ」
それはゼロレクイエムを前にスザクから聞いていたことだが、ルルーシュはブラックリベリオンの敗戦後、シャルルのギアスによって記憶を書き換えられ、ヨーロッパ戦線に送り込まれていたのだという。
それで、瞬く間に戦果を上げたモノの、シャルルへの忠誠という言葉が引き金となって記憶の混濁が起こり、敵にあっさりとひねり潰されたという。
「シャルルの仇討ちへの思いが、自身の記憶との混濁を起こしたと言う事か?」
「実際、モニカとドロテアはシャルルに恨みを持っていてもおかしくなかったのだろう? 十分有り得るんじゃないか?」
「ふむ……」
実際、C.C.の言は有り得るだろうとルルーシュは思う。
かつての自分もシャルルへの恨みとナナリーへの思いは強く、ギアスを打ち破るほどの恨みや親愛があったと言えば否定は出来ない。
そして、モニカとドロテアにもシャルルへの恨みとナナリーへの思いと同等の思いがあれば、騎士として主君の仇討ちという強い思いとぶつかり合い、普段の自分を出せなくなる可能性は十分にあった。
「そうだとすると、ジェレミアやコーネリアどころじゃない敵でありながら、付けいる隙もあると言う事だな」
「お前が言ったように、記憶を取り戻したからと言って味方になるとも限らないだろうけどな」
「……そうだな」
様々な要因は考えられる。
だが、ルルーシュとしては、幼き頃から親交のあるビスマルクやルキアーノ、ジノ、アーニャのように戦場で刃を交えた相手でない以上、未知なる要素が多すぎる。
これが、コーネリアと同タイプに見えるノネット・エニアグラムであったならばまだ戦いようはあったかも知れないが。
そんなことを考えつつ、ルルーシュは笑顔で沿道に手を振るモニカと憮然としながらも手を上げて聴衆に答えるドロテアの姿に視線を向け、新たな脅威の姿を目に焼き付けるのであった。
更新が遅くなってしまって申し訳ありません。
ニーナが玉城と打ち解けると言うのは無理があるかも知れませんが、玉城は復活でもギルフォードに絡んでいたり、シュナイゼル甘言にあっさり乗っちゃったりと、「ブリキ野郎っ!!」とか言いながら、ブリタニア人と絡むのは嫌いじゃ無いと思うんですよね。
個人的に、リヴァルに暴行を加えた本編が悲しかったので、今作では仲良くじゃれ合って欲しいところです。
また、ドロテアとモニカがスザクに瞬殺されてしまった理由を勝手に考えて見ました。
こう言う無茶なことを考えなきゃならないぐらい、あのかませっぷりはひどいと思う。
また、毎度毎度、誤字脱字が多くて申し訳ありません。指摘してくださる皆様、本当にありがとうございます。