コードギアス ~生まれ変わっても君と~   作:葵柊真

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激闘編
第一話 戦乱の暁①


 黒の騎士団の結成をルルーシュが日本全土に向けて発してから一月。

 

 エリア11では盛り上がりを見せたレジスタンスの決起も各個撃破され、多くが地下へと潜っていく。

 その間、ルルーシュ率いる黒の騎士団は大きな動きを見せること無く、租界周辺の治安回復やエリア内の悪徳貴族の討伐に尽力し、ジェレミアは総督代行としてエリアの復興に力を注ぐ。

 地下に潜ったレジスタンス達はそれらの復興事業に入り込み、やがて黒の騎士団へと合流していく。

 

 とは言え、当初予定していたよりも合流は多くなかった。

 

 モニカが敷いた警備網がレジスタンスを徹底的に摘発し、租界内部への潜入を困難にしているのだ。

 結果、ナリタ連山に拠点を置く日本解放戦線への合流を求めるレジスタンスが増え始め、解放戦線内部でも強硬派が勢力を増しつつある現状にルルーシュもジェレミアも眉をひそめていた。

 そして、対外的にはジルクスタン王国軍を何とか退け、中東の制圧を終えたコーネリア・リ・ブリタニアのエリア11着任が目前に迫っていた。

 

 そして、ジェレミアの元に入った通信。そこで彼は少々面倒な事を依頼されていた。

 

 

「ユーフェミア様を?」

 

『ああ。ちょうどカワグチコでサクラダイト算出会議が行われるな? エリア11代表としてユフィを参加させたい』

 

「殿下の名代と言うことでしょうか?」

 

『そうなるな。詳しいことはそちらに任せることになるが、あれも16になる。そろそろ、政治の舞台を経験するべきだろう』

 

 

 過去においてはテロと黒の騎士団が世に出る舞台となった地。

 この世界においても、日程に動きは無く、コーネリアの着任を前に事が起こると踏んでいたのだが、やはり安易に事は進まないと言うことであろうか。

 

 

「その件は承知いたしましたが、ユーフェミア殿下はいつエリア11に?」

 

『それがな……、すでにそちらに向かっている』

 

「なんと!?」

 

 

 珍しく逡巡したコーネリアだったが、ユーフェミアは彼女に先んじてエリア11に向かっているらしい。

 元々、姉譲りの、いやそれ以上の行動力を持った姫君であったが、コーネリアの言によると、戦乱の続くエリア11、そして日本のことを気にしていたという。

 それはそれで構わなかったが、彼女に万が一のことがあった場合のコーネリアをジェレミアも、そしてルルーシュもまた知っていたため、ユーフェミアの行動が今後の指針になるように思える。

 

 

 だが、ジェレミアからの通信を受けたルルーシュの声はあっさりしたものであった。

 

 

『スザクを付けておけば良いだろ。アイツが良いところを見せる機会が中々無かったからな』

 

「そうですな。彼には目的を与えておくべきでしょう。しかし、勢いを増しているとは言え、『雷光』を失った彼等が事を起こすでしょうか?」

 

『そう簡単に諦めるような柔軟性があれば、ヤツらはあそこまで追い込まれてはいないさ。今回はしっかりと日本の殉教者になってもらえば良い』

 

 

 レジスタンスの合流で勢いを増しているとは言え、トップがトップであり、強硬派も草壁のような国粋主義者が音頭を取るとなればルルーシュにしても、ジェレミアにしても面白くない話ではあれど、懸念には値しない。

 必要とするとなれば藤堂と四聖剣であったが、扇グループ同様、彼等は戦力の軸となっても、組織の巨大化に対応できるかは疑問であり、不穏分子化する恐れもある。

 ルルーシュ自身、レジスタンス達の反乱組織的な意識をどう変えていくかと言う方法を模索してはいたが。

 

 

「討伐はいたしますか?」

 

『それは当然だ。無抵抗の民間人を害す者達を放っておく手は無い。だが、スザクがユフィの側に居れば俺達の仕事は何も無いかもな』

 

 

 テロリストが駆け込んだ時点でスザクが制圧してしまえばそれで終いだろう。だが、人数を考えればさすがのスザクでも無理はしないと思われる。

 最悪、ユフィだけでもスザクが脱出させればこちらとしては対応のしようはいくらでもある。

 コーネリアの怒りを買うのはさすがにマズい以上、ユフィの確保が最優先になるというのがルルーシュの判断だった。

 

 

「分かりました。では、我々も堂々と包囲をいたしましょう」

 

『ああ。それとジェレミア、試したいモノが有るからお前もKMFで出陣してくれ』

 

「もちろんです。それと、モニカはいかがいたしますか?」

 

『彼女の頭脳も生かすべきだろう。それに、ヤツらが雷光を複数確保していたらスザクの代わりをやらせてもいい』

 

 

 あの多脚砲台は鈍足だが、ホテルの地下搬入路のような閉鎖空間でこそ真価を発揮する。だが、ラウンズの力ならばスザク同様に恐れる存在では無いだろう。

 まだ、カレンにやらせるには不確定要素が大きい以上、実力が確定しているモニカを頼った方が良い。仮に、彼女がやられたとしてもルルーシュにとってのマイナスは無い。

 

 あくまでも、現状での話だが。

 

 

「ジェレミア卿、また内緒話ですか?」

 

「まあ、そんなところだ。それで、中華連邦の動きは?」

 

「御指摘通りですね。なにやら不穏な影がちらついております」

 

 

 解放戦線が戦力を増している状況にあって、中華連邦の動きのおかしさを伝えてきたのはキョウトの宗像であったが、モニカはそれよりも先に情報を掴んでいたようである。

 むしろ、今回の動きは彼女が主導しているのではないかと言う疑念もジェレミアにはあった。

 ルルーシュの想定にも、モニカが中華連邦を煽り、騎士団、解放戦線を共倒れにする策を考え出すというモノはあった。

 だが、そこに至るまでに解放戦線を動かす手段が考え難い。キョウトからの情報を見れば、上級軍人殺戮の首謀者に数えられている彼女が日本軍人を動かすのは不可能。

 それがルルーシュやジェレミアの出した結論だったが、片瀬がモニカと繋がっているということまではさすがに読みようが無かった。

 公方院への師事も片瀬を隠すための偽装であり、彼等もまた、モニカが片瀬を生かしたのは御しやすさよりも、その無能さを重視したからだと思っている。

 それだけ、キョウトもまた人を見る目を誤っているのだ。片瀬は頼りない面を見せながらも藤堂達を信服させている。

 つまりは、それだけのカリスマを演じることが出来る人間だったのである。あくまでも、演じるだけであったが。

 

 

「やはり、キュウシュウ租界への増援は必要か。次の議題に挙げるとしよう」

 

「では、こちらを参考に。すでに想定して人員を揃えておきました」

 

「さすがだな……」

 

 

 ルルーシュもそうであったが、謀略型の人間は常に想定の先を行く。ジェレミアは有能な軍人であったが、どちらかと言えば現場主義的な気質であり、謀略の類いには精通していない。

 その結果、過去においてゼロに翻弄されたのだが。眼前のモニカもまた、ルルーシュと同様に底が見えなかった。

 

 

(彼女が正面から決戦を挑んでくれたのは幸いであったのだな)

 

 

 ジェレミアは過去を思い返しながら、背中に冷たいものを感じていた。シュナイゼルの傍らに知勇の両面で彼を補佐する人材がもう一人居たとすればそれだけで富士決戦の結果は変わっただろう。

 彼女の性分がダモクレスのようなモノを認めるとは思わないが、あの時は世界中の人間がダモクレスの勝利を願っていたのだから彼女もその例に漏れなかったかも知れない。

 

 

「ところで、エルンスト卿の容態はどうですか?」

 

「意識は取り戻したが、それでもまた私室に籠もっている。仕事はしているが……」

 

 

 生粋の武人であるドロテアが私室にて書類仕事に甘んじている。そんな状況は異常でしかない事はモニカにも理解できた。

 

 

「いったい何が、彼女をあそこまで追い込んだのですか? 若き新兵に一本取られたとは聞きましたが、彼女の性分なら雄敵の誕生を喜ぶと思いますが」

 

 

 事実、ドロテアはシャーリーに勝利を譲り、自身は縛に付いた。だが、その後の事が良くなかったのだ。

 ジェレミアとしては彼女を直接追い込んだのは自分だという歯がゆい思いがある。

 だが、彼女の過去にはそれだけ重いモノが存在していたのだろう。血の紋章事件に前後するそれ以外にも、大切な何かが。

 

 

「今はそっとしておくしかなかろう。彼女は十分陛下に忠義を尽くしてきたのだ」

 

「そうですわね。それにしてもジェレミア卿、短い天下でしたね」

 

 

 コーネリアが着任すればジェレミアの表向きな役割は終わる。

 

 代行とは言え、やや強引に融和策を進めてきたのだ。コーネリアとてそれを無理矢理終わらせる無意味さは理解できるだろう。

 逆に、モニカの補佐が無ければレジスタンス討伐の戦果は芳しくない。それを考えれば慰留も無いだろう。

 

 

「元から代行職だ。すべてはコーネリア殿下の御意志次第だが、私もようやく所領で蜜柑作りに勤しめる」

 

「蜜柑?」

 

「オレンジと似たような果実だ。所領がちょうど産地でな。文化保護もかねて援助しているが、私も栽培に興味が沸いている」

 

「引退するにはお早いと思いますが?」

 

「私が忠義を果たす時は終わったのだ」

 

「失われた宝を取り戻したからですか?」

 

「うむ」

 

 

 モニカには着任時点でルルーシュとナナリーの存在に気付かれている。

 

 武人肌のドロテアは現場を知っていたからだが、捜索を黙認していたモニカがその成果を知らぬはずは無い。

 シャルル達に報告していないのは、聡い彼女がルルーシュ達の発見を報告した所で、もたらす結果を分かっているからである。

 彼女自身、アッシュフォード学園で学生生活を送っている二人を見て、納得しているのだからそれを脅かす気は無いのだ。

 とは言え、ルルーシュとゼロのイコール線にも気づき始めている様子だったが。

 彼女の手の者がアッシュフォード家によって排除され、厳しく抗議が来たことから疑念は強くなっている。

 

 とは言え、『殿下の御心を乱すなっ!!』と言うルーベンの怒声を前に、さすがのモニカもそれ以上の詮索も反論も出来なかったのだが。

 

 

「まあ、殿下達のことは良い。それより、今は目先の事だ」

 

「算出会議ですか? 何か動きが?」

 

「コーネリア殿下が、妹君を参加させよと」

 

「なんと……。ヴァルトシュタイン卿に叩き潰されたとは言え、あの愚か者どもが再び事を起こしたら面倒ですね」

 

「護衛には枢木スザクを付ける予定だが、本音を言えば手のモノを何人か紛れ込ませておきたい」

 

「良いでしょう。選定は私にお任せを」

 

 

 そんなモニカの提言にジェレミアはゆっくりと肯く。

 

 彼女の思想的に枢木スザクの起用に反対することは無いと思ったが、彼女の肯定は純血派への牽制にもなる。

 だが、彼女が選び出した者達ならば、間違いはさらに起こるまい。と言うのがジェレミアの本音でもあった。

 敵でありながら、味方でもある存在。そんな複雑な立場であっても、やはり頼りになる人間には違いが無かった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「コンベンションセンター?」

 

「そっ」

 

 

 ジェレミアからの通信を終えたルルーシュは、生徒会室にやって来たミレイ達の言葉に目を丸くする。

 まさか、自分に協力をしている状況で彼女がそのようなことを言い出すとは思っていなかったのだ。

 

 

「おいおい、こんなご時世にか?」

 

「大丈夫よ。テロリストはリヴァルのご両親が成敗しちゃったんだし」

 

「嫌な事を思い出させないでくださいよ」

 

 

 ともにジェレミアからの通信を聞いていたリヴァルがミレイの言に苦笑する。

 後から知ってとんでもない事件だったが、リヴァルの家庭事情も含めて大きな転機になったとも思う。

 ルルーシュとしては、両親の事実を知って逆に戦う決意を決めてきたリヴァルに驚きもしたが、『俺達、親友だろ?』と言う言葉に涙が出そうになった。

 

 

「日程は?」

 

「ちょうど大きな会議がある時ね。色々なイベントとかがあるのよ」

 

「花火とかか?」

 

「すごーい、よく分かったねルル」

 

「色々と調べているからな」

 

 

 そして、悪い予感はさらに当たってしまう。よりによってテロに遭いに行くとまで言いだしたのだ。

 もちろん、解放戦線があのテロを諦める可能性もあったが、あの強情な男が方針を変えられるとは思えないし、柔弱な片瀬が強硬派を止められるとも思っていない。

 コーネリアの着任前という最後のチャンスでもあるのだ。加えて、モニカが居るとなれば事を起こさせて討伐の理由付けにする可能性もある。

 コーネリアの着任が迫るとなれば、ユフィを襲った解放戦線をコーネリアが許すはずも無く、彼女の総督就任への餞にする可能性は十分だ。

 

 

「会長、諦めるつもりは無いですよね?」

 

「もっちろん。ニーナにもたまには楽しい思いをして欲しいしね」

 

「それじゃあ、プランは俺が考えますよ。思い切り楽しめるようにね」

 

「え? いつも色々やってくれているから今回ぐらいは」

 

「俺がやります。ナナリーのためにも、全力で楽しめる旅行にするぞっ!!」

 

 

 珍しく自分でプランを練ろうとするミレイから強引に計画書を奪い、シスコンぶりも全開にしてPCに向き直る。

 ナナリーは笑っていたが、他の者達は当然のようにドン引きである。

 

 ニーナを除いた全員が、ゼロであり、未来の皇帝である事を知っているが、シスコンを爆発させたときの対処法を必死で考えてしまうぐらいに。

 だが、ルルーシュとしては彼女達を楽しませつつ、黒の騎士団にも英気を養う機会を与える事までを考えている。ノベヤマゲットーにも近いため、彼等の支援も受けられるはずである。

 

 そして、それを平穏に行うためにも、解放戦線はさっさと叩き潰すと心にも決めていた。

 

 

「ふふふ、俺を甘く見るなよ。必ず成功させてやるからな。ふははははは」

 

「まーた、ルルーシュの病気が始まったか……」

 

「いつものことですよ」

 

 

 そして、予定外の事態に変な方向に歯車が傾いたルルーシュにリヴァルが呆れたように口を開くも、ナナリーは私室で高笑いするルルーシュになれているので平常運転だと笑顔を浮かべている。

 その笑みを見てルルーシュがさらに暴走するのだが、それを気にしていてはアッシュフォード学園の生徒会は勤まらなかった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 ナリタ連山、日本解放戦線本部。

 

 秋の色が濃くなるにつれて、早い時期では積雪もあるこの地の奥深くにて、数人の男達が相対していた。

 

 

「どうあっても認めていただけないのですな?」

 

「くどい。澤崎との連携が成ろうとしている時なのだぞ? 今は辛抱強く時を待つべきであろう」

 

 

 中央に座す片瀬少将は、鋭く草壁中佐の言に反論する。

 先頃の河口湖周辺での戦闘の際、先遣隊が全滅し、輸送部隊もブリタニア軍部隊の攻撃に遭って壊滅。

 コンベンションセンターホテルで事を起こすに辺り、切り札と目していた雷光の破壊を許してしまった。

 さらに、そのブリタニア軍部隊が暴走してノベヤマゲットーを襲撃しようとしたため、それを“ゼロ”率いるレジスタンスが撃破し、彼等の勇名を高める結果になってしまった。

 

 元々、ナリタとは目と鼻の先にあり、食糧や資金の援助があったのだが、危機を生んだ上に救援にも来なかった解放戦線から“黒の騎士団”へと彼らの支持は流れつつあった。

 それに加えて、モニカ・クルシェフスキーによる警戒網はジェレミアによるそれよりもいっそう緻密さを増し、トウキョウ租界を目指すレジスタンスの残党達が解放戦線へと合流してくる。

 すでに許容量は超え、ノベヤマからの支援も減り、さらにはキョウトからの支援も目に見えて減っている状況はいかんともしがたかった。

 そのため、片瀬はナリタを放棄し、以前から進めていた(実態は進められていた)、中華連邦の亡命政権との連携を模索し、すでに形になりつつある段階であったのだ。

 

 当然、彼が草壁等の起案したテロ行為を承認するはずも無い。

 

 

 

「なればこそです。ヤツらは日本人への見せかけの施しを行い正義面をしておりますが、我らが同胞の仇なのですぞっ!? ヤツらを失脚させ、日本人の目を覚まさせてやれば」

 

「烏合の衆が増えたところでどうなる? 戦力の補充をかねて受け入れはしているが、レジスタンスなど、重火器もまともに扱えぬ者ばかりでは無いか……」

 

「それでも戦は数です。日本人全てが目覚めればまだまだ戦えますっ!!」

 

「馬鹿を言うな。日本人を根絶やしにするつもりかっ!?」

 

「結果としてそうなったとしても、戦って滅ぶならば祖先も死んでいった先達も納得いたしましょう。このまま恭順を選び、真に日本が消滅したとなれば、我らは祖先や先達にどう顔向けすると言うのですかっ!?」

 

 

 片や組織の現実を見、自身の身売り先を模索する立場であり、片や滅びや自己満足を優先する立場。意見がすり合うはずも無い。

 

 

「……せめて、藤堂が戻るまで待て。今日まで我らが戦えて来れたのはヤツが居てこそ。それを蔑ろにすることはあるまい?」

 

「また、藤堂にございますかっ!? ヤツとて厳島にて名を上げたのみ。いや、ヤツばかりが名声を独占し、その影で犠牲になった者達はどうなります?」

 

 

 そして、片瀬は自信が信頼する片腕とも言うべき人物を上げるが、それは草壁の嫉妬心を刺激する結果にしかならなかった。

 片瀬としては戦前から武人としても名高い藤堂の存在が解放戦線そのものであり、その存在が頼みの綱と信じて疑わない。

 だが、草壁としては槍働きが主戦場の藤堂に対し、前線や後方で動き、組織を支えてきたという自負があった。それが、報われず、藤堂ばかりが評価される風潮には以前から不満があったのだ。

 

 実際、強硬派の規模が大きくなっているのは、名声の割に戦果が伴わない藤堂への反発や彼を過剰に持ち上げる片瀬への反発もあったのだ。

 

 

「話にならぬ。ならば好きにすれば良い。だが、今回の事はキョウトにも報告しておくからそのつもりで居ろっ!!」

 

 

 そして、嫉妬心を隠そうとしない草壁に呆れ、連日モニカからの嗾けですっかり神経がすり減っている片瀬は草壁等を突き放すことで話を打ち切ってしまった。

 実際、これ以上は押し問答にしかならないのだから、当然と言えば当然であったのだが。

 

 だが、片瀬は自身の背中を草壁等が殺意の籠もった視線でにらみ付けていたことに気付くことは無かった。

 

 

「中佐……」

 

「計画に変更は無い。いずれにせよ、真実を明かさぬ事には、散っていった者達は浮かばれぬわ……」

 

 

 憎悪の籠もった視線から、一転瞑目した草壁はそう言って天を仰ぐ。それは、彼なりの散っていった同志達への弔いでもあった。

 

 

 

 過去において、自身の偏狭な視点から抜け出せなかった男達。目先の思いが無残に消えた過去を彼らは知るよしも無かったのだ。




草壁みたいな国粋主義者は見ていて痛々しい反面、自分も同じ状況になったこうなりそうな気がしてしまいます。
と言うより、階級がしたの藤堂ばかりを頼られたら頭にもくるようにも。


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