「むっ!?」
二つ目の爆音は近くの出来事であり、草壁の耳に届く懸念はより大きくなる。
先ほど地下で起こった大爆発は脱出車両の爆破であり、それを許したことでもはや彼らの命運は決まっている。
だが、眼前にある少女と少年。そして、スパイとして紛れ込んでいた名誉ブリタニア人の様子に、草壁はすでに目的を達していた。
貴賓室に備え付けられた大型モニター。
そこには、日本解放戦線の電波ジャックによって映し出された映像が流されていた。
映し出されていたのは、地下に用意された密室の中で無抵抗のまま射殺される上級軍人の姿。
戦いに敗れ、部下の助命を勝ち取って捕虜となった彼は、エリアとなった祖国に涙しながらも解放の日を迎える。
だが、解放の手続きを終えたと思った矢先、彼は後ろ手に拘束されると、隣室へと連行される。
そして、二人の兵士に身体を固められると、背後に立った将校は彼の頭部に銃を突きつけ、迷うこと無く引き金を引く。
当然、致命傷であり彼は崩れ落ちてそのまま絶命する。
逡巡もなく殺人を終えた将校。
その手に握られていたのは、日本軍に正式採用された拳銃である。
だが、その場における被害者の軍人は、『日本陸軍大将』の階級を持つ人物であり、引き金を引いたのは『ブリタニア軍少尉』の階級を持つ。
――敗戦のどさくさに紛れて内部抗争の末に粛清された。
それが、ブリタニア軍が用意したシナリオであったのだ。
そして、場面は変わり、トラックに押し込まれた軍人達はそのまま富士山麓に広がる深き森の一角、今では“弔鐘の森”と呼ばれる森へと移されていく。
だが、そこにおいて、行われた行為は先ほどの大将に対する“処刑”と同様のモノ。
後ろ手に拘束され、抵抗の自由を奪われた軍人達は次々と射殺され、掘られた穴へと蹴落とされていく。
淡々と、まるで大量生産のように死を量産していく。
おおよそ、人間の血が通っているとは思えない。そんな処刑シーンのみが映し出される映像を、少女と少年、ユーフェミアとスザクは唖然としたまま見続けるしか無かった。
「ブリタニア皇女よ? 我らがなぜ“死んでいない”事を証明するのか分かるか? この光景を見て、貴様は何を思うっ!? これのどこにブリタニアの正義があるっ!?」
軍刀を抜き、ユーフェミアの眼前に突き付ける草壁にスザクはユーフェミアの傍らに立ち、永田は銃を突きつける。
だが、スザクが草壁を制圧することも、永田が草壁を射殺することも出来なかった。
ブリタニアがひた隠しにした暴挙。
八年前の戦争の際、たった一ヶ月ほどの戦闘で地上から消えてしまった上級軍人達。
その行方が、電源の回復とともに日本全土に、そして、とあるテレビディレクターの暴走によって、全世界へと発信されたのである。
EUや中華、各エリアに住む人間達にとって、ブリタニアの暴虐は言わずと知れたことであり、降伏した軍人達への一方的な処刑は日常的に行われている。
だからというわけではないが、このような映像を見せられたことを不快に感じても、今更な出来事である。
だが、そうと取れぬ者達が居る。それは、他ならぬブリタニア国民であった。
支配や搾取に慣れた貴族層やブリタニア至上主義者達はともかく、多くのブリタニア人は、ブリタニアの侵略によるエリアの成立を、“解放”と呼んでいるのである。
とある皇女が主義者に向かって言い放ったように、エリアとなった後はブリタニアの資本注入によって発展し、愚かな為政者の元で迫害されていた者達に自由を与える。
それを邪魔する主義者やテロリストは時勢の見えぬ愚か者である。多くはそう信じていた。
だからこそ、過去においてユーフェミアは「虐殺皇女」となり、ルルーシュは「悪逆皇帝」となったのである。
クロヴィスやコーネリア、シュナイゼルとナナリーが行った虐殺は、表に出ることの無い「テロリストの鎮圧」や「悪逆皇帝に対する抵抗」と言う美名の元に正当化され、その事実は闇に葬られたのである。
だが、ユーフェミアの虐殺は映像として残り、それもリアルタイムで世界の多くの人間が目撃してしまった。
結果として、それは怒りとなって全世界に決起を促し、ブリタニアはその存在からの回復を困難にしたままゼロの復活を許したのだ。
さすがに今回のそれは告発者の起こした事が事であり、そこまでの騒動は引き起こさなかったが、ブリタニア人の中に疑念を抱かせることには成功したと言える。
それだけ衝撃的な光景であり、加えて草壁が映像を流す前に名指しで指定した人物達が問題であったのだ。
草壁曰く。
『今、この場において告げる。エリア11総督代行、ジェレミア・ゴットバルト。ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキー及びナイトオブフォー、ドロテア・エルンスト。正義の仮面を被り、この地に善政を施す者達の真実の顔はこれであるっ!!』
と、宣言してからこの映像が公開された。
『彼等こそ、我らが同胞の残虐なる殺害を立案し、実行した極悪人であり、我らが行動はその悪逆を討つ裁きであるっ!! 今、この場にあって我らに裁きを下そうとするゼロよっ!! 貴様が正義を、裁きを為すとほざくならば、その傍らにある偽善者どもに裁きを下して見せよっ!!』
と。
幸いなことに、ディレクターの暴走にはこの声明は入って居らず、世界に発信されることも無いままディレクターは上層部によって強引に排除されている。
だが、エリア11内部に流れる映像はどうしようも無かった。
そして、名指しされた当の本人達は困惑と後悔に襲われる。
ジェレミアとドロテアに関しては完全な濡れ衣であり、彼等はそのような虐殺があった事すら知らぬ立場。
正確には、ドロテアだけはモニカが持つ影を感じることがあり、それを予見する余地はたしかにあった。だが、共犯扱いに関しては完全に無実であるのだ。
しかし、ただ一人、モニカだけは違っていた。
事実として、彼女は旧軍上層部を排除し、片瀬という、教育畑を歩み軍の統率とは無縁であった人間を立たせ、前線の猛者であっても時勢を読めぬ猪武者である草壁にその補佐をさせることで日本人のガス抜きを計り、その鎮圧を容易にする。
そう言った謀略を立案した事実が存在していた。
そして、彼女は日本侵攻に遭ってもKMFを主体として電撃戦を立案し、それを成功させることでナイトオブラウンズへの道を切り開いている。
彼女の背景もそれを証明する結果が無いわけではない。
とは言え、ここまで虐殺行為が行われていたことまで彼女ですら把握していなかった。
多くは公職追放などを元にして退役させ、監視下に置いたり、名誉として取り込むと言った手法を取るべきとし、それは長い年月を掛けて日本を追い込んでいく謀略であったのである。
だからこそ、今ではモニカと片瀬は通じ合い、片瀬の身の保証を引き替えに中華連邦軍と亡命政府を煽ることで双方の殲滅を意図したのである。
しかし、彼等への制裁を名指しで求められた男は、その仮面越しに冷然と草壁を見返した。
「言いたいことはそれだけか? 草壁中佐」
『……何?』
租界、そしてエリア11全土に流される映像の中で、ゼロはあくまでも冷静だった。
その様子に、彼を本当の解放者として崇めつつあった者、同志としてともに戦うべきと考えていた者、支配と搾取から脱出させてくれると思っていた者。
多くが、その冷淡な反応に失望しかけていた。
しかし……。
「ブリタニアの悪逆などとうに知れたもの。そして、名を上げられた彼等を討ち果たすことなど当然のこと」
そう口を開きながら、ゼロは傍らに立って状況を見据えていたジェレミアとモニカに対し、懐から銃を取り出し、頭部に突き付ける。
一瞬、ブリタニア軍人達が色めき立つが、モニカの一睨みで機先を制される。ジェレミアもまた動じること無く瞑目して身を委ねる。
「だが……」
そう言うと、ゼロは再び正面を見据える。そして、おそらくは草壁がゼロを見つめているであろうホテルに向かって躊躇うこと無く引き金を引く。
「貴公にそれを裁く権利があると思っているのか? 貴公は先ほどの人質交渉の際に罪無きブリタニア人を犠牲にした。今もなお、無抵抗の民間人の自由を奪い、己が野心のために利用しようとしている。そこに大義があると思っているのかっ!?」
『貴様っ!! 我らとヤツらを同類と言うかっ!?』
「違うのか? たしかに、捕虜の虐殺など鬼畜にも劣る行為。だが、この者達が関与した証拠も無ければ、根拠も無い。 否、貴様のような国家を盾に己が邪心を持って他者を排斥し、他者に冤罪を着せ、弱者を害す。そのような悪逆を、私は許さぬっ!!」
そう言いながらゼロが右手を掲げると、黒の騎士団のKMF達は一糸乱れぬ動きでゼロの背後に居並び、互いに向かい合いながら手にしたランスを掲げ合う。
G1ベースの背後に生み出された花道に、草壁はおろか、日本中が困惑する。
「モニカ・クルシェフスキー」
「……何か?」
「残念ながら、私には貴公の無実を証明する根拠も無いし、義理も無い。草壁の意思の通り、貴公が大人しく処刑されてくれるのならばこちらとしては敵が減るのだから助かる」
そして、ゼロは再び傍らに立っているジェレミアをモニカを一瞥し、そう言い放つ。
ゼロとすれば、すでに共闘関係にあるジェレミアに対する冤罪は分かっており、ここで弁護する必要も無いと思っている。
だが、モニカは別であり、事実として彼女が立案した謀略が虐殺を誘発したことをゼロも把握していた。
「だからこそ、貴公は自ら手で自らの無実を証明するべきだ。なれば、地下の物資搬入路に陣取る敵のリニアカノンの撃破に向かってもらいたい」
「テロリストの大部分はすでに鎮圧され、戦略的な価値はもうありませんね」
実際、人質の大半は救出され、残るは貴賓室に立てこもる草壁等ホテルジャック首脳陣と、雷光を守る一部隊のみである。
草壁等が捕縛されれば雷光部隊は玉砕する以外に執れる手段は無くなる。だが、ゼロがあえてモニカに提案したそれ。
要するに、行動で示せ。と言う事であろう。
虐殺事件を主導し、それが暴かれたとなれば常人であれ、狂人であれ、何らかの動揺を示す。
ましては、状況的に意味の無い行為。自分の中での士気すら上がらない状況。
だが、モニカ自身が口にした戦略的価値は無いと言う言は彼女なりの草壁への揺さぶりであり、実際の所は草壁達の自己満足を行える状況にあるのだ。
即ち、ホテル内にあるユーフェミア・リ・ブリタニアを人質に取った上で、彼女諸共玉砕する事である。
一人の皇族と複数のテロリストの死という構図になり、弱肉強食を国是とするブリタニアにあっては日常的に存在する状況。
だが、エリア11に取っては大きな意味を持つ。
ユーフェミアの姉、コーネリアはホテルジャックの報を聞き、すでに単身このエリア11へと向かっているという。
その行程の最中に、ユーフェミアが害されたとあっては、怒りの矛先は日本解放戦線のみならず、ジェレミアやモニカと言った今のエリア11上層部へと向くだろう。
即ち、彼等にふっかけた冤罪を待たずにコーネリアの手によってこの難敵達が排除される結果になるのだ。
草壁自身はこのモニカの言に、『皇族を道連れに散華する』と言う自己満足以上の意味を見出していないが、ゼロとしてはモニカの言こそが、自分に対する彼女の禊ぎである事を感じ取る。
自身が失敗すればジェレミアもドロテアも同じ運命を辿る。だからこそ、自分は二人の命を背負い、身をもってその無実を証明する。
この行為は自分自身の誠実と潔白の証であると。
「良いでしょう。このモニカ・クルシェフスキー。戦果を持って身の潔白を証明いたしましょう」
そう言うと、モニカはゼロに対して剣を抜き、その剣先を自身へと向けて彼に差し出す。
騎士の誓いは、ここから主君が剣を振るい、跪いた彼女に対してその忠誠を問い掛けるのだが、対等の相手に対する誓いとしての行為は、ここで相手が柄の部分を握ることで成立する。
即ち、ゼロがこれを握ることで、草壁の讒言は虚偽であり、ゼロはモニカの、そしてジェレミアとドロテアの無実の証明として、彼女の戦果を期待することに同意したことになる。
『……っ!?』
そして、草壁等が息を呑む中で、ゼロは躊躇うこと無くそれを手に取る。
その行為は、モニカの失敗によって彼の名声も無に帰すものと同様の行為なのだが、二人の構図が主君と騎士でも、友情を結んだ騎士同士でも無い敵対者同士の一時的な和解という形式が、見ている者達の心を奪うには十分な演出であった。
ゼロが演説やハッキング技術などと合わせて自身の舞台を作り出すことに長けているのと同様に、モニカもまた騎士としての武勇を背景にした謀略家であり、彼の演出を利用して背後に、この場合は画面越しに状況を見守る民へ自身の誠実さを無言のままにアピールすることに成功していたのだ。
そして、彼女の決意に対し、ブリタニア軍、そして黒の騎士団の団員達が彼女の行く道を祝福するように頭と垂れる。
形式としては、日本とブリタニアが手を取り合って、悪逆なる存在と対峙する構図がすっかり出来上がってしまったのである。
過去の暴虐を暴露することでブリタニアの悪逆を訴え、自分達の正当性をアピールしようという草壁の行為はこの時点ですでに崩れ去っていたのであった。
◇◆◇◆◇
爆発と閃光が収まると、室内は静寂へと包まれた。
人質も、騎士団も、解放戦線も、お互いの指揮官級の人間が目の前で引き起こした光景に沈黙するしかなかったのである。
だが、死の女神にとことん嫌われた男は、その場の皆が思うほど柔な人間では無かった。
「痛ってて、この野郎……人を巻き込みやがって」
「っ!? 玉城っ!! 無事か!?」
沈黙の中で、悪態をつきながら立ち上がる男。
顔や全身は返り血と煤で汚れているが、それ以外はそれまでと変わらぬ様子で彼等は仲間や救出対象の目の前に現れたのである。
「化け物か……」
そんな玉城の様子に、解放戦線の兵士は唖然としたまま彼を見つめる。
指揮官は己の手榴弾で吹き飛ばされて床に倒れ伏し、すでに絶命しているのに当の玉城はピンピンしているのである。
もっとも、それは指揮官が腰に付けた背嚢と軍服の下に付けた防具が手榴弾の爆散範囲を狭め、彼だけが直接的な被害を受けるという奇跡が重なった結果であった。
とは言え、上に覆い被さって殴りつけていた玉城も当然とも言うべき被害は受けているのだが。
「おうよっ!! なんと言って俺はゼロの」
「馬鹿、止せっ」
だが、それを賞賛と受け止めた玉城が笑みを浮かべて彼の駆り文句とも言うべき言葉を口に仕掛ける。
だが、さすがにバイザーが吹っ飛んだ状況でそれを言うのはマズいと思った吉田が慌てて止めに入る。
とはいえ、彼自身も『玉城』と口にしてしまったのだから、やってしまったことは同等である。
もっとも、ルルーシュは玉城を参加させる以上、そういう状況に対する言い訳は用意して居たのだが。
「……玉城さん?」
「ん? おう、アッシュフォードの眼鏡ちゃんじゃねえかっ!? 大丈夫だったか?」
「いえ、さっきその人に」
「おおっ!? この野郎、よりによってっ!! 痛てて……」
「だから止せってのっ!!」
だが、それに気付く者は気付く。と言うより、突入の段階で名を名乗ってしまった玉城なのだから、室内の人間は『玉城真一郎というテロリストが居る』と言う事で脳内認識されてしまっている。
当の本人はそんなことを意に返さずに、顔見知りのニーナを道連れにしようとした指揮官を蹴飛ばすが、手榴弾の爆発に巻き込まれて無傷なハズは無く、当然のように顔をしかめて座り込む。
「大丈夫ですか? 私は看護学生ですが、見ますよ」
そんな玉城の様子に、止めに入った吉田が呆れて肩を貸す中、彼と同年齢の名誉ブリタニア人の女性が進み出る。
そして、様子を見て、身体に触れると数カ所に触れて悲鳴を上げているため、おそらくは骨折箇所が複数あると言う事であった。
そして、吉田やルーベン等とともにテキパキと応急手当を施していく。
そんな光景をミレイやソフィーとともに無言で見つめていたニーナは、振るえる身を鼓舞しながら玉城へと問い掛ける。
「玉城さんは、日本人でテロリストだったんですか……?」
生徒会室に現れては生徒達と絡む迷惑な名誉ブリタニア人。
だが、それが嫌味にならず、むしろ親しみやすさを感じていたニーナとしては助けてもらったとは言え裏切られたという思いも感じていた。
彼に慣れたとは言え、怯えることは無くなっても嫌悪感から兵士を罵倒してしまったのだから、まだまだ恐怖心や嫌悪感は抜けないのだ。
「おいおい、テロリストは止めてくれよ。一応、コイツとは幼馴染みでよ。黒の騎士団になんか参加しやがったから止めに来たら、ジェレミア総督に捕まってな。手伝いも兼ねて突入して来たったわけよ」
明らかに嘘である。
だが、あまりに堂々と話す玉城に、それほど親しくも無い他の人質達は、なんとなく真実のようにも感じてしまう。
実際、ジェレミアが名誉ブリタニア人を総督権限で登用し、義勇兵として作戦に参加させるようなことが無いとは限らない。
加えて、ニーナとのやり取りを考えれば、知り合いが人質になっていたから志願した。と言う形式もなり立ってしまうのである。
ニーナに気付いたときのやり取りから、玉城が人質に知り合いがいるなど知らなかった事は明白だったが、これも、元から潜入していたミレイやルーベンが居るのだから、否定は出来ないのだ。
「しかしな、玉城君。危ないことは止めてくれないと困るよ?」
「いやあ、申し訳無いです」
「君がいなくなったら理事長室の掃除を押し付ける人間が居なくなる」
「それだけが理由っすかっ!?」
そんな調子の玉城に、ルーベンがしゃあしゃあと語りかけ、軽い調子で答える玉城に戯けた返事を返す。
たまたま、この場に差別主義者がいなかったのは幸いだったが、こんな小さなやり取りだけで、先ほどまでの玉城に対する疑念が消えてしまうのである。
もちろん、疑う者は疑うが、それもこの場を離れてしまえば一人の男が名誉かテロリストかなどと言う事は忘れてしまう。
そんな状況を見つつ、ミレイはそっと人質の集団から外れ、その周囲をソフィー達が取り囲む。
『ミレイ、そちらの様子は?』
「兵士は拘束いたしました。玉城が負傷しましたが、他の者は無事です」
『そうか。ならいい、作戦は最終フェーズに移行する。脱出の用意を』
「ユーフェミア皇女と枢木スザクはいかがいたしますか?」
ルルーシュは頃合いと見たのか、ミレイ達に脱出を命じる。だが、ミレイとしてはこの場において予想外だったユーフェミアとスザクの存在を懸念する。
コーネリアの着任を待つ今の段階で、ユーフェミアはまさに爆弾であったのだ。その身の守護を託されるべき立場だったが、彼女は勝手に自分で動いて草壁との対談を申し込んでしまった。
『問題無い。何があっても枢木スザクが守るだろう。君は人質を安全に帰すことを優先するんだ』
「分かりました」
そして、ミレイは影から吉田へと合図を送る。玉城とルーベン、ニーナのやり取りを面倒くさそうに聞いていた彼はすぐにそれに気づき、通信を受けたような仕草を行う。
「なんだ? ……了解したっ!! 皆さん、ゼロとジェレミア総督が解放戦線と話を付けたそうです。その身は我々が守りますから、大人しく我々に従ってください」
そして、玉城達のやり取りで和解ムードになっている室内に届く声。本来だったら日本人に命令されることに反発も生まれようが、それまでの状況が味方し、ミレイもすぐに立ち上がる。
「皆さん、私はミレイ・アッシュフォード。こちらは祖父のルーベン・アッシュフォードです。皆さんの安全は私たちが責任を持ちますから、どうか指示に従ってください」
そして、家柄を用いた有無を言わさぬ“命令”に人質達はゆっくりと立ち上がる。解放戦線兵士達も、すでに戦意を失い、騎士団員達に拘束されたままでそれに従う。
「……たしか、西部ブロックだけを使うんだったな?」
「ええ。吹き飛ばされたくなかったらそうしないと」
そして、脱出の算段を確認し合う吉田とミレイの様子に、玉城に絡まれながら、なんとも言えない表情で見つめている者達の姿があった。
そしてほどなく、ホテル内部を劈く轟音と振動がその場の者達を包み込む。思わず身を伏せたミレイ達だったが、それは作戦が成功した証と言えた。
屋上へと辿り着いた彼女達の目に映るのは、朝日を浴びて鮮やかな光を放つ白と緑色に塗装されたグロースターと赤と白の塗装を施された新型機。
ブリタニアと騎士団双方の中心戦力であるそれらが並び立ち、その足下には捕縛された草壁等幹部達とユーフェミア・リ・ブリタニア、枢木スザク、そして、解放戦線の兵士に偽装した永田の姿があった。
序盤の描写はちょっと唐突だったかも知れませんが、実話モチーフで分かりやすい悪行と言うことで使わせてもらいました。
その後の展開はご都合主義ばかりですが、思い展開を吹き飛ばすためと言うことでご了承頂けたらと思います。
しかし、メインヒロインを差し置いて別のキャラがヒロインみたいになっちゃうのはちょっとマズいかも知れませんね(笑)
追伸:
冒頭の虐殺描写はある映画をモチーフにしているんですが、分かりますでしょうか?
少し弄っていますが、やられたことはほぼ一緒なんですが、あからさまはマズいですかね?