対峙している相手はすでに防戦一方になっていた。
最初は会話を続ける余裕もあったようだが、今はこちらの攻撃をいなすのがやっと。砲撃も躱しきれない事が増えてきている。
とは言え、ドロテア自身はなんとなくだが違和感を感じていた。
周囲でKMFを支援していた歩兵部隊が目に見えて減り、KMFも離脱する者が増えている。形勢不利と見て撤退をはじめたとも考えられるが、それであれば眼前の改良機に乗っている指揮官が自分と交戦していることが解せなかった。
(指揮官を捨て駒にする気か? だが、イレブン達がそこまで割り切れるモノか?)
とはいえ、そう考えると敵指揮官が防戦に回る様子も理解できる。
だが、戦略としては疑問が残る。こちらとしては租界のみを守っていれば良く、解放戦線としては無茶を押しても租界を落とさねばこうして打って出てきた意味は無くなる。
現に、KMFは多数撃破され、戦闘車両も次々に失っている。大して、こちらの犠牲は3機のサザーランド。特別仕様機とはいえ、パイロットは脱出しており、致命的な被害とは言い難い。
「っ!?」
そこまで考えていたドロテアであったが、両脇からの激しい斬撃に思わず表情を歪める。
正面の敵と交戦する事に気を取られ、増援の接近に気付かなかったのだ。
そのまま刃で押し切ろうと力を込めてくる両者。ランスを振るって双方をいなすと、右の機体へとそれを振るってはじき飛ばすと、左の斬撃を飛び退きながら躱す。
だが、こちらの動きを呼んでいたのか、双方はランドスピナーを駆って高速でこちらへと接近し、妨害を狙った部下達の攻勢をはじき返しつつこちらへと迫る。
先ほどまで対峙していた指揮官機は砲撃をしつつ撤退してしまったが、中々見事な敵であったとドロテアは思う。
単騎で自分の攻撃に耐え抜き、こうして友軍の精鋭を待つ時間を稼いだのだ。中々に見事である。
そして、こうして躍りかかってくる二機。こちらはそれ以上であろう。
片方、特に頭部アンテナが赤く塗装された機体の動きに隙は無く、僚機の方は鋭さは無いが、円熟味を増した動きであり、こちらの攻撃に、うまく隙を作らせるべく間合いを作っているように見える。
だが、それでも二機の連携というのは見えぬ所に隙が生まれる。戦において、なぜ訓練で完璧を目指すかと言えば、完璧な連携や戦術など有り得ないからである。
赤い精鋭機の斬撃を躱すと、そのまま反撃を狙ってランスを振るう――とみせて、背後に迫る僚機へと手首を捻るようにランスを操る。
思いがけぬ攻撃だったのか、僚機の方は腕の関節部分にランスを見舞う。
動作上、勢いは無くなるため、致命傷とは成らないが、連携を崩すには十分と言える。実際、僚機の方はダメージが大きいのか、こちらの動きについて来れない。
相手を絞ればこちらに分は出てくるが、先ほどの指揮官機以上の動きを見せる相手。
となると、考えられる相手は一人しか居なかった。
「ふ、ようやく現れたか……藤堂鏡四郎」
『……ふんっ!!』
こちらの呼びかけに対し、斬撃を持って答える藤堂。
先ほどの二人も中々の腕であったが、思わず背中に冷たいモノを感じるほどに鋭いそれ。
実際、部下達もこちらに介入できず、残った二機へと躍りかかっている。それだけ藤堂の技量は警戒に値し、自分の気すらそらさぬような戦いが求められる相手と皆が認識したのだ。
ドロテア自身、藤堂鏡四郎と言う男を英雄や将軍として評価はしていないが、一人の武人としては評価し、一度相対してみたい一人の男でもあったのだ。
「無言とはな。どういうつもりだったかは知らぬが、租界に手を出した以上はただでは返さぬぞ?」
『日本人を害して来た貴様等が何を言うか』
「我々は軍人だ。皇帝陛下の部下だ。国是に従い、勅命に従う。ただそれだけのこと。言い訳にしか成らんがな」
ドロテア自身、今となっては皇帝への忠義というモノを信じられなくなっている。
かつては、皇帝の命の元、敵に対して情けや容赦というモノを掛けたことは無い。だが、無抵抗の者を害すようなブリタニア軍人達とは一線を画しているつもりだった。
とはいえ、皇帝の名の下に侵略の尖兵として生きている自分は、被侵略国からしてみれば同罪であろう。
藤堂からしてみれば、過去において上官や同輩達を虐殺した相手。怒りに震えても不思議では無い。
だが、そこで怒りを優先して、剣筋を乱すことがない点は日本を代表する武人の証であろう。
ドロテアとて一方的な攻勢には成らず、互いに隙を狙い、隙を作らせ、それを繰り返す事の繰り返しだった。
だが、ドロテア自身もラウンズとしての矜持がある。相手が如何に強大な相手であったとしても、ラウンズに敗北は許されない。
――ましてや、彼女はこの日本の地で一度敗北を喫しているのだ。
そして、“敗北が許されない”と言う事は藤堂にとっても同じ事。彼もこちらの間を狙っている。
刹那、先ほどの指揮官機、そして僚機が部下達の追撃の合間を縫って、自分に対して十字砲火を見舞う。
完全に藤堂に意識が向いていた状況。だが、距離は十分であり、スラッシュハーケンを放ちながら後方へと飛び退く。
射線に沿うように伸びていくハーケン。ほどなく、轟音とともに両機の大型キャノンが破壊された様が目に映る。
そして、砲撃のクロス点に自分が差し掛かった刹那、背後にあったのは狙いを済ませた藤堂の機体。
コックピットを狙った斬撃、その鋭さは尋常では無い。
紙一重で躱す。しかし、休むこと無く第二撃、肩口を掠める。だが、攻撃は止まらない、目で追える速度とは言えぬが、振るったランスがコックピットめがけて迫る刃をはじき飛ばした。
『馬鹿なっ!?』
驚愕する藤堂の声。
だが、それで終わりはしない。即座に残ったスラッシュハーケンを放つと、藤堂機の胴体部分に突き刺さってその動きを奪い、躊躇うこと無くランス間接部分へとランスを振るう。
いなすことも出来ず直撃を受けた藤堂機をそのまま後方へとはじき飛ばす。そのままランドスピナーを走らせると、躊躇うこと無くランスをコックピット目がけて突き付ける。
刹那。
轟音とともにグロースターが停止し、突き出したランスは藤堂機の目前で動きを止めていた。
「なにっ!?」
何が起こったのか、その瞬間には、理解が出来なかった。
だが、周囲に目を向けると、地下より伸びたハーケンが数本自機に絡みつき、その動きを奪っていたのだ。
『見事だ。ドロテア・エルンスト』
「藤堂っ!!」
『だが、我々の目的は成った。貴公はどうやら、自分の名の重さを軽く見ていたようだな』
「……なに!?」
すでに、致命傷とも言える傷を負った機体から届く藤堂の声。
一騎打ちに関しては、彼女は藤堂に勝利したと言えるだろう。走行は可能でも、もはや藤堂機に戦闘力は残っていないのだ。
だが、地に縫い付けられるように動きを奪われたのは自分。戦闘力は健在でも、その動きを奪われてしまえば為す術は無い。
そして、鳴り響く危険アラート。
目を向けると、解放戦線の戦闘車両からの照準が自分を中心として一点に合わせられており、機体が危険を察知していたのだ。
「貴様等、最初から私一人をっ!?」
『草壁によって貴公に突き付けられた罪は冤罪であっただろう。だが、それによって貴公への恨みを感じる者達も居る。そして、それを討ち果たした後の戦果は、ナイトオブラウンズの名と合わせて巨大なモノ……。それだけの効果はある』
自身に降り掛かった汚名。
たしかに、高官達は自分を信じて背中を預けさせてくれたが、他の軍人達や下級官僚達の自分を見る目には明らかな怯えや軽蔑があり、それだけ負わされたモノの重さを感じていた。
だが、解放戦線が全力を挙げて自分一人を討ちに来る。そのような馬鹿げた理由で始められた戦など、信じようが無かった。
「英雄と祭り上げられた者だからこそ分かる重みか。……ふん、見事だっ」
そんな藤堂達へと不敵な笑みを浮かべて、口を開いたドロテア。だが、こうしてまで奪い取るほどの価値は自分にはない。
そんなことを思いつつも、こちらの動きは奪われたまま。藤堂機は駆け付けた指揮官機と僚機によって回収されていく。藤堂達としたら、ドロテアの首を取ることよりも、全体の戦果を優先したのである。
KMFであれ、自走砲であれ、ドロテアを倒したという事実が重要なのだった。
そんな解放戦線の精鋭達の去りゆく姿を見届けたドロテアは、着弾する砲弾を冷静に見つめていた。
「……その死も見届けずに去るかっ!! 私も侮られたモノだなっ!!」
自分の最期を見届けずに立ち去っていく藤堂達の姿を侮辱に感じたドロテア。実際、彼等は彼女の名声と存在に重きを置きながら、その最期を見届ける事の重要性を理解していなかった。
そして、彼女はコックピット側面のザッテルヴァッフェを展開すると、降り注ぎ始めた砲弾へと狙って撃ち出す。
事、ここ至っては一個の賭け。
グロースターのバネの剛性や機体のタフさを信頼するしか無い状況。だが、その賭けはドロテアへと味方する。
激しい爆発の衝撃は、地下に潜っていたハーケン機構を破壊し、彼女の機体に自由をもたらしたのだ。
『エルンスト卿っ!!』
「っ!? 貴様等っ!?」
そして、それを待っていたかのように向かってきた近衛騎士達。
藤堂の撤退に合わせて対峙していた部隊も撤退したのだろう、危険を承知でドロテアの元に向かい、巧にランドスピナーを駆って砲弾を躱しながら彼女の機体を掴み、すでに航行も不可能になったそれを合同で砲撃の範囲内から離脱させる。
だが、周囲に降り注ぐ砲弾はそれを嘲笑うかのように彼等の頭上へと降り注いでいた。
◇◆◇◆◇
キョウトにもたらされた解放戦線からの報告に、皆が一様に口を噤む。
ホテルジャックを決行した草壁一派はほぼ戦死し、草壁と幹部は捕縛されている。
そして、トウキョウ租界が手薄になったことに乗じて主力をもって奇襲を掛けるが、目的であったドロテア・エルンストを討ち取ることは敵わず、彼女の麾下にあった近衛部隊を半壊させただけに止まる。
結果として、日本解放戦線の全力を持ってしてもラウンズとその直属すら壊滅できないという惨憺たる結果だけが残る。
だが、その混乱に乗じて救い出された政治犯達。
多くはレジスタンスの中心人物達であり、各地に散らばるレジスタンス勢力はさらに勢いづくことになるだろう。
また、旧枢木政権時代の幹部や官僚達も救い出されたことで、キョウトとしても勢力を増すことになる。
「草壁等の暴走に対する詫びと言うことですか? 藤堂中佐」
『はっ……』
「……日本が被った悪名の対価としては足りぬと思いますが?」
『……御意』
報告をしてきた藤堂としては、草壁一派の暴走を止めることが出来なかった以上、解放戦線の命脈は尽きたという現実を知ったと言えるだろう。
藤堂自身、片瀬に対する恩義から客将という立場を貫いていた以上、片瀬の決断を止めることは出来なかったのであろうとその場の者達は思った。
それでも、ドロテア・エルンストを討ち取れていればまだ違っていたと神楽耶は思う。
トウキョウ租界攻撃もブリタニアの心胆を寒からしめたが、そこにラウンズの戦死が加われば、少なくとも現総督一派の責任問題は免れぬだろう。
もっとも、ジェレミアとゼロの関係を理解しているはずの片瀬や藤堂がそれを為そうとした事は神楽耶やキョウトの重鎮達からしたら裏切りとも取れる行動であったのだが。
「加えて、ジェレミア総督代行はルルーシュ皇子の腹心。言わば、我々の同志とも言える立場。これで彼の立場は苦しくなるでしょう……」
ホテルジャックの際に人質の中にユーフェミア・リ・ブリタニア皇女がおり、彼女を万が一にでも草壁が害していれば、次代の総督コーネリア・リ・ブリタニアは日本を決して許さなかっただろう。
これに関してはジェレミアの責任とは言えないが、政治犯の奪還は確実に彼を追い込む。元々、無能を演じて日本を利する行動を巧に取っていた以上、本国の貴族達からは心証が悪く、彼に対する批判の声も大きくなっている。
「そこに加えて、日本軍将校大虐殺の汚名か。コーネリアにとんでもない土産を作ってくれたな」
神楽耶の言に宗像が瞑目しながら口を開く。
ルルーシュの正体を知った彼等としては、ジェレミアや同じ汚名を被せられたラウンズ二名。彼等に対する諜略を画策し、ルルーシュやジェレミアも同意していたのだが、今回の事でドロテア、モニカもジェレミアに連座して処分される公算が高くなっている。
加えて、コーネリアは個人としては公正無私な高潔な人物だが、皇位争いの中心にも居る人物であり、皇帝シャルルの腹心とは言え、自身に味方するかは分からぬラウンズ達の排除を躊躇する理由は無い。
個人的な友誼までは判明していなかったが、宗像は外交人脈を駆使してモニカやドロテアの家系や派閥関係まで調べ上げていたのだ。
そして、付けいる隙はあると言うのがキョウトの判断であった。
だが、それもコーネリアに、もしくはブリタニア本国に三名が処断されてしまえば同じ事だった。
そして、後ろ暗いことは連鎖的に発覚する。ジェレミアが逮捕されることで、アーニャまで連座する可能性もあり、ルルーシュの手駒となるべき人物達が一掃されてしまう可能性は大きかった。
『我々の為した事は無意味であると?』
「少なくとも、ドロテアを討つべく命を掛けた兵士達の命はな」
『……っ!?』
ラウンズにまで伸ばしていた謀略のことなど藤堂はもちろん、片瀬すらも知らぬ事。
当然、それだけ内密に事を進めねばならず、謀略の中身を知るのはそれを主導した桐原と手のモノを動かした宗像。そして、最終決定を下した神楽耶とルルーシュのみであった。
刑部や公方院すらも蔑ろにした謀略であったことも含め、現場を担う藤堂達には青天の霹靂でしか無い。
そう言った背景をいまだに知らされぬ藤堂は、自分達が命を掛けた事すら否定されたことで色めきだつ。
戦力的に勝利など不可能な状況にあり、加えてキョウトは突如現れたゼロというブリタニアの皇子――藤堂自身は彼の存在は知っていたが――に肩入れをし出す状況。
片瀬がそう言った事実に追い詰められていった様を見ていた藤堂としては当然納得のいくものでは無い。
「面白くないと言う気持ちは分かりますが、私どもは貴方や片瀬を信用しておりました。日本のため、ゼロ……いや、ルルーシュ皇子と過去を捨てて手を結び、ともに戦ってくれると。ですが……、いえ、本来軍とは為政者の命によって動くモノ。命令を下さなかった私どもの落ち度でございましたね」
だが、眼前において瞑目する神楽耶の姿に藤堂もまた怒気を削がれる。
神楽耶はいまだ十五歳の少女という年齢。
生まれ落ちた血筋を鑑みれば、彼女が重きを背負うのは致し方ない面があれど、それでも自身を殺し、祖国を救うべく敵国の皇子にすら身を捧げるとまで言い切った神楽耶を前に、藤堂のみならず、他の老獪達すらも自身の落ち度に口を噤まざるを得なくなるのだった。
「片瀬は今どうして居る?」
『はっ、関東一帯に散らばった同志達を集めるべく、トウキョウ租界外苑のゲットーに潜伏しております』
「ふむ……。脱出の手立ては整える。それまでの戦力を集めておくよう伝えよ」
『はっ!!』
そして、無言のまま状況を見守っていた公方院がその鋭い眼光を藤堂へと向ける。
元々、陸海の関係上、あまり接点の無かった藤堂はその眼光に一瞬目を見開くも、片瀬の現状を伝える。
海軍に伝手のある公方院ならば会場から脱出が考えられるため、その言に藤堂は肯く。だが、すでに公方院と刑部の間ではとある手打ちが為されていたことまでは知るよしも無い。
「だが藤堂、お前と四聖剣。それと、精鋭たるメンバーは残れ」
刑部の言に、再び藤堂は目を見開き、沈黙するしかなかったのだが、刑部としてもこれ以上、片瀬だけに事を任せて置くわけにも行かなかったのだ。
「解放戦線の立て直しぐらいはヤツと生き残りにやらせるべきだ。お前達は我々とともに日本に残ってもらう。我らとて、すべてをゼロに頼るわけにはいかん」
不機嫌そうにそう告げた刑部に、藤堂はそれ以上何も言うことは出来ずに答礼し、通信を終える。
彼はナリタへと戻っており、証拠の隠滅や部隊の再編に従事している。少なくとも、ドロテア達と戦って生き残った者達ぐらいは使い道がある。
そういう無情とも言える決断をするのも彼等の役目であった。
「これでよろしいか?」
『けっこう。藤堂達は貴方たちが好きに使うがよろしい。皆様、謀略への助力、感謝いたします』
藤堂の通信が終わるのを待って、それと対面するかのように設置された投影画面に映る黒髪と紫眼の少年。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは不敵な笑みとともに彼等のやり取りに対して満足げに肯いた。
元々、片瀬等の処分はキョウトに押し付ける算段であり、モニカやドロテアに対する諜略も桐原と宗像の人脈を利用できたことはルルーシュに取っては望外のことであったのだ。
結果が望むべきものとなるかは別として、シャルルのギアスによって人生を変えられてしまった両者に対する贖罪の気持ちはルルーシュにもあり、それが二人にとって最善とも限らぬ決断であっても、彼は止める気にはなれなかったのだ。
「しかし、ギアスなるモノが真に……」
「神楽耶様、伝承においては我が国の暗部にも存在していたのです」
「それは聞き及んでおりますが。ルルーシュ様、私たちに掛けてしまわれて良かったのですか?」
『もちろん。これは、私なりの信義ですよ。もっとも、その気になればジェレミアに解除させていつでも操れますが』
「ふん。自ら手の内をバラす時点でその気なぞないのであろう」
そして、神楽耶達がモニカとドロテアに対する割に合うかは分からない諜略に乗ったのは、単にルルーシュから聞かされたギアスのことである。
シャーリー達と同様のギアスで説明され、特に問題の無いギアスを掛けてしまったため、ルルーシュ単独では彼等をギアスで操ることは不可能になっている。
もちろん、悪い笑みを浮かべて口を開いたルルーシュの言の通り、ジェレミアとルルーシュが揃えばその条件は消える。
だが、同じ悪党である老獪達にはその手の悪ぶりなどは通用せず、互いに不敵な笑みを浮かべあうだけであった。
そんな様子にやれやれと言った様子で息を吐いた神楽耶は、再びルルーシュへと視線を向ける。
「ルルーシュ様、これはあくまでも私個人の気持ちにございますが、なにとぞ両名をお救いください」
『神楽耶様?』
「女の身なれば、好いた殿方と結ばれることが至上の幸せ。そして、武人ともなれば敬愛する主君に命を捧げることこそが至上の忠義。彼女等はその双方を奪われたのです。決して、許すことは出来ませぬっ!!」
力強くそう言い放った神楽耶に、ルルーシュも老獪達も呆気にとられる。
とりあえず、偽りの忠誠心は植え付けられても、シャルルは彼女等には手を出していないようだったので、ルルーシュ自身も神楽耶の勘違いだと思っていたのだ。
とは言え、若い女性の真摯な思いを否定するつもり無いし、モニカやドロテアも女盛りの年齢と言うことを考えれば、その辺りの面もシャルルによって曲げられているとも言えそうだった。
『良いでしょう。その願い、たしかに受け取りましたっ!!』
そして、ルルーシュもまた、いつもの大仰な仕草を持って神楽耶の提案を受け入れたのであった。
(彼女等に汚名を負わせた上で謀略を仕掛けるクセに何を言っているのやら……)
その様を見ていた老人達がそう思いながら苦笑いを続けていたことは知ることも無く。
少し、更新のペースを落とすことになりそうです。
平日は一日おきを目処に更新し、金土日を中心に更新できたらと思っています。
更新ペースや文字数に対して意見等がありましたが、遠慮無くよろしくお願いいたします。