コードギアス ~生まれ変わっても君と~   作:葵柊真

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第十五話 宴の後で②

 タチカワでの戦闘は騎士団側の勝利に終わっていた。

 

 ブリタニア側は名目上の保護対象であったジェレミア、モニカ、ドロテアをはじめとする近衛騎士達がいまだに生死不明であり、護送に同行した純血派は壊滅。指揮官のキューエルも戦死している。

 また、勝手にタチカワに赴いたヴィクトルも意識不明という情報があり、被害という面を見ても、地下水路や基地本体の破壊を始め、一方的とも言うべき敗北の現実がブリタニア側には重くのし掛かっていた。

 ルルーシュとジェレミアからすれば、ヴィクトル――V.V.を確実に仕留めたと思っていただけに、彼にはコードの繋がりがあるのだという現実を受け止めざるを得ない状況。

 とは言え、ギアス以上に秘匿性が必要なコードに関しては、彼等とC.C.以外に教えるわけにもいかない以上、しばらくは放置しておくしかない。

 現状、C.C.が味方で居る限りはシャルル達の野望が果たされることは無いのだ。

 

 そんな指揮官達の現状を知るよしも無い騎士団員と行方不明の近衛騎士達は、かつてクロヴィスの死亡診断書偽造や永田の入院に関与したアッシュフォード系列の病院に集結していた。

 

 

 クロヴィスの時には緊急性からギアスによって強引に事を進めたが、元々この病院は“国境なき医療”を志す医療関係者を積極的に登用、留学させており、タチカワより消えた騎士団と近衛騎士達を収容する事にも多くの説明を求めなかった。

 

 没落したとされるアッシュフォード家であったが、元々が軍需産業を争う一大勢力。

 加えて、ルーベンは浪費家という面もあったが、それは散財だけで無く、投資面にも発揮されていたため、この病院経営者も彼には恩義を感じており、再び動き始めたルーベンの動きには賛同する意思を示していた。

 そう言う面からも、ルルーシュは過去の自分の見る目の無さを呪うしか無かったが、今となっては彼は頼れる後見人である。

 さすがに、レジスタンスという政治犯達まで連れてくるわけにもいかなかったので、篠崎流の護衛とともにゲットーの騎士団アジトにまで医師達を派遣して対処に当たっている。

 

 

 

「しっかし、怪我人に会議室まで来いなんて無茶を言いやがるぜ、ゼっ!?」

 

「馬鹿、その名前を口にするなって」

 

 

 

 いつもの調子で軽口を叩く玉城の口を吉田が慌てて押さえる。

 さすがに味方になっているとは言え、下手な記録を残すわけにもいかないのだ。監視カメラに写ってしまうのは仕方が無いとしても、“ゼロ”と言う言葉には世間的にも敏感である。

 

 

 

「十分元気そうだし、もう退院しても大丈夫そうじゃ無い。いつまで入院している気?」

 

「ああ? 俺だってさっさと暴れてえよ。でもな」

 

「駄目ですよ。玉城さん。しっかり治してからで無いと」

 

 

 

 河口湖で自爆に巻き込まれた玉城はそれ以前から入院していたため、タチカワには参加していなかった。

 とは言え、すでに身体は治っている様子だったが、その時に応急手当てを施した看護師、双葉綾芽がぴしゃりを彼を窘める。

 彼女はコンベンションセンターホテルでのテロに巻き込まれたのだが、その後たまたま自分の勤務先に玉城達が運び込まれてきたため事情を知り、騎士団へと入団していた。

 

 過去においてはオペレーターとして活躍していた彼女だったが、奇しくも富士決戦で負傷した玉城の応急手当を手伝うなど、様々な面で活動していたメンバーだった。

 とは言え、そんなことを知らないカレン達からすると、彼女に鼻の下を伸ばす玉城に呆れるばかりだったのだが。

 

 

 

「あ、玉城さん。カレン?」

 

「え? あ、ニーナっ!?!? どうしたの??」

 

「お見舞いだけど……。玉城さんはもう大丈夫なんですか?」

 

「おうよっ!! もう元気満点だぜ?」

 

「……カレン、ちょっときて」

 

「な、なに??」

 

 

 

 そんな時、聞き覚えのある声に振り向いたカレンの視線の先には、生徒会のメンバーであるニーナが立っていた。

 彼女もテロに巻き込まれたのだが、その際に玉城や吉田に助けられた経緯があるため、暇を見ては見舞いに来ていたのだ。さらに言うと、玉城達の見舞いにユーフェミアが訪れていたため、事件の件も合わせて彼女に対しても敬意を向けていたのだが。

 

 

 

「……玉城さん達が騎士団員だったのはショックだけど、カレンもそうなの?」

 

「えっ!? いや、そのね」

 

「助けてもらっておいてなんだけど、そんなこと止めてよ。元々、イレブンなんて私は大嫌いだったけど、あの人達に助けられて軽蔑していた事は反省したわ。それでも……」

 

 

 

 当然だが、ニーナを巻き込むことはルルーシュが最も懸念していた事であり、生徒会でも彼女への対処を考えあぐねている状況だった。

 とは言え、生徒会室に出没する玉城と絡むうちにニーナ自身は日本人に対する差別意識は薄れつつある。

 元々、迫害に遭っていた日本人がたまたま彼女に危害を加えようとしていたことが原因であり、個人を憎んでも全体を憎むのは間違っていても致し方ない面はあった。

 これで、玉城達が解放戦線と同調して人質を無碍に扱っていれば彼女も元に戻ってしまったかも知れない。

 だが、玉城にしても吉田にしても可能な限り紳士的に振る舞い、玉城に至っては爆弾の盾にまでなったのである。

 だからこそ、テロという行為への批判は止められなくても、知り合いがそんな悪事に手を染めることを止めたいと思うのは当然でもある。

 

 

 

「ニーナ。私達は……」

 

「カレン。ニーナには俺から説明する」

 

「あ、ルルーシュ」

 

「えっ!? ルルーシュ君?? シャーリーも?」

 

 

 

 そんな二人の元に、通路の向こうからルルーシュとシャーリーが姿を見せる。とは言え、その姿にニーナは再び目を丸くする。

 今、ルルーシュとシャーリーが身につけているのは、黒の騎士団の制服である。ルルーシュに関しては普段の格好では無いが。

 

 

 

「まあ、説明の前に一緒に来てくれないか? ニーナ、知ってしまった以上は、君にも知る権利がある」

 

「えっ!? ちょっ、ちょっとなに? 勝手に決めないでよっ!!」

 

「スマンが拒否権はない。カレン。シャーリー」

 

 

 

 突然の出来事に困惑するニーナだったが、この状況ではルルーシュとて彼女を帰すわけにもいかない。

 元々、頭の良いニーナである。状況からある程度の答えに辿り着いてしまったのだ。そして、これ以上深入りするとなると巻き込むしか無くなる。

 

 

 

「ごめんね、ニーナ。ちょっとだけで良いから話を聞いて」

 

「私達も生徒会のメンバーには手荒な真似はしたくないから」

 

「なんなの? もう……」

 

 

 

 そして、シャーリーとカレンに両腕を抱えられたニーナは、二人の有無を言わせぬと言う態度に渋々と言った様子で肯くしか無かった。

 大声を上げられては騒ぎになる事必死な状況であったが、彼女も空気を読んでくれたようであった。

 そして、玉城達にも声を掛け、病院側に用意してもらった大会議室へと向かう一行であったが、そこへと続く通路に足を踏み入れると、ルルーシュとシャーリー以外の全員が息を呑む。

 そこは、等間隔に居並ぶ騎士達の鋭い眼光が交差する空間であったのだ。

 ラウンズの証である白を基調とした制服をベースとし、それぞれが仕える騎士のパーソナルカラーを細かくあしらわれたまさに近衛を象徴する忠義の証。

 ブリタニア人のみならず、すべての人間がその姿に恐れおののき、背筋を凍り付かせるラウンズ直属部隊が守るその通路をルルーシュが平然と歩いて行くと、他の者達は恐る恐ると言った様子でそれに続く。

 

 そして、扉の傍らに控えていた両者が扉を開く。

 

 

 

「ポラードとファレルも同行してくれ。君たちの主の行く末が決まる場だ」

 

「はっ」

 

「御意」

 

 

 

 両者はドロテアとモニカの片腕である副官達であり、直属部隊のまとめ役である。

 ドロテアとモニカが目を覚ますまで、病室の入り口前に不眠不休で仁王立ちし医療関係者以外を追い払っていた猛者でもある。

 

 

 

「な、何が始まるの??」

 

「私も聞いていないのよ」

 

 

 そんな様子を見ていたニーナが小声でカレンに問い掛けるが、カレン自身、ルルーシュ達から呼び寄せられたため用件自体は聞いていないのだ。

とりあえず、中に入るようにルルーシュに促され、ニーナやカレン達は先に来ていたミレイ、リヴァル、ソフィーがいる席へと案内される。

 

 いつの間にかルルーシュとシャーリーが居ないことに気付いたニーナだったが、その後に入室してきた人物達に再び目を丸くする。

 先ほどの二人の騎士に、松葉杖をついた驚くほどの長身の女性騎士を伴い、ナイトオブフォー、ドロテア・エルンストと車椅子に乗せられ、呼吸器を付けたナイトオブトゥエルブ、モニカ・クシェルフスキーの両名が姿を見せたからである。

 元々、日本人達も多く居り、ルーベン等のブリタニア人の顔見知りはいても、多くは知らない人間ばかりの室内である。

 

 加えて、生死不明のナイトオブラウンズの出現に彼女の困惑は増すばかりであった。

 そして、彼女の困惑に恐怖を加える人物が、なぜかシャーリーと緑髪の女性。そして、総督代行であるジェレミア・ゴットバルトを伴って室内に現れ、主賓席に腰を下ろしたときにはニーナは思わず叫びだしそうであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 ニーナの困惑を悟っているゼロ――ルルーシュは仮面越しに彼女を一瞥するが、今はそれに構っている場合では無い。

 幸い、玉城達との関わりで日本人への敵意は薄れている。解放戦線から鞍替えした人間も居るが、今は制服までは見えない位置に座っていることが幸いしている。

 とは言え、現状の困難さは彼等の表情が物語っていると言っても良かった。

 

 

 

「さて、騎士団の諸君には危険を犯してこの場に集まってもらったことに感謝したい」

 

「よろしいか? ゼロ。我々は、自身の行いを恥じて騎士団に身を投じた。同胞の犯した罪を拭うべくな。だが、此度の呼び出しは如何なる用件か?」

 

 

 

 周囲を見回して口を開いたゼロに対し、開口一番最前列に腰を下ろしていた元日本解放戦線の将校が口を開く。

 彼は、雷光部隊の指揮官であり、コンベンションセンターホテルへの雷光輸送の過程でビスマルクと遭遇し、護衛部隊が壊滅したため逃走していたところを黒の騎士団と遭遇し、投降。

 その後、ホテルジャック事件の顛末と自分達の落ち度を恥じ、“汚名を濯ぐ”べく騎士団へと身を投じていた。

 

 

 

「少佐。分かりきっていると思うが、当然目の前に居る人物達のことだ」

 

「我々にとってはブリタニア皇族と同等の仇敵。負傷者を討つ事には気が引けるが、我らに介錯の許可を?」

 

「もちろん、違う。処断以外の処分を君たちにも問うためだ」

 

「処断は許さぬと?」

 

「うむ。先に告げておこう。草壁中佐の告発にあった“弔鐘の森事件”彼女等はこの事件には無関係だと言うことを」

 

 

 

 そう言うと、ゼロはシャーリーを促して、事件に関する資料を少佐達に渡させる。

 

 事件の実行犯はブリタニアの暗部とも呼ばれる工作機関であり、その背後にはヴィクトル・キングスレイ直属部隊や主要皇族達の後援貴族達の暗躍があったと言う事実。

 ナイトオブラウンズはあくまでも皇帝の守護者であり、帝国のひいては貴族の守護者では無い。

 皇帝が変われば、過去の風習的には全員殉死すべき立場であり、今となっては国家的な損失になるため、貴族として爵位を与えられ、軍の現場からは退くことになるだけである。

 つまりは、貴族の多くにとっては潜在的な政敵と言うことになるのだ。

 

 

 そして、生粋の叩き上げであり、後ろ盾の弱さが目立つドロテアと元々ユーロブリタニアとの結びつきが強いクルシェフスキー家出身のモニカは特に攻撃の対象になっている。

 同じ叩き上げでも、忠誠よりも戦闘を好む狂戦士という面が目立つルキアーノ等は貴族の地位など無視するであろうし、コーネリアと関わりが深いノネットは当然彼女の、名門出身のジノとアーニャは実家の派閥に入るだけだから攻撃対象とはならない。

 

 そして、事件当時、彼女達は日本侵攻の主力を担い、それによって栄達していたため、元々日本人からの敵愾心は強い。

 そして、スキャンダルをでっち上げて地盤を揺るがせば、日本人が勝手に処分してくれる可能性もあるし、今回のように騎士団が攻めてくれば騒ぎに乗して暗殺してしまえば良かった。

 

 実際のモニカの様子を見れば、正に危機一髪という状況だったと言うのは容易に想像が付く。

 

 

 

「事情は分かり申した……。つまり、ゼロは『過去を捨て、彼女等と手を取り合え』と申されるのですな?」

 

「命じるつもりは無い。だが、彼女達もまたブリタニアによる被害者であると言うのは事実。過去を捨てろとは言わん。だが、お互い受け止める事は出来るのでは無いか?」

 

「しかし、日本を滅ぼし、日本人を害したと言う事実がブリタニアにはあり申す。フェネットどののような若者ならともかく、彼女達は」

 

 

 

 少佐もまた腕を組み、眉間にしわ寄せながら口を開く。他の元レジスタンス指揮官達も同様である。

 

 玉城達に視線を向けると、彼等もまた困惑しているのが見てとれる。

 とは言え、彼等が問答無用で糾弾したり、凶行に及ぶ様子が無いのは、事情もそうであるが、彼女等もまたブリタニアに裏切られた。と言う事実がそこにあるからとも言える。

 

 

 

「戦場での生き死にを謝罪するつもりは我々にも無い。だが、同じ軍人として、ヴィクトル等の暴走を止めなかったどころか、知りもしなかったと言う事実を私は恥じている」

 

「……私も、当時は参謀という立場。本来であれば、実行犯達を処断し、犠牲者に報いるべきであったとは思っています」

 

「それで、罪まで押し付けられた。と」

 

 

 

 そんな少佐達の言に、瞑目したままドロテアとモニカは口を開く。

 虐殺事件に際し、知りもしなかったドロテアと知っていながら何も出来なかったモニカとでは当然情状は異なってくる。

 とは言え、モニカの現状を見ればそれなりの報いは受けたとも言える。実際、彼女はいまだに生死の淵にある状況。だが、彼女なりのケジメとしてこの場にでてきて居るのだ。

 

 

 

「私の判断で彼女達を許し、可能ならばともに戦って欲しいという思いはある。だが、今回ばかりは私一人の判断で決めるわけにはいかないとも思う。だからこそ、諸君等の意見をはっきりと聞かせてもらいたい」

 

 

 

 言外に、ルルーシュは自身の妥協を彼等に告げている。

 

 本来ならば、組織のトップである彼のヘッドハンティングに文句を言われる筋合いは無い。

 だが、過去においてはジェレミアやロロの存在に多くの団員が反発し、結果として顔すら見せぬ自分に対する信用は地に落ちた。

『過去を忘れて手を取り合う』と言う命題はたしかに美しい。だが、人はそこまで簡単に割り切ることなど出来ない。“悪逆皇帝”のような強大な敵が目の前に現れぬ限りは。

 

 

 

「彼女達は祖国に弓引くことになっても構わぬと?」

 

「致し方なかろう。現状のブリタニア……、我が祖国の在り方が正しいとは、“今の”私には思えぬ。皇帝への忠義にのみ生きていた事で国家の在り方などまるで見ていなかったということも」

 

「ですが、私どもといたしましても、あなた方にともに戦ってもらうことは困難だと言うことも理解しております」

 

「では、何故この場に?」

 

「私たち個人に罪はなくとも、侵略や虐殺の罪はブリタニアに、そして、その根源たる軍の象徴である我々ラウンズと言う存在には罪があります。だからこそ、罵倒や批判を受け止めるべくこの場に来ました」

 

 

 

 先ほど、ドロテアが言うように戦場での生き死にまでを謝罪するつもりは彼女等には無い。

 だが、国家としての犯罪行為をそのまま見て見ぬ振りするつもりまでは無い。

 加えて、それを受け止めたとしても、彼等が騎士団という形で自分達を受け入れる事はおそらく無いであろうと言う事もモニカは悟っていた。

 ルルーシュ自身も彼女等に対する諜略をキョウトともに行ってきたが、騎士団に迎え入れることは困難で有ろう事は自覚していた。

 将来、合集国のような形での騎士団であれば可能ではあっても、現状ではあくまでも日本解放のための組織でしか無いのだ。

 

 

 

「諸君等には告げていたと思うが、私もまた仮面の下の姿は日本人では無い。だからこそ、諸君等に要請する。共に手を取れとは言わぬ。だが、彼女等を反ブリタニアの同志という立ち位置にある事を許してやって欲しい。これはゼロとしての命令では無く、私の要請であり、君たちがそれを受け入れられないというのならば、私としても考える事はある」

 

 

 

 騎士団という組織を形作った際には、ブリタニアの否定という根拠があっても、それはあくまでもシャルル統治下のブリタニアであり、それを否定するブリタニア人を受け入れる土壌は作ってきた。

 シャーリー達は実際にゼロの側近的な位置で活動しているし、今は過去ほどの地位を得ていないとは言え、水面下でディートハルトのような一芸に長けた人間も登用している。

 何より、ゼロのパトロン的な地位でこの場に列席しているルーベンやその存在があったからこそ救出作戦に納得したジェレミアの存在もある。

 現状、少佐をはじめとするレジスタンス達の持つわだかまりは、彼女等がラウンズであったと言う一点のみと言っても良いであろう。

 だが、その地位ももはや過去のものとなるしかないのは明白であり、それすら受け入れられないとなれば、それは単純にイデオロギー的な問題でしか無いし、将来的に自分の正体を明かした際には敵対する事になるだろうし、シャーリー達にもいつ牙をむくか分からなくなる。

 

 

 

「ゼロよぉ、そいつらがスゲえ強いってのは俺でも分かるぜ? でもよ、いきなり許さなくて良いけど、一緒に戦おう。なんて言われても、はいそうですね。とはならねえと思うぜ?」

 

 

 

 そして、止まってしまった議論の席に投げかけられる波紋の石。

 

 玉城の砕けた物言いに、軍人であった少佐や他のレジスタンス指揮官達は眉をひそめるが、元扇グループはゼロと共にクロヴィスを討ったという実績があるため、彼等を咎め立てる様子も無い。

 むしろ、自身の気持ちを代弁してくれて安堵しているようにも見てとれる。そんな様子に、ルルーシュは玉城としては上出来だと仮面の下で口元をほころばせる。

 

 

 

「では、こう言うのはどうだ? 彼女等の身は我々の後ろ盾足るキョウトに預ける。加えて、その身柄と行動による責任は私がすべて取る。許す許さぬはすべてが終わった後のこと。と言うモノだ」

 

「要するに、問題はキョウトに押し付けて、今は忘れようと言うことか? お前、面倒くさくなったな?」

 

「うるさいぞC.C.。キョウトには藤堂鏡四郎等、四聖剣と解放戦線の主力も居る。万一の時には、彼等が責任を持って抑えるだろう」

 

 

 

 同時に、キョウトとしても解放戦線以外の武力を得る意味がある。

 彼等が騎士団と仲違いしても、騎士団が武力を背景にキョウトを支配していると捉えられるのはマズいし、あくまでも対等。と言う意味合いは持っているべきだった。

 過去において、神楽耶が騎士団の暴走を抑えられなかったのは、彼等が合集国固有の戦力であったことと、日本人団員が中枢を占めていたことに尽きる。

 朝比奈や千葉はドロテアやモニカの存在を不満に思うだろうが、それでも藤堂がラウンズと対等という立場なのは悪い気はしないはずである。

 

 

 

「その言によれば、すでに了解は取っていると?」

 

「うむ。試すような真似をして済まなかったがな」

 

「いや、我々としても即断できることでは無い以上、第三者に委ねるのがよかろう。藤堂中佐には私からも一報を送っておく」

 

「キョウトだけでは無く、我々『穏健派』も彼女等に対して責任を持つ。ゼロや騎士団の皆々は、遺恨無く戦ってもらいたい」

 

 

 

 そして、再び少佐が一同を代表して口を開くと、ルーベンもまた彼等に対して重い口を開く。

 元々、ゼロ以上に日本に根を張る貴族としてのアッシュフォードの存在は学園や兵器開発のみならず大きく、数少ない日本企業としてもアッシュフォードとの関係性は大きい。

 少佐や指揮官達のような立場になれば、そう言った後援者の存在は無視できず、逆にその言に対する信頼も大きいのだ。

 

 

 

「すまんな。……ドロテアとモニカもそれでよいか? 貴公等の過去に対して、こちらは命を持って貴公等を救った。……我々の手に掛かった同胞に対する遺恨は無いな?」

 

「無い。と言えば嘘になる。我々の忠誠の対象たるクロヴィス殿下を貴公等は討ち果たし、古くはルルーシュ殿下、ナナリー殿下のご兄妹もまたこの地で命を散らした。……だが、それを生んだ原因もまたブリタニアに、シャルル皇帝にある以上、我々が貴公等を恨むのは筋違いであろう」

 

「同胞の命に対しては、彼等もまた軍人。戦場にて敵に討たれるは覚悟の上でしょう。我らの罪に関しては、行動でそれを示すのみです」

 

 

 

 そして、ルルーシュの言に、ドロテアとモニカ。さらに、同席した3人の近衛騎士も肯く。

 虐殺を命じ、実行させたクロヴィスに対しては、日本人達からすればその討伐を攻められるいわれは無い。

 だが、幼子であったルルーシュやナナリーに対する虐待染みた扱いと戦乱に巻き込まれた形での死に対しては、日本人もまた責任を問われる立場である。

 生存を知っているドロテアとモニカからすれば白々しくは思えるが、日本人達への牽制としての意味合いがある事は理解している。

 

 実際、玉城やカレンは首を傾げているが、少佐達は眉間に皺を寄せて瞑目している。幼子の命を盾としようとした事実はさすがに彼等としても否定できないのだ。

「であれば、改めて宣言する。我々黒の騎士団とナイトオブフォー、及びナイトオブトゥエルブは、反ブリタニアの為に対し、過去を受け止め共闘する。そして、両者及び麾下の近衛騎士達の身柄はキョウト預かりとし、必要に応じて互いを助け合うと」

 

 そう宣言すると、ルルーシュ―ゼロはゆっくりと、モニカ、そしてドロテアの元に歩み寄り、手を差し出す。

 その手をモニカの手入れの行き届いた美しい手が、ドロテアの荒々しさは残しながらも女性らしいしなやかな手が握りしめる。

 

 

 それは、事実上、フォーとトゥエルブのラウンズが日本側に寝返ったという結果が生まれていた。




更新が滞りがちで申し訳ありません。

新キャラ?の簡単な設定ですが、少佐はホテルジャックの時に雷光を指揮していたおじさん軍人です。「ここが絶対防衛圏であるっ!!」の人です。

ポラードとエリンは南アフリカ、ファレルはイギリス出身という設定のみがあります。
ググってみると外見はなんとなくイメージ出来るかも知れないのです。


ゴールデンウィークは毎日投稿できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。
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