片瀬の死が戦場にもたらされたのは、コーネリアのランスがドロテアにはじき飛ばされたまさにその時であった。
ジェレミアとギルフォードの一騎討ちはお互い譲らぬまま。ただし、グラストンナイツの両名が卜部とポラード率いる近衛騎士の集中攻撃で機体を破壊されてしまったため、状況的にも騎士団側の優位に傾いている。
それによって包囲部隊とコーネリア直属部隊との間にあった空白も反転してくるゼロ直属によって埋められてしまうことも時間の問題であった。
『コーネリア殿下。すでに状況は我が方に傾いております。ここはお引きください』
『……貴様。私を侮辱するか?』
『そう受け取って頂いてけっこう。ですが、裏切りの騎士に敗れ、反逆者の虜囚となる屈辱を肯じえるほど、あなたは物わかりが良い方では無かったはずです』
コックピットに突き付けられたランスが月明かりに照らされて鮮やかに輝く。
それはまるで意思を持っているかのようであり、ここでコーネリアが拒めば、ドロテアは容赦なく彼女を捕らえるだろう。
並の騎士が相手であれば、他の武器を持ってこの状況を切り抜けることはコーネリアには容易。だが、相手はブリタニア最強のナイトオブラウンズ。
本来であれば、こちらの頼れる味方であったはずの存在が目の前にて敵として現れている状況に、コーネリアは自分達の過ちを受け入れざるを得なかった。
『私を逃がすことで、貴様が騎士団に疑われるのでは無いのか?』
『複数の砲に狙われている状況を理解せぬほどの無能は、…………まあ、あまり多くはおりません』
状況的には相手の総指揮官を捕らえる絶好の機会である。
だが、解放戦線への包囲が破綻した今、周囲を固めていたブリタニア側の自走砲部隊は、コーネリア達を支援するべく最前線にその砲門を向けている。
そして、コーネリアは虜囚の辱めを受けるぐらいならば、敵諸共死ぬ覚悟は持っている人間だった。
それが分かっている自走砲部隊指揮官は撃つことが出来ないし、ルルーシュもまたその部隊を攻撃出来なかった。
そして、両部隊共に最大の目標であった片瀬の死を知り、残党は黒の騎士団が合流したことで脱出が可能な状況となっている。
互いに手は打ち尽くしたという状況であり、コーネリアがここでやけを起こさない限りは勝敗は決していたのである。
『ギルフォード。ここは引くぞ……』
『姫様っ!? よろしいのですか?』
『私の意地で兵を無駄死にさせるわけにはいかん。だが、ドロテアっ!! 事情はあれど、ブリタニアに弓引いたことへの落とし前は必ず付けてやるぞっ!!』
『覚悟の上です。殿下』
そして、コーネリアも個人では無く、あくまでも将としての決断を下す。
片瀬を捕らえられなかった以上はこれ以上の戦いは無益。そもそも、騎士団を叩き潰すのは足枷の無い状況かつ、自分がドロテアを超えられてからの話であるとコーネリアは自分に言い聞かせるしか無かった。
「ブリタニア軍の撤退を確認。各員は負傷者や鹵獲兵器の確認に当たってください」
G1ベースにてそれらの状況を見つめていたシャーリーは、ナナリーとともにコーネリア軍の撤収を確認すると、即座に付近に展開している各員に指示を出す。
負傷者もそうであるが、ドロテアに向けられていた自走砲など、撤収に際して放置された車両の確保は絶対的な戦力差を抱える日本側としては無視できないモノである。
本来だったら、爆破するなり破壊するなりするのだが、人は見逃してもモノを見逃すつもりは無いのが日本側である。
ブリタニアに戦力は残っていても、戦略目標を達成したのは日本側なのだ。
そして、どちらも最大の目標は“逃す”結果にもなったが。
「片瀬少将……あと少しで助かったのにね」
「ええ……」
事情を知らないシャーリーと事情を知っているナナリーにとっての受け止め方は異なる。シャーリーは多くの団員同様、救出作戦と知らされていた事と、彼女はまだ首脳達の腹芸の類いを察するほど場数を踏んでいない。
対するナナリーは立場上ルルーシュからはすべてのことを知らされている。知らされた過去のナナリーであれば、ルルーシュを糾弾し、その“処断”には断固として反対したであろうが、今は現実を知り、指導者としての“責任”も教えられている立場。
『一死を以て大罪を謝し奉る』
との辞世をもって割腹していたという報告を全軍に伝えたが、タイミング良くドロテアとコーネリアの戦いに決着が付いたこともあり、戦闘は漣のように停止していった。
二人とも、ルルーシュから片瀬少将に対する評価として「凡将」と聞いていたが、それでも戦闘を止めるだけの名声はあったと言える。
部下諸共爆死した事を疑問にもたれるぐらいには分別があった以上、彼を慕う人間も存在したのだから当然かも知れないが。
『シャーリー。解放戦線兵の負傷者が多いからこちらに人員を回せる?』
「分かりました。……中央のKMF部品の鹵獲に当たっている部隊の方は解放戦線兵の救助に回ってください」
「合わせて、捕虜となったブリタニア兵は丁重に扱ってください。私たちはブリタニア軍とは違うと言う事をブリタニア兵に教えるのです」
それぞれそんな印象を抱いていたシャーリーとナナリーだったが、足早に現場へと向かったミレイからの通信に、自分達の役割を果たす。
鹵獲も役割の一つであるが、戦闘終結直後は人命が優先となる。鹵獲自体もブリタニア軍が撤退している合間にしかなせなかったが。
そして、それは日本人である解放戦線兵だけでなく、息のあるブリタニア兵も対象となる。
すでに騎士団にはブリタニア人が多く居るが、兵士達に対しても最低限の立場保障はなされる。
当然、虐殺などの行為が露見したら相応の報いを受けさせるが、少なくとも戦闘において負傷した以上は扱いは平等に為されるのだ。
『シャーリー、ブリタニア軍の動きは?』
「お待ちください。……コーネリア率いるKMF部隊は先んじて後退し、荒川を背に待機しています、後続の戦闘車両の到着を待っているようです」
投影画面に映る赤い△マーカーはブリタニア側のKMFを示すが、その多くは租界外苑を取り囲むように流れる荒川を後背に停止し、凸部分がこちらへと向いている。
後続の戦闘車両を示すマーカーも全力で租界へと向かっている。速度はKMFに劣るため、その到着を待っているのだろう。
『……ナナ……マリィ。チョウフの情報は何か入っているか?』
ナナリーと通信で呼ぶのはさすがにマズいと、母マリアンヌの名をもじってナナリーのコードネームとしている。
とは言え、ナナリー呼びに慣れたルルーシュや生徒会メンバー達はいつ言い間違えるかと戦々恐々ではあったが。
「現状は情報統制されたままです。ですが、片瀬少将の死は届いているはずです」
『そうか。向こうは藤堂次第だな』
当然と言えば当然だと思うが、スザクとの戦闘は四聖剣三人との連携が肝になる。ルルーシュの意図があったわけでは無いが、本来加わっているはずの卜部がいない状況かつ、ルルーシュの分析も無い状況での対峙。
そこに片瀬の死という情報が足された場合を考えると、藤堂達の敗北という可能性も頭によぎる。
ナナリーにもシャーリーにも、ルルーシュの意図は分からなかったが、吉田や少佐達の援護もある中で、上手く撃退できていればと言う事を祈るしか無かった。
(スザクさんも藤堂さんも、お兄様にとっては大事な人であると同時に、厄介な敵と為った方……。やはり、私は甘やかされているのですね)
そして、そんな藤堂達の現状を思考したナナリーは、彼等と自分の扱いの差に、自身や兄の甘さを実感せざるを得ないのであった。
◇◆◇◆◇
片瀬の死を知ったコーネリアは無益な戦を続けるつもりは無かったようだ。
実際、片瀬を捕らえるのは消息不明の藤堂や自分を釣り出すためであり、その双方が出てきた以上、片瀬の動向は問題では無いと言うが本音だろう。
とは言え、捕縛できれば藤堂の投降すら可能性の一つとなる事から逮捕に全力を挙げたに過ぎない。
だからこそ、それを利用して敵戦力を削ることを過去においては実行したわけだが、今回はその意味も持たない。
片瀬が存命中でもキョウトは自分を選択し、レジスタンス、日本解放戦線、そしてブリタニア軍内部から自分の下に人は集まっている。
求心力を持つ人間を消す必要は現状は無いし、キョウトが駒として使っていた以上、キョウトが始末を付ける事が筋でもあった。
そして、キョウトはキョウトなりの判断とした。片瀬。そして、草壁や彼に同調した首脳陣はすでに死んでいるのだから、命令に従った兵達まで死なせる必要も無い。
それに、やや扱いづらい彼等の行き先も算段は付いている。
『ゼロ』
「これは公方院閣下。いかがいたしました?」
『刑部より聞いた。これより、我が手の者達をそちらへと送る』
そんな時、ルルーシュの下に公方院からの通信が届く。
陸の統括者が筋を通した以上、海の統括者もまたその役割を果たさねばならなかった。
そして、ルルーシュの乗るサザーランドの投影画面。東京湾を映したそこに緑色の艦船マーカーが複数映りはじめる。
この近距離までアッシュフォードが用意した索敵システムの網をくぐってきたと言う事になる。
寡兵を持ってブリタニア海軍の心胆を寒からしめた者達の亡霊はたしかに存在していたとも言えよう。
「承知した。後々、あなたの手の者達ともお会いしたいモノですね」
『いずれな』
短くそう答えると公方院からの通信は消える。
表に姿を見せた以上、ブリタニアからの追求も増していくであろう。かつて、太平洋の覇権を争った大艦隊の亡霊達。
彼等との邂逅の時はもうまもなくであろうか。
『ゼロ、解放戦線の軍人が会いたいって言っているんだけど』
「武装は?」
『自分で解除したし、隠し持っても居なかったわ』
「分かった、会おう。カレン、リヴァルも同席してくれ」
そんなことを考えていたルルーシュの下にカレンから通信が入り、おそらく、刑部が送り込んでいた手の者であろうと思ったルルーシュは即座に面会を受ける。
ほどなく、二人と共にその場にやって来たあごひげを蓄えた軍人と対面する。軍服は袖部分が赤く染まっており、おそらく手を下したのは彼であろう。
「ゼロ、今回は我々のためにご尽力頂けたこと、真に感謝いたす」
「いや、片瀬少将には済まないことをしてしまった……」
「元々、部下の脱出を見届けた後には覚悟を決めていたようです。これで、日本に対して詫びを入れられると」
カレンの手前、心にも無い事をお互い言い合っている事は分かっていたが、眼前の男も中々の狸である。
モニカの策によって地位を手にし、中華連邦軍と澤崎を釣るためのエサとしての価値しか無かった男だが、モニカが選んだだけあって人望の厚さはこちらとしては面倒なぐらいある。
そんな男が、国賊としてではなく、一軍人として始末を付けた。これによってそれまでの失態に対して納得する者や仇討ちに燃える日本人が増えてくれればそれはそれで僥倖だろう。
「今後の事だが、君たちの身柄は海軍の公方院閣下に任せることに成っている。悪いようにはしないはずだ」
「はっ……。しかし、驚きましたな。我々同様、多くが艦と運命をともにしたと聞いておりましたが」
「私もだ。負傷者の身柄はこちらで預かる。いずれ、戦場を共にする事が来ることを祈る」
「はっ。私は、日本解放戦線大場聡大尉であります。藤堂中佐や卜部少尉によろしくお伝えください」
そして、大場大尉は形の良い敬礼をするとルルーシュに背を向ける。
その名はルルーシュも耳にしたことがある。遠きマリアナの地にて日本の降伏を知らず民間人を守って戦い続けた一部隊が居たことを。
ちょうどモニカが日本を離れる前と言う事もあり、弔鐘の森を悔やんでいた彼女が彼やその部下達を必死に弁護したことも聞かされたばかりである。
「大尉。貴様の恩人であるモニカ・クルシェフスキーは私の幕下に加わっている。時が来れば、一度会ってみてくれ」
「ふ、そうですね」
その背中にそう声を掛けると、大尉はゆっくりを歩みを止め、ルルーシュの言に答える。その時、大尉を見送るべくカレンとリヴァルも彼にならって身体を背けると、次の瞬間には大尉はルルーシュの背後に回り、首元にナイフを突き付けていた。
「ゼロっ!!」
「遅い。君たち、私が暗殺者だったらゼロの命は今頃無いぞ?」
「突然なんだよっ!? 失礼なヤツだな」
突然の行動に、カレンとリヴァルが色めき立って銃を突きつけるが、射線は完全にルルーシュが入ってしまっており、発砲も出来ない状況である。
とは言え、大尉もまた本気でルルーシュを害そうという気は無いようで、手にしたナイフも指先で中に沈み込むレプリカである事を示している。
「それで?」
「いえ。我々としても、侮られたままで終わるのは面白くありませんので。殿下、クルシェフスキー卿には感謝しておりますが、それでも簡単に握手ができるほど私どもは寛容ではありません」
「……ふ、食えない男だ。刑部から私の正体は聞いているのか?」
「いえ。閣下は、本人が言うと言ったままです」
「そうか」
実際の所、ルルーシュが大尉に対して興味を抱かなければ危険な行動でもある。
おそらく、モニカに対する言動も含めて、見た目以上に面白い人間だと言う事を見抜いての行動である。
そして、その意図通り興味を抱いたルルーシュは、再び彼と対面すると、ゆっくりと仮面を取る。
「……ふむ。側近をブリタニア人で固めていたことから予測をしておりましたが」
「さらに言えば、俺の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。この名が意味すること聡い貴様ならば理解するだろう?」
「はっ。刑部閣下が口にしなかった理由も分かり申した。……ルルーシュ殿下。我々の目的はあくまでも日本の解放が第一。同時に、あなたの覚悟もなんとなくですが分かります」
「そうか……。ならば、海の英雄達のこと。よろしく頼む」
「はっ。あの頑固者どもを説き伏せるのは骨が折れますが、日本のため。尽力いたしましょう」
「いずれ篠崎流の者を向かわせる。上手く使ってくれ」
タイプ的にディートハルトと同じく、自らの思想に合致する人間に仕えるタイプのように思っていたが、名を名乗られた事でそれを撤回する。
どちらかと言えば、卜部同様に一歩引いた立場で物事を見られるタイプであろう。
直情径行型が多い日本人幹部達とは異色であることも含め、彼に興味を抱いたルルーシュは、やはり身内に対する甘さも含めて彼を信じることにしたのであった。
ゆっくりを動き始めるタンカー。その周囲を4隻の旧式駆逐艦が整然と並んで行く。
旧式とは言え、日本侵攻を生き残った精鋭達が乗り込んでいると思われるその姿に、ルルーシュはまだまだ手駒となる人物は居ることを実感させられる。
片瀬や草壁を見て日本軍人を評価していた自分の眼力の無さを悔やみつつ、その姿を見送っている。
「しかし、失礼なヤツだったな」
「いや、俺がモニカの名を出したことがマズかったのさ。俺達の味方ではあっても、彼等にとっては許しがたい敵なんだ」
「それは、そうかも知れないけど……。ルルーシュ、やっぱりお前変わったな」
「そうか?」
「前だったら、あんな事されたら滅茶苦茶怒ってたと思うぞ?」
「何を言っている。お前や会長の無茶振りに俺が怒ったことがあったか?」
「お前……、隠せていると思っていたのか?」
「なんだとっ??」
思いがけぬリヴァルの言に目を丸くするルルーシュ。
たしかに、過去ではちょっとしたことを侮辱に感じて苛立つことが多かったが、リヴァル達の前でそれを出した覚えは無い。
しかし、彼等には見抜かれていたと言う事であろうか。それにしては、自分がゼロである事に最後まで気付かなかったのだが。
「掛けチェスの時とか、相手のイカサマを見抜いたらすぐにでも罵倒しそうな顔してただろ? 冷静に見えて気が短い印象だったぞ?」
「へえ? 何事にも冷静な自分を気取ってると思ったけど、やっぱりそうだったのね」
「うるさいぞ。俺はいつでも冷静だ。第一、お前達に気が短いと言われたくないぞ」
「私は短気を自覚しているし、直す気なんてないから」
「まあ、俺もそうだな。親父に良く怒られたけど」
そんな調子で、自身の欠点をあっさりと指摘されたルルーシュであったが、カレンもリヴァルも彼の反撃をさっさといなす。
「それより、見送りはここまでだ。さっさと作業に戻るぞっ!!」
「はいはい。それじゃあ、モヤシ君はさっさと愛する彼女と妹の所へ戻りなさいな」
「やかましいっ!! 誰がモヤシだっ!!」
「ん? じゃあ、一緒に肉体労働するか?」
「……それは俺の主戦場じゃ無い。現場の指揮は任せるから、分からなくなったらシャーリーとナナリーに聞け」
形勢不利を悟ったルルーシュだったが、一度調子に乗ると止まらないタイプの二人である。
さすがに面倒くさくなったルルーシュはさっさとマントを翻してサザーランドの元へと向かう。
部下とじゃれ合うゼロの姿が見えぬよう、近場の倉庫からの見送りであったのが幸いしたが、作業自体はまだ終わっていない。
そもそも、チョウフの動向が不明である以上、呑気に遊んでいる暇は無いのだ。
『あ、ル……ゼロ。今、永田さんから連絡があって、チョウフの方も撤退したそうです』
そして、サザーランドに乗り込むのを待っていたかのようにシャーリーから通信が入る。
結果としては、政治犯達の救出は成らず、ランスロットのパイロットが世間に知られた事だけが戦果として残っている。
スザクによって吉田と千葉の機体が破壊。朝比奈と仙波の機体も大規模な修理が必要なほどの反撃に遭い、ブリタニア人側は撤退時に待ち構えていた雷光に数機が落とされたとのこと。
フナバシとの戦果を考えれば、痛み分けというところであろうか。
「政治犯の救出失敗に、月下四機か……。致し方ないとは言えぬ結果だな」
『基地に侵入した歩兵部隊も全滅しちゃったって……』
「…………そうか」
最終的な報告としては、KMFにも人員にも被害が出ている。
相手がスザクだけで無くダールトンも居た事を考えれば、藤堂達だけで厳しかったと言う事であろうか。
タチカワ事変の影響で防備が強化されていたとも考えられる。いずれにしろ、自分の作戦内容に甘さがあったと言う事であろうとルルーシュは自戒する。
「負傷者の収容や鹵獲作業はどうなっている?」
『収容作業はほぼ終わっています。鹵獲の方は6割ほどでしょうか』
「分かった。では、収容作業が完了次第、鹵獲作業は打ち切り、撤退を開始する。それに先んじて、卜部に解放戦線の部隊を率いて撤退するよう伝えてくれ」
チョウフでの犠牲を鑑み、コーネリアの逆襲を考慮する必要が出てきた以上、長居は無用である。
タンカーにて脱出した解放戦線残党は海軍に任せておけば良いが、陸に残った戦力を守る責任はこちらにあるのだ。
◇◆◇◆◇
フナバシ埠頭及びチョウフ基地での一連の戦闘が与えた影響は思いのほか大きかった。
ジェレミア、ドロテア、モニカの粛清、ヴィクトルの失脚をはじめとしたブリタニア内部の不信感。
それを解消せぬまま、コーネリアですらもゼロに敗北してしまった状況。
そんな中で、政治犯奪還を目指して進撃してきた厳島の奇跡、藤堂鏡志郎とその麾下の四聖剣を迎え撃ち、討ち取ることは敵わなかったとは言え、それを撃破した枢木スザクの名は内外に轟くことになる。
元々、レジスタンス討伐で名を上げていたところに、藤堂の手によってその正体が晒されたランスロットのパイロット。
その正体が日本人であった事に、日本人もブリタニア人も驚愕することになる。
そして、ほどなく両者をさらなる驚愕に晒す発表が執り行われることになる。
それは、当の枢木スザクが、ユーフェミア・リ・ブリタニアの騎士に選出されたと言う発表であった。